Eigen3 Quaternion vs AngleAxis: 回転表現の最適な選択とは?

2025-05-27

Eigen::AngleAxis::toRotationMatrix (void) const とは?

Eigen::AngleAxisは、3次元空間での回転を「回転軸」と「回転角度」で表現するためのクラスです。toRotationMatrix()メソッドは、この「軸と角度」の表現を、3x3の「回転行列」に変換する関数です。

  1. 回転の表現

    • Eigen::AngleAxisは、3次元空間内の回転を、ある特定の軸(axis())を中心に、指定された角度(angle())だけ回転させる操作として表現します。
    • この表現は、直感的で、特定の回転を記述するのに便利です。
  2. 回転行列への変換

    • 3次元空間での回転は、3x3の回転行列によっても表現できます。
    • 回転行列は、ベクトルに掛け合わせることで、そのベクトルを回転させる操作を表します。
    • toRotationMatrix()メソッドは、Eigen::AngleAxisオブジェクトが保持している「軸と角度」の情報を、この3x3の回転行列に変換します。
  3. 使用例

    #include <iostream>
    #include <Eigen/Geometry>
    
    int main() {
        // 回転軸と回転角度を設定
        Eigen::Vector3d axis(0, 0, 1); // Z軸周りの回転
        double angle = M_PI / 2; // 90度の回転
    
        // AngleAxisオブジェクトを作成
        Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);
    
        // 回転行列に変換
        Eigen::Matrix3d rotationMatrix = angleAxis.toRotationMatrix();
    
        // 回転行列を表示
        std::cout << "Rotation Matrix:\n" << rotationMatrix << std::endl;
    
        return 0;
    }
    

    この例では、Z軸周りに90度回転するEigen::AngleAxisオブジェクトを作成し、それをtoRotationMatrix()を使って回転行列に変換しています。

  4. constについて

    • constキーワードは、このメソッドがオブジェクトの状態を変更しないことを意味します。つまり、toRotationMatrix()を呼び出しても、元のEigen::AngleAxisオブジェクトの内容は変わりません。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • Eigen::AngleAxisの軸(axis())は、単位ベクトル(長さが1のベクトル)である必要があります。軸が正規化されていない場合、生成される回転行列は正しくありません。
    • エラーの兆候
      回転結果が期待と異なる、歪んだ回転になる。
    • トラブルシューティング
      axis()を設定する前に、axis().normalized()を使用して軸を正規化してください。
      Eigen::Vector3d axis(1, 2, 3); // 正規化されていない軸
      axis.normalize(); // 軸を正規化
      Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);
      
  1. 角度の単位間違い

    • Eigen::AngleAxisの角度(angle())は、ラジアン単位で指定する必要があります。度数で角度を指定すると、予期しない回転が発生します。
    • エラーの兆候
      回転角度が大きくずれる、期待と異なる回転になる。
    • トラブルシューティング
      度数からラジアンへの変換を行うか、ラジアンで直接角度を指定してください。
      double degrees = 90.0;
      double radians = degrees * M_PI / 180.0; // 度数をラジアンに変換
      Eigen::AngleAxisd angleAxis(radians, axis);
      
  2. 初期化されていないEigen::AngleAxisオブジェクトの使用

    • Eigen::AngleAxisオブジェクトが適切に初期化されていない場合、toRotationMatrix()は予測不能な結果を返すことがあります。
    • エラーの兆候
      ランダムな回転行列が生成される、プログラムがクラッシュする。
    • トラブルシューティング
      Eigen::AngleAxisオブジェクトを作成する際に、軸と角度を必ず指定してください。
  3. 浮動小数点数の精度の問題

    • 浮動小数点数の計算には、わずかな誤差が含まれる可能性があります。これにより、生成された回転行列が厳密に直交行列にならない場合があります。
    • エラーの兆候
      回転行列が直交行列からわずかに逸脱する、数値計算の誤差が蓄積する。
    • トラブルシューティング
      • 必要に応じて、回転行列を正規直交化する処理を追加します。
      • 特定の精度を必要とする場合は、倍精度浮動小数点数(Eigen::AngleAxisdEigen::Matrix3d)を使用します。
  4. コンパイラとライブラリのバージョン不一致

    • Eigen3ライブラリとコンパイラのバージョンが一致しない場合、コンパイルエラーや実行時エラーが発生することがあります。
    • エラーの兆候
      コンパイルエラー、リンクエラー、実行時エラー。
    • トラブルシューティング
      Eigen3ライブラリとコンパイラのバージョンを確認し、互換性があるバージョンを使用してください。
  5. 行列の型の不一致

    • toRotationMatrix()の返り値は、Eigen::Matrix3d型です。返り値を別の型の行列に代入しようとすると、コンパイルエラーが発生します。
    • エラーの兆候
      コンパイルエラー。
    • トラブルシューティング
      返り値の型と代入先の行列の型を一致させてください。

トラブルシューティングの一般的な手順

  1. エラーメッセージをよく読む
    コンパイラや実行時エラーのメッセージは、問題の解決に役立つ情報を提供します。
  2. コードの関連部分をデバッグする
    デバッガを使用して、変数の値やプログラムの実行フローを確認します。
  3. Eigen3のドキュメントを参照する
    Eigen3の公式ドキュメントには、クラスやメソッドの詳細な説明と使用例が記載されています。
  4. 小さなテストケースを作成する
    問題を再現する最小限のコードを作成し、問題を特定します。


例1: 基本的な回転行列の生成と表示

#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    // Z軸周りに45度回転するAngleAxisを作成
    Eigen::Vector3d axis(0, 0, 1);
    double angle = M_PI / 4; // 45度 (ラジアン)
    Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);

    // AngleAxisを回転行列に変換
    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = angleAxis.toRotationMatrix();

    // 回転行列を表示
    std::cout << "Rotation Matrix:\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}

説明

  • 生成された回転行列を標準出力に表示しています。
  • toRotationMatrix()メソッドを使用して、この回転を3x3の回転行列に変換しています。
  • この例では、Z軸周りに45度回転するEigen::AngleAxisdオブジェクトを作成しています。

例2: ベクトルの回転

#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    // X軸周りに90度回転するAngleAxisを作成
    Eigen::Vector3d axis(1, 0, 0);
    double angle = M_PI / 2; // 90度 (ラジアン)
    Eigen::AngleAxisd angleAxis(angle, axis);

    // 回転行列に変換
    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = angleAxis.toRotationMatrix();

    // 回転させるベクトル
    Eigen::Vector3d vector(0, 1, 0);

    // ベクトルを回転
    Eigen::Vector3d rotatedVector = rotationMatrix * vector;

    // 回転後のベクトルを表示
    std::cout << "Rotated Vector:\n" << rotatedVector << std::endl;

    return 0;
}

説明

  • 回転後のベクトルを標準出力に表示しています。
  • ベクトル(0, 1, 0)を定義し、回転行列を掛けることで、このベクトルを回転させています。
  • この例では、X軸周りに90度回転するEigen::AngleAxisdオブジェクトを作成し、回転行列に変換しています。

例3: 複数の回転の組み合わせ

#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    // X軸周りに45度回転
    Eigen::AngleAxisd rotation1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitX());

    // Y軸周りに30度回転
    Eigen::AngleAxisd rotation2(M_PI / 6, Eigen::Vector3d::UnitY());

    // 回転を組み合わせる(回転行列を掛け合わせる)
    Eigen::Matrix3d combinedRotation = rotation2.toRotationMatrix() * rotation1.toRotationMatrix();

    // 組み合わせた回転行列を表示
    std::cout << "Combined Rotation Matrix:\n" << combinedRotation << std::endl;

    return 0;
}

説明

  • 組み合わせた回転行列を標準出力に表示しています。
  • それぞれの回転を回転行列に変換し、掛け合わせることで、二つの回転を組み合わせた回転行列を生成しています。
  • この例では、X軸周りの45度回転とY軸周りの30度回転をそれぞれEigen::AngleAxisdオブジェクトとして作成しています。

例4: Eigen::Quaternion との変換

#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    // Z軸周りに60度回転するAngleAxisを作成
    Eigen::AngleAxisd angleAxis(M_PI / 3, Eigen::Vector3d::UnitZ());

    // AngleAxisからQuaternionに変換
    Eigen::Quaterniond quaternion(angleAxis);

    // Quaternionから回転行列に変換
    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = quaternion.toRotationMatrix();

    // 回転行列を表示
    std::cout << "Rotation Matrix from Quaternion:\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}
  • Eigen::Quaternionは、回転を表現する別の方法であり、Eigen::AngleAxisとの変換が可能です。
  • Eigen::AngleAxisからEigen::Quaternionに変換し、そこから回転行列に変換する例です。


Eigen::Quaternion を使用する

  • Eigen::Quaternion から回転行列への変換は、quaternion.toRotationMatrix() を使用します。
  • Eigen::Quaternion は、回転を表現する別の方法であり、Eigen::AngleAxis と相互変換が可能です。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    // AngleAxisからQuaternionに変換
    Eigen::AngleAxisd angleAxis(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
    Eigen::Quaterniond quaternion(angleAxis);

    // Quaternionから回転行列に変換
    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = quaternion.toRotationMatrix();

    std::cout << "Rotation Matrix (from Quaternion):\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}
  • 欠点
    • 回転軸と角度を直接扱うよりも直感的でない場合があります。
  • 利点
    • ジンバルロックの問題を回避できます。
    • 回転の補間が容易です。
    • 内部的には、回転行列よりも効率的に回転を表現できます。

回転行列を直接構築する

  • これは、特定の回転を頻繁に使用する場合に、パフォーマンスを向上させることができます。
  • 特定の回転軸と角度の場合、回転行列の要素を直接計算できます。
#include <iostream>
#include <Eigen/Dense>
#include <cmath>

int main() {
    double angle = M_PI / 3; // 60度
    double cosAngle = std::cos(angle);
    double sinAngle = std::sin(angle);

    // Z軸周りの回転行列を直接構築
    Eigen::Matrix3d rotationMatrix;
    rotationMatrix << cosAngle, -sinAngle, 0,
                        sinAngle, cosAngle, 0,
                        0, 0, 1;

    std::cout << "Rotation Matrix (direct construction):\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}
  • 欠点
    • 複雑な回転の場合、行列の構築が困難です。
    • 汎用性が低いです。
  • 利点
    • パフォーマンスが向上する場合があります。
    • 特定の回転の計算に特化できます。

Eigen::Transform を使用する

  • Eigen::AngleAxis から Eigen::Transform に変換し、transform.rotation() を使用して回転行列を取得できます。
  • Eigen::Transform は、回転と並進を組み合わせた変換を表現するためのクラスです。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    Eigen::AngleAxisd angleAxis(M_PI / 2, Eigen::Vector3d::UnitX());
    Eigen::Transform<double, 3, Eigen::Affine> transform = angleAxis;

    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = transform.rotation();

    std::cout << "Rotation Matrix (from Transform):\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}
  • 欠点
    • 回転のみを扱う場合、オーバーヘッドが発生する可能性があります。
  • 利点
    • 回転と並進を同時に扱う場合に便利です。
    • 変換の組み合わせが容易です。
  • ベクトルが正規直交基底を形成する場合に便利。
  • 2つのベクトルから回転行列を生成するメソッド。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>

int main() {
    Eigen::Vector3d v1(1, 0, 0);
    Eigen::Vector3d v2(0, 1, 0);
    Eigen::Vector3d v3 = v1.cross(v2);

    Eigen::Matrix3d rotationMatrix = Eigen::Matrix3d::FromTwoVectors(v1, v2);

    std::cout << "Rotation Matrix (from Two Vectors):\n" << rotationMatrix << std::endl;

    return 0;
}
  • 欠点
    • ベクトルが正規直交基底を形成する必要があるため、汎用性が低い。
  • 利点
    • ベクトルから直接回転行列を生成できます。