Qt Widgets: ドラッグ操作を解除する関数の詳細解説:QGraphicsWidget::ungrabMouseEvent()


QGraphicsWidget::ungrabMouseEvent()は、マウスイベントのグラブを解除する関数です。マウスイベントのグラブとは、特定のグラフィックスアイテムに対してマウスイベントを排他的に処理する状態を指します。この関数は、グラブされたマウスイベントを解放し、他のグラフィックスアイテムがイベントを処理できるようにします。

使用方法

ungrabMouseEvent()関数は、以下のプロトタイプを持っています。

void ungrabMouseEvent();

この関数を呼び出すだけで、マウスイベントのグラブを解除できます。

以下のコードは、ボタンがクリックされたときにマウスイベントのグラブを解除する例です。

void MyGraphicsWidget::mousePressEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    // ... ボタンがクリックされた処理 ...

    ungrabMouseEvent();
}
  • この関数は、グラブされたマウスイベントを処理しているイベントハンドラ内から呼び出す必要があります。
  • ungrabMouseEvent()関数は、現在グラブされているマウスイベントのみを解除します。過去にグラブされたマウスイベントは解除されません。
  • グラブされたマウスイベントを処理するイベントハンドラは、イベントを処理し終わった後にungrabMouseEvent()関数を呼び出して、グラブを解除する必要があります。
  • グラブされたマウスイベントは、他のグラフィックスアイテムに対して送信されません。
  • マウスイベントのグラブは、ドラッグ操作などの複雑な操作を実装する際に役立ちます。


#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsItem>
#include <QMouseEvent>

class MyGraphicsItem : public QGraphicsItem
{
public:
    MyGraphicsItem(QGraphicsItem *parent = nullptr);

protected:
    void mousePressEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event) override;
    void mouseMoveEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event) override;
    void mouseReleaseEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event) override;
};

MyGraphicsItem::MyGraphicsItem(QGraphicsItem *parent)
    : QGraphicsItem(parent)
{
    setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
}

void MyGraphicsItem::mousePressEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    if (event->button() == Qt::LeftButton) {
        mouseDownPos = event->pos();
        grabMouseEvent();
    }
}

void MyGraphicsItem::mouseMoveEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    if (event->buttons() & Qt::LeftButton) {
        setPos(pos() + event->pos() - mouseDownPos);
    }
}

void MyGraphicsItem::mouseReleaseEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    if (event->button() == Qt::LeftButton) {
        ungrabMouseEvent();
    }
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    MyGraphicsItem *item = new MyGraphicsItem(&scene);
    item->setPos(100, 100);
    item->setRect(0, 0, 100, 50);

    QGraphicsView view(&scene);
    view.show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、マウスボタンを押すとグラフィックアイテムがドラッグできるようになります。ボタンを離すと、マウスイベントのグラブが解除され、アイテムは静止します。

  • mouseReleaseEvent()メソッドは、マウスボタンが離されたときに呼び出されます。このメソッドでは、マウスボタンが左ボタンであるかどうかを確認し、その場合はungrabMouseEvent()関数を使用してマウスイベントのグラブを解除します。
  • mouseMoveEvent()メソッドは、マウスがドラッグされているときに呼び出されます。このメソッドでは、マウスボタンが左ボタンであるかどうかを確認し、その場合はアイテムの位置をマウスの動きに合わせて更新します。
  • mousePressEvent()メソッドは、マウスボタンが押されたときに呼び出されます。このメソッドでは、マウスボタンが左ボタンであるかどうかを確認し、その場合はマウスダウン位置を記録し、grabMouseEvent()関数を使用してマウスイベントのグラブを行います。
  • MyGraphicsItemクラスは、ドラッグ可能なグラフィックアイテムを表すカスタムクラスです。
  • QGraphicsItemクラスを使用してグラフィックアイテムを表しています。
  • QGraphicsSceneクラスを使用してグラフィックアイテムを管理しています。


QGraphicsScene::ungrabMouseEvent() 関数を使用する

この関数は、QGraphicsWidget::ungrabMouseEvent() 関数とほぼ同じ機能を提供しますが、シーン内のすべてのグラフィックアイテムからマウスイベントのグラブを解除します。これは、複数のグラフィックアイテムがマウスイベントを処理している場合に役立ちます。

利点

  • 複数のグラフィックアイテムからマウスイベントのグラブを解除できる。

欠点

  • 特定のグラフィックアイテムのみからマウスイベントのグラブを解除したい場合は、使用できない。


scene->ungrabMouseEvent();

QGraphicsItem::resetCursor() 関数を使用する

この関数は、グラフィックアイテムに関連付けられているカーソルをデフォルトカーソルにリセットします。マウスイベントのグラブがカーソルに関連付けられている場合、この関数はマウスイベントのグラブも解除します。

利点

  • カーソルをリセットすることで、マウスイベントのグラブを解除できる。

欠点

  • カーソルをリセットする以外にも、不要な副作用がある可能性がある。


item->resetCursor();

QGraphicsScene::releaseEvent() シグナルを処理する

このシグナルは、マウスイベントがシーン内で解放されたときに送信されます。このシグナルハンドラ内で、ungrabMouseEvent() 関数を呼び出してマウスイベントのグラブを解除することができます。

利点

  • マウスイベントが解放されたときにのみマウスイベントのグラブを解除できる。

欠点

  • シグナルハンドラを実装する必要がある。


void MyGraphicsScene::releaseEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    ungrabMouseEvent();
}

マウスイベントの処理を停止する

マウスイベントの処理を停止することで、マウスイベントのグラブを解除することができます。これは、event->ignore() 関数を呼び出すことで行うことができます。

利点

  • シンプルでわかりやすい。

欠点

  • マウスイベントが処理されないため、望ましくない副作用がある可能性がある。
void MyGraphicsWidget::mousePressEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event)
{
    event->ignore();
}