3D空間の回転を自在に操る:Eigen::AngleAxisのすべて

2024-07-31

AngleAxisとは?

Eigen3のAngleAxisクラスは、3次元空間における回転を、回転軸と回転角のペアで表現するクラスです。直感的に回転を理解しやすく、他の回転表現(Quaternionや回転行列)との変換も容易に行えます。

主な特徴

  • 効率性
    Eigen3の最適化された実装により、高速な計算が可能です。
  • 柔軟性
    他の回転表現との変換が容易で、様々な計算に利用できます。
  • 直感的な表現
    回転軸と回転角という、人間の直感に近い形で回転を表現できます。

具体的な使い方

#include <Eigen/Geometry>

// ヘッダーファイルのインクルード

// 回転軸と回転角を指定してAngleAxisオブジェクトを作成
Eigen::AngleAxisd rotation_vector(M_PI/2, Eigen::Vector3d(0, 0, 1));

// 回転行列に変換
Eigen::Matrix3d rotation_matrix = rotation_vector.toRotationMatrix();

// ベクトルに回転を適用
Eigen::Vector3d v(1, 0, 0);
Eigen::Vector3d rotated_v = rotation_matrix * v;

解説

  1. ヘッダーファイルのインクルード
    Eigen/Geometry ヘッダーファイルをインクルードすることで、AngleAxisクラスを利用できます。
  2. AngleAxisオブジェクトの作成
    AngleAxisd コンストラクタに、回転角(ラジアン単位)と回転軸ベクトルを渡すことで、AngleAxisオブジェクトを作成します。
  3. 回転行列への変換
    toRotationMatrix() メソッドを利用して、AngleAxisオブジェクトを回転行列に変換できます。
  4. ベクトルへの回転の適用
    回転行列とベクトルを掛け合わせることで、ベクトルに回転を適用できます。

AngleAxisクラスは、Quaternionクラスや回転行列とも密接な関係があります。

  • 回転行列
    回転行列は、線形代数でよく知られた回転の表現方法です。AngleAxisは、回転行列をより直感的に扱うためのインターフェースを提供します。
  • Quaternion
    Quaternionは、AngleAxisと同様、3次元回転を表現する別の方法です。AngleAxisからQuaternionへの変換、およびその逆の変換も容易に行えます。

AngleAxisクラスは、3次元回転を扱う上で非常に便利なツールです。その直感的な表現と柔軟性から、ロボット工学、コンピュータグラフィックスなど、様々な分野で利用されています。



Eigen3 の AngleAxis クラスを使用する際に、様々なエラーやトラブルに遭遇する可能性があります。ここでは、一般的なエラーとその解決策について解説します。

よくあるエラーとその原因

  • 意図しない結果
    • 回転軸ベクトルの正規化不足
      回転軸ベクトルは必ず正規化してください。
    • 回転の順序
      複数の回転を合成する場合、回転の順序に注意が必要です。
  • 実行時エラー
    • ゼロベクトルでの回転
      回転軸ベクトルがゼロベクトルの場合、未定義の動作になります。
    • 数値のオーバーフロー
      極端な回転角や数値範囲を超える計算を行うと、オーバーフローが発生する可能性があります。
  • コンパイルエラー
    • ヘッダーファイルのインクルード漏れ
      #include <Eigen/Geometry> を忘れずにインクルードしてください。
    • 名前空間の指定不足
      Eigen::AngleAxisd のように、Eigen 名前空間を明示的に指定してください。
    • テンプレートパラメータの誤り
      データ型を間違えないように注意してください。

トラブルシューティングのヒント

  • デバッガを利用する
    デバッガを使用することで、変数の値や実行の流れをステップ実行で確認できます。
  • 簡単な例から始める
    まずは簡単なコードで動作を確認し、徐々に複雑なコードへ移行していくと、問題の原因を特定しやすくなります。
  • エラーメッセージをよく読む
    コンパイラが出力するエラーメッセージは、問題解決のヒントになります。

例1: ゼロベクトルでの回転

Eigen::Vector3d axis(0, 0, 0);
Eigen::AngleAxisd rotation(M_PI/2, axis); // エラー発生

このコードでは、回転軸ベクトルがゼロベクトルのため、エラーが発生します。回転軸ベクトルは必ず正規化してください。

例2: 回転の順序

Eigen::AngleAxisd rot1(M_PI/2, Eigen::Vector3d(0, 0, 1));
Eigen::AngleAxisd rot2(M_PI/2, Eigen::Vector3d(1, 0, 0));

Eigen::Matrix3d result = (rot1 * rot2).toRotationMatrix(); // 回転の順序に注意

複数の回転を合成する場合、回転の順序によって結果が異なります。上記の例では、rot1 の後に rot2 が適用されます。



基本的な回転

#include <Eigen/Geometry>

int main() {
  // 回転軸と回転角を設定
  Eigen::Vector3d axis(0, 0, 1);  // z軸周りに回転
  double angle = M_PI / 2;       // 90度回転

  // AngleAxisオブジェクトを作成
  Eigen::AngleAxisd rotation(angle, axis);

  // 回転行列に変換
  Eigen::Matrix3d rotation_matrix = rotation.toRotationMatrix();

  // ベクトルに回転を適用
  Eigen::Vector3d v(1, 0, 0);  // x軸方向のベクトル
  Eigen::Vector3d rotated_v = rotation_matrix * v;

  std::cout << "回転後のベクトル: " << rotated_v.transpose() << std::endl;

  return 0;
}

このコードでは、z軸を中心に90度回転させる例を示しています。

複数の回転の合成

#include <Eigen/Geometry>

int main() {
  // 2つの回転を作成
  Eigen::AngleAxisd rot1(M_PI / 4, Eigen::Vector3d(1, 0, 0));  // x軸周りに45度回転
  Eigen::AngleAxisd rot2(M_PI / 4, Eigen::Vector3d(0, 1, 0));  // y軸周りに45度回転

  // 回転を合成
  Eigen::AngleAxisd total_rotation = rot1 * rot2;  // 回転の順序に注意

  // 回転行列に変換し、ベクトルに適用
  // ... (上のコードと同様)
}

複数の回転を合成する場合は、* 演算子を用いて順に掛け合わせます。回転の順序は結果に影響するため注意が必要です。

Quaternionとの変換

#include <Eigen/Geometry>

int main() {
  // AngleAxisからQuaternionへ
  Eigen::AngleAxisd rotation(M_PI / 2, Eigen::Vector3d(0, 0, 1));
  Eigen::Quaterniond quaternion = rotation;

  // QuaternionからAngleAxisへ
  Eigen::AngleAxisd rotation_back = quaternion;

  // ...
}

AngleAxisとQuaternionは互いに変換可能です。

Euler角からAngleAxisに変換するには、Euler角をQuaternionに変換し、その後AngleAxisに変換する方法が一般的です。Eigen3では、Quaterniond::FromEulerAngles を使用してEuler角からQuaternionを作成できます。

#include <Eigen/Geometry>

int main() {
  // Euler角 (roll, pitch, yaw)
  double roll = M_PI / 4;
  double pitch = M_PI / 4;
  double yaw = 0;

  // Euler角からQuaternionへ
  Eigen::Quaterniond quaternion = Eigen::AngleAxisd(roll, Eigen::Vector3d::UnitX())
                                  * Eigen::AngleAxisd(pitch, Eigen::Vector3d::UnitY())
                                  * Eigen::AngleAxisd(yaw, Eigen::Vector3d::Uni   tZ());

  // QuaternionからAngleAxisへ
  Eigen::AngleAxisd rotation = quaternion;

  // ...
}

注意
Euler角には複数の定義方法があり、変換方法もそれに応じて変わります。

  • スカラー倍
    回転角をスカラー倍することで、回転角を変更できます。
  • 回転の逆
    rotation.inverse() で逆回転を取得できます。
  • 任意の軸周りの回転
    回転軸を任意のベクトルで指定できます。
  • アニメーションにAngleAxisを利用したい
  • 複数のオブジェクトの回転を同期させたい
  • 特定の座標系での回転を表現したい


Eigen::AngleAxisは、3次元回転を表現する非常に便利なクラスですが、状況によっては他の表現方法がより適している場合があります。以下に、Eigen::AngleAxisの代替方法とその特徴をいくつか紹介します。

Quaternion (Eigen::Quaternion)

  • 使用例
    Eigen::Quaterniond q;
    q = Eigen::AngleAxisd(M_PI/2, Eigen::Vector3d(0, 0, 1)); // AngleAxisからQuaternionへ変換
    
  • デメリット
    • 直感的に理解しづらい部分がある。
  • メリット
    • 複数の回転を合成する際に、AngleAxisよりも数値的に安定していることが多い。
  • 特徴
    • 4つの要素を持つ四元数で回転を表す。
    • 球面補間などの滑らかな回転アニメーションに適している。
    • Gimbal Lock問題を回避できる。

回転行列 (Eigen::Matrix3d)

  • 使用例
    Eigen::Matrix3d R;
    R = Eigen::AngleAxisd(M_PI/2, Eigen::Vector3d(0, 0, 1)).toRotationMatrix();
    
  • デメリット
    • Gimbal Lock問題が発生する可能性がある。
    • 複数の回転を合成する際に、数値誤差が蓄積しやすい。
  • メリット
    • 直感的で、線形代数の知識があれば扱いやすい。
  • 特徴
    • 3x3の行列で回転を表す。
    • 線形代数の知識があれば扱いやすい。
    • 座標変換など、様々な計算に利用できる。

Euler角

  • デメリット
    • Gimbal Lock問題が発生しやすい。
    • 複数の定義方法があり、注意が必要。
  • メリット
    • 直感的で、人間が理解しやすい。
  • 特徴
    • 3つの角度(ロール、ピッチ、ヨーなど)で回転を表す。
    • 直感的に理解しやすい。
  • 直感的な操作
    Euler角またはAngleAxis
  • 線形代数の計算
    回転行列
  • 滑らかな回転アニメーション
    Quaternion

選択のポイント

  • Gimbal Lock問題
    QuaternionはGimbal Lock問題を回避できる。
  • 計算効率
    それぞれの方法で計算コストが異なるため、使用する場面に応じて選択する。
  • 表現の簡潔さ
    AngleAxisは、回転軸と回転角を直接指定できるため、簡潔に表現できる。
  • 数値安定性
    複数の回転を合成する場合は、Quaternionが数値的に安定していることが多い。

Eigen::AngleAxisは、直感的に回転を表現できる便利なクラスですが、他の表現方法にもそれぞれメリットとデメリットがあります。問題に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

  • 数値安定性
    計算の過程で発生する誤差が、結果に与える影響の大きさ。
  • Gimbal Lock
    3つの自由度を持つ回転を3つの角度で表現する場合に発生する現象で、ある特定の姿勢で回転の自由度が失われる問題。