Qt Widgetsでスクロール操作を自在に操る:QScroller::ungrabGesture()と代替方法


QScroller::ungrabGesture() は、Qt Widgets モジュールにおける QScroller クラスの静的メンバー関数であり、特定のターゲットオブジェクトに対して現在保持されているジェスチャーを解除します。ジェスチャーが解除されると、そのターゲットオブジェクトに対するスクロール操作は終了し、ユーザーによる直接操作に移行します。

構文

void QScroller::ungrabGesture(QObject *target);

引数

  • target: ジェスチャーを解除するターゲットオブジェクトを指すポインタ。

戻り値

なし。

詳細

QScroller::ungrabGesture() は、ターゲットオブジェクトに対して現在保持されているジェスチャーのタイプを確認し、それが有効なジェスチャーである場合に解除します。ジェスチャーが解除されると、QScroller インスタンスはターゲットオブジェクトに対するスクロール操作を停止し、その後のスクロール操作はユーザーによる直接操作に委ねられます。

この関数は、スクロール操作をプログラム的に制御する場合や、ユーザーによる直接操作に切り替える場合などに役立ちます。

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ターゲットオブジェクトに対してジェスチャーを解除
QScroller::ungrabGesture(target);
  • ジェスチャーを解除すると、QScroller インスタンスは stateChanged() シグナルを発行します。このシグナルは、スクロール操作の状態が変化したことを示すために使用できます。
  • QScroller::ungrabGesture() を呼び出す前に、QScroller::grabbedGesture() を使用して、ターゲットオブジェクトに対して実際にジェスチャーが保持されているかどうかを確認することをお勧めします。


例1:ターゲットオブジェクトに対してジェスチャーを解除する

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ターゲットオブジェクトに対してジェスチャーを解除
QScroller::ungrabGesture(target);

この例では、target オブジェクトに対して保持されているジェスチャーを解除します。target オブジェクトは、QObject 派生クラスのインスタンスである必要があります。

例2:ボタンをクリックしたときにジェスチャーを解除する

class MyButton : public QPushButton {
public:
    MyButton(QWidget *parent = nullptr);

protected:
    void mousePressEvent(QMouseEvent *event) override;
};

MyButton::MyButton(QWidget *parent) : QPushButton(parent) {
    connect(this, &QPushButton::clicked, this, &MyButton::mousePressEvent);
}

void MyButton::mousePressEvent(QMouseEvent *event) {
    // ボタンをクリックしたときにジェスチャーを解除
    QScroller::ungrabGesture(this);
}

この例では、MyButton クラスという新しいボタンクラスを作成します。このボタンがクリックされたときに、QScroller::ungrabGesture() 関数を使用して自分自身に対して保持されているジェスチャーを解除します。

例3:ジェスチャーが解除されたときにシグナルを発行する

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ジェスチャーが解除されたときにシグナルを発行
connect(QScroller::instance(), &QScroller::stateChanged, this, &MyClass::onStateChanged);

// ターゲットオブジェクトに対してジェスチャーを解除
QScroller::ungrabGesture(target);

この例では、QScroller::instance() 関数を使用して現在の QScroller インスタンスを取得し、stateChanged() シグナルに接続します。このシグナルは、スクロール操作の状態が変化したときに発行されます。

onStateChanged() スロットは、QScroller インスタンスの状態を受け取り、それに応じて処理を実行します。例えば、ジェスチャーが解除された場合は、ログメッセージを記録したり、ユーザーインターフェースを更新したりすることができます。

  • Qt Widgets モジュールには、QScroller クラス以外にもスクロール操作に関わるさまざまなクラスと機能が用意されています。詳細については、Qt ドキュメントを参照してください。
  • これらの例はあくまで基本的な使用方法を示すものであり、実際の使用状況に応じてコードを調整する必要があります。


QScroller::stop() 関数を使用する

QScroller::stop() 関数は、ターゲットオブジェクトに対するスクロール操作を停止します。ジェスチャーが解除されるかどうかは、QScroller インスタンスの状態によって異なります。

  • ジェスチャーが無効な場合、stop() 関数はターゲットオブジェクトに対するスクロール操作を停止するだけです。
  • ジェスチャーが有効な場合、stop() 関数はジェスチャーを解除し、ターゲットオブジェクトに対するスクロール操作を停止します。

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ターゲットオブジェクトに対してスクロール操作を停止
QScroller::instance()->stop(target);

QScroller::grabGesture() 関数を使用して別のジェスチャーをグラブする

QScroller::grabGesture() 関数は、ターゲットオブジェクトに対して新しいジェスチャーをグラブします。新しいジェスチャーがグラブされると、既存のジェスチャーは自動的に解除されます。

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得
QGesture *newGesture = ...; // 新しいジェスチャーを取得

// 新しいジェスチャーをグラブし、既存のジェスチャーを解除
QScroller::instance()->grabGesture(target, newGesture);

ターゲットオブジェクトのプロパティを変更する

場合によっては、ターゲットオブジェクトのプロパティを変更することで、ジェスチャーを解除することができます。例えば、ターゲットオブジェクトの enabled プロパティを false に設定すると、そのオブジェクトに対するジェスチャーがすべて無効になります。

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ターゲットオブジェクトの enabled プロパティを false に設定
target->setEnabled(false);

ターゲットオブジェクトを非表示にする

ターゲットオブジェクトを非表示にすると、そのオブジェクトに対するジェスチャーがすべて無効になります。

QObject *target = ...; // ターゲットオブジェクトを取得

// ターゲットオブジェクトを非表示にする
target->hide();

最適な方法の選択

どの代替方法が最適かは、状況によって異なります。

  • ターゲットオブジェクトのプロパティを変更したり、非表示にすることで簡単にジェスチャーを解除できる場合は、これらの方法を使用することができます。
  • ターゲットオブジェクトに対して別のジェスチャーをグラブしたい場合は、QScroller::grabGesture() 関数を使用することができます。
  • ジェスチャーを解除するだけでなく、スクロール操作を停止したい場合は、QScroller::stop() 関数を使用することができます。
  • ジェスチャーを確実に解除したい場合は、QScroller::ungrabGesture() 関数を使用するのが最も安全です。
  • Qt Widgets モジュールには、QScroller クラス以外にもスクロール操作に関わるさまざまなクラスと機能が用意されています。詳細については、Qt ドキュメントを参照してください。
  • これらの代替方法は、QScroller::ungrabGesture() 関数と同様の効果をもたらしますが、それぞれ異なる動作や制約があります。詳細については、Qt ドキュメントを参照してください。