Image.asynchronous
2025-05-31
「asynchronous」とは？
「asynchronous（非同期）」とは、ある処理が完了するのを待たずに、次の処理を開始できることを意味します。これに対して「synchronous（同期）」は、ある処理が完了するまで次の処理がブロックされる（待機する）ことを意味します。
Image.asynchronous の役割
QMLのImage要素は、通常、ローカルファイルシステムから画像を読み込む場合、デフォルトでは同期的に読み込みます。これは、画像ファイルの読み込みが完了するまでUIスレッドがブロックされ、アプリケーションが一時的にフリーズしたように見えたり、応答しなくなったりする可能性があることを意味します。特に大きな画像を読み込む場合や、多くの画像を一度に表示する場合にこの問題が顕著になります。
Image.asynchronousプロパティをtrueに設定すると、画像の読み込みがUIスレッドとは別の低優先度のスレッドで実行されるようになります。これにより、画像読み込み中もUIが応答性を保ち、スムーズなユーザーエクスペリエンスを提供できます。
具体的な挙動
- ネットワーク経由の画像:
- HTTPなどのネットワークリソースから読み込まれる画像は、
asynchronousプロパティの設定に関わらず、常に自動的に非同期で読み込まれます。これは、ネットワークI/Oが本質的に遅延を伴うため、UIのブロックを避けるためです。
- HTTPなどのネットワークリソースから読み込まれる画像は、
asynchronous: true:- ローカルファイルの画像は非同期的に、別のスレッドで読み込まれます。
- UIの応答性を維持できます。
- 画像が完全に読み込まれるまで、最初は空白またはプレースホルダーが表示されることがあります。
asynchronous: false(デフォルト):- ローカルファイルの画像は同期的に読み込まれます。
- 読み込み中はUIがブロックされる可能性があります。
import QtQuick 2.0
Item {
width: 400
height: 300
Image {
id: myImage
source: "path/to/large_image.jpg" // ローカルの大きな画像ファイル
asynchronous: true // 非同期読み込みを有効にする
width: 200
height: 150
anchors.centerIn: parent
// 画像の読み込み状況を監視することもできます
onStatusChanged: {
if (myImage.status === Image.Ready) {
console.log("画像が読み込まれました！");
} else if (myImage.status === Image.Loading) {
console.log("画像を読み込み中...");
} else if (myImage.status === Image.Error) {
console.log("画像の読み込み中にエラーが発生しました:", myImage.errorString);
}
}
}
Text {
text: "画像が読み込まれるまで、このテキストは表示されたままです。"
anchors.bottom: parent.bottom
anchors.horizontalCenter: parent.horizontalCenter
}
}
画像が表示されない、または遅延して表示される
一般的な原因
- リソースパスの問題
QMLアプリケーションがリソースファイル（.qrc）から画像を読み込んでいる場合、パスのプレフィックス（例:qrc:///images/my_image.png）が正しくない。 - キャッシュの問題
以前の画像がキャッシュされており、新しい画像がすぐに表示されない。 - 非同期読み込みの特性
asynchronous: trueの場合、画像が完全に読み込まれるまで、最初は空白またはプレースホルダーが表示されます。これはエラーではなく、非同期読み込みの正常な動作です。 - ファイルI/Oの問題
画像ファイルへのアクセス権がない、またはファイルが破損している。 - パスが正しくない
sourceプロパティに指定された画像のパスが間違っている、またはファイルが存在しない。
トラブルシューティング
- プレースホルダーの使用
非同期読み込み中のユーザーエクスペリエンスを向上させるために、Image.asynchronousを使用する際にplaceholderプロパティを設定することを検討してください。Image { source: "path/to/large_image.jpg" asynchronous: true placeholder: "qrc:///images/loading_placeholder.png" // 読み込み中に表示される画像 } - キャッシュのクリア（開発時）
開発中は、Qtのキャッシュが問題を引き起こすことがあります。アプリケーションをクリーンビルドしたり、Qt Creatorのキャッシュをクリアしたりすることで解決する場合があります。 - Image.status プロパティの確認
Image要素のstatusプロパティを監視することで、画像読み込みの状態（Image.Null、Image.Loading、Image.Ready、Image.Error）を確認できます。Image.Errorの場合、errorStringプロパティで詳細なエラーメッセージが得られます。Image { source: "path/to/image.png" asynchronous: true onStatusChanged: { if (status === Image.Error) { console.log("画像読み込みエラー:", errorString); } else if (status === Image.Ready) { console.log("画像読み込み完了！"); } } } - パスの確認
sourceプロパティのパスを再確認し、画像ファイルが実際にその場所に存在し、アクセス可能であることを確認します。絶対パスや相対パスを試してみるのも良いでしょう。
UIのちらつきや遅延
一般的な原因
- UIスレッドでの処理過多
画像の読み込み自体は非同期でも、画像が読み込まれた後のQML側のレイアウト計算や他のUI処理が重い場合、UIが遅延する可能性があります。 - 頻繁な画像の変更
sourceプロパティを頻繁に変更すると、画像の読み込みとレンダリングが繰り返され、パフォーマンスに影響を与えることがあります。 - 画像のサイズが非常に大きい
非同期で読み込んでいても、非常に大きな画像を多数表示しようとすると、メモリ使用量が増加し、レンダリングに時間がかかり、UIのちらつきや遅延が発生する可能性があります。
トラブルシューティング
- visible プロパティの利用
画面に表示されるまで画像の読み込みを遅延させるために、visibleプロパティと組み合わせて使用することを検討します。Image { source: "path/to/image.png" asynchronous: true visible: false // 最初は非表示 onStatusChanged: { if (status === Image.Ready) { visible = true; // 読み込み完了後に表示 } } } - ImageProvider の使用
C++でカスタムのQQuickImageProviderを実装することで、画像の読み込みや変換処理をより詳細に制御し、最適化することができます。これは、特に動的に画像を生成したり、特定のデータ形式から画像を読み込んだりする場合に有効です。 - 画像キャッシングの活用
Qt Quickはデフォルトで画像をキャッシュしますが、Image.cacheプロパティやImage.fillModeを適切に設定することで、パフォーマンスをさらに最適化できます。 - 画像の最適化
表示する画像の解像度を適切に調整し、不要に大きな画像を使用しないようにします。WebPなどの効率的な画像フォーマットの使用も検討してください。
メモリ使用量の問題
一般的な原因
- QMLオブジェクトのライフサイクル
Imageオブジェクトが不要になった後も、適切に破棄されない場合、メモリリークが発生する可能性があります。 - 多数の大きな画像
asynchronous: trueを使用していても、一度に多くの大きな画像をメモリに読み込むと、アプリケーションのメモリ使用量が急増し、クラッシュする可能性があります。
トラブルシューティング
- メモリプロファイリング
Qt Creatorのプロファイラ（QML ProfilerやMemory Analyzer）を使用して、アプリケーションのメモリ使用量を監視し、メモリリークや過剰なメモリ消費の原因を特定します。 - Lazy Loading / Virtual List
ListViewやGridViewなどで多くの画像を扱う場合、画面に表示されている部分の画像のみを読み込む「Lazy Loading（遅延読み込み）」や「Virtual List（仮想リスト）」の概念を導入することを検討します。これにより、必要なメモリを最小限に抑えることができます。 - 画像の解放
不要になった画像は、Image.sourceを空文字列に設定したり、Image要素自体を破棄したりすることで、メモリから解放されるようにします。
アプリケーションの応答性の低下（ごく稀なケース）
一般的な原因
- 非同期スレッドのボトルネック
非常にI/Oの多い環境や、システムリソースが枯渇している場合、非同期の画像読み込みスレッド自体がボトルネックとなり、他の非同期処理にも影響を与える可能性があります。
- デバッグログの活用
QT_QML_DEBUG環境変数を設定したり、console.logを使って詳細なログを出力したりすることで、画像読み込みのタイミングや処理時間を確認できます。 - システムリソースの確認
CPU、メモリ、ディスクI/Oの使用状況を確認し、リソースの競合がないかを確認します。
- 最小限の再現コード
問題を切り分けて、最小限のコードで問題を再現できる状態にすることで、原因の特定と解決が容易になります。 - qmlscene でのテスト
問題がアプリケーション全体にあるのか、特定のQMLファイルにあるのかを切り分けるために、問題のQMLファイルをqmlsceneツールで単独で実行してみるのも有効です。 - Qt Creator の QML Debugger
Qt Creatorに内蔵されているQMLデバッガーは、QMLプロパティの値、コンポーネントツリー、シグナル/スロット接続などをリアルタイムで検査するのに非常に役立ちます。Image.statusやsourceの値の変化を追跡できます。
例1: 基本的な非同期画像読み込み
この例では、ローカルの大きな画像ファイルを非同期で読み込みます。UIは画像の読み込み中もフリーズしません。
// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
Window {
width: 640
height: 480
visible: true
title: "非同期画像読み込みの基本"
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 20
Text {
text: "画像が読み込まれるまで、このテキストは常に表示されています。"
font.pixelSize: 18
horizontalAlignment: Text.AlignHCenter
width: parent.width
}
// 非同期で大きな画像を読み込む
// 'path/to/your/large_image.jpg' を実際の画像パスに置き換えてください
// (例: Qtプロジェクトの images フォルダに large_image.jpg を置く場合: "qrc:///images/large_image.jpg")
Image {
id: asyncImage
source: "path/to/your/large_image.jpg"
asynchronous: true // ★★★ ここが重要！非同期読み込みを有効にする ★★★
width: 300
height: 200
fillMode: Image.PreserveAspectFit // アスペクト比を維持してフィット
// 画像の読み込み状態をコンソールに出力
onStatusChanged: {
switch (status) {
case Image.Null:
console.log("Image status: Null (初期状態)");
break;
case Image.Loading:
console.log("Image status: Loading (読み込み中...)");
break;
case Image.Ready:
console.log("Image status: Ready (読み込み完了！)");
break;
case Image.Error:
console.error("Image status: Error! " + errorString);
break;
}
}
}
}
}
解説
Image.Nullは初期状態、Image.Loadingは読み込み中、Image.Readyは読み込み完了、Image.Errorはエラー発生を示します。onStatusChangedシグナルは、画像の読み込み状態が変化するたびに発火します。これを使って、読み込み中、完了、エラーなどの状態を追跡できます。asynchronous: trueを設定することで、sourceに指定されたローカル画像ファイルがUIスレッドとは別のバックグラウンドスレッドで読み込まれます。
例2: プレースホルダーと読み込みインジケーターの表示
非同期読み込み中、画像が表示されるまでに時間がかかる場合があります。この間、ユーザーにフィードバックを提供するために、プレースホルダー画像を表示したり、プログレスインジケーターを表示したりすることができます。
// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15 // ProgressBar を使用するために必要
Window {
width: 640
height: 480
visible: true
title: "プレースホルダーとインジケーター"
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 20
width: parent.width
Text {
text: "非同期読み込み中のフィードバック"
font.pixelSize: 20
horizontalAlignment: Text.AlignHCenter
width: parent.width
}
Image {
id: asyncImageWithPlaceholder
source: "path/to/your/another_large_image.jpg" // 別の大きな画像
asynchronous: true
width: 300
height: 200
fillMode: Image.PreserveAspectFit
// プレースホルダー画像（読み込み中に表示される）
placeholder: "qrc:///images/loading_placeholder.png" // あらかじめ用意した小さな画像
// ローディングインジケーター
BusyIndicator {
anchors.centerIn: parent
visible: asyncImageWithPlaceholder.status === Image.Loading
running: visible
}
// 画像の読み込み状態に応じて表示されるテキスト
Text {
anchors.centerIn: parent
color: "white"
font.pixelSize: 14
visible: asyncImageWithPlaceholder.status !== Image.Ready
text: {
if (asyncImageWithPlaceholder.status === Image.Loading) return "読み込み中...";
if (asyncImageWithPlaceholder.status === Image.Error) return "エラー: " + asyncImageWithPlaceholder.errorString;
return "";
}
}
}
}
}
必要なリソース
qrc:///images/loading_placeholder.png: 読み込み中に表示する小さい画像ファイル（例: 灰色背景にローディングアイコンなど）をQtリソースファイルに追加してください。
解説
Text要素も同様に、読み込み中やエラー時に適切なメッセージを表示します。BusyIndicatorは、asyncImageWithPlaceholder.statusがImage.Loadingの場合にのみ表示され、ユーザーに現在読み込み中であることを視覚的に伝えます。placeholderプロパティに別の画像パスを指定することで、asyncImageWithPlaceholderが完全に読み込まれるまでその画像が表示されます。
例3: 動的な画像ソースと非同期読み込み
ボタンクリックなどのユーザーアクションに応じて画像のソースを動的に変更する場合でも、asynchronous は有効です。
// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Window {
width: 640
height: 480
visible: true
title: "動的な非同期画像読み込み"
property var imageSources: [
"path/to/image1.jpg",
"path/to/image2.jpg",
"path/to/image3.jpg"
]
property int currentImageIndex: 0
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 20
width: parent.width
Image {
id: dynamicImage
source: imageSources[currentImageIndex] // 初期ソース
asynchronous: true
width: 400
height: 300
fillMode: Image.PreserveAspectFit
horizontalAlignment: Image.AlignHCenter
verticalAlignment: Image.AlignVCenter
// 読み込み中のインジケーター
BusyIndicator {
anchors.centerIn: parent
visible: dynamicImage.status === Image.Loading
running: visible
}
Text {
anchors.centerIn: parent
color: "white"
font.pixelSize: 16
visible: dynamicImage.status === Image.Error || dynamicImage.status === Image.Loading
text: dynamicImage.status === Image.Error ? "エラー: " + dynamicImage.errorString : "読み込み中..."
}
}
Button {
text: "次の画像"
anchors.horizontalCenter: parent.horizontalCenter
onClicked: {
currentImageIndex = (currentImageIndex + 1) % imageSources.length;
// sourceプロパティを変更すると、新しい画像が非同期で読み込まれる
dynamicImage.source = imageSources[currentImageIndex];
}
}
}
}
解説
asynchronous: trueの設定により、新しい画像が読み込まれる際もUIはフリーズせず、BusyIndicatorが適切に表示されます。ButtonをクリックするとcurrentImageIndexが更新され、それに伴ってdynamicImage.sourceも変更されます。imageSourcesリストに複数の画像パスを定義し、currentImageIndexで現在の画像を示します。
ネットワークからの画像読み込みは、asynchronous プロパティの設定に関わらず、常に非同期で行われます。しかし、明示的に asynchronous: true を設定することはコードの意図を明確にする上で良い習慣です。
// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Window {
width: 640
height: 480
visible: true
title: "ネットワーク画像（常に非同期）"
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 20
Text {
text: "ネットワークからの画像は常に非同期で読み込まれます。"
font.pixelSize: 18
horizontalAlignment: Text.AlignHCenter
width: parent.width
}
Image {
id: networkImage
// 適切な画像URLに置き換えてください
source: "https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b2/Qt_logo_2016.svg/320px-Qt_logo_2016.svg.png"
asynchronous: true // ネットワーク画像の場合、これはデフォルトでtrueとして扱われる
width: 300
height: 200
fillMode: Image.PreserveAspectFit
BusyIndicator {
anchors.centerIn: parent
visible: networkImage.status === Image.Loading
running: visible
}
onStatusChanged: {
if (status === Image.Error) {
console.error("ネットワーク画像読み込みエラー:", errorString);
} else if (status === Image.Ready) {
console.log("ネットワーク画像読み込み完了！");
}
}
}
}
}
- ネットワークエラー（タイムアウト、URLが見つからないなど）も
Image.Errorステータスとして扱われます。 asynchronous: trueを明示的に記述しても動作に大きな違いはありませんが、コードの可読性を高めます。sourceにHTTP/HTTPSのURLを指定した場合、Qtは自動的にネットワークリクエストを非同期で処理します。
QQuickImageProvider を使用したカスタム画像読み込み (C++ と QML の連携)
これは、Image.asynchronous の挙動をより細かく制御したり、カスタムの画像ソース（例えば、データベースから読み込む、特別な形式のファイルをデコードするなど）を提供したりするのに最も一般的な方法です。
QQuickImageProvider をC++で実装し、QMLエンジンに登録することで、QML側からは image:// スキームを使ってその画像プロバイダーから画像を要求できます。
特徴
- キャッシュ制御
画像プロバイダーによって返される画像は、QMLによって自動的にキャッシュされますが、Image.cacheプロパティをfalseに設定することでキャッシュを無効にすることも可能です。 - カスタムロジック
任意の場所から画像を読み込んだり、動的に画像を生成したり、独自のデコード処理を加えたりできます。 - 非同期読み込みの制御
QQuickImageProviderにはQQuickImageProvider::Image(QImageを返す) とQQuickImageProvider::Pixmap(QPixmapを返す) の2つのタイプがあります。Imageタイプの場合、QMLのImage.asynchronous: trueと組み合わせることで、画像読み込みがバックグラウンドスレッドで行われます。Pixmapタイプの場合、QPixmapはUIスレッドで作成する必要があるため、非同期読み込みは限定的です（プラットフォームのThreadedPixmaps機能に依存）。より完全に非同期にしたい場合は、QQuickAsyncImageProviderを使用します。
-
requestImage()またはrequestPixmap()メソッドをオーバーライドして、画像データを返します。- 画像を非同期で読み込みたい場合は、
QImageタイプを使用し、QML側でImage.asynchronous: trueを設定します。 - より高度な非同期処理が必要な場合は、
QQuickAsyncImageProviderとQQuickImageResponseを使用して、読み込み処理を独自の非同期タスクとして実行します。
// myimageprovider.h #include <QQuickImageProvider> #include <QImage> class MyImageProvider : public QQuickImageProvider { public: MyImageProvider() : QQuickImageProvider(QQuickImageProvider::Image) // QImage タイプを指定 {} QImage requestImage(const QString &id, QSize *size, const QSize &requestedSize) override { // idに基づいて画像を読み込むロジック // 例: "myimageprovider/path/to/image.png" の "path/to/image.png" が id になる QImage image(id); // これは同期的に読み込まれる if (requestedSize.isValid()) { image = image.scaled(requestedSize, Qt::KeepAspectRatio, Qt::SmoothTransformation); } *size = image.size(); // 実際の画像サイズをQMLに伝える return image; } }; -
QQmlEngine に画像プロバイダーを登録
main.cppで、QMLエンジンがロードされる前に登録します。
// main.cpp #include <QGuiApplication> #include <QQmlApplicationEngine> #include "myimageprovider.h" // 作成したプロバイダー int main(int argc, char *argv[]) { QGuiApplication app(argc, argv); QQmlApplicationEngine engine; // "myimageprovider" という名前で画像プロバイダーを登録 engine.addImageProvider(QStringLiteral("myimageprovider"), new MyImageProvider); const QUrl url(u"qrc:/YourProjectName/main.qml"_qs); QObject::connect(&engine, &QQmlApplicationEngine::objectCreationFailed, &app, []() { QCoreApplication::exit(-1); }, Qt::QueuedConnection); engine.load(url); return app.exec(); } -
QMLから画像プロバイダーを使用
image://スキームと登録したプロバイダー名を使用します。
// main.qml import QtQuick 2.15 import QtQuick.Window 2.15 Window { width: 640 height: 480 visible: true title: "カスタム画像プロバイダー" Image { id: customImage // "image://myimageprovider/path/to/image.png" の形式で指定 source: "image://myimageprovider/your_image.png" // C++のrequestImageに"your_image.png"が渡される asynchronous: true // QImage タイプの場合、ここで非同期読み込みが有効になる width: 300 height: 200 fillMode: Image.PreserveAspectFit BusyIndicator { anchors.centerIn: parent visible: customImage.status === Image.Loading running: visible } } }
QQuickAsyncImageProvider を使った真の非同期処理
QQuickImageProvider の requestImage や requestPixmap は、デフォルトでは呼び出し元のスレッド（通常はQMLのレンダリングスレッド）で実行されます。これにより、重い画像処理を行うとUIがブロックされる可能性があります。
この問題を解決し、完全に非同期な画像読み込みを提供するために、Qt 5.10 以降では QQuickAsyncImageProvider と QQuickImageResponse のペアが導入されました。
QQuickImageResponseは、QRunnableやQThreadを使って実際に画像を読み込むタスクを実行し、完了時にシグナルを発行します。これにより、メインスレッドを一切ブロックせずに画像を読み込むことができます。QQuickAsyncImageProviderはrequestImageResponse()メソッドを実装し、画像読み込みをバックグラウンドで行うQQuickImageResponseオブジェクトを返します。
これは少し複雑ですが、非常に大量の画像や、独自の重い画像処理ロジックを持つ場合に最適なアプローチです。
Image 要素の source プロパティではなく、C++側で画像を読み込み、それを QPixmap や QImage としてQMLのプロパティに公開する方法です。
特徴
- UIスレッドのブロック回避
メインスレッド（UIスレッド）をブロックしないように、画像読み込みは必ず別のスレッドで行い、完了後にシグナル/スロットメカニズムを使ってQMLに通知します。 - 多様な非同期手法
QThread、QtConcurrent::run、QNetworkAccessManager(ネットワーク画像の場合) など、C++のあらゆる非同期メカニズムを利用して画像を読み込めます。 - 完全なC++制御
画像の読み込み、処理、メモリ管理のすべてをC++で行えます。
-
C++で画像読み込みを処理するクラスを作成
QObjectを継承し、QMLからアクセスできるようにQ_INVOKABLEメソッドやQ_PROPERTYを使用します。- 画像を読み込むメソッドは別スレッドで実行されるようにします。
- 読み込み完了時に
QPixmapをQMLに提供するシグナルを発行します。
// imageloader.h #include <QObject> #include <QPixmap> #include <QFutureWatcher> #include <QtConcurrent> // QtConcurrent::run を使用 class ImageLoader : public QObject { Q_OBJECT Q_PROPERTY(QPixmap currentImage READ currentImage NOTIFY imageLoaded) public: explicit ImageLoader(QObject *parent = nullptr); QPixmap currentImage() const { return m_currentImage; } public slots: Q_INVOKABLE void loadImageAsync(const QString &filePath); signals: void imageLoaded(); void loadingStarted(); void loadingFailed(const QString &error); private: QPixmap m_currentImage; QFutureWatcher<QPixmap> m_watcher; QPixmap loadPixmapInBackground(const QString &filePath); }; // imageloader.cpp #include "imageloader.h" #include <QDebug> ImageLoader::ImageLoader(QObject *parent) : QObject(parent) { connect(&m_watcher, &QFutureWatcher<QPixmap>::finished, this, [this]() { if (m_watcher.result().isNull()) { emit loadingFailed("Failed to load image."); } else { m_currentImage = m_watcher.result(); emit imageLoaded(); } }); } void ImageLoader::loadImageAsync(const QString &filePath) { emit loadingStarted(); QFuture<QPixmap> future = QtConcurrent::run(this, &ImageLoader::loadPixmapInBackground, filePath); m_watcher.setFuture(future); } QPixmap ImageLoader::loadPixmapInBackground(const QString &filePath) { qDebug() << "Loading image in background:" << filePath; QPixmap pixmap(filePath); // ここで例えば、画像を加工する重い処理なども追加可能 // QThread::msleep(2000); // 擬似的な遅延 return pixmap; } -
QMLエンジンにC++オブジェクトを公開
// main.cpp #include <QGuiApplication> #include <QQmlApplicationEngine> #include <QQmlContext> // QQmlContext を使用 #include "imageloader.h" int main(int argc, char *argv[]) { QGuiApplication app(argc, argv); QQmlApplicationEngine engine; ImageLoader *loader = new ImageLoader(&app); // QMLから "myImageLoader" という名前でこのオブジェクトにアクセス可能にする engine.rootContext()->setContextProperty(QStringLiteral("myImageLoader"), loader); const QUrl url(u"qrc:/YourProjectName/main.qml"_qs); QObject::connect(&engine, &QQmlApplicationEngine::objectCreationFailed, &app, []() { QCoreApplication::exit(-1); }, Qt::QueuedConnection); engine.load(url); return app.exec(); } -
QMLからC++オブジェクトを使用
// main.qml import QtQuick 2.15 import QtQuick.Window 2.15 import QtQuick.Controls 2.15 Window { width: 640 height: 480 visible: true title: "C++からの非同期画像読み込み" Column { anchors.centerIn: parent spacing: 20 Image { id: displayImage source: myImageLoader.currentImage // C++オブジェクトのプロパティにバインド width: 300 height: 200 fillMode: Image.PreserveAspectFit // 読み込み中インジケーター（C++からのシグナルと連携） BusyIndicator { anchors.centerIn: parent visible: statusText.text === "読み込み中..." running: visible } } Text { id: statusText font.pixelSize: 18 horizontalAlignment: Text.AlignHCenter width: parent.width text: "待機中" } Button { text: "画像を読み込む" anchors.horizontalCenter: parent.horizontalCenter onClicked: { myImageLoader.loadImageAsync("path/to/your/image.jpg"); // C++のメソッドを呼び出す } } } // C++からのシグナルをQMLで受け取る Connections { target: myImageLoader onLoadingStarted: { statusText.text = "読み込み中..."; displayImage.source = ""; // 以前の画像をクリア } onImageLoaded: { statusText.text = "読み込み完了！"; } onLoadingFailed: { statusText.text = "読み込みエラー: " + error; displayImage.source = ""; } } }
どちらの代替方法を選ぶべきか？
-
C++での画像読み込みとQMLへのプロパティ公開
- 画像が特定のUI要素に強く紐付いており、グローバルな画像プロバイダーの必要がない場合。
- 画像読み込みだけでなく、画像がロードされた後の他のC++ロジックと密接に連携させたい場合。
- QML側で
Image要素以外（例:ShaderEffectやCanvasなど）で画像データを利用したい場合。 QImageやQPixmapなどのC++オブジェクトを直接QMLに渡して操作したい場合。
-
QQuickImageProvider (特に QQuickAsyncImageProvider)
- QMLの
Image要素のsourceプロパティの構文 (image://) を維持したい場合。 - 複数の異なる場所で同じ画像プロバイダーのロジックを再利用したい場合。
- 画像デコードや処理の複雑なロジックをC++で一元管理したい場合。
- QMLの画像キャッシュ機構をそのまま利用したい場合。
- QMLの