Qt Widgets: QGraphicsItemをQGraphicsObjectに変換する魔法の関数 QGraphicsItem::toGraphicsObject()

QGraphicsItem::toGraphicsObject()は、QGraphicsItemをQGraphicsObjectにキャストして返す関数です。QGraphicsItemは、Qtのグラフィックスシーンで使用されるすべてのグラフィックスアイテムの基底クラスです。一方、QGraphicsObjectは、QGraphicsItemに追加機能を提供するサブクラスです。

用途

QGraphicsItem::toGraphicsObject()は、以下の状況で役立ちます。

QGraphicsItemがQGraphicsObjectかどうかを確認する必要がある場合
QGraphicsItemをQGraphicsObjectの関数に渡す必要がある場合

例

QGraphicsItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));
QGraphicsObject* object = item->toGraphicsObject();

if (object) {
  // objectをQGraphicsObjectとして使用
} else {
  // itemはQGraphicsObjectではない
}

注意点

QGraphicsItem::toGraphicsObject()は、QGraphicsItemが実際にQGraphicsObjectである場合のみ、有効なQGraphicsObjectポインタを返します。そうでない場合は、nullptrを返します。

この関数は、Qt 4.4以降で使用できます。
QGraphicsItem::toGraphicsObject()は、静的関数です。

例 1: QGraphicsItem を QGraphicsObject にキャストする

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsEllipseItem>

int main() {
  // QGraphicsSceneを作成
  QGraphicsScene scene;

  // QGraphicsEllipseItemを作成
  QGraphicsEllipseItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));

  // itemをsceneに追加
  scene.addItem(item);

  // itemをQGraphicsObjectにキャスト
  QGraphicsObject* object = item->toGraphicsObject();

  // objectをQGraphicsObjectとして使用
  if (object) {
    // objectの位置を設定
    object->setPos(50, 50);
  }

  return 0;
}

このコードでは、QGraphicsEllipseItem を作成し、シーンに追加します。次に、item を QGraphicsObject にキャストして、setPos() 関数を使用してその位置を設定します。

例 2: QGraphicsItem が QGraphicsObject かどうかを確認する

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsEllipseItem>

int main() {
  // QGraphicsSceneを作成
  QGraphicsScene scene;

  // QGraphicsEllipseItemを作成
  QGraphicsEllipseItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));

  // itemをsceneに追加
  scene.addItem(item);

  // itemがQGraphicsObjectかどうかを確認
  bool isObject = item->toGraphicsObject() != nullptr;

  if (isObject) {
    // itemはQGraphicsObjectである
  } else {
    // itemはQGraphicsObjectではない
  }

  return 0;
}

このコードでは、QGraphicsEllipseItem を作成し、シーンに追加します。次に、item が QGraphicsObject かどうかを確認します。item が QGraphicsObject である場合、isObject 変数は true になります。

これらの例では、QGraphicsEllipseItem を使用しています。他の QGraphicsItem サブクラスでも同様に動作します。

dynamic_cast<QGraphicsObject*>(item)

dynamic_cast 演算子は、ランタイムにポインタ型を別の型に安全にキャストするために使用できます。QGraphicsItem::toGraphicsObject() と同様に、dynamic_cast は成功した場合に QGraphicsObject ポインタを返し、失敗した場合に nullptr を返します。

QGraphicsItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));
QGraphicsObject* object = dynamic_cast<QGraphicsObject*>(item);

if (object) {
  // objectをQGraphicsObjectとして使用
} else {
  // itemはQGraphicsObjectではない
}

item->isGraphicsObject() && static_cast<QGraphicsObject*>(item)

この方法は、2つのステップで構成されています。

item->isGraphicsObject() を呼び出して、item が実際に QGraphicsObject であるかどうかを確認します。
static_cast<QGraphicsObject*>(item) を呼び出して、item を QGraphicsObject に静的にキャストします。

この方法は、dynamic_cast と同様に動作しますが、コンパイラによる警告が発生する可能性があります。

QGraphicsItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));

if (item->isGraphicsObject()) {
  QGraphicsObject* object = static_cast<QGraphicsObject*>(item);
  // objectをQGraphicsObjectとして使用
} else {
  // itemはQGraphicsObjectではない
}

qobject_cast<QGraphicsObject*>(item)

qobject_cast マクロは、QObject 派生クラスのポインタを別の QObject 派生クラスのポインタに安全にキャストするために使用できます。QGraphicsItem と QGraphicsObject はどちらも QObject 派生クラスであるため、qobject_cast を使用して item を QGraphicsObject にキャストできます。

QGraphicsItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));
QGraphicsObject* object = qobject_cast<QGraphicsObject*>(item);

if (object) {
  // objectをQGraphicsObjectとして使用
} else {
  // itemはQGraphicsObjectではない
}

typeid(item) == typeid(QGraphicsObject)

この方法は、typeid 演算子を使用して、item の型を QGraphicsObject の型と比較します。この方法は、item が実際に QGraphicsObject であるかどうかを厳密にチェックする場合に役立ちます。

QGraphicsItem* item = new QGraphicsEllipseItem(QRectF(0, 0, 100, 100));

if (typeid(item) == typeid(QGraphicsObject)) {
  QGraphicsObject* object = static_cast<QGraphicsObject*>(item);
  // objectをQGraphicsObjectとして使用
} else {
  // itemはQGraphicsObjectではない
}

どの方法を選択すべきか

どの方法を選択するかは、状況によって異なります。一般的には、以下のガイドラインに従うことをお勧めします。

item が QGraphicsObject であるかどうかを厳密にチェックする必要がある場合は、typeid(item) == typeid(QGraphicsObject) を使用します。
item が QGraphicsObject である可能性が高いが、確実ではない場合は、item->isGraphicsObject() と static_cast または qobject_cast の組み合わせを使用します。
item が確実に QGraphicsObject であることがわかっている場合は、QGraphicsItem::toGraphicsObject() または dynamic_cast を使用するのが最善です。

これらの代替方法は、Qt 4.4以降で使用できます。