Qt GUIにおけるファイルシステムモデル上でのドラッグ&ドロップ操作処理:QFileSystemModel::dropMimeData()徹底解説
QFileSystemModel::dropMimeData()
は、Qt GUIアプリケーションにおいて、ファイルシステムモデル上でドラッグ&ドロップ操作を処理するための重要なメソッドです。このメソッドは、ドラッグされたデータとドロップされた位置に基づいて、ファイルやフォルダのコピー、移動、リンク作成などの操作を実行します。
メソッドの役割
dropMimeData()
は、以下の役割を果たします。
- ドラッグされたデータの検証
メソッドは、ドラッグされたデータが有効な形式であるかどうかを確認します。通常、これは、データがファイルやフォルダを表すURLのリストを含むQMimeData
オブジェクトであることを確認することを意味します。 - ドロップされた位置の特定
メソッドは、ドロップされた位置をモデル内のインデックスとして特定します。このインデックスは、ファイルシステムモデル内のファイルやフォルダに対応します。 - ドロップ操作の決定
メソッドは、ドラッグされたデータとドロップされた位置に基づいて、実行するドロップ操作を決定します。一般的には、これは、コピー、移動、またはリンク作成のいずれかになります。 - ファイルシステム操作の実行
メソッドは、選択されたドロップ操作に基づいて、ファイルシステム上の操作を実行します。これには、ファイルのコピー、移動、またはリンクの作成が含まれます。 - モデルの更新
メソッドは、ファイルシステム上の操作が完了したら、モデルを更新して、ファイルシステムの状態を反映します。
メソッドの引数
dropMimeData()
メソッドは、以下の引数を取ります。
parent
: ドロップされた位置に対応するモデルインデックス。column
: ドロップされた列のインデックス。row
: ドロップされた行のインデックス。action
: 実行するドロップ操作を表すQt::DropAction
列挙体の値。data
: ドラッグされたデータを格納するQMimeData
オブジェクトへのポインタ。
メソッドの戻り値
dropMimeData()
メソッドは、操作が成功した場合はtrue
を、失敗した場合はfalse
を返します。
メソッドの例
以下の例は、QFileSystemModel::dropMimeData()
メソッドを使用して、ファイルをコピーする方法を示しています。
bool QFileSystemModel::dropMimeData(const QMimeData *data, Qt::DropAction action, int row, int column, const QModelIndex &parent)
{
if (!parent.isValid() || isReadOnly())
return false;
bool success = true;
QString to = filePath(parent) + QDir::separator();
QList<QUrl> urls = data->urls();
QList<QUrl>::const_iterator it = urls.constBegin();
for (; it != urls.constEnd(); ++it) {
QString path = (*it).toLocalFile();
success = QFile::copy(path, to + QFileInfo(path).fileName()) && success;
}
if (success) {
emit dataChanged(parent, parent);
}
return success;
}
この例では、メソッドはまず、ドロップされた位置が有効かどうかを確認します。次に、ドロップされたデータがファイルのURLリストであることを確認します。その後、メソッドは各ファイルに対して、QFile::copy()
関数を使用してファイルを新しい場所にコピーします。最後に、メソッドはモデルを更新して、ファイルシステムの状態を反映します。
#include <QFileSystemModel>
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication app(argc, argv);
// ファイルシステムモデルを作成
QFileSystemModel model;
model.setRootPath("/home/user");
// ツリービューを作成
QTreeView view;
view.setModel(&model);
// ドラッグ&ドロップを有効にする
view.setDragDropMode(QAbstractItemView::DragDropMove);
// ウィンドウを表示
view.show();
return app.exec();
}
このコードは、以下の動作を行います。
QFileSystemModel
オブジェクトを作成し、ルートパスを/home/user
に設定します。QTreeView
オブジェクトを作成し、モデルをビューに設定します。- ビューをドラッグ&ドロップ可能な状態に設定します。
- ウィンドウを表示します。
ユーザーがファイルをビューにドラッグ&ドロップすると、dropMimeData()
メソッドが呼び出され、ファイルがコピーされます。
説明
show()
メソッドは、ウィンドウを表示します。setDragDropMode()
メソッドは、ビューをドラッグ&ドロップ可能な状態に設定します。QTreeView
オブジェクトは、モデル内のデータをツリービューとして表示します。QFileSystemModel
オブジェクトは、ファイルシステムをモデルとして表します。
カスタマイズ
このコードは、ニーズに合わせてカスタマイズできます。たとえば、次のことができます。
- ビューの外観をカスタマイズします。
- ドラッグ&ドロップ操作で実行する操作を変更します。
- モデルのルートパスを変更します。
代替方法
以下の代替方法を検討することができます。
カスタムイベントハンドラを使用する
QTreeView
オブジェクトには、dragEnterEvent()
, dragMoveEvent()
, dropEvent()
などのドラッグ&ドロップイベントハンドラがあります。これらのイベントハンドラを使用して、ドラッグ&ドロップ操作を独自に処理することができます。
利点
- エラー処理やアクセス許可チェックなどの追加機能を実装しやすい
- より多くの制御が可能
欠点
QFileSystemModel::dropMimeData()
メソッドよりも複雑
例
void MyTreeView::dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event)
{
if (event->mimeData()->hasUrls()) {
event->acceptProposedAction(Qt::CopyAction | Qt::MoveAction);
} else {
event->ignore();
}
}
void MyTreeView::dragMoveEvent(QDragMoveEvent *event)
{
if (event->mimeData()->hasUrls()) {
event->acceptProposedAction(Qt::CopyAction | Qt::MoveAction);
} else {
event->ignore();
}
}
void MyTreeView::dropEvent(QDropEvent *event)
{
if (event->mimeData()->hasUrls()) {
QList<QUrl> urls = event->mimeData()->urls();
QList<QUrl>::const_iterator it = urls.constBegin();
for (; it != urls.constEnd(); ++it) {
QString path = (*it).toLocalFile();
// ファイルを処理する
}
}
}
QAbstractItemModel::dropMimeData()` メソッドを使用する
QFileSystemModel
は QAbstractItemModel
を継承しているので、dropMimeData()
メソッドを直接呼び出すこともできます。
利点
- 簡単
欠点
QFileSystemModel::dropMimeData()
メソッドよりも機能が少ない
例
bool MyFileSystemModel::dropMimeData(const QMimeData *data, Qt::DropAction action, int row, int column, const QModelIndex &parent)
{
// ファイルを処理する
}
別のライブラリを使用する
Qt には、KDTree
や QDragDropManager
などのドラッグ&ドロップ操作を処理するための他のライブラリも用意されています。
利点
- 特定のニーズに特化した機能を提供している場合がある
- Qt と統合されていない場合がある