Qt Widgetsにおけるグラフィックスアイテムの外観制御：QAbstractGraphicsShapeItem::brush()徹底解説

QAbstractGraphicsShapeItem::brush() メソッドは、Qt Widgetsにおけるグラフィックスアイテムの外観を制御するための重要な機能です。このメソッドは、アイテム内部を塗りつぶすのに使用するブラシオブジェクトを取得または設定します。ブラシオブジェクトは、色、模様、グラデーションなどを定義し、アイテムの視覚表現に影響を与えます。

使用方法

QAbstractGraphicsShapeItem::brush() メソッドは、以下の2つの方法で使用できます。

• 現在のブラシオブジェクトを取得
  メソッドを呼び出すだけで、アイテムに設定されている現在のブラシオブジェクトを取得できます。ブラシオブジェクトが設定されていない場合は、空のブラシオブジェクトが返されます。

QBrush brush = item->brush();

• ブラシオブジェクトを設定
  引数としてブラシオブジェクトを渡すことで、アイテムのブラシを設定できます。ブラシオブジェクトは、QBrush クラスのインスタンスである必要があります。

QBrush newBrush(Qt::red);
item->setBrush(newBrush);

例

次のコードは、矩形アイテムを作成し、赤色のブラシで塗りつぶす例です。

QGraphicsRectItem *item = new QGraphicsRectItem(QRectF(0, 0, 100, 50));
item->setBrush(Qt::red);
scene->addItem(item);

• QAbstractGraphicsShapeItem クラスは、QGraphicsRectItem、QGraphicsEllipseItem、QGraphicsPathItem などの他のグラフィックスアイテムクラスの基底クラスです。これらのクラスも brush() メソッドを継承しており、同様に使用できます。
• アイテムのブラシを変更すると、アイテムは自動的に再描画されます。
• ブラシオブジェクトは、アイテムの座標系に関連付けられます。つまり、ブラシのグラデーションや模様は、アイテムの位置と回転に応じて変化します。

---

矩形アイテムを様々な色で塗りつぶす

この例では、3つの矩形アイテムを作成し、それぞれ異なる色で塗りつぶします。

#include <QtWidgets>
#include <QtGraphics>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 赤色の矩形アイテム
    QGraphicsRectItem *redRect = new QGraphicsRectItem(QRectF(0, 0, 100, 50));
    redRect->setBrush(Qt::red);
    scene.addItem(redRect);

    // 緑色の矩形アイテム
    QGraphicsRectItem *greenRect = new QGraphicsRectItem(QRectF(100, 0, 100, 50));
    greenRect->setBrush(Qt::green);
    scene.addItem(greenRect);

    // 青色の矩形アイテム
    QGraphicsRectItem *blueRect = new QGraphicsRectItem(QRectF(200, 0, 100, 50));
    blueRect->setBrush(Qt::blue);
    scene.addItem(blueRect);

    view.resize(400, 200);
    view.show();

    return app.exec();
}

楕円形アイテムをグラデーションで塗りつぶす

この例では、楕円形アイテムを作成し、線形グラデーションで塗りつぶします。

#include <QtWidgets>
#include <QtGraphics>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 楕円形アイテム
    QGraphicsEllipseItem *ellipse = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(50, 50, 100, 70));

    // 線形グラデーションを作成
    QLinearGradient gradient(QPoint(0, 0), QPoint(100, 0));
    gradient.setColorAt(0, Qt::red);
    gradient.setColorAt(0.5, Qt::yellow);
    gradient.setColorAt(1, Qt::blue);

    // ブラシオブジェクトを作成
    QBrush brush(gradient);

    // 楕円形アイテムにブラシを設定
    ellipse->setBrush(brush);
    scene.addItem(ellipse);

    view.resize(200, 200);
    view.show();

    return app.exec();
}

この例では、パスアイテムを作成し、画像で塗りつぶします。

#include <QtWidgets>
#include <QtGraphics>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // パスを作成
    QPainterPath path;
    path.moveTo(50, 20);
    path.lineTo(100, 50);
    path.lineTo(150, 20);
    path.close();

    // パスアイテムを作成
    QGraphicsPathItem *pathItem = new QGraphicsPathItem(path);

    // 画像を読み込む
    QImage image("image.png");

    // ブラシオブジェクトを作成
    QBrush brush(image);

    // パスアイテムにブラシを設定
    pathItem->setBrush(brush);
    scene.addItem(pathItem);

    view.resize(200, 200);
    view.show();

    return app.exec();
}

---

カスタムペイントイベントを使用する

QAbstractGraphicsShapeItem::paint() メソッドを再実装することで、アイテムの描画を完全に制御できます。この方法は、ブラシオブジェクトよりも複雑な描画を行う必要がある場合に適しています。

利点

• ブラシオブジェクトよりも柔軟な描画が可能

欠点

• パフォーマンスが低下する可能性がある
• paint() メソッドを正しく実装するには、より多くのプログラミング知識が必要

例

class MyShapeItem : public QAbstractGraphicsShapeItem {
public:
    void paint(QPainter *painter) override {
        // カスタム描画処理
        painter->setPen(Qt::black);
        painter->setBrush(Qt::red);
        painter->drawRect(boundingRect());
    }
};

QPainterPath を使用する

QPainterPath クラスを使用して、アイテムの形状を定義し、QGraphicsItem::fill() メソッドを使用して塗りつぶすことができます。この方法は、シンプルな形状のアイテムを描く場合に適しています。

利点

• シンプルな形状のアイテムを描くのに適している
• ブラシオブジェクトよりも軽量で高速

欠点

• 複雑な形状のアイテムを描くには不向き

例

QGraphicsPathItem *item = new QGraphicsPathItem(QPainterPath(QRectF(0, 0, 100, 50)));
item->fill(Qt::red);
scene->addItem(item);

QGraphicsProxyItem を使用する

QGraphicsProxyItem クラスを使用して、別のグラフィックスアイテムを委譲することで、アイテムの外観を制御できます。この方法は、既存のグラフィックスアイテムを再利用したい場合に適しています。

利点

• コードを簡略化できる
• 既存のグラフィックスアイテムを再利用できる

欠点

• パフォーマンスが低下する可能性がある

例

QGraphicsPixmapItem *pixmapItem = new QGraphicsPixmapItem(QPixmap("image.png"));
QGraphicsProxyItem *proxyItem = new QGraphicsProxyItem(pixmapItem);
proxyItem->setScale(2);
scene->addItem(proxyItem);

QGraphicsTextItem を使用する

テキストアイテムを使用する場合は、QGraphicsTextItem::setText() メソッドを使用してテキストを設定し、QGraphicsTextItem::setDefaultTextColor() メソッドを使用してテキストの色を設定できます。

利点

• フォント、サイズ、配置などのテキストプロパティを制御できる
• テキストアイテムは、テキストを表示するのに最適な方法

欠点

QGraphicsTextItem *textItem = new QGraphicsTextItem("Hello, World!");
textItem->setDefaultTextColor(Qt::red);
scene->addItem(textItem);