QtでできるOpenGLグラフィックス:QOpenGLContext::QOpenGLContext()の使い方から応用例まで
QOpenGLContext::QOpenGLContext()
は、Qt GUI モジュールにおいて OpenGL コンテキストを作成するためのコンストラクタです。OpenGL コンテキストは、OpenGL グラフィックスをレンダリングするために必要な状態をカプセル化するオブジェクトです。
構文
QOpenGLContext::QOpenGLContext(QObject *parent = nullptr);
パラメータ
parent
: 親オブジェクトを指します。これは省略可能で、デフォルトではnullptr
です。
戻り値
このコンストラクタは、新しく作成された QOpenGLContext
オブジェクトを返します。
詳細
QOpenGLContext::QOpenGLContext()
コンストラクタは、OpenGL コンテキストを作成しますが、実際に有効にするためには、create()
メソッドを呼び出す必要があります。また、コンテキストを有効にする前に、setFormat()
メソッドを使用してコンテキストのフォーマットを設定する必要があります。
例
QOpenGLContext context;
context.setFormat(QSurfaceFormat::defaultFormat());
context.create();
この例では、デフォルトのフォーマットを持つ QOpenGLContext
オブジェクトを作成し、create()
メソッドを使用して有効にします。
- コンテキストが不要になったら、
deleteLater()
メソッドを使用して削除する必要があります。 - コンテキストを作成する前に、OpenGL モジュールがロードされていることを確認する必要があります。これは、
QOpenGLContext::openGLModuleType()
メソッドを使用して行うことができます。 - OpenGL コンテキストは、OpenGL グラフィックスをレンダリングするために必要なリソースを管理するため、複数のコンテキストを同時に使用することはできません。
#include <QApplication>
#include <QOpenGLWidget>
#include <QShader>
class MyGLWidget : public QOpenGLWidget {
public:
MyGLWidget() {
setFormat(QSurfaceFormat::defaultFormat());
}
protected:
void initializeGL() override {
// シェーダープログラムを作成
QShader vertexShader(QShader::VertexShader);
vertexShader.sourceFile("vertexshader.vert");
QShader fragmentShader(QShader::FragmentShader);
fragmentShader.sourceFile("fragmentshader.frag");
if (!vertexShader.compile() || !fragmentShader.compile()) {
qCritical() << "シェーダーのコンパイルに失敗しました";
return;
}
shaderProgram.addShader(&vertexShader);
shaderProgram.addShader(&fragmentShader);
if (!shaderProgram.link()) {
qCritical() << "シェーダープログラムのリンクに失敗しました";
return;
}
// 三角形の頂点データを初期化
static const GLfloat vertexData[] = {
-0.5f, -0.5f, 0.0f,
0.5f, -0.5f, 0.0f,
0.0f, 0.5f, 0.0f
};
// 頂点バッファオブジェクトを作成
glGenBuffers(1, &vboId);
glBindBuffer(GL_ARRAY_BUFFER, vboId);
glBufferData(GL_ARRAY_BUFFER, sizeof(vertexData), vertexData, GL_STATIC_DRAW);
// 頂点属性を構成
glVertexAttribPointer(0, 3, GL_FLOAT, GL_FALSE, 3 * sizeof(GLfloat), 0);
glEnableVertexAttribArray(0);
}
void paintGL() override {
// シェーダープログラムを有効化
shaderProgram.activate();
// 三角形を描画
glDrawArrays(GL_TRIANGLES, 0, 3);
}
private:
GLuint vboId;
QOpenGLShaderProgram shaderProgram;
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
MyGLWidget widget;
widget.show();
return app.exec();
}
このコードの説明
MyGLWidget
クラスを定義します。このクラスはQOpenGLWidget
を継承し、OpenGL コンテキストの作成と描画処理を担当します。initializeGL()
メソッドは、OpenGL コンテキストが初めて有効になったときに呼び出されます。このメソッドでは、次の処理を行います。- シェーダープログラムを作成してコンパイルします。
- 三角形の頂点データを初期化します。
- 頂点バッファオブジェクトを作成して、頂点データを GPU にアップロードします。
- 頂点属性を構成します。
paintGL()
メソッドは、OpenGL コンテキストが更新されるたびに呼び出されます。このメソッドでは、次の処理を行います。- シェーダープログラムを有効化します。
- 三角形を描画します。
main()
関数は、Qt アプリケーションを作成して実行します。
- このコードを
vertexshader.vert
とfragmentshader.frag
という名前の 2 つのシェーダーファイルと共に保存します。 - Qt Creator などの IDE を使用して、このコードをコンパイルして実行します。
代替方法
- QSurface::createContext(): このメソッドは、
QSurface
オブジェクトに基づいて OpenGL コンテキストを作成します。この方法は、ウィジェット以外の表面 (たとえば、オフスクリーン表面) で OpenGL を使用する必要がある場合に役立ちます。
QSurface surface;
QOpenGLContext context = surface.createContext();
- QOpenGLContext::shareContext(): このメソッドは、既存の OpenGL コンテキストとリソースを共有する新しいコンテキストを作成します。この方法は、複数ウィジェット間で OpenGL コンテキストを共有する必要がある場合に役立ちます。
QOpenGLContext originalContext;
QOpenGLContext sharedContext = originalContext.shareContext();
- プラットフォーム固有の API: 一部のプラットフォームでは、Qt 以外の API を使用して OpenGL コンテキストを作成できます。これは、高度な制御が必要な場合や、Qt でサポートされていない OpenGL 機能を使用する必要がある場合に役立ちます。
各方法の比較
方法 | 説明 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|
QOpenGLContext::QOpenGLContext() | 最も一般的な方法 | シンプルで使いやすい | 共有やオフスクリーン表面での使用に適していない |
QSurface::createContext() | オフスクリーン表面で OpenGL を使用するのに適している | ウィジェット以外の表面で使用できる | QOpenGLContext::QOpenGLContext() より複雑 |
QOpenGLContext::shareContext() | 複数ウィジェット間で OpenGL コンテキストを共有するのに適している | リソースを共有できる | QOpenGLContext::QOpenGLContext() より複雑 |
プラットフォーム固有の API | 高度な制御が必要な場合や、Qt でサポートされていない OpenGL 機能を使用する必要がある場合に適している | 最も複雑で、プラットフォームによって異なる |
最適な方法を選択
使用する方法は、特定のニーズによって異なります。以下の点に基づいて方法を選択してください。
- 必要な制御レベル: 高度な制御が必要な場合は、プラットフォーム固有の API を検討してください。
- コンテキスト共有の必要性: 複数ウィジェット間でコンテキストを共有する必要がある場合は
QOpenGLContext::shareContext()
を使用します。 - 使用する表面の種類: ウィジェットの場合は
QOpenGLContext::QOpenGLContext()
、オフスクリーン表面の場合はQSurface::createContext()
を使用します。