Qt GUIでワンランク上のアプリケーション開発を目指す: QBackingStore::setStaticContents()を使いこなしてパフォーマンスを最適化

QBackingStore::setStaticContents()は、Qt GUIにおけるQBackingStoreクラスのメソッドであり、ウィンドウ内の静的コンテンツ領域を定義するために使用されます。静的コンテンツとは、ウィンドウ内で変化しない部分、例えば背景画像やロゴなどを指します。このメソッドを使用することで、Qtは静的コンテンツを効率的にレンダリングし、パフォーマンスを向上させることができます。

詳細

QBackingStore::setStaticContents()は、QRegionオブジェクトを引数として受け取ります。QRegionオブジェクトは、静的コンテンツ領域を定義する矩形領域の集合を表します。このメソッドは、指定された領域を静的コンテンツとしてマークし、Qtがレンダリングを最適化できるようにします。

静的コンテンツを定義する利点は次のとおりです。

メモリ使用量の削減
静的コンテンツは、ウィンドウが更新されるときに再割り当てする必要がないため、メモリ使用量を削減できます。
ティアリングの削減
静的コンテンツは、ウィンドウが更新されるときにティアリングが発生する可能性が低いため、ティアリングを削減できます。
パフォーマンスの向上
静的コンテンツは、ウィンドウが更新されるたびに再レンダリングする必要がないため、パフォーマンスを向上させることができます。

例

QBackingStore backingStore(window);
QRegion staticContents;
staticContents << QRect(0, 0, 100, 100); // 背景画像の領域
backingStore.setStaticContents(staticContents);

この例では、QBackingStoreオブジェクトを作成し、QRectオブジェクトを使用して背景画像の領域を定義するQRegionオブジェクトを作成します。その後、setStaticContents()メソッドを使用して、QRegionオブジェクトを静的コンテンツ領域として設定します。

静的コンテンツ領域は、ウィンドウのサイズよりも大きくすることはできません。
静的コンテンツ領域を変更するには、setStaticContents()メソッドを再度呼び出す必要があります。
QBackingStore::setStaticContents()は、ウィンドウが作成された後にのみ呼び出すことができます。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QPainter>
#include <QBackingStore>
#include <QRegion>

class MyWindow : public QMainWindow {
public:
    MyWindow() {
        // 背景画像を読み込む
        QImage image("background.png");

        // 背景画像の領域を定義する
        QRegion staticContents;
        staticContents << QRect(0, 0, image.width(), image.height());

        // QBackingStoreオブジェクトを作成する
        QBackingStore backingStore(this);

        // 静的コンテンツ領域を設定する
        backingStore.setStaticContents(staticContents);

        // ウィンドウを設定する
        resize(image.width(), image.height());
        setCentralWidget(new QWidget());
    }

protected:
    void paintEvent(QPaintEvent *event) override {
        // 背景画像を描画する
        QPainter painter(this);
        painter.drawImage(0, 0, backgroundImage);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);
    MyWindow window;
    window.show();
    return app.exec();
}

このコードでは、次のことが行われます。

背景画像を読み込みます。
背景画像の領域を定義するQRegionオブジェクトを作成します。
QBackingStoreオブジェクトを作成します。
静的コンテンツ領域をQBackingStoreオブジェクトに設定します。
ウィンドウのサイズを設定します。
paintEvent()メソッドで背景画像を描画します。

QPainter::beginRegion() と QPainter::endRegion() を使用する

QPainter::beginRegion()とQPainter::endRegion()メソッドを使用して、静的コンテンツ領域を定義することができます。この方法は、QBackingStore::setStaticContents()よりも柔軟性がありますが、パフォーマンスが低くなる可能性があります。

void paintEvent(QPaintEvent *event) {
    QPainter painter(this);

    // 静的コンテンツ領域を開始する
    painter.beginRegion(staticContents);

    // 静的コンテンツを描画する
    painter.drawImage(0, 0, backgroundImage);

    // 静的コンテンツ領域を終了する
    painter.endRegion();
}

QGLWidget を使用する

OpenGL を使用して描画を行うアプリケーションの場合は、QGLWidgetを使用することができます。QGLWidgetは、独自のレンダリングエンジンを使用するため、QBackingStoreよりも効率的に静的コンテンツを描画することができます。

カスタムレンダリングエンジンを使用する

高度な制御が必要な場合は、独自のレンダリングエンジンを使用することができます。これは、複雑な静的コンテンツを描画したり、特殊なエフェクトを適用したりする場合に役立ちます。

静的コンテンツを画像として保存する

静的コンテンツが頻繁に変更されない場合は、静的コンテンツを画像として保存し、ウィンドウに表示することができます。これは、パフォーマンスを向上させるための簡単な方法ですが、柔軟性に欠けます。

開発者のスキルと経験。
アプリケーションのパフォーマンス要件。
静的コンテンツが複雑かどうか。
静的コンテンツが頻繁に変更されるかどうか。