Qtクリエイター向け:Image.fillModeの高度な使い方と代替案
Image.fillMode
は、Image
QML要素のプロパティの一つで、画像要素のサイズとソース画像のサイズが異なる場合に、どのように画像を表示するかを制御します。つまり、画像がどのように伸縮、配置、または切り取られて表示領域に収まるかを決定します。
fillMode
プロパティは、以下の列挙型のいずれかの値を持ちます。
-
Image.Pad
: ソース画像のサイズを変更せず、要素の領域内で元のサイズで表示します。要素の領域が画像よりも大きい場合は、余白が表示されます。 -
Image.TileHorizontally
: ソース画像を要素の領域全体に水平方向に繰り返し敷き詰めて表示します。 -
Image.TileVertically
: ソース画像を要素の領域全体に垂直方向に繰り返し敷き詰めて表示します。 -
Image.Tile
: ソース画像を要素の領域全体に繰り返し敷き詰めて表示します。 -
Image.PreserveAspectCrop
: ソース画像のアスペクト比を維持したまま、要素の境界を完全に覆うように画像を拡大または縮小します。画像の一部が切り取られる(クロップされる)ことがあります。 -
Image.PreserveAspectFit
: ソース画像のアスペクト比を維持したまま、画像全体が要素の境界内に収まるように拡大または縮小します。余白ができる場合があります。 -
Image.Stretch
: ソース画像を要素の境界に合わせて伸縮させます。これにより、画像のアスペクト比が維持されない可能性があり、画像が歪んで見えることがあります。
例:
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
source: "myimage.png" // 例として
width: parent.width
height: parent.height
fillMode: Image.PreserveAspectFit // アスペクト比を維持して全体を表示
}
}
この例では、myimage.png
が Rectangle
の領域内に、アスペクト比を保ったまま収まるように表示されます。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
fillMode: Image.Stretch
を設定した結果、画像が縦横比を維持せずに引き伸ばされ、本来の形と異なって表示される。 - トラブルシューティング
- 本当に画像の歪みを意図しているのか再検討してください。
- 通常は、
Image.PreserveAspectFit
やImage.PreserveAspectCrop
の使用を検討してください。 - 要素の
width
とheight
をソース画像のアスペクト比に近い値に設定することも有効です。
- エラー
-
余白が意図せず表示される (Image.PreserveAspectFit を使用した場合)
- エラー
fillMode: Image.PreserveAspectFit
を設定した結果、画像の周囲に不要な空白(余白)が表示される。 - トラブルシューティング
- これは
PreserveAspectFit
の仕様によるものです。画像全体を要素内に収めるため、どうしても余白ができる場合があります。 - 余白を避けたい場合は、
Image.PreserveAspectCrop
の使用を検討してください。ただし、画像の一部が切り取られる可能性があります。 - 要素のサイズを調整して、余白が最小限になるように試してください。
- これは
- エラー
-
画像の一部が意図せず切り取られる (Image.PreserveAspectCrop を使用した場合)
- エラー
fillMode: Image.PreserveAspectCrop
を設定した結果、画像の一部分が見えなくなってしまう。 - トラブルシューティング
- これは
PreserveAspectCrop
の仕様によるものです。要素の領域を完全に覆うために、画像が拡大され、はみ出した部分が切り取られます。 - 切り取られたくない重要な部分が画像の中央に配置されているか確認してください。
- 要素のサイズやアスペクト比を調整して、切り取られる部分を減らすことを検討してください。
- 場合によっては、
Image.PreserveAspectFit
を使用して全体を表示することを検討してください。
- これは
- エラー
-
タイリングが期待通りに動作しない (Image.Tile, Image.TileVertically, Image.TileHorizontally を使用した場合)
- エラー
画像が正しく繰り返して表示されない、または意図した方向にタイリングされない。 - トラブルシューティング
- ソース画像のサイズがタイリングに適しているか確認してください。小さすぎる画像や大きすぎる画像では、期待通りの結果が得られないことがあります。
width
とheight
プロパティが、タイリングを表示するのに十分な大きさになっているか確認してください。TileVertically
とTileHorizontally
を間違えて使用していないか確認してください。
- エラー
-
source プロパティが正しく設定されていない
- エラー
画像が表示されない、またはエラーメッセージが表示される。 - トラブルシューティング
source
に指定したパスが正しいか確認してください(相対パス、絶対パス、またはリソースパス)。- 画像ファイルが存在し、アプリケーションからアクセス可能であることを確認してください。
- 画像形式が Qt でサポートされているか確認してください。
- エラー
-
要素のレイアウトの問題
- エラー
Image
要素を含む親要素のレイアウト設定が不適切で、fillMode
の効果が正しく反映されない。 - トラブルシューティング
- 親要素の
Layout
(RowLayout, ColumnLayout, GridLayout など) やアンカーの設定を確認してください。 Image
要素自体のwidth
やheight
が適切に設定されているか確認してください。fillMode
は、要素のサイズに基づいて動作します。
- 親要素の
- エラー
トラブルシューティングの一般的なヒント
- ドキュメントを参照
Qt の公式ドキュメントでImage
要素とfillMode
プロパティの詳細な説明を確認してください。 - シンプルな例で試す
問題を切り分けるために、最小限のコードでImage
要素とfillMode
の動作を確認してみてください。 - コンソール出力
エラーメッセージや警告がコンソールに出力されていないか確認してください。 - Qt Creator のデバッグ機能
Qt Creator のインスペクターを使用して、Image
要素のプロパティ(特にwidth
,height
,fillMode
)の現在の値を確認してください。
例1: Image.Stretch (画像の伸縮)
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
id: stretchedImage
source: "qt-logo.png" // 例としてQtのロゴ画像を使用
width: parent.width
height: parent.height
fillMode: Image.Stretch
}
Text {
anchors.bottom: stretchedImage.top
text: "fillMode: Image.Stretch"
}
}
この例では、Image
要素の width
と height
が親の Rectangle
と同じサイズに設定されています。fillMode
が Image.Stretch
に設定されているため、qt-logo.png
は Rectangle
の境界に合わせて縦横比を無視して伸縮されます。結果として、画像が歪んで表示される可能性があります。
例2: Image.PreserveAspectFit
(アスペクト比を維持して全体を表示)
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
id: fitImage
source: "qt-logo.png"
width: parent.width
height: parent.height
fillMode: Image.PreserveAspectFit
anchors.centerIn: parent // 親の中央に配置
}
Text {
anchors.bottom: fitImage.top
text: "fillMode: Image.PreserveAspectFit"
}
}
ここでは、fillMode
が Image.PreserveAspectFit
に設定されています。画像はアスペクト比を維持したまま、Rectangle
の領域内に収まるように拡大または縮小されます。Rectangle
のアスペクト比と画像のそれとが異なる場合、画像の周囲に余白が表示されることがあります。anchors.centerIn: parent
は画像を Rectangle
の中央に配置するために使用しています。
例3: Image.PreserveAspectCrop
(アスペクト比を維持して領域を覆うように切り取り)
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
id: cropImage
source: "qt-logo.png"
width: parent.width
height: parent.height
fillMode: Image.PreserveAspectCrop
}
Text {
anchors.bottom: cropImage.top
text: "fillMode: Image.PreserveAspectCrop"
}
}
fillMode
が Image.PreserveAspectCrop
に設定されているため、画像はアスペクト比を維持したまま、Rectangle
の領域を完全に覆うように拡大または縮小されます。画像の一部が Rectangle
の境界からはみ出す場合、その部分は切り取られて表示されません。
例4: Image.Tile
(画像を繰り返し敷き詰め)
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
id: tileImage
source: "small-pattern.png" // 小さなパターン画像を使用
width: parent.width
height: parent.height
fillMode: Image.Tile
}
Text {
anchors.bottom: tileImage.top
text: "fillMode: Image.Tile"
}
}
この例では、fillMode
が Image.Tile
に設定されています。small-pattern.png
は、Rectangle
の領域全体に繰り返し敷き詰められて表示されます。これは、背景パターンなどを表示するのに便利です。
例5: Image.Pad
(元のサイズで表示、余白あり)
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
color: "lightgray" // 背景色を設定して余白を見やすくする
Image {
id: padImage
source: "small-image.png" // 小さな画像を使用
fillMode: Image.Pad
anchors.centerIn: parent
}
Text {
anchors.bottom: padImage.top
text: "fillMode: Image.Pad"
}
}
fillMode
が Image.Pad
に設定されているため、small-image.png
は元のサイズで表示されます。Rectangle
のサイズが画像よりも大きい場合、画像の周囲に Rectangle
の背景色が表示されます(余白)。anchors.centerIn: parent
は画像を中央に配置しています。
transform プロパティと scale を使用した拡大縮小
Image
要素の transform
プロパティを使用すると、回転、移動、そして拡大縮小といった様々な変換を画像に適用できます。scale
変換を利用することで、fillMode
の PreserveAspectFit
や PreserveAspectCrop
と同様の効果をより細かく制御しながら実現できます。
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Image {
id: scalableImage
source: "qt-logo.png"
width: parent.width
height: parent.height
transform: Scale {
id: imageScale
origin.x: scalableImage.width / 2
origin.y: scalableImage.height / 2
xScale: Math.min(scalableImage.width / scalableImage.sourceSize.width, scalableImage.height / scalableImage.sourceSize.height)
yScale: Math.min(scalableImage.width / scalableImage.sourceSize.width, scalableImage.height / scalableImage.sourceSize.height)
}
}
Text {
anchors.bottom: scalableImage.top
text: "Alternative: transform with scale (Fit)"
}
}
この例では、画像の元のサイズ (sourceSize
) と要素のサイズを比較し、アスペクト比を維持したまま要素内に収まるように scale
を計算しています。Math.min
を使用することで、幅と高さの両方が要素の境界内に収まるようにスケールが決定されます。origin.x
と origin.y
はスケーリングの中心点を設定しています。
PreserveAspectCrop
のような効果を得るには、Math.max
を使用して、要素を完全に覆うようにスケールを計算し、必要に応じて clip: true
を設定してはみ出した部分を切り取ります。
ShaderEffect を使用したより高度な画像処理
ShaderEffect
は、OpenGLシェーダーを使用してカスタムの描画効果を適用できる強力な要素です。これを利用することで、単なる拡大縮小やタイリングだけでなく、より複雑な画像の変形や合成を行うことができます。
例えば、フラグメントシェーダー内で画像のピクセル座標を操作することで、特定の方法で画像をリサイズしたり、特定の部分を切り取ったり、透明度を制御したりといった処理を柔軟に実装できます。
import QtQuick 2.0
import QtGraphicalEffects 1.0 // ShaderEffect が含まれるモジュール
Rectangle {
width: 200
height: 150
ShaderEffect {
id: customEffect
width: parent.width
height: parent.height
source: "qt-logo.png"
fragmentShader: "
varying highp vec2 qt_TexCoord0;
uniform lowp sampler2D source;
void main() {
highp vec2 scaledUV = qt_TexCoord0;
// ここで scaledUV を操作して、画像の表示方法を制御
gl_FragColor = texture2D(source, scaledUV);
}
"
}
Text {
anchors.bottom: customEffect.top
text: "Alternative: ShaderEffect (Custom)"
}
}
上記の例は非常に基本的なものですが、fragmentShader
内で scaledUV
をどのように操作するかによって、様々な fillMode
の代替となる処理を実装できます。例えば、アスペクト比を維持しながら中央をクロップするような複雑な処理も可能です。
Canvas 要素を使用したピクセル単位の操作
Canvas
要素は、JavaScriptを使用してピクセル単位で描画を行うことができる要素です。これを利用すれば、ソース画像を読み込み、JavaScriptのコード内で必要なリサイズや配置を行い、Canvas
上に描画することができます。
import QtQuick 2.0
Rectangle {
width: 200
height: 150
Canvas {
id: customCanvas
width: parent.width
height: parent.height
onPaint: {
var ctx = getContext("2d");
var img = new Image();
img.source = "qt-logo.png";
img.onload = function() {
var sourceAspectRatio = img.width / img.height;
var targetAspectRatio = width / height;
var sourceX = 0;
var sourceY = 0;
var sourceWidth = img.width;
var sourceHeight = img.height;
var destX = 0;
var destY = 0;
var destWidth = width;
var destHeight = height;
if (sourceAspectRatio > targetAspectRatio) {
// ソース画像の方が横長
destHeight = width / sourceAspectRatio;
destY = (height - destHeight) / 2;
} else if (targetAspectRatio > sourceAspectRatio) {
// ターゲット領域の方が横長
destWidth = height * sourceAspectRatio;
destX = (width - destWidth) / 2;
}
ctx.drawImage(img, sourceX, sourceY, sourceWidth, sourceHeight, destX, destY, destWidth, destHeight);
}
}
}
Text {
anchors.bottom: customCanvas.top
text: "Alternative: Canvas (Pixel Manipulation)"
}
}
この例では、Canvas
の onPaint
ハンドラ内で画像をロードし、そのアスペクト比と Canvas
のアスペクト比を比較して、PreserveAspectFit
と同様の効果を得るための描画領域を計算しています。drawImage
メソッドを使用して、計算された領域に画像を描画しています。
BorderImage を使用したボーダー付き画像の伸縮
BorderImage
は、9つのセクションに分割された画像を使用して、境界線を保持しながら中央部分を伸縮させるための要素です。これは、UI要素の背景などで、角の形状を維持しつつ中央部分を動的にリサイズしたい場合に便利です。fillMode
とは少し異なる用途ですが、特定の種類のリサイズの代替となります。