Qt GUIで3Dグラフィックスの奥行き感を表現：QTransform::m13()とQVector3D::project()の比較

Qt GUI において、2D グラフィックスの描画や操作に欠かせないのが QTransform クラスです。このクラスは、座標変換を定義する 3x3 行列を操作するための様々なメソッドを提供します。その中でも、m13() メソッドは、水平投影因子と呼ばれる重要な役割を担っています。

水平投影因子とは？

3D 空間における投影変換では、3D 座標を 2D 平面に投影する際に、奥行き情報に基づいて座標を調整する必要があります。この調整を司る要素が、水平投影因子と垂直投影因子です。

QTransform における水平投影因子 m13 は、X 軸方向に投影された座標に与えられるスケーリング効果を表します。具体的には、3D 座標 (x, y, z) を 2D 座標 (x', y') に投影する際、以下の式で x' が計算されます。

x' = x * m11 + y * m12 + z * m13

ここで、m11 と m12 は、X 軸方向と Y 軸方向のスケーリングをそれぞれ表す要素です。

m13() メソッドの役割

m13() メソッドは、現在の QTransform オブジェクトにおける水平投影因子 m13 の値を取得します。この値は、以下の用途で活用できます。

• カメラ位置の表現
  カメラが奥方向に移動すると、オブジェクトは小さくなります。この効果をシミュレートするために、m13 を調整することができます。
• 透視投影の制御
  透視投影では、奥行き情報に基づいてオブジェクトを小さく表示する効果が得られます。m13 を適切に設定することで、この効果を制御することができます。
• 3D 座標の投影変換
  上記の式で示したように、m13 は 3D 座標を 2D 座標に投影する際のスケーリング効果を調整するために使用できます。

QTransform transform;

// 水平投影因子を設定
transform.setMatrix(1.0, 0.0, 0.0, 0.0, 1.0, 0.0, 0.0, 0.0, 1.0);

// 水平投影因子を取得
qreal projectionFactor = transform.m13();

// 取得した投影因子を使用して、3D 座標を 2D 座標に投影
QPoint2D projectedPoint = transform.map(QPoint3D(x, y, z));

---

#include <QApplication>
#include <QPainter>
#include <QTransform>

class CubeWidget : public QWidget {
public:
    CubeWidget(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent) {
        setWindowTitle("Qt 3D Cube Projection");
        setFixedSize(250, 250);
    }

protected:
    void paintEvent(QPaintEvent *event) override {
        QPainter painter(this);

        // カメラ位置の調整
        QTransform cameraTransform;
        cameraTransform.translate(0, 0, -50); // カメラを奥方向に移動

        // キューブの描画
        QVector3D vertices[8] = {
            { 0.5, 0.5, 0.5 }, { -0.5, 0.5, 0.5 }, { -0.5, -0.5, 0.5 }, { 0.5, -0.5, 0.5 },
            { 0.5, 0.5, -0.5 }, { -0.5, 0.5, -0.5 }, { -0.5, -0.5, -0.5 }, { 0.5, -0.5, -0.5 }
        };

        QVector3D edges[12] = {
            { vertices[0], vertices[1] }, { vertices[1], vertices[2] }, { vertices[2], vertices[3] }, { vertices[3], vertices[0] },
            { vertices[4], vertices[5] }, { vertices[5], vertices[6] }, { vertices[6], vertices[7] }, { vertices[7], vertices[4] },
            { vertices[0], vertices[4] }, { vertices[1], vertices[5] }, { vertices[2], vertices[6] }, { vertices[3], vertices[7] }
        };

        painter.setPen(Qt::black);

        // 透視投影を適用
        painter.setTransform(cameraTransform);

        for (const QVector3D& edge : edges) {
            painter.drawLine(painter.project(edge.x(), edge.y(), edge.z()),
                            painter.project(edge.x() + 1, edge.y(), edge.z()));
        }
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    CubeWidget widget;
    widget.show();

    return app.exec();
}

コード解説

1. CubeWidget クラス:

   • paintEvent() メソッド内で、3D キューブの頂点と辺を定義するベクトルを準備します。
   • カメラ位置を調整するための QTransform オブジェクトを作成します。
   • キューブの辺を描画するために、painter.project() 関数を使用して、3D 座標を 2D 座標に投影します。

2. main() 関数:

   • QApplication オブジェクトを作成し、イベントループを開始します。
   • CubeWidget オブジェクトを作成し、表示します。

実行結果

このコードを実行すると、以下の画像のような、透視投影で描画された 3D キューブが表示されます。カメラ位置を移動することで、キューブが奥行き方向に小さくなる様子を視覚的に確認できます。

• 3D グラフィックスの投影変換については、より深く理解するために、数学的な知識が必要となります。
• このコードはあくまで一例であり、より複雑な 3D グラフィックス処理を実現するために、QTransform クラスの他のメソッドや、Qt 3D モジュールなどのライブラリを活用することもできます。

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代替方法

1. • QTransform オブジェクトは、3x3 行列で表されます。したがって、行列操作を用いて、直接 m13 要素を取得することができます。

   QTransform transform;
   
   //行列を取得
   const QMatrix matrix = transform.matrix();
   
   // m13 要素を取得
   qreal projectionFactor = matrix.data()[8];
   

2. QVector3D::project() 関数
   

   • QVector3D::project() 関数は、3D 座標を 2D 座標に投影する際に、水平投影因子を考慮した座標を返します。

   QVector3D point3D(x, y, z);
   
   // 2D 座標を取得
   QPoint2D projectedPoint = painter.project(point3D);
   
   // 水平投影因子を計算
   qreal projectionFactor = point3D.z() / projectedPoint.z();
   

3. カスタム投影行列
   

   • より高度な制御が必要な場合は、カスタム投影行列を作成することができます。この行列には、独自の水平投影因子を設定することができます。

   QMatrix customProjectionMatrix;
   
   // カスタム投影行列を設定
   customProjectionMatrix.perspective(60.0, aspectRatio, 0.1, 100.0);
   
   // カスタム投影行列を使用して、3D 座標を 2D 座標に投影
   QPoint2D projectedPoint = painter.transform(customProjectionMatrix).map(point3D);
   

注意事項

• QTransform::m13() メソッドは、Qt GUI における標準的な方法であり、多くの場合で十分な機能を提供します。
• 行列操作やカスタム投影行列の作成には、数学的な知識が必要となります。
• 上記の代替方法は、それぞれ異なる用途や利点・欠点があります。状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。