Qt Widgets: QAbstractItemView::itemDelegateForColumn() の詳細解説

QAbstractItemView::itemDelegateForColumn() は、特定の列におけるアイテムの表示と編集を制御するデリゲートを取得するためのメソッドです。これは、モデルビューフレームワークにおける重要な機能であり、列ごとに異なる表示形式や編集動作を実装するのに役立ちます。

使用方法

このメソッドは、以下の引数を取ります。

• column: デリゲートを取得したい列のインデックス

メソッドの戻り値は、その列に割り当てられているデリゲートオブジェクトです。デリゲートが設定されていない場合は、nullptr が返されます。

例

QAbstractItemView* itemView = ...;
int column = 3;

QItemDelegate* delegate = itemView->itemDelegateForColumn(column);

if (delegate) {
    // デリゲートが設定されている場合
    // デリゲートを操作する
} else {
    // デリゲートが設定されていない場合
    // デリゲートを作成して設定する
}

詳細

デリゲートは、QItemDelegate クラスの派生クラスとして実装する必要があります。デリゲートクラスでは、以下のメソッドをオーバーライドすることで、アイテムの表示と編集を制御できます。

• displayText()：アイテムの表示テキスト取得
• setModelData()：モデルデータの設定
• editorEvent()：アイテムの編集イベント処理
• paint()：アイテムの描画

利点

QAbstractItemView::itemDelegateForColumn() を使用することで、以下の利点が得られます。

• アイテムの表示と編集をより柔軟に制御できる
• コードのモジュール性を向上させることができる
• 列ごとに異なる表示形式や編集動作を実装できる

---

例：名前列と年齢列の表示と編集

この例では、QTableView を使用して、名前と年齢のデータを格納するモデルを表示します。名前列はテキスト形式で表示し、編集できるようにします。年齢列は数値形式で表示し、スピンボックスを使用して編集できるようにします。

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QItemDelegate>
#include <QSpinBox>

class NameDelegate : public QItemDelegate
{
public:
    void paint(QPainter* painter, const QStyleOptionViewItem& option, const QModelIndex& index) const override
    {
        if (index.column() == 0) {
            // 名前列の場合
            painter->drawText(option.rect(), Qt::AlignCenter, index.data().toString());
        } else {
            // その他の列の場合
            QItemDelegate::paint(painter, option, index);
        }
    }

    QWidget* createEditor(QWidget* parent, const QStyleOptionViewItem& option, const QModelIndex& index) const override
    {
        if (index.column() == 0) {
            // 名前列の場合
            QLineEdit* editor = new QLineEdit(parent);
            editor->setText(index.data().toString());
            return editor;
        } else {
            // その他の列の場合
            return QItemDelegate::createEditor(parent, option, index);
        }
    }
};

class AgeDelegate : public QItemDelegate
{
public:
    void paint(QPainter* painter, const QStyleOptionViewItem& option, const QModelIndex& index) const override
    {
        if (index.column() == 1) {
            // 年齢列の場合
            painter->drawText(option.rect(), Qt::AlignCenter, QString::number(index.data().toInt()));
        } else {
            // その他の列の場合
            QItemDelegate::paint(painter, option, index);
        }
    }

    QWidget* createEditor(QWidget* parent, const QStyleOptionViewItem& option, const QModelIndex& index) const override
    {
        if (index.column() == 1) {
            // 年齢列の場合
            QSpinBox* editor = new QSpinBox(parent);
            editor->setValue(index.data().toInt());
            return editor;
        } else {
            // その他の列の場合
            return QItemDelegate::createEditor(parent, option, index);
        }
    }
};

int main(int argc, char* argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // モデルの作成
    QStandardItemModel* model = new QStandardItemModel(10, 2);
    model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "名前");
    model->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "年齢");

    for (int row = 0; row < 10; ++row) {
        model->setData(model->index(row, 0), QString("名前%1").arg(row + 1));
        model->setData(model->index(row, 1), row + 10);
    }

    // テーブルビューの作成
    QTableView* tableView = new QTableView;
    tableView->setModel(model);

    // デリゲートの作成
    NameDelegate* nameDelegate = new NameDelegate;
    AgeDelegate* ageDelegate = new AgeDelegate;

    // デリゲートの設定
    tableView->setItemDelegateForColumn(0, nameDelegate);
    tableView->setItemDelegateForColumn(1, ageDelegate);

    // ウィンドウの表示
    tableView->show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、以下のようになります。

名前列はテキスト形式で表示され、編集することができます。年齢列は数値形式で表示され、スピンボックスを使用して編集することができます。

• このコードはあくまでも一例であり、実際のユースケースに合わせて変更する必要があります。
• デリゲートクラスは、必要に応じて自由に拡張することができます。
• この例では、QStandardItemModel を使用していますが、他のモデルクラスでも同様に使用できます。

---

サブクラス化

QAbstractItemView を継承したサブクラスを作成し、paint() や editorEvent() などのメソッドをオーバーライドすることで、列ごとに異なる表示と編集を実装することができます。この方法は、柔軟性と制御性に優れていますが、コード量が多くなるという欠点があります。

スタイルシート

QTableView や QListView などのビュークラスにスタイルシートを適用することで、列ごとに異なる外観を設定することができます。この方法は、シンプルな表示形式を実装する場合に有効ですが、複雑な編集動作には対応できません。

カスタムウィジェット

各セルにカスタムウィジェットを配置することで、列ごとに異なる表示と編集を実装することができます。この方法は、高度なカスタマイズが可能ですが、コード量が多くなり、パフォーマンスが低下する可能性があります。

プラグイン

QAbstractItemView プラグインを使用することで、列ごとに異なる機能を追加することができます。この方法は、サードパーティ製のライブラリを活用できるという利点がありますが、互換性やサポートの問題が生じる可能性があります。

選択方法

どの方法を選択するかは、具体的な要件や開発者のスキルによって異なります。

• サードパーティ製のライブラリを活用したい場合 は、プラグインを使用します。
• 高度なカスタマイズが必要な場合 は、カスタムウィジェットを使用します。
• 柔軟性と制御性に優れた方法が必要な場合 は、サブクラス化が適しています。
• シンプルな表示形式と編集動作を実装したい場合 は、スタイルシートが最適な選択肢です。

例：スタイルシートを使用した代替方法

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>

int main(int argc, char* argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // モデルの作成
    QStandardItemModel* model = new QStandardItemModel(10, 2);
    model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "名前");
    model->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "年齢");

    for (int row = 0; row < 10; ++row) {
        model->setData(model->index(row, 0), QString("名前%1").arg(row + 1));
        model->setData(model->index(row, 1), row + 10);
    }

    // テーブルビューの作成
    QTableView* tableView = new QTableView;
    tableView->setModel(model);

    // スタイルシートの適用
    tableView->setStyleSheet(
        "QTableView::item {"
            "background-color: white;"
        "}"
        "QTableView::item:selected {"
            "background-color: lightblue;"
        "}"
        "QTableView::item:alternate {"
            "background-color: #f5f5f5;"
        "}"
        "QHeaderView::section {"
            "background-color: #e6e6e6;"
        "}"
    );

    // ウィンドウの表示
    tableView->show();

    return app.exec();
}

各行が交互に異なる色で表示され、選択された行は青色になります。ヘッダーセクションも灰色で表示されます。

• スタイルシートは、CSS の構文を使用して記述されます。