Qt Widgets:QGraphicsItem::setFlags()でアイテムの動きを自由自在に


QGraphicsItem::setFlags()は、Qt Widgetsライブラリにおける重要な関数の一つであり、QGraphicsItemクラスのインスタンスに対して様々なフラグを設定することで、そのアイテムの動作や振る舞いを制御することができます。この関数は、アイテムの可視性、選択可能性、移動可能性、フォーカス受容性、イベント処理の有無など、様々な属性を操作するために使用されます。

構文

void QGraphicsItem::setFlags(QGraphicsItemFlags flags);

引数

  • flags: 設定するフラグをビットマスク形式で指定します。複数のフラグを同時に設定するには、ビットワイズOR演算子(|)を使用します。

利用可能なフラグ

QGraphicsItemFlags enumには、様々なフラグが定義されています。主なフラグとその説明は以下の通りです。

  • ItemIsEnabled: アイテムが有効かどうかを制御します。(デフォルト: true)
  • ItemIsHidden: アイテムが非表示かどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsZSensitive: アイテムがZ軸方向のイベント処理に参加するかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsAChild: アイテムが別のアイテムの子アイテムであるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIgnoresGeometryChanges: アイテムのジオメトリ変更を無視するかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsClipped: アイテムが他のアイテムによってクリップされるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemClipsChildren: アイテムの子アイテムがアイテムの境界内にクリップされるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemAcceptsMouseButtons: アイテムがマウスボタンイベントを受け付けるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemAcceptsHoverEvents: アイテムがマウスホバーイベントを受け付けるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemSendsScenePositionChanges: アイテムの位置が変更されたときに、シーンに信号を送信するかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsFocusable: アイテムがフォーカスを受け取れるかどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsMovable: アイテムが移動可能かどうかを制御します。(デフォルト: false)
  • ItemIsSelectable: アイテムが選択可能かどうかを制御します。(デフォルト: true)

// アイテムが選択可能で、移動可能で、フォーカスを受け取れるように設定します。
item->setFlags(QGraphicsItem::ItemIsSelectable | QGraphicsItem::ItemIsMovable | QGraphicsItem::ItemIsFocusable);

// アイテムがマウスホバーイベントとマウスボタンイベントを受け付けるように設定します。
item->setFlags(item->flags() | QGraphicsItem::ItemAcceptsHoverEvents | QGraphicsItem::ItemAcceptsMouseButtons);

// アイテムが非表示になります。
item->setFlags(item->flags() | QGraphicsItem::ItemIsHidden);
  • 特定のフラグの設定は、他のフラグの設定と互いに排他的である場合があります。
  • フラグの設定は、アイテムの子アイテムにも影響を与える場合があります。
  • フラグの設定は、アイテムがシーンに追加された後に行う必要があります。


#include <QGraphicsItem>

class MyItem : public QGraphicsItem
{
public:
    MyItem()
    {
        // アイテムを移動可能にする
        setFlags(ItemIsMovable);
    }

    // ...
};

例2: アイテムがマウスホバーイベントとマウスボタンイベントを受け付けるようにする

この例では、QGraphicsItemクラスのインスタンスに対してItemAcceptsHoverEventsItemAcceptsMouseButtonsフラグを設定することで、アイテムがマウスホバーイベントとマウスボタンイベントを受け付けるようにします。

#include <QGraphicsItem>

class MyItem : public QGraphicsItem
{
public:
    MyItem()
    {
        // アイテムがマウスホバーイベントとマウスボタンイベントを受け付けるようにする
        setFlags(ItemAcceptsHoverEvents | ItemAcceptsMouseButtons);
    }

    // マウスホバーイベント処理
    void hoverEnterEvent(QGraphicsHoverEvent *event) override
    {
        // ...
    }

    void hoverLeaveEvent(QGraphicsHoverEvent *event) override
    {
        // ...
    }

    // マウスボタンイベント処理
    void mousePressEvent(QGraphicsMouseEvent *event) override
    {
        // ...
    }

    void mouseReleaseEvent(QGraphicsMouseEvent *event) override
    {
        // ...
    }

    // ...
};

例3: アイテムを非表示にする

この例では、QGraphicsItemクラスのインスタンスに対してItemIsHiddenフラグを設定することで、アイテムを非表示にします。

#include <QGraphicsItem>

class MyItem : public QGraphicsItem
{
public:
    MyItem()
    {
        // アイテムを非表示にする
        setFlags(ItemIsHidden);
    }

    // ...
};


代替方法

以下に、QGraphicsItem::setFlags()の代替方法として考えられるいくつかの方法をご紹介します。

  • 個別プロパティの設定: QGraphicsItemクラスは、様々なプロパティを提供しており、これらのプロパティを個別に設定することで、アイテムの動作を制御することができます。例えば、setFlag()unsetFlag()メソッドを使用して、特定のフラグのみを設定または解除することができます。
// アイテムが選択可能になるように設定します。
item->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

// アイテムが非表示になるように設定します。
item->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsHidden, true);
  • イベントハンドラの実装: アイテムが特定のイベントを処理するようにするには、イベントハンドラを実装することができます。例えば、mousePressEvent()メソッドをオーバーライドすることで、マウスボタンクリックイベントを処理することができます。
void MyItem::mousePressEvent(QGraphicsMouseEvent *event) override
{
    // ...
}
  • 状態マシンの使用: アイテムの動作をより複雑に制御するには、状態マシンを使用することができます。状態マシンは、アイテムの状態と、各状態におけるアイテムの動作を定義することができます。
class MyItem : public QGraphicsItem
{
public:
    MyItem()
    {
        // 状態マシンを作成
        stateMachine = new QStateMachine(this);

        // 状態を定義
        QState *hiddenState = new QState(stateMachine);
        QState *visibleState = new QState(stateMachine);

        // 状態間の遷移を定義
        hiddenState->addTransition(this, SIGNAL(showRequested()), visibleState);
        visibleState->addTransition(this, SIGNAL(hideRequested()), hiddenState);

        // 初期状態を設定
        stateMachine->setInitialState(hiddenState);

        // 状態マシンの開始
        stateMachine->start();
    }

    // ...

signals:
    void showRequested();
    void hideRequested();
};

それぞれの方法の利点と欠点

それぞれの方法には、それぞれ利点と欠点があります。

  • 状態マシンの使用: 利点は複雑な動作を制御しやすいことです。欠点は、学習曲線が少し高くなることです。
  • イベントハンドラの実装: 利点は柔軟性に富んだことです。欠点は、コードが煩雑になる可能性があることです。
  • 個別プロパティの設定: 利点はシンプルで分かりやすいことです。欠点は、複雑な動作を制御するには不向きなことです。