Eigen3で回転を安全に比較!AngleAxis::isApproxの代替方法と注意点まとめ
2025-04-26
関数の役割
prec
は、比較の精度を指定するためのパラメータです。デフォルト値はNumTraits< Scalar >::dummy_precision()
であり、これは型のデフォルトの精度を使用します。- 「近似的に等しい」とは、完全な一致ではなく、指定された許容誤差
prec
の範囲内で等しいことを意味します。 Eigen::AngleAxis
オブジェクト(つまり、回転を角度と軸で表現したもの)が、別のAngleAxis
オブジェクトother
と近似的に等しいかどうかを判定します。
関数の引数
const typename NumTraits< Scalar >::Real &prec
: 比較の精度(許容誤差)を指定する値です。デフォルト値が与えられており、省略可能です。const AngleAxis &other
: 比較対象となる別のAngleAxis
オブジェクトへの定数参照です。
関数の返り値
bool
: 2つのAngleAxis
オブジェクトが近似的に等しい場合はtrue
を、そうでない場合はfalse
を返します。
詳細な説明
Eigen::AngleAxis
は、回転を角度と軸で表現します。この関数は、2つの AngleAxis
オブジェクトの角度と軸がそれぞれ近似的に等しいかどうかをチェックします。
- 精度
prec
:prec
パラメータは、浮動小数点数の比較における許容誤差を指定します。小さい値ほど、より厳密な比較が行われます。 - 軸の比較: 2つの軸ベクトルが平行であるか、またはほぼ平行であるかを確認します。軸の比較では、軸の向きが反対の場合も考慮されます。(つまり、180度回転した場合、軸の向きは逆になります。)
- 角度の比較: 2つの角度の差の絶対値が
prec
以下であるかを確認します。
コード例
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-8, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa3(M_PI / 2, Eigen::Vector3d::UnitX());
std::cout << "aa1.isApprox(aa2): " << aa1.isApprox(aa2, 1e-7) << std::endl; // true
std::cout << "aa1.isApprox(aa3): " << aa1.isApprox(aa3) << std::endl; // false
return 0;
}
この例では、aa1
と aa2
は角度が非常に近いので、指定した精度内で等しいと判定されます。一方、aa1
と aa3
は角度と軸が大きく異なるため、等しくないと判定されます。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
期待する結果と異なるisApprox
の結果が得られる。 - 原因
浮動小数点数の計算誤差により、完全に等しいはずの角度や軸がわずかに異なる場合があります。デフォルトの精度では誤差が大きすぎる、または小さすぎる場合がある。 - トラブルシューティング
prec
パラメータを明示的に指定して、適切な精度を設定します。アプリケーションの要件に応じて、より小さい値(例:1e-6
、1e-9
)または大きい値を使用します。- 計算過程で発生する誤差を最小限に抑えるように、アルゴリズムを見直します。
std::cout
などを使用して、比較対象の角度と軸の値を表示し、誤差の程度を確認します。
- エラー
-
軸の向きの問題
- エラー
180度の回転の際に、軸の向きが反対になり、isApprox
がfalse
を返す。 - 原因
isApprox
は、軸の向きが反対の場合でも、回転が等しいとみなします。しかし、軸の向きを厳密に比較したい場合は、この挙動が問題となることがあります。 - トラブルシューティング
- 軸の向きを厳密に比較する必要がある場合は、
isApprox
の結果だけでなく、軸の向きも明示的に比較します。 - 回転の表現方法を、クォータニオンなど、軸の向きの問題が発生しない表現に変更することを検討します。
- 軸の向きを厳密に比較する必要がある場合は、
- エラー
-
型の不一致
- エラー
コンパイルエラーが発生する。 - 原因
AngleAxis
オブジェクトの型(例:AngleAxisd
、AngleAxisf
)が一致しない場合、isApprox
を呼び出すことができません。 - トラブルシューティング
- 比較対象の
AngleAxis
オブジェクトの型を一致させます。 - 必要に応じて、型変換を行います。
- 比較対象の
- エラー
-
初期化の問題
- エラー
予期しないisApprox
の結果が得られる。 - 原因
AngleAxis
オブジェクトが適切に初期化されていない場合、不正な値が格納され、比較結果が正しくなくなることがあります。 - トラブルシューティング
AngleAxis
オブジェクトを初期化する際に、有効な角度と軸を指定していることを確認します。AngleAxis
のコンストラクタが正しく使用されているかを確認してください。
- エラー
-
ライブラリのバージョン問題
- エラー
コンパイルエラーや実行時エラーが発生する。 - 原因
Eigen ライブラリのバージョンが古い、または破損している場合、isApprox
の挙動が異なることがあります。 - トラブルシューティング
- Eigen ライブラリを最新バージョンに更新します。
- Eigen ライブラリのインストールが正しく行われていることを確認します。
- エラー
デバッグのヒント
- 最小限のコード例を作成し、問題を再現できるかどうかを確認します。
- デバッガを使用して、
isApprox
の内部動作をステップ実行し、変数の値を監視します。 std::cout
を使用して、比較対象のAngleAxis
オブジェクトの角度と軸の値を表示し、問題の原因を特定します。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
// 角度軸の初期化
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-8, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa3(M_PI / 2, Eigen::Vector3d::UnitX());
// 比較と結果の出力
std::cout << "aa1.isApprox(aa2, 1e-7): " << aa1.isApprox(aa2, 1e-7) << std::endl; // true (精度 1e-7 で近似的に等しい)
std::cout << "aa1.isApprox(aa3): " << aa1.isApprox(aa3) << std::endl; // false (角度と軸が異なる)
return 0;
}
説明
aa1
とaa3
は、角度と軸が大きく異なるため、isApprox
関数はfalse
を返します。aa1
とaa2
は、角度が非常に近いですが、完全に等しいわけではありません。isApprox
関数に1e-7
の精度を指定することで、これらの角度軸が近似的に等しいと判定されます。- このコードでは、3つの
Eigen::AngleAxisd
オブジェクト (aa1
、aa2
、aa3
) を作成しています。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI, -Eigen::Vector3d::UnitZ()); // 軸の向きが反対
std::cout << "aa1.isApprox(aa2): " << aa1.isApprox(aa2) << std::endl; // true (回転としては等しい)
// 軸の向きを厳密に比較する場合
if (aa1.isApprox(aa2)) {
if (aa1.axis().isApprox(aa2.axis()) || aa1.axis().isApprox(-aa2.axis())){
std::cout << "AngleAxis is approximately equal, accounting for axis direction." << std::endl;
} else {
std::cout << "AngleAxis is approximately equal, but axis direction is different." << std::endl;
}
}
return 0;
}
説明
aa1.axis().isApprox(aa2.axis()) || aa1.axis().isApprox(-aa2.axis())
で、軸の向きが同じか、または逆かを考慮した比較をしています。- 軸の向きを厳密に比較する必要がある場合は、
isApprox
の結果だけでなく、axis()
関数を使用して軸ベクトルを比較する必要があります。 isApprox
関数は、回転としては等しいとみなし、true
を返します。- このコードでは、
aa1
とaa2
は角度が等しいですが、軸の向きが反対です。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-6, Eigen::Vector3d::UnitZ());
std::cout << "aa1.isApprox(aa2, 1e-7): " << aa1.isApprox(aa2, 1e-7) << std::endl; // false
std::cout << "aa1.isApprox(aa2, 1e-5): " << aa1.isApprox(aa2, 1e-5) << std::endl; // true
return 0;
}
- このように、
prec
パラメータを変更することで、比較の精度を調整できます。 1e-5
の精度では、isApprox
はtrue
を返します。1e-7
の精度では、isApprox
はfalse
を返します。- このコードでは、
aa1
とaa2
の角度の差が1e-6
です。
クォータニオン (Quaternion) を使用した比較
Eigen::AngleAxis
とクォータニオンは、どちらも回転を表す方法ですが、クォータニオンは軸の向きの問題を回避しやすく、比較も比較的簡単です。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-8, Eigen::Vector3d::UnitZ());
// AngleAxis をクォータニオンに変換
Eigen::Quaterniond q1(aa1);
Eigen::Quaterniond q2(aa2);
// クォータニオンの比較
if (q1.isApprox(q2, 1e-7)) {
std::cout << "AngleAxis is approximately equal (using Quaternion)." << std::endl;
} else {
std::cout << "AngleAxis is not approximately equal (using Quaternion)." << std::endl;
}
return 0;
}
説明
- クォータニオンは、軸の向きの問題を考慮する必要がないため、より直接的に回転の等価性を比較できます。
Eigen::Quaterniond::isApprox
関数を使用して、クォータニオンを比較します。AngleAxis
オブジェクトをEigen::Quaterniond
オブジェクトに変換します。
回転行列 (Rotation Matrix) を使用した比較
Eigen::AngleAxis
を回転行列に変換し、回転行列の要素を比較する方法もあります。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-8, Eigen::Vector3d::UnitZ());
// AngleAxis を回転行列に変換
Eigen::Matrix3d r1 = aa1.toRotationMatrix();
Eigen::Matrix3d r2 = aa2.toRotationMatrix();
// 回転行列の比較
if (r1.isApprox(r2, 1e-7)) {
std::cout << "AngleAxis is approximately equal (using Rotation Matrix)." << std::endl;
} else {
std::cout << "AngleAxis is not approximately equal (using Rotation Matrix)." << std::endl;
}
return 0;
}
説明
- 回転行列は、回転の方向と大きさを直接的に表すため、比較が比較的簡単です。
Eigen::Matrix3d::isApprox
関数を使用して、回転行列の要素を比較します。AngleAxis
オブジェクトをEigen::Matrix3d
オブジェクト(回転行列)に変換します。
角度と軸を個別に比較
AngleAxis
の角度と軸を個別に比較する方法もあります。
#include <iostream>
#include <Eigen/Geometry>
#include <cmath>
int main() {
Eigen::AngleAxisd aa1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d::UnitZ());
Eigen::AngleAxisd aa2(M_PI / 4 + 1e-8, Eigen::Vector3d::UnitZ());
double angleDiff = std::abs(aa1.angle() - aa2.angle());
bool axisEqual = aa1.axis().isApprox(aa2.axis()) || aa1.axis().isApprox(-aa2.axis());
if (angleDiff < 1e-7 && axisEqual) {
std::cout << "AngleAxis is approximately equal (angle and axis separately)." << std::endl;
} else {
std::cout << "AngleAxis is not approximately equal (angle or axis different)." << std::endl;
}
return 0;
}
説明
- この方法は、
AngleAxis
の特定の要素をより詳細に制御したい場合に便利です。 - 角度の差と軸の等価性を個別にチェックし、両方が条件を満たす場合に等しいと判定します。
AngleAxis::angle()
関数を使用して角度の差を計算し、AngleAxis::axis()
関数を使用して軸ベクトルを比較します。
- 角度と軸を個別に比較する方法は、より詳細な制御が必要な場合に適しています。
- 回転行列を使用する方法は、回転の方向と大きさを直接的に比較したい場合に便利です。
- クォータニオンを使用する方法は、軸の向きの問題を回避しやすく、一般的に推奨されます。