【初心者向け】Qt Widgetsでドラッグ：QApplication::startDragTimeでドラッグ開始を思い通りに

QApplication::startDragTime は、Qt Widgetsライブラリにおけるドラッグ操作の開始タイミングを制御するためのプロパティです。このプロパティを設定することで、ユーザーがマウスボタンを押し続けてからドラッグ操作が開始されるまでの時間（ドラッグ開始時間）を調整することができます。

デフォルト値

デフォルトのドラッグ開始時間は500ミリ秒です。つまり、ユーザーがマウスボタンを500ミリ秒間押し続けている場合に、ドラッグ操作が開始されます。

用途

QApplication::startDragTime は、以下の用途に役立ちます。

アプリケーションの動作を特定のユースケースに合わせる
ドラッグ操作の開始をより直感的にする
ユーザーが誤操作でドラッグを開始することを防ぐ

使用方法

QApplication::startDragTime を使用するには、以下の手順に従います。

QApplication::startDragTime() メソッドを呼び出し、ドラッグ開始時間をミリ秒単位で設定します。
アプリケーションを実行します。

例

QApplication::setStartDragTime(1000); // ドラッグ開始時間を1秒に設定
QApplication app(argc, argv);
// ...

この例では、QApplication::setStartDragTime() メソッドを使用して、ドラッグ開始時間を1秒に設定しています。つまり、ユーザーがマウスボタンを1秒間押し続けている場合に、ドラッグ操作が開始されます。

QApplication::startDragTime は、ドラッグ開始距離（QApplication::startDragDistance プロパティで設定される）とは異なります。ドラッグ開始距離は、ユーザーがマウスカーソルをどれだけ移動する必要があるかを決定します。
QApplication::startDragTime は、すべてのドラッグ操作に適用されます。特定のウィジェットまたはドラッグ操作にのみ適用したい場合は、そのウィジェットまたはドラッグ操作の独自のプロパティを使用する必要があります。

#include <QApplication>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // ドラッグ開始時間を1秒に設定
  QApplication::setStartDragTime(1000);

  // ラベルを作成
  QLabel label("ドラッグして移動");
  label.setFixedSize(100, 50);

  // マウス移動イベントのハンドラを設定
  label.installEventFilter(&label);

  // ウィジェットを表示
  label.show();

  return app.exec();
}

bool QLabel::eventFilter(QEvent *event) {
  if (event->type() == QEvent::MouseMove) {
    // ドラッグ開始時間をチェック
    if (QApplication::startDragDistance() < 10) {
      return true; // ドラッグ開始距離が10ピクセル未満の場合は無視
    }

    // ドラッグ開始
    startDrag();
    return false; // イベントの処理を続行
  }

  return QLabel::eventFilter(event);
}

このコードでは、以下の処理が行われます。

QApplication::setStartDragTime() メソッドを使用して、ドラッグ開始時間を1秒に設定します。
QLabel ウィジェットを作成し、"ドラッグして移動" というテキストを表示します。
QLabel ウィジェットに eventFilter() メソッドを設定し、マウス移動イベントを処理します。
eventFilter() メソッド内で、ドラッグ開始距離が10ピクセル未満の場合はイベントを無視し、10ピクセル以上の場合はドラッグを開始します。

代替方法

以下に、QApplication::startDragTime の代替方法をいくつか紹介します。

QDragDistance::minimumThreshold() プロパティ

QDragDistance クラスには、minimumThreshold() プロパティがあります。このプロパティを設定することで、ユーザーがマウスカーソルをどれだけ移動する必要があるかを決定することができます。ユーザーがマウスカーソルを minimumThreshold() で設定された距離以上移動した場合にのみ、ドラッグ操作が開始されます。

QDragDistance distance(10); // ドラッグ開始距離を10ピクセルに設定
QApplication::setDragDistance(distance);

この例では、QDragDistance オブジェクトを作成し、minimumThreshold() プロパティを10ピクセルに設定しています。つまり、ユーザーがマウスカーソルを10ピクセル以上移動した場合にのみ、ドラッグ操作が開始されます。

カスタムイベントフィルター

class MyEventFilter : public QObject {
public:
  bool eventFilter(QObject *obj, QEvent *event) {
    if (event->type() == QEvent::MouseMove) {
      // ドラッグ開始条件をここでチェック
      if (// 条件が満たされた場合) {
        startDrag();
        return false; // イベントの処理を続行
      }
    }

    return QObject::eventFilter(obj, event);
  }
};

この例では、MyEventFilter というカスタムイベントフィルターを作成しています。eventFilter() メソッド内で、マウス移動イベントを処理し、ドラッグ開始条件を判断しています。条件が満たされた場合は、ドラッグ操作を開始し、イベントの処理を続行します。

ウィジェット固有のプロパティ

一部のウィジェットには、ドラッグ開始タイミングを制御するための独自のプロパティがあります。例えば、QListView ウィジェットには dragDropThreshold プロパティがあり、ユーザーがマウスカーソルをどれだけ移動する必要があるかを設定することができます。

最適な方法の選択

QApplication::startDragTime の代替方法を選択する際には、以下の点を考慮する必要があります。

コードの簡潔性
ドラッグ操作の複雑さ
アプリケーションの要件