Qt WidgetsにおけるQGraphicsWidget::itemChange()の解説
QGraphicsWidget::itemChange()は、QGraphicsWidgetクラスの仮想関数であり、アイテムの状態変化を通知するために使用されます。この関数は、アイテムのプロパティが変更されたとき、またはアイテムがシーン内での位置や状態を変更したときに呼び出されます。
引数
この関数は2つの引数を取ります。
value: 変更された値。change: アイテムの状態変化の種類を示すQGraphicsItem::ItemChangeエニュメレーション値。
戻り値
この関数はtrueを返します。
処理内容
QGraphicsWidget::itemChange()は、まず基底クラスであるQGraphicsItem::itemChange()を呼び出します。その後、アイテムの状態変化の種類に応じて、以下の処理を行います。
- ItemClippingHasChanged: アイテムのクリッピングが変更された場合、このフラグが設定されます.
- ItemAcceptDropsHasChanged: アイテムがドラッグアンドドロップを受け入れるかどうかが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemToolTipHasChanged: アイテムのツールチップが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemEnabledHasChanged: アイテムの有効性が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemVisibleHasChanged: アイテムの可視性が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemZValueHasChanged: アイテムのZ値が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemOpacityHasChanged: アイテムの不透明度が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemCursorHasChanged: アイテムのカーソルが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemSizeHasChanged: アイテムのサイズが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemScaleHasChanged: アイテムのスケールが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemTransformHasChanged: アイテムの変換が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemPositionHasChanged: アイテムの位置が変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemParentChange: アイテムの親アイテムが変更された場合、このフラグが設定されます。
- ItemSceneHasChanged: アイテムがシーンに追加または削除された場合、このフラグが設定されます。
応用例
QGraphicsWidget::itemChange()は、アイテムの状態変化に応じて処理を行うために使用できます。例えば、アイテムの位置が変更されたときに、アイテムを再描画したり、他のアイテムとの関係を更新したりすることができます。
例
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
protected:
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged) {
// アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
// ...
}
return true;
}
};
この例では、MyGraphicsWidgetクラスがアイテムの位置が変更されたときに処理を行うように実装されています。
例1: アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
protected:
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged) {
// アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
QPointF newPos = value.toPointF();
qDebug() << "アイテムの位置が変更されました: " << newPos;
// アイテムを再描画する
update();
}
return true;
}
};
この例では、MyGraphicsWidget クラスがアイテムの位置が変更されたときに処理を行うように実装されています。アイテムの位置が変更されると、アイテムの位置情報が出力され、アイテムが再描画されます。
例2: アイテムのサイズが変更されたときに処理を行う
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
protected:
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemSizeHasChanged) {
// アイテムのサイズが変更されたときに処理を行う
QSize newSize = value.toSize();
qDebug() << "アイテムのサイズが変更されました: " << newSize;
// アイテムを再描画する
update();
}
return true;
}
};
例3: アイテムがシーンに追加または削除されたときに処理を行う
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
protected:
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemSceneHasChanged) {
// アイテムがシーンに追加または削除されたときに処理を行う
QGraphicsScene *scene = value.toGraphicsScene();
if (scene) {
qDebug() << "アイテムがシーンに追加されました";
} else {
qDebug() << "アイテムがシーンから削除されました";
}
}
return true;
}
};
この例では、MyGraphicsWidget クラスがアイテムがシーンに追加または削除されたときに処理を行うように実装されています。アイテムがシーンに追加されると "アイテムがシーンに追加されました" と出力され、アイテムがシーンから削除されると "アイテムがシーンから削除されました" と出力されます。
上記は、QGraphicsWidget::itemChange() の使い方を示すほんの一例です。この関数は、アイテムの状態変化に応じてさまざまな処理を行うために使用できます。
QGraphicsItem::notify()
QGraphicsItem::notify() は、アイテムの状態変化を通知するために使用できる別の関数です。この関数は、QGraphicsItem::ItemChangeエニュメレーション値と、変更された値を渡します。
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
protected:
virtual void itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged) {
// アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
QPointF newPos = value.toPointF();
qDebug() << "アイテムの位置が変更されました: " << newPos;
// notify() を使用して状態変化を通知する
notify(QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged, newPos);
}
return true;
}
};
この例では、MyGraphicsWidget クラスがアイテムの位置が変更されたときに notify() を使用して状態変化を通知するよう実装されています。
長所
- アイテムの状態変化の種類と値を個別に指定できます。
- QGraphicsWidget::itemChange() よりも柔軟性があります。
短所
- すべての状態変化の種類を通知する必要があります。
- QGraphicsWidget::itemChange() よりも複雑です。
カスタムシグナル
カスタムシグナルは、アイテムの状態変化を通知するために使用できる別の方法です。カスタムシグナルを作成して、状態変化の種類と値をシグナルスロット接続を使用して伝達することができます。
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
signals:
void positionChanged(const QPointF &newPos);
void sizeChanged(const QSize &newSize);
protected:
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged) {
// アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
QPointF newPos = value.toPointF();
qDebug() << "アイテムの位置が変更されました: " << newPos;
// positionChanged シグナルをemitする
emit positionChanged(newPos);
} else if (change == QGraphicsItem::ItemSizeHasChanged) {
// アイテムのサイズが変更されたときに処理を行う
QSize newSize = value.toSize();
qDebug() << "アイテムのサイズが変更されました: " << newSize;
// sizeChanged シグナルをemitする
emit sizeChanged(newSize);
}
return true;
}
};
この例では、MyGraphicsWidget クラスが positionChanged() と sizeChanged() というカスタムシグナルを作成し、アイテムの位置とサイズが変更されたときにこれらのシグナルをemitするよう実装されています。
長所
- 複雑な状態変化を処理しやすい。
- アイテムの状態変化を個別に通知できます。
短所
- シグナルスロット接続を設定する必要があります。
- QGraphicsWidget::itemChange() よりもコード量が多くなります。
QObject::connect()
QObject::connect() を使用して、アイテムの状態変化を他のオブジェクトに通知することもできます。
class MyGraphicsWidget : public QGraphicsWidget {
public:
MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent = nullptr);
signals:
void positionChanged(const QPointF &newPos);
void sizeChanged(const QSize &newSize);
private:
QObject *listener;
};
MyGraphicsWidget::MyGraphicsWidget(QGraphicsItem *parent)
: QGraphicsWidget(parent)
{
listener = new QObject(this);
}
virtual bool itemChange(QGraphicsItem::ItemChange change, const QVariant &value) override {
if (change == QGraphicsItem::ItemPositionHasChanged) {
// アイテムの位置が変更されたときに処理を行う
QPointF newPos = value.toPointF();
qDebug() << "アイテムの位置が変更されました: " << newPos;
// connect() を使用して positionChanged シグナルを listener に接続する
connect(this, &MyGraphics