Qt WidgetsにおけるQAbstractItemDelegate::sizeHintChanged()の仕組みと代替方法

QAbstractItemDelegate::sizeHintChanged() は、Qt Widgetsにおけるモデル/ビューアーアーキテクチャで使用されるシグナルです。このシグナルは、QAbstractItemDelegate::sizeHint() メソッドが返すサイズヒントが変更されたときにemitされます。

説明

QAbstractItemDelegate は、モデル/ビューアーアーキテクチャにおけるデータアイテムの表示と編集を担うクラスです。sizeHint() メソッドは、アイテムの推奨サイズを返すメソッドです。この推奨サイズは、アイテムの表示に使用されるウィジェットのサイズを決定するために使用されます。

sizeHintChanged() シグナルは、sizeHint() メソッドが返すサイズヒントが変更されたときにemitされます。これは、アイテムの内容が変更されたり、アイテムの表示要件が変更されたりするなど、さまざまな理由で発生する可能性があります。

例

次の例では、sizeHintChanged() シグナルを接続して、アイテムのサイズヒントが変更されたときにログメッセージを出力する方法を示します。

class MyDelegate : public QAbstractItemDelegate
{
public:
    void sizeHintChanged(const QModelIndex &index) override
    {
        qDebug() << "Size hint changed for index:" << index;
    }
};

このコードを次に示すように使用して、デリゲートをアイテムビューに設定できます。

QTableView tableView;
MyDelegate delegate;
tableView.setItemDelegate(&delegate);

---

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QAbstractItemDelegate>

class MyDelegate : public QAbstractItemDelegate
{
public:
    void sizeHintChanged(const QModelIndex &index) override
    {
        qDebug() << "Size hint changed for index:" << index;
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QStandardItemModel model;
    model.setColumnCount(2);
    model.setRowCount(10);

    for (int row = 0; row < 10; ++row) {
        for (int col = 0; col < 2; ++col) {
            QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("Row %1, Col %2").arg(row).arg(col));
            model.setItem(row, col, item);
        }
    }

    QTableView tableView;
    tableView.setModel(&model);

    MyDelegate delegate;
    tableView.setItemDelegate(&delegate);

    tableView.show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、次の出力がコンソールに表示されます。

Size hint changed for index: QModelIndex(0, 0, 0x7f7d16000000)
Size hint changed for index: QModelIndex(0, 1, 0x7f7d16000010)
...
Size hint changed for index: QModelIndex(9, 1, 0x7f7d1657a870)

---

しかし、sizeHintChanged() シグナルにはいくつかの欠点があります。

• シグナルは、どのアイテムのサイズヒントが変更されたのかを伝えません。これは、個々のアイテムのサイズヒントを調整する必要がある場合は問題になる可能性があります。
• シグナルは、アイテムのサイズヒントが変更された 毎回 emitされます。これは、頻繁に発生する場合は、パフォーマンス上の問題を引き起こす可能性があります。

これらの欠点を回避するには、sizeHintChanged() シグナルの代わりに以下の代替方法を使用できます。

QAbstractItemModel::dataChanged() シグナルを使用する

QAbstractItemModel::dataChanged() シグナルは、モデル内のデータが変更されたときにemitされます。このシグナルを使用して、アイテムの内容が変更されたかどうかを検出できます。アイテムの内容が変更された場合は、sizeHint() メソッドを呼び出して、新しいサイズヒントを計算できます。

この方法は、sizeHintChanged() シグナルよりも効率的です。また、どのアイテムのサイズヒントが変更されたのかを特定することもできます。

例

次の例では、dataChanged() シグナルを接続して、アイテムの内容が変更されたときにアイテムのサイズヒントを更新する方法を示します。

class MyDelegate : public QAbstractItemDelegate
{
public:
    void dataChanged(const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QFlags &roles) override
    {
        for (int row = topLeft.row(); row <= bottomRight.row(); ++row) {
            for (int col = topLeft.column(); col <= bottomRight.column(); ++col) {
                QModelIndex index(row, col, topLeft.parent());
                if (index.isValid()) {
                    updateSizeHint(index);
                }
            }
        }
    }

    void updateSizeHint(const QModelIndex &index)
    {
        QAbstractItemModel *model = index.model();
        QVariant value = model->data(index);

        // サイズヒントを計算する
        QSize sizeHint = computeSizeHint(value);

        // サイズヒントを設定する
        emit sizeHintChanged(index, sizeHint);
    }

private:
    QSize computeSizeHint(const QVariant &value);
};

QAbstractItemDelegate::paint() メソッド内でサイズヒントを計算する

QAbstractItemDelegate::paint() メソッドは、アイテムを描画するために呼び出されます。このメソッド内で、アイテムのサイズヒントを計算して、ウィジェットのサイズを設定できます。

この方法は、アイテムのサイズヒントを常に最新の状態に保つことができます。しかし、sizeHint() メソッドを呼び出すたびにアイテムのサイズヒントを計算する必要があるため、パフォーマンス上の問題を引き起こす可能性があります。

例

次の例では、paint() メソッド内でアイテムのサイズヒントを計算して、ウィジェットのサイズを設定する方法を示します。

class MyDelegate : public QAbstractItemDelegate
{
public:
    void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) override
    {
        QVariant value = index.model()->data(index);

        // サイズヒントを計算する
        QSize sizeHint = computeSizeHint(value);

        // ウィジェットのサイズを設定する
        option.rect.setSize(sizeHint);

        // アイテムを描画する
        QItemDelegate::paint(painter, option, index);
    }

private:
    QSize computeSizeHint(const QVariant &value);
};

QAbstractItemDelegate::sizeHintChanged() シグナルは、アイテムのサイズヒントが変更されたときに通知を受けるために使用できますが、いくつかの欠点があります。これらの欠点を回避するには、QAbstractItemModel::dataChanged() シグナルを使用するか、QAbstractItemDelegate::paint() メソッド内でサイズヒントを計算することができます。