Qtクリエイター向け:Image.fillModeの高度な使い方と代替案

2025-05-31

Image.fillMode は、Image QML要素のプロパティの一つで、画像要素のサイズとソース画像のサイズが異なる場合に、どのように画像を表示するかを制御します。つまり、画像がどのように伸縮、配置、または切り取られて表示領域に収まるかを決定します。

fillMode プロパティは、以下の列挙型のいずれかの値を持ちます。

  • Image.Pad: ソース画像のサイズを変更せず、要素の領域内で元のサイズで表示します。要素の領域が画像よりも大きい場合は、余白が表示されます。

  • Image.TileHorizontally: ソース画像を要素の領域全体に水平方向に繰り返し敷き詰めて表示します。

  • Image.TileVertically: ソース画像を要素の領域全体に垂直方向に繰り返し敷き詰めて表示します。

  • Image.Tile: ソース画像を要素の領域全体に繰り返し敷き詰めて表示します。

  • Image.PreserveAspectCrop: ソース画像のアスペクト比を維持したまま、要素の境界を完全に覆うように画像を拡大または縮小します。画像の一部が切り取られる(クロップされる)ことがあります。

  • Image.PreserveAspectFit: ソース画像のアスペクト比を維持したまま、画像全体が要素の境界内に収まるように拡大または縮小します。余白ができる場合があります。

  • Image.Stretch: ソース画像を要素の境界に合わせて伸縮させます。これにより、画像のアスペクト比が維持されない可能性があり、画像が歪んで見えることがあります。

例:

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        source: "myimage.png" // 例として
        width: parent.width
        height: parent.height
        fillMode: Image.PreserveAspectFit // アスペクト比を維持して全体を表示
    }
}

この例では、myimage.pngRectangle の領域内に、アスペクト比を保ったまま収まるように表示されます。



一般的なエラーとトラブルシューティング

    • エラー
      fillMode: Image.Stretch を設定した結果、画像が縦横比を維持せずに引き伸ばされ、本来の形と異なって表示される。
    • トラブルシューティング
      • 本当に画像の歪みを意図しているのか再検討してください。
      • 通常は、Image.PreserveAspectFitImage.PreserveAspectCrop の使用を検討してください。
      • 要素の widthheight をソース画像のアスペクト比に近い値に設定することも有効です。
  1. 余白が意図せず表示される (Image.PreserveAspectFit を使用した場合)

    • エラー
      fillMode: Image.PreserveAspectFit を設定した結果、画像の周囲に不要な空白(余白)が表示される。
    • トラブルシューティング
      • これは PreserveAspectFit の仕様によるものです。画像全体を要素内に収めるため、どうしても余白ができる場合があります。
      • 余白を避けたい場合は、Image.PreserveAspectCrop の使用を検討してください。ただし、画像の一部が切り取られる可能性があります。
      • 要素のサイズを調整して、余白が最小限になるように試してください。
  2. 画像の一部が意図せず切り取られる (Image.PreserveAspectCrop を使用した場合)

    • エラー
      fillMode: Image.PreserveAspectCrop を設定した結果、画像の一部分が見えなくなってしまう。
    • トラブルシューティング
      • これは PreserveAspectCrop の仕様によるものです。要素の領域を完全に覆うために、画像が拡大され、はみ出した部分が切り取られます。
      • 切り取られたくない重要な部分が画像の中央に配置されているか確認してください。
      • 要素のサイズやアスペクト比を調整して、切り取られる部分を減らすことを検討してください。
      • 場合によっては、Image.PreserveAspectFit を使用して全体を表示することを検討してください。
  3. タイリングが期待通りに動作しない (Image.Tile, Image.TileVertically, Image.TileHorizontally を使用した場合)

    • エラー
      画像が正しく繰り返して表示されない、または意図した方向にタイリングされない。
    • トラブルシューティング
      • ソース画像のサイズがタイリングに適しているか確認してください。小さすぎる画像や大きすぎる画像では、期待通りの結果が得られないことがあります。
      • widthheight プロパティが、タイリングを表示するのに十分な大きさになっているか確認してください。
      • TileVerticallyTileHorizontally を間違えて使用していないか確認してください。
  4. source プロパティが正しく設定されていない

    • エラー
      画像が表示されない、またはエラーメッセージが表示される。
    • トラブルシューティング
      • source に指定したパスが正しいか確認してください(相対パス、絶対パス、またはリソースパス)。
      • 画像ファイルが存在し、アプリケーションからアクセス可能であることを確認してください。
      • 画像形式が Qt でサポートされているか確認してください。
  5. 要素のレイアウトの問題

    • エラー
      Image 要素を含む親要素のレイアウト設定が不適切で、fillMode の効果が正しく反映されない。
    • トラブルシューティング
      • 親要素の Layout (RowLayout, ColumnLayout, GridLayout など) やアンカーの設定を確認してください。
      • Image 要素自体の widthheight が適切に設定されているか確認してください。fillMode は、要素のサイズに基づいて動作します。

トラブルシューティングの一般的なヒント

  • ドキュメントを参照
    Qt の公式ドキュメントで Image 要素と fillMode プロパティの詳細な説明を確認してください。
  • シンプルな例で試す
    問題を切り分けるために、最小限のコードで Image 要素と fillMode の動作を確認してみてください。
  • コンソール出力
    エラーメッセージや警告がコンソールに出力されていないか確認してください。
  • Qt Creator のデバッグ機能
    Qt Creator のインスペクターを使用して、Image 要素のプロパティ(特に width, height, fillMode)の現在の値を確認してください。


例1: Image.Stretch (画像の伸縮)

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        id: stretchedImage
        source: "qt-logo.png" // 例としてQtのロゴ画像を使用
        width: parent.width
        height: parent.height
        fillMode: Image.Stretch
    }

    Text {
        anchors.bottom: stretchedImage.top
        text: "fillMode: Image.Stretch"
    }
}

この例では、Image 要素の widthheight が親の Rectangle と同じサイズに設定されています。fillModeImage.Stretch に設定されているため、qt-logo.pngRectangle の境界に合わせて縦横比を無視して伸縮されます。結果として、画像が歪んで表示される可能性があります。

例2: Image.PreserveAspectFit (アスペクト比を維持して全体を表示)

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        id: fitImage
        source: "qt-logo.png"
        width: parent.width
        height: parent.height
        fillMode: Image.PreserveAspectFit
        anchors.centerIn: parent // 親の中央に配置
    }

    Text {
        anchors.bottom: fitImage.top
        text: "fillMode: Image.PreserveAspectFit"
    }
}

ここでは、fillModeImage.PreserveAspectFit に設定されています。画像はアスペクト比を維持したまま、Rectangle の領域内に収まるように拡大または縮小されます。Rectangle のアスペクト比と画像のそれとが異なる場合、画像の周囲に余白が表示されることがあります。anchors.centerIn: parent は画像を Rectangle の中央に配置するために使用しています。

例3: Image.PreserveAspectCrop (アスペクト比を維持して領域を覆うように切り取り)

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        id: cropImage
        source: "qt-logo.png"
        width: parent.width
        height: parent.height
        fillMode: Image.PreserveAspectCrop
    }

    Text {
        anchors.bottom: cropImage.top
        text: "fillMode: Image.PreserveAspectCrop"
    }
}

fillModeImage.PreserveAspectCrop に設定されているため、画像はアスペクト比を維持したまま、Rectangle の領域を完全に覆うように拡大または縮小されます。画像の一部が Rectangle の境界からはみ出す場合、その部分は切り取られて表示されません。

例4: Image.Tile (画像を繰り返し敷き詰め)

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        id: tileImage
        source: "small-pattern.png" // 小さなパターン画像を使用
        width: parent.width
        height: parent.height
        fillMode: Image.Tile
    }

    Text {
        anchors.bottom: tileImage.top
        text: "fillMode: Image.Tile"
    }
}

この例では、fillModeImage.Tile に設定されています。small-pattern.png は、Rectangle の領域全体に繰り返し敷き詰められて表示されます。これは、背景パターンなどを表示するのに便利です。

例5: Image.Pad (元のサイズで表示、余白あり)

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150
    color: "lightgray" // 背景色を設定して余白を見やすくする

    Image {
        id: padImage
        source: "small-image.png" // 小さな画像を使用
        fillMode: Image.Pad
        anchors.centerIn: parent
    }

    Text {
        anchors.bottom: padImage.top
        text: "fillMode: Image.Pad"
    }
}

fillModeImage.Pad に設定されているため、small-image.png は元のサイズで表示されます。Rectangle のサイズが画像よりも大きい場合、画像の周囲に Rectangle の背景色が表示されます(余白)。anchors.centerIn: parent は画像を中央に配置しています。



transform プロパティと scale を使用した拡大縮小

Image 要素の transform プロパティを使用すると、回転、移動、そして拡大縮小といった様々な変換を画像に適用できます。scale 変換を利用することで、fillModePreserveAspectFitPreserveAspectCrop と同様の効果をより細かく制御しながら実現できます。

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Image {
        id: scalableImage
        source: "qt-logo.png"
        width: parent.width
        height: parent.height

        transform: Scale {
            id: imageScale
            origin.x: scalableImage.width / 2
            origin.y: scalableImage.height / 2
            xScale: Math.min(scalableImage.width / scalableImage.sourceSize.width, scalableImage.height / scalableImage.sourceSize.height)
            yScale: Math.min(scalableImage.width / scalableImage.sourceSize.width, scalableImage.height / scalableImage.sourceSize.height)
        }
    }

    Text {
        anchors.bottom: scalableImage.top
        text: "Alternative: transform with scale (Fit)"
    }
}

この例では、画像の元のサイズ (sourceSize) と要素のサイズを比較し、アスペクト比を維持したまま要素内に収まるように scale を計算しています。Math.min を使用することで、幅と高さの両方が要素の境界内に収まるようにスケールが決定されます。origin.xorigin.y はスケーリングの中心点を設定しています。

PreserveAspectCrop のような効果を得るには、Math.max を使用して、要素を完全に覆うようにスケールを計算し、必要に応じて clip: true を設定してはみ出した部分を切り取ります。

ShaderEffect を使用したより高度な画像処理

ShaderEffect は、OpenGLシェーダーを使用してカスタムの描画効果を適用できる強力な要素です。これを利用することで、単なる拡大縮小やタイリングだけでなく、より複雑な画像の変形や合成を行うことができます。

例えば、フラグメントシェーダー内で画像のピクセル座標を操作することで、特定の方法で画像をリサイズしたり、特定の部分を切り取ったり、透明度を制御したりといった処理を柔軟に実装できます。

import QtQuick 2.0
import QtGraphicalEffects 1.0 // ShaderEffect が含まれるモジュール

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    ShaderEffect {
        id: customEffect
        width: parent.width
        height: parent.height
        source: "qt-logo.png"

        fragmentShader: "
            varying highp vec2 qt_TexCoord0;
            uniform lowp sampler2D source;

            void main() {
                highp vec2 scaledUV = qt_TexCoord0;
                // ここで scaledUV を操作して、画像の表示方法を制御
                gl_FragColor = texture2D(source, scaledUV);
            }
        "
    }

    Text {
        anchors.bottom: customEffect.top
        text: "Alternative: ShaderEffect (Custom)"
    }
}

上記の例は非常に基本的なものですが、fragmentShader 内で scaledUV をどのように操作するかによって、様々な fillMode の代替となる処理を実装できます。例えば、アスペクト比を維持しながら中央をクロップするような複雑な処理も可能です。

Canvas 要素を使用したピクセル単位の操作

Canvas 要素は、JavaScriptを使用してピクセル単位で描画を行うことができる要素です。これを利用すれば、ソース画像を読み込み、JavaScriptのコード内で必要なリサイズや配置を行い、Canvas 上に描画することができます。

import QtQuick 2.0

Rectangle {
    width: 200
    height: 150

    Canvas {
        id: customCanvas
        width: parent.width
        height: parent.height

        onPaint: {
            var ctx = getContext("2d");
            var img = new Image();
            img.source = "qt-logo.png";
            img.onload = function() {
                var sourceAspectRatio = img.width / img.height;
                var targetAspectRatio = width / height;
                var sourceX = 0;
                var sourceY = 0;
                var sourceWidth = img.width;
                var sourceHeight = img.height;
                var destX = 0;
                var destY = 0;
                var destWidth = width;
                var destHeight = height;

                if (sourceAspectRatio > targetAspectRatio) {
                    // ソース画像の方が横長
                    destHeight = width / sourceAspectRatio;
                    destY = (height - destHeight) / 2;
                } else if (targetAspectRatio > sourceAspectRatio) {
                    // ターゲット領域の方が横長
                    destWidth = height * sourceAspectRatio;
                    destX = (width - destWidth) / 2;
                }

                ctx.drawImage(img, sourceX, sourceY, sourceWidth, sourceHeight, destX, destY, destWidth, destHeight);
            }
        }
    }

    Text {
        anchors.bottom: customCanvas.top
        text: "Alternative: Canvas (Pixel Manipulation)"
    }
}

この例では、CanvasonPaint ハンドラ内で画像をロードし、そのアスペクト比と Canvas のアスペクト比を比較して、PreserveAspectFit と同様の効果を得るための描画領域を計算しています。drawImage メソッドを使用して、計算された領域に画像を描画しています。

BorderImage を使用したボーダー付き画像の伸縮

BorderImage は、9つのセクションに分割された画像を使用して、境界線を保持しながら中央部分を伸縮させるための要素です。これは、UI要素の背景などで、角の形状を維持しつつ中央部分を動的にリサイズしたい場合に便利です。fillMode とは少し異なる用途ですが、特定の種類のリサイズの代替となります。