【保存版】Qt Widgetsでスクロール状態を監視する方法:QScroller::stateChanged() vs 代替手段
Qt WidgetsのQScroller
クラスは、スムーズなスクロールを実現するための機能を提供します。QScroller::stateChanged()
シグナルは、スクローラーの状態が変化したときに emit されます。このシグナルは、スクローラーの状態を監視し、それに応じてアプリケーションの動作を変更するために使用できます。
状態
QScroller
クラスには、以下の状態が定義されています。
- Decelerating
スクロールが減速しています。 - Interpolating
スクロールアニメーションが実行されています。 - Dragging
スクロールハンドルがドラッグされています。 - Pressed
スクロールハンドルが押されています。 - Inactive
スクロールがアクティブではありません。
シグナルの使用方法
QScroller::stateChanged()
シグナルを接続するには、以下のコードを使用します。
connect(scroller, &QScroller::stateChanged, this, &MyClass::onStateChanged);
onStateChanged()
スロットは、スクローラーの状態が変化したときに呼び出されます。このスロット内で、新しい状態に応じてアプリケーションの動作を変更することができます。
例
以下の例では、QScroller::stateChanged()
シグナルを使用して、スクロール状態に応じてラベルのテキストを変更する方法を示します。
void MyClass::onStateChanged(QScroller::State newState)
{
switch (newState) {
case QScroller::Inactive:
label->setText("スクロールがアクティブではありません");
break;
case QScroller::Pressed:
label->setText("スクロールハンドルが押されています");
break;
case QScroller::Dragging:
label->setText("スクロールハンドルがドラッグされています");
break;
case QScroller::Interpolating:
label->setText("スクロールアニメーションが実行されています");
break;
case QScroller::Decelerating:
label->setText("スクロールが減速しています");
break;
}
}
QScroller::stateChanged()
シグナルは、メインスレッドで emit されます。スレッドセーフな方法でこのシグナルを処理するには、QMetaObject::invokeLater()
関数を使用する必要があります。QScroller::stateChanged()
シグナルは、スクロールが開始されたときや終了したときに emit されません。これらのイベントを監視するには、QScroller::pressed()
シグナルとQScroller::released()
シグナルを使用する必要があります。
#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QScroller>
#include <QVBoxLayout>
class MyClass : public QWidget
{
public:
MyClass()
{
label = new QLabel;
label->setText("スクロールがアクティブではありません");
scroller = new QScroller(QScroller::Horizontal);
scroller->setWidget(label);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout;
layout->addWidget(label);
layout->addWidget(scroller);
setLayout(layout);
connect(scroller, &QScroller::stateChanged, this, &MyClass::onStateChanged);
}
private:
QLabel *label;
QScroller *scroller;
public slots:
void onStateChanged(QScroller::State newState)
{
switch (newState) {
case QScroller::Inactive:
label->setText("スクロールがアクティブではありません");
break;
case QScroller::Pressed:
label->setText("スクロールハンドルが押されています");
break;
case QScroller::Dragging:
label->setText("スクロールハンドルがドラッグされています");
break;
case QScroller::Interpolating:
label->setText("スクロールアニメーションが実行されています");
break;
case QScroller::Decelerating:
label->setText("スクロールが減速しています");
break;
}
}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
MyClass *widget = new MyClass;
widget->show();
return app.exec();
}
このコードを実行すると、以下のウィンドウが表示されます。
ウィンドウをドラッグすると、ラベルのテキストがスクロール状態に応じて変化します。
説明
このコードは以下の手順で動作します。
MyClass
コンストラクタ内で、ラベルとスクローラーを作成します。- ラベルのテキストを "スクロールがアクティブではありません" に設定します。
- スクロローラーを水平方向に設定します。
- スクロローラーのウィジェットをラベルに設定します。
- ラベルとスクローラーを垂直方向に配置する垂直レイアウトを作成します。
- レイアウトをウィジェットに設定します。
QScroller::stateChanged()
シグナルをMyClass::onStateChanged()
スロットに接続します。QApplication
オブジェクトを作成します。MyClass
オブジェクトを作成し、表示します。- アプリケーションを実行します。
タイマーを使用したポーリング
- 欠点:
- CPU 使用量が多くなる可能性がある。
- スクロール状態の変化を検出するタイミングが正確でない可能性がある。
- 利点:
- コードがシンプルで理解しやすい。
- 他のシグナルと干渉する可能性が低い。
void MyClass::updateState()
{
QScroller::State state = scroller->state();
switch (state) {
case QScroller::Inactive:
// ...
break;
case QScroller::Pressed:
// ...
break;
case QScroller::Dragging:
// ...
break;
case QScroller::Interpolating:
// ...
break;
case QScroller::Decelerating:
// ...
break;
}
QTimer::singleShot(10, this, &MyClass::updateState);
}
QScroller::grabGesture() と QScroller::handleInput() を使用する
- 欠点:
- コードが複雑になる。
- ジェスチャー処理の知識が必要となる。
- 利点:
- スクロール状態の変化をより正確に検出できる。
- CPU 使用量が少ない。
void MyClass::handleInput(QScroller::Input input, const QPointF &position, qint64 timestamp)
{
switch (scroller->state()) {
case QScroller::Inactive:
// ...
break;
case QScroller::Pressed:
// ...
break;
case QScroller::Dragging:
// ...
break;
case QScroller::Interpolating:
// ...
break;
case QScroller::Decelerating:
// ...
break;
}
}
void MyClass::mousePressEvent(QMouseEvent *event)
{
if (scroller->grabGesture(this, QScroller::TouchGesture)) {
event->accept();
}
}
void MyClass::mouseMoveEvent(QMouseEvent *event)
{
scroller->handleInput(QScroller::Input::MouseMove, event->pos(), event->timestamp());
}
void MyClass::mouseReleaseEvent(QMouseEvent *event)
{
scroller->handleInput(QScroller::Input::MouseRelease, event->pos(), event->timestamp());
}
カスタムシグナルを作成する
- 欠点:
- コードが複雑になる。
- シグナルを適切に設計する必要がある。
- 利点:
- アプリケーションのニーズに特化したシグナルを作成できる。
- コードをより柔軟に構成できる。
class MyScroller : public QScroller
{
public:
signals:
void scrollStarted();
void scrollStopped();
protected:
void start() override
{
emit scrollStarted();
}
void stop() override
{
emit scrollStopped();
}
};
void MyClass::onScrollStarted()
{
// ...
}
void MyClass::onScrollStopped()
{
// ...
}
最適な代替手段の選択
どの代替手段が最適かは、アプリケーションの要件によって異なります。 シンプルで使いやすい代替手段が必要な場合は、タイマーを使用したポーリングが適しています。 より正確なスクロール状態検出が必要な場合は、QScroller::grabGesture()
と QScroller::handleInput()
を使用する必要があります。 コードを柔軟に構成する必要がある場合は、カスタムシグナルを作成する必要があります。
- スレッドセーフな方法でシグナルを処理する必要がある場合は、
QMetaObject::invokeLater()
関数を使用する必要があります。 - シグナルとスロットの接続は、メインスレッド内で行う必要があります。