Eigen3でクォータニオンをAngleAxisに変換する際の数値的安定性について
2025-04-26
このコンストラクタは、クォータニオン(q
)を引数として受け取り、そのクォータニオンが表す回転を軸と角度の形式に変換します。変換された軸と角度は、AngleAxis
オブジェクトのメンバ変数に格納されます。
詳細
-
- まず、入力されたクォータニオン
q
が正規化されていることを確認します。正規化されていない場合は、正規化を行います。正規化は、クォータニオンの長さを1にすることです。 - クォータニオンの正規化は、回転を表す上で重要です。正規化されていないクォータニオンは、スケール変換と回転の両方を表す可能性があるため、回転のみを抽出するために正規化が必要です。
- まず、入力されたクォータニオン
-
角度の計算
- クォータニオンの虚部と実部から回転角度を計算します。
- クォータニオンは、以下の形式で表されます。
- q=w+xi+yj+zk
- ここで、wは実部、x,y,zは虚部です。
- 回転角度θは、以下の式で計算されます。
- θ=2arccos(w)
-
軸の計算
- クォータニオンの虚部から回転軸を計算します。
- 回転軸の単位ベクトルは、以下の式で計算されます。
- axis=x2+y2+z2​(x,y,z)​
- ただし、θ=0 (つまり、回転がない場合) は、軸は任意になります。Eigen3では(1,0,0)が選択されます。
-
AngleAxisオブジェクトの構築
- 計算された角度θと軸
axis
を使用して、AngleAxis
オブジェクトを構築します。 - このオブジェクトは、回転を軸と角度の形式で格納します。
- 計算された角度θと軸
コード例
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::Quaterniond q(0.7071, 0, 0.7071, 0); // 回転を表すクォータニオン
Eigen::AngleAxisd angleAxis(q); // クォータニオンからAngleAxisを生成
std::cout << "Angle: " << angleAxis.angle() << std::endl; // 回転角度を出力
std::cout << "Axis: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl; // 回転軸を出力
return 0;
}
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
入力されたクォータニオンq
が正規化されていない場合、期待しない結果が生じることがあります。 - トラブルシューティング
- クォータニオンを正規化してから
AngleAxis
コンストラクタに渡すようにしてください。q.normalize()
を使用できます。 - クォータニオンが正規化されているか確認するために、
q.norm()
をチェックしてください。結果が1に近い値になっているべきです。 - クォータニオンの生成元を確認し、生成過程で正規化されているか確認してください。
- クォータニオンを正規化してから
- エラー
-
ゼロクォータニオン
- エラー
クォータニオンがゼロベクトルである場合、AngleAxis
の軸が不定になります。Eigen3では(1,0,0)が選択されます。 - トラブルシューティング
- クォータニオンがゼロベクトルにならないように、入力データをチェックしてください。
- ゼロクォータニオンが入力された場合に、特別な処理を行う必要があります。例えば、単位クォータニオンを生成する、エラー処理を行う等。
- エラー
-
数値的な不安定性
- エラー
クォータニオンがほぼ単位クォータニオンである場合、arccos()
の計算で数値的な不安定性が生じることがあります。 - トラブルシューティング
arccos()
の入力値が範囲[-1, 1]内であることを確認してください。- クォータニオンがほぼ単位クォータニオンである場合、回転角度が非常に小さくなります。このような場合、軸の方向が不安定になることがあります。
- 場合によっては、クォータニオンから回転行列に変換し、回転行列から
AngleAxis
を生成する方が安定することがあります。Eigen::Matrix3d rotationMatrix = q.toRotationMatrix(); Eigen::AngleAxisd angleAxis(rotationMatrix);
- エラー
-
型の不一致
- エラー
QuaternionBase< QuatDerived >
のテンプレート型QuatDerived
が期待される型と一致しない場合、コンパイルエラーが発生します。 - トラブルシューティング
- クォータニオンの型が
Eigen::Quaterniond
やEigen::Quaternionf
など、期待される型であることを確認してください。 - テンプレート型が適切に指定されているか確認してください。
- クォータニオンの型が
- エラー
-
回転方向の曖昧さ
- エラー
クォータニオンが180度の回転を表す場合、軸の方向が逆になる可能性があります。 - トラブルシューティング
- 回転方向が重要な場合は、クォータニオンの生成方法と回転の解釈を慎重に検討してください。
- 必要に応じて、回転方向を明示的に指定できる他の回転表現(回転行列など)を使用してください。
- エラー
デバッグのヒント
- 問題が解決しない場合は、Eigen3のドキュメントやコミュニティフォーラムを参照してください。
assert
を使用して、クォータニオンが正規化されているか、ゼロベクトルでないかなどをチェックしてください。Eigen::Matrix3d
に変換して、回転行列を確認してください。std::cout
を使用して、クォータニオンの値、角度、軸をデバッグ出力してください。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// クォータニオンを生成(例:Z軸周りに90度回転)
Eigen::Quaterniond q(Eigen::AngleAxisd(M_PI / 2, Eigen::Vector3d::UnitZ()));
// クォータニオンからAngleAxisを生成
Eigen::AngleAxisd angleAxis(q);
// 角度と軸を出力
std::cout << "角度: " << angleAxis.angle() << " ラジアン" << std::endl;
std::cout << "軸: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl;
// AngleAxisからクォータニオンに戻す
Eigen::Quaterniond q2(angleAxis);
// 戻したクォータニオンを出力
std::cout << "戻したクォータニオン: " << q2.coeffs().transpose() << std::endl;
return 0;
}
説明
- クォータニオン
q
を生成します。ここでは、Z軸周りに90度回転するクォータニオンをEigen::AngleAxisd
を使用して生成しています。 Eigen::AngleAxisd angleAxis(q);
によって、生成したクォータニオンq
からAngleAxis
オブジェクトangleAxis
を生成します。angleAxis.angle()
で回転角度(ラジアン)、angleAxis.axis()
で回転軸の単位ベクトルを取得し、出力します。Eigen::Quaterniond q2(angleAxis);
によって、AngleAxis
オブジェクトangleAxis
からクォータニオンq2
を生成します。- 生成したクォータニオン
q2
を出力します。q2.coeffs()
はクォータニオンの係数(x,y,z,w)をEigenのベクトルとして返します。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// 非正規化クォータニオンを生成
Eigen::Quaterniond q(1.0, 2.0, 3.0, 4.0);
// 正規化
q.normalize();
// AngleAxisを生成
Eigen::AngleAxisd angleAxis(q);
// 角度と軸を出力
std::cout << "角度: " << angleAxis.angle() << " ラジアン" << std::endl;
std::cout << "軸: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl;
return 0;
}
説明
- 非正規化クォータニオン
q
を生成します。 q.normalize();
によって、クォータニオンq
を正規化します。- 正規化されたクォータニオン
q
からAngleAxis
オブジェクトangleAxis
を生成します。 - 角度と軸を出力します。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// ゼロクォータニオンを生成
Eigen::Quaterniond q(0.0, 0.0, 0.0, 0.0);
// ゼロクォータニオンをチェック
if (q.norm() == 0.0) {
std::cout << "ゼロクォータニオンが入力されました。" << std::endl;
// 単位クォータニオンで初期化するか、エラー処理を行う
q.coeffs() << 0,0,0,1; // 単位クォータニオンに置き換える例
}
// AngleAxisを生成
Eigen::AngleAxisd angleAxis(q);
// 角度と軸を出力
std::cout << "角度: " << angleAxis.angle() << " ラジアン" << std::endl;
std::cout << "軸: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl;
return 0;
}
- ゼロクォータニオン
q
を生成します。 q.norm() == 0.0
でゼロクォータニオンかどうかチェックします。- ゼロクォータニオンの場合、エラーメッセージを出力し、単位クォータニオンで初期化します。
AngleAxis
オブジェクトangleAxis
を生成し、角度と軸を出力します。
代替方法1: 回転行列からのAngleAxis生成
クォータニオンから直接AngleAxis
を生成する代わりに、回転行列を経由する方法があります。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// クォータニオンを生成
Eigen::Quaterniond q(Eigen::AngleAxisd(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitY()));
// クォータニオンから回転行列を生成
Eigen::Matrix3d rotationMatrix = q.toRotationMatrix();
// 回転行列からAngleAxisを生成
Eigen::AngleAxisd angleAxis(rotationMatrix);
// 角度と軸を出力
std::cout << "角度: " << angleAxis.angle() << " ラジアン" << std::endl;
std::cout << "軸: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl;
return 0;
}
説明
- クォータニオン
q
を生成します。 q.toRotationMatrix()
によって、クォータニオンq
から回転行列rotationMatrix
を生成します。Eigen::AngleAxisd angleAxis(rotationMatrix);
によって、回転行列rotationMatrix
からAngleAxis
オブジェクトangleAxis
を生成します。- 角度と軸を出力します。
利点
- 回転行列を扱う必要がある場合に、変換のステップを減らすことができます。
- クォータニオンから直接
AngleAxis
を生成するよりも、数値的に安定する場合があります。特に、クォータニオンがほぼ単位クォータニオンである場合に有効です。
欠点
- クォータニオンから回転行列への変換と、回転行列から
AngleAxis
への変換の2つのステップが必要になるため、計算コストが若干高くなります。
代替方法2: 軸と角度から直接AngleAxis生成
クォータニオンを経由せずに、軸と角度を直接指定してAngleAxis
を生成する方法があります。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// 回転軸と回転角度を指定
Eigen::Vector3d axis(0, 1, 0); // Y軸
double angle = M_PI / 3; // 60度
// AngleAxisを生成
Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);
// 角度と軸を出力
std::cout << "角度: " << angleAxis.angle() << " ラジアン" << std::endl;
std::cout << "軸: " << angleAxis.axis().transpose() << std::endl;
// AngleAxisからクォータニオンを生成
Eigen::Quaterniond q(angleAxis);
//クォータニオンを出力
std::cout << "クォータニオン: " << q.coeffs().transpose() << std::endl;
return 0;
}
説明
- 回転軸
axis
と回転角度angle
を直接指定します。 Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);
によって、指定された軸と角度からAngleAxis
オブジェクトangleAxis
を生成します。- 角度と軸を出力します。
Eigen::Quaterniond q(angleAxis);
によって、AngleAxisからクォータニオンを生成し、出力します。
利点
- 回転を直感的に表現できます。
- 軸と角度が直接的に分かっている場合に、クォータニオンを経由する必要がないため、効率的です。
欠点
- クォータニオンを扱う必要がある場合に、変換のステップが必要になります。
代替方法3: クォータニオンの係数から直接AngleAxisを計算
クォータニオンの係数から直接AngleAxis
の角度と軸を計算する方法もあります。これは、Eigen3の内部で行われている計算を直接行うため、Eigen3のバージョンに依存しない実装をすることができます。しかし、この方法は複雑になる可能性があり、Eigen3の内部実装が変更された場合にコードを修正する必要があるため、推奨されません。