Qt Widgets開発をレベルアップ！QPushButton::event()を使いこなしてワンランク上のコードを書く

イベント処理の流れ

イベント発生
ユーザーがボタンをクリックしたり、マウスを動かしたりなどの操作を行うと、対応するイベントが生成されます。
イベント配信
生成されたイベントは、QtイベントシステムによってQPushButtonウィジェットに配信されます。
event()関数の呼び出し
QPushButtonウィジェットは、配信されたイベントを処理するためにevent()関数を呼び出します。
イベントの種類判定
event()関数内では、渡されたイベントの種類を判定します。
適切なイベントハンドラ呼び出し
イベントの種類に応じて、対応するイベントハンドラ関数が呼び出されます。
イベント処理の実行
イベントハンドラ関数内で、具体的なイベント処理が行われます。
イベント処理完了
イベント処理が完了すると、event()関数はtrueを返します。

主なイベントハンドラ

keyReleaseEvent
キーボードのキーが離されたときに呼び出されます。
keyPressEvent
キーボードのキーが押されたときに呼び出されます。
mouseMoveEvent
マウスカーソルがウィジェット上を移動したときに呼び出されます。
mouseReleaseEvent
マウスボタンが離されたときに呼び出されます。
mousePressEvent
マウスボタンが押されたときに呼び出されます。

例：ボタンクリック時の処理

class MyPushButton : public QPushButton {
public:
    MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

protected:
    bool event(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::Type::MouseButtonPress) {
            // ボタンクリック時の処理
            qDebug() << "Button clicked!";
            return true;
        }

        return QPushButton::event(event);
    }
};

この例では、MyPushButtonクラスを定義し、event()関数内でマウスボタン押下イベントを検出しています。イベントが検出されると、qDebug()関数を使用して "Button clicked!" というメッセージを出力しています。

QPushButton::event()関数は、QPushButtonウィジェットに関連するイベントを処理するための重要な機能を提供します。イベントの種類に応じて適切なイベントハンドラを呼び出すことで、さまざまなユーザー操作に対応したアプリケーションを開発することができます。

より高度なイベント処理には、イベントフィルタリングやシグナル・スロット接続などの手法も活用できます。
event()関数は、QObjectクラスの仮想関数であるevent()関数を再実装しています。

#include <QApplication>
#include <QPushButton>

class MyPushButton : public QPushButton {
public:
    MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

protected:
    bool event(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::Type::MouseButtonPress) {
            // ボタンクリック時の処理
            qDebug() << "Button clicked!";

            // ダイアログを表示
            QMessageBox::information(this, "Button Clicked", "You clicked the button!");

            return true;
        }

        return QPushButton::event(event);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPushButton button("Click me");
    button.show();

    return app.exec();
}

コード解説

MyPushButtonクラスを定義します。このクラスは、QPushButtonクラスを継承しており、event()関数を再実装しています。
event()関数内では、マウスボタン押下イベントを検出します。
イベントが検出されると、qDebug()関数を使用して "Button clicked!" というメッセージを出力し、QMessageBoxを使用して情報ダイアログを表示します。
main()関数では、QApplicationオブジェクトを作成し、MyPushButtonウィジェットを作成して表示します。

実行結果

このコードを実行すると、ウィンドウに "Click me" というボタンが表示されます。ボタンをクリックすると、"Button clicked!" というメッセージと情報ダイアログが表示されます。

ボタンをクリックしたときにデータを保存する
ボタンをクリックしたときに別のウィジェットを表示する
ボタンを無効化する
ボタンの色を変更する
ボタンのテキストを変更する

シグナルとスロット

最も一般的な代替方法は、シグナルとスロットを使用することです。QPushButtonクラスは、ボタンがクリックされたときに発行されるclicked()シグナルなど、いくつかのシグナルを提供しています。このシグナルを、ボタンクリック時の処理を行うスロットに接続できます。

利点

複数のスロットを接続して、ボタンクリックに異なる処理を割り当てることができる
イベントハンドラよりも柔軟で再利用しやすい
コードが読みやすく、保守しやすい

欠点

特定のイベントのみを処理したい場合、event()関数の方が効率的である場合がある
event()関数ほど詳細なイベント制御はできない

例

#include <QApplication>
#include <QPushButton>

class MyPushButton : public QPushButton {
public:
    MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

signals:
    void buttonClicked();

private slots:
    void onButtonClicked();
};

MyPushButton::MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent) :
    QPushButton(text, parent) {
    connect(this, &QPushButton::clicked, this, &MyPushButton::onButtonClicked);
}

void MyPushButton::onButtonClicked() {
    // ボタンクリック時の処理
    qDebug() << "Button clicked!";

    // ダイアログを表示
    QMessageBox::information(this, "Button Clicked", "You clicked the button!");
}

カスタムイベント

より高度な制御が必要な場合は、カスタムイベントを使用することができます。カスタムイベントは、アプリケーション内で定義された独自のイベントタイプです。QPushButtonウィジェットからカスタムイベントを発行し、それを処理するイベントハンドラを別途作成することができます。

利点

アプリケーション固有のイベント処理に適している
event()関数よりも柔軟で詳細なイベント制御が可能

欠点

初心者にとって理解するのが難しい場合がある
シグナルとスロットよりも複雑で、コードが冗長になる可能性がある

例

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QEvent>

class MyPushButton : public QPushButton {
public:
    MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);

signals:
    void customButtonClicked();

private:
    bool event(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::Type::MouseButtonPress) {
            // カスタムイベントを発行
            QCustomEvent *customEvent = new QCustomEvent(MyPushButton::CustomButtonClicked);
            QApplication::postEvent(this, customEvent);
            return true;
        }

        return QPushButton::event(event);
    }
};

class MyEventListener : public QObject {
public:
    MyEventListener(QWidget *parent = nullptr);

private:
    void customEvent(QEvent *event) override {
        if (event->type() == MyPushButton::CustomButtonClicked) {
            // ボタンクリック時の処理
            qDebug() << "Button clicked!";

            // ダイアログを表示
            QMessageBox::information(this, "Button Clicked", "You clicked the button!");
        }
    }
};

MyPushButton::MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent) :
    QPushButton(text, parent) {
    MyEventListener *listener = new MyEventListener(this);
}

MyEventListener::MyEventListener(QWidget *parent) :
    QObject(parent) {
}

キーボードショートカット

特定のキーを押すことでボタンをクリックする機能を実装したい場合は、キーボードショートカットを使用することができます。QPushButtonクラスには、setShortcut()メソッドを提供しており、このメソッドを使用してキーシーケンスを割り当てることができます。

利点

キーボード操作に慣れたユーザーにとって便利
ユーザーがマウスを使わずにボタンを操作できる

欠点

他のショートカットと競合する可能性がある
すべてのユーザーがキーボードショートカットに精通しているとは限らない

#include <QApplication>
#include <QPushButton>

class MyPushButton : public QPushButton {
public:
    MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent = nullptr);
};

MyPushButton::MyPushButton(const QString &text, QWidget *parent) :
    QPushButton(text,