【Qt入門】QTreeViewとQStandardItemModelでツリー表示を作成する方法

2025-05-27

具体的には、以下の形式で使われることが一般的です。

QTreeView::QTreeView(QWidget *parent = nullptr)

このコンストラクタの意味合いは以下の通りです。

  • QWidget *parent = nullptr: これはコンストラクタが受け取る引数です。

    • QWidget *parent: このQTreeViewが配置される親ウィジェットへのポインタです。親を設定することで、ウィジェットのライフサイクル(親が破棄されると子も自動的に破棄されるなど)やレイアウト管理が自動的に行われます。
    • = nullptr: これはデフォルト引数です。もし親を指定しない場合、nullptrが使われます。nullptrを指定した場合、そのQTreeViewは独立したトップレベルウィンドウとして振る舞います。
  • QTreeView(): これは、QTreeViewクラスのコンストラクタ(オブジェクトを初期化するための特殊な関数)です。


  • : これはC++におけるスコープ解決演算子で、QTreeViewクラスのメンバーであることを示します。

  • QTreeView: これは、Qtのウィジェットの1つで、階層的なデータをツリー構造で表示するために設計されています。例えば、ファイルシステムのエクスプローラーのように、フォルダとファイルが階層的に表示されるようなUIを構築する際に使われます。



ここでは、QTreeView::QTreeView()に関連する一般的なエラーとトラブルシューティングについて説明します。

QTreeView::QTreeView()に関連する一般的なエラーとトラブルシューティング

コンストラクタ呼び出しの誤り(C++の基本)

これはQTreeViewに限らず、C++のオブジェクト生成における基本的なエラーです。

  • トラブルシューティング

    • オブジェクトをポインタとして使用する場合は、new演算子で動的に確保し、ポインタで受け取るようにします。
      QTreeView *treeView = new QTreeView(this); // 'this' は親ウィジェットを指す
      
    • スタック上で確保する場合は、ポidンタとして扱わないように注意します。
      QTreeView treeView; // スタック上で作成
      // treeView.setModel(...); // ポインタではないのでドット演算子
      
    • 親ウィジェットを渡す場合、そのポインタが有効なQWidgetオブジェクトを指していることを確認してください。通常は、QMainWindowQWidgetから派生したカスタムウィジェットのコンストラクタ内で、thisポインタを親として渡すことが多いです。
    • QTreeView myTreeView; (スタック上のオブジェクト) の後に、ポインタとして扱おうとする。
    • QTreeView *myTreeView = new QTreeView(someInvalidParent); (無効な親ウィジェットへのポインタを渡す)

モデルが設定されていない(最も一般的!)

QTreeViewは、表示するデータを知るために「モデル」が必要です。モデルを設定しないと、ツリービューは何も表示しません。

  • トラブルシューティング

    • モデルの作成
      QStandardItemModelQFileSystemModelQStringListModelなど、表示したいデータの種類に応じたモデルを作成します。カスタムデータの場合は、QAbstractItemModelから派生した独自のモデルを作成する必要があります。
      QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(this);
      // モデルにデータを追加する処理 (例: rootItem->appendRow(...))
      
    • モデルの設定
      QTreeViewsetModel()メソッドを使って、作成したモデルを設定します。
      QTreeView *treeView = new QTreeView(this);
      treeView->setModel(model);
      
    • デバッグ
      model->rowCount()model->columnCount()などを呼び出して、モデル自体にデータが正しく入っているか確認します。
  • 問題の症状

    • QTreeViewウィジェットが表示されるが、何も表示されない(空のまま)。
    • 実行時エラーは発生しないが、期待するデータが表示されない。

モデルのデータが不適切、または更新されない

モデルは設定したが、データが正しくない、またはモデルのデータが変更されてもビューに反映されない。

  • トラブルシューティング

    • モデルのデータ確認
      モデルにデータが正しく追加されているか、デバッガを使って確認します。特に、QStandardItemを使用している場合、アイテムにテキストが設定されているか、子アイテムが追加されているかなどを確認します。
    • モデルのシグナル発火
      モデルのデータが変更された場合、ビューが更新されるように、モデルから適切なシグナル(例: dataChanged(), rowsInserted(), rowsRemoved()など)が発火していることを確認します。カスタムモデルを作成している場合、これらのシグナルを自分で発火させる必要があります。
      • 例: アイテムのテキストを変更した場合
        QModelIndex index = model->index(row, column);
        model->setData(index, "New Text", Qt::DisplayRole);
        // setData() は通常、内部で dataChanged() シグナルを発火させるべき
        
    • data()メソッドの実装
      カスタムモデルの場合、data()メソッドがQt::DisplayRoleなどの適切なロールで正しいデータを返しているか確認します。
    • columnCount()とrowCount()の実装
      カスタムモデルの場合、これらのメソッドが正しい行数と列数を返していることを確認します。
  • 問題の症状

    • 表示されるデータが間違っている、または一部しか表示されない。
    • モデルのデータが変更されたのに、QTreeViewの表示が更新されない。

デリゲートの問題(あまり一般的ではないが、表示に影響)

QTreeViewは、データ表示だけでなく、データの編集などにも「デリゲート」を使用します。デリゲートに問題があると、表示がおかしくなったり、編集ができなかったりします。

  • トラブルシューティング

    • QItemDelegateやカスタムデリゲートを使用している場合、そのpaint()createEditor()setEditorData()setModelData()などのメソッドが正しく実装されているか確認します。
    • 特に、異なるQt::ItemDataRole(例: Qt::CheckStateRole, Qt::DecorationRole)を使用している場合、モデルのdata()メソッドがこれらのロールに対して正しいデータを返し、デリゲートがそれを適切に描画しているか確認します。
  • 問題の症状

    • アイテムの表示が期待と異なる(例: チェックボックスが表示されない、画像が表示されない)。
    • アイテムの編集ができない、または編集しても反映されない。

レイアウトの問題

QTreeView自体が親ウィジェットのレイアウトに正しく配置されていない場合、表示されないことがあります。

  • トラブルシューティング

    • QTreeViewQVBoxLayoutQHBoxLayoutQGridLayoutなどのレイアウトマネージャに追加していることを確認します。
    • stretchsetStretchFactorなどのレイアウトプロパティが適切に設定されているか確認します。
    • setSizePolicy()メソッドを使って、ウィジェットのサイズ変更ポリシーを設定することも有効です。
  • 問題の症状

    • QTreeViewが全く見えない、またはサイズが小さすぎる。

メモリ管理の問題

QTreeViewオブジェクトや関連するモデルオブジェクトが正しく解放されていないと、メモリリークやクラッシュの原因になります。

  • トラブルシューティング

    • newで作成したQTreeViewやモデルオブジェクトは、必要なくなったときにdeleteするか、親オブジェクトに所有権を委譲(親ウィジェットのコンストラクタにthisを渡すなど)して、親が破棄されるときに自動的に子も破棄されるようにします。
    • Qtのオブジェクトツリーは、親を指定することでメモリ管理を容易にします。できる限り親を指定するようにしましょう。
  • 問題の症状

    • アプリケーションが実行中に徐々にメモリを消費し続ける。
    • アプリケーション終了時にクラッシュする。

これらのポイントを確認することで、QTreeViewを効果的に使用し、一般的な問題を解決できるはずです。特にモデルとの連携は非常に重要なので、モデルのデータとシグナルに注意を払ってください。 QTreeView::QTreeView()自体は単なるコンストラクタであり、それ自体に直接関連するエラーはあまりありません。しかし、QTreeViewとその周辺の「モデル/ビュー」アーキテクチャ全体を扱う際に発生しやすい共通のエラーと、そのトラブルシューティングについて説明します。

QTreeView の一般的なエラーとトラブルシューティング

QTreeView はQtのモデル/ビューアーキテクチャのビュー部分であり、データ(モデル)と表示(ビュー)が分離されています。そのため、エラーの多くはモデルとの連携やデータの更新方法に関するものです。

ツリーが表示されない、データが空っぽに見える

原因

  • 親子関係の不整合
    カスタムモデルで、parent()メソッドが正しい親インデックスを返していなかったり、index()メソッドとparent()メソッドの間で整合性が取れていない場合。
  • index()メソッドの実装ミス
    カスタムモデルでindex()メソッドが正しく実装されておらず、ビューがアイテムのインデックスを取得できない場合。
  • data()メソッドの実装ミス
    モデルのdata()メソッドが、Qt::DisplayRoleに対して表示すべきデータを返していない、あるいは無効なQVariantを返している場合。
  • モデルが空
    設定したモデル自体が、rowCount()columnCount()で適切な値を返していない(0を返しているなど)場合。
  • モデルが設定されていない
    QTreeViewを作成しただけで、setModel()を使ってデータを提供するモデル(QStandardItemModelやカスタムモデルなど)を設定していない場合。

トラブルシューティング

  • 簡単なテストモデルで試す
    最小限のテストデータを持つQStandardItemModelなど、Qtが提供する標準モデルをQTreeViewに設定してみて、表示されるか確認します。これで表示されるなら、問題はあなたのカスタムモデルにある可能性が高いです。
  • モデルのデバッグ
    • モデルのrowCount(), columnCount(), data(), index(), parent()メソッドにデバッグ出力(qDebug())を追加し、期待通りの値が返されているか確認します。
    • Qtが提供するmodeltestツール(Qtソースコードのtools/modeltestにある)を使用して、カスタムモデルの実装がQtのモデル/ビューのガイドラインに沿っているか検証します。これは非常に強力なデバッグツールです。
  • setModel()の確認
    QTreeViewを作成したら、必ずtreeView->setModel(myModel);のようにモデルを設定しているか確認してください。

データが更新されない、または部分的にしか更新されない

原因

  • データの変更がモデルを介していない
    モデルの内部データを直接変更してしまい、モデルのメソッド(例: setData(), insertRows(), removeRows()など)を介して変更していない場合。モデルのメソッドを介することで、自動的に適切なシグナルが発行されます。
  • 不適切なシグナルの発行
    • データの変更なのに、構造の変更(行の追加/削除)に関するシグナルを発行してしまっている。
    • dataChanged()シグナルのtopLeftbottomRightQModelIndexの範囲が正しくない場合。
    • モデルの構造が大きく変わるのに、beginResetModel()endResetModel()を呼び出していない場合。
  • モデルのシグナルが発行されていない
    モデルのデータが変更された際に、ビューに通知するために適切なシグナル(dataChanged(), rowsInserted(), rowsRemoved(), modelReset()など)を発行していない場合。

トラブルシューティング

  • モデルのメソッド経由でのデータ変更
    データの変更は、必ずモデルのsetData()などのメソッドを通じて行い、直接プライベートなメンバー変数を変更しないようにします。
  • シグナル/スロットの確認
    • モデルのデータ変更箇所で、適切なシグナルが発行されているか確認します。特にカスタムモデルを使用している場合、これらのシグナルの発行は開発者の責任です。
    • dataChanged(topLeft, bottomRight, roles): 特定の範囲のデータが変更された場合。
    • rowsInserted(parent, first, last): 行が追加された場合(必ずbeginInsertRows()endInsertRows()で囲む)。
    • rowsRemoved(parent, first, last): 行が削除された場合(必ずbeginRemoveRows()endRemoveRows()で囲む)。
    • modelReset(): モデル全体の構造が大きく変わった場合(必ずbeginResetModel()endResetModel()で囲む)。

スクロールが遅い、またはUIがフリーズする

原因

  • Lazy Loading(遅延ロード)の未実装
    大量のデータを持つモデルの場合、ビューが表示を要求するまでデータを読み込まない「遅延ロード」の仕組み(WorkspaceMore()canFetchMore())がモデルに実装されていない場合。
  • 不要な再描画
    モデルの更新シグナルが頻繁に発行されすぎたり、広すぎる範囲を指定しているために、ビューが過剰に再描画されている場合。
  • data()メソッドのパフォーマンス問題
    モデルのdata()メソッド内で重い処理(データベースアクセス、ネットワークI/Oなど)が行われている場合。ビューが可視領域のすべてのアイテムのデータを要求するたびに、この重い処理が繰り返されるため、UIの応答性が著しく低下します。

トラブルシューティング

  • setUniformRowHeights(true)
    すべての行の高さが同じであれば、QTreeView::setUniformRowHeights(true)を設定することで描画パフォーマンスが向上する場合があります。
  • Lazy Loadingの実装
    大量のデータを持つモデルの場合、QAbstractItemModelWorkspaceMore()canFetchMore()を実装して、ビューが表示を要求したときにのみデータを読み込むようにします。
  • シグナルの粒度の調整
    • dataChanged()シグナルを発行する際、必要最小限の範囲を指定します。
    • 全体をリセットする必要がない限り、modelReset()の使用は避けます。
  • data()メソッドの最適化
    • data()メソッド内で重い処理を行わないようにします。データは事前にキャッシュしておくか、非同期で読み込むようにします。
    • デバッグツール(プロファイラなど)を使用して、data()メソッドのボトルネックを特定します。

アイテムの選択挙動がおかしい

原因

  • カスタムイベントハンドラでの問題
    QTreeViewのイベント(特にマウスイベント)をオーバーライドしている場合、基底クラスのイベントハンドラを呼び出していないと、Qt本来の選択挙動が損なわれることがあります。
  • selectionModeの設定ミス
    setSelectionMode()で、期待しない選択モード(単一選択、複数選択、範囲選択など)を設定している場合。

トラブルシューティング

  • selectionModel()のデバッグ
    QTreeViewが使用するQItemSelectionModelを直接操作している場合は、その挙動を慎重に確認します。
  • イベントハンドラのオーバーライド
    もしmousePressEventなどをオーバーライドしている場合は、必ずQTreeView::mousePressEvent(event);のように基底クラスのメソッドを呼び出して、Qtに本来のイベント処理を行わせるようにします。
  • setSelectionMode()の確認
    QAbstractItemView::SelectionModeの適切な値を設定しているか確認します。

ヘッダーや列の表示がおかしい

原因

  • 列の可視性設定
    setColumnHidden()などで意図せず列を非表示にしている場合。
  • columnCount()のミス
    モデルのcolumnCount()が、実際の列数と一致しない値を返している場合。
  • headerData()メソッドの未実装/ミス
    モデルのheaderData()メソッドが、Qt::DisplayRoleで適切なヘッダーテキストを返していない場合。

トラブルシューティング

  • 列の可視性
    treeView->isColumnHidden(columnIndex)で列が非表示になっていないか確認します。
  • columnCount()の確認
    モデルが返す列数が正しいか確認します。
  • headerData()の実装確認
    モデルのheaderData()が正しくヘッダー情報を返しているか確認します。
  • Model Testツールを使用する
    カスタムモデルを開発している場合、modeltestは必須のデバッグツールです。Qtのソースコードからビルドして使用できます。
  • 最小限の再現コードを作成する
    問題が発生した場合、その問題を再現できる最小限のコードスニペットを作成してみてください。これにより、問題の原因を絞り込みやすくなります。
  • Qtのドキュメントを参照する
    QTreeViewQAbstractItemModelのドキュメントには、実装に関する詳細な情報と注意点が記載されています。特に、モデルの必須メソッドやシグナルに関する説明はよく読んでください。
  • qDebug()を積極的に利用する
    モデルのメソッドがいつ、どのような値で呼ばれているかを確認するために、qDebug()を挿入することは非常に有効です。


QtにおけるQTreeView::QTreeView()の具体的なプログラミング例をいくつかご紹介します。このコンストラクタ自体は非常にシンプルですが、QTreeViewを実際に機能させるためには、モデルの設定が不可欠です。ここでは、最も一般的なQStandardItemModelを使った例と、ファイルシステムを表示する例を挙げます。

基本的なQTreeViewの作成とQStandardItemModelを使った表示

この例では、QStandardItemModelを使用して簡単なツリー構造のデータを作成し、それをQTreeViewに表示します。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QMainWindow window;
    window.setWindowTitle("QTreeView Example: Basic StandardItemModel");
    window.resize(400, 300);

    // QTreeViewを生成
    // 親ウィジェットとして&windowを指定
    QTreeView *treeView = new QTreeView(&window);

    // QStandardItemModelを生成
    QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel();
    model->setColumnCount(1); // 1列のみ表示 (デフォルトは1列)
    model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "Items"); // ヘッダーを設定

    // ルートアイテムを作成 (モデルの目に見えないルート)
    // このモデルではルートアイテムは不要ですが、概念的には存在します。

    // 親アイテム (トップレベル) を作成
    QStandardItem *parentItem1 = new QStandardItem("Parent 1");
    QStandardItem *parentItem2 = new QStandardItem("Parent 2");

    // 子アイテムを作成し、親に追加
    QStandardItem *childItem1_1 = new QStandardItem("Child 1.1");
    QStandardItem *childItem1_2 = new QStandardItem("Child 1.2");
    parentItem1->appendRow(childItem1_1);
    parentItem1->appendRow(childItem1_2);

    // さらなる子アイテム(孫)を作成
    QStandardItem *grandChild1_1_1 = new QStandardItem("Grandchild 1.1.1");
    childItem1_1->appendRow(grandChild1_1_1);

    QStandardItem *childItem2_1 = new QStandardItem("Child 2.1");
    parentItem2->appendRow(childItem2_1);

    // モデルにトップレベルのアイテムを追加
    model->appendRow(parentItem1);
    model->appendRow(parentItem2);

    // QTreeViewにモデルを設定
    treeView->setModel(model);

    // QTreeViewをウィンドウの中央ウィジェットとして設定
    window.setCentralWidget(treeView);
    window.show();

    return a.exec();
}

解説

  1. QTreeView *treeView = new QTreeView(&window);: これがQTreeViewのコンストラクタの使用例です。&windowを渡すことで、treeViewwindowの子ウィジェットとして作成され、windowが破棄されるときにtreeViewも自動的に破棄されます。これにより、メモリ管理が容易になります。

  2. QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel();: QTreeViewが表示するデータを提供するモデルを作成します。QStandardItemModelは、QStandardItemオブジェクトを使用して階層的なデータを簡単に構築できる便利なモデルです。

  3. model->setColumnCount(1);: ツリービューに表示する列数を設定します。ここでは1列のみです。

  4. model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "Items");: 最初の列(インデックス0)の水平方向のヘッダーテキストを設定します。

  5. QStandardItemの作成と追加: QStandardItemオブジェクトを作成し、appendRow()メソッドを使って親子関係を構築します。これにより、データがツリー構造になります。

  6. treeView->setModel(model);: 最も重要なステップです。作成したQStandardItemModelQTreeViewに関連付けます。QTreeViewはこのモデルからデータを取得して表示します。

この例では、Qtが提供するQFileSystemModelを使用して、簡単にファイルシステムをツリービューで表示します。QFileSystemModelは、ファイルシステムのデータを自動的に読み込み、更新してくれます。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTreeView>
#include <QFileSystemModel> // ファイルシステムモデル用

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QMainWindow window;
    window.setWindowTitle("QTreeView Example: File System Model");
    window.resize(600, 400);

    // QTreeViewを生成
    // 親ウィジェットとして&windowを指定
    QTreeView *treeView = new QTreeView(&window);

    // QFileSystemModelを生成
    QFileSystemModel *model = new QFileSystemModel();
    model->setRootPath(QDir::homePath()); // 表示するルートパスを設定 (例: ユーザーのホームディレクトリ)

    // QTreeViewにモデルを設定
    treeView->setModel(model);

    // ルートインデックスを設定 (これは表示開始地点)
    // QFileSystemModelの場合、setRootPath()とsetRootIndex()で表示されるツリーの根を制御します。
    treeView->setRootIndex(model->index(QDir::homePath()));

    // 列の表示調整 (必要であれば)
    // treeView->hideColumn(1); // Size 列を非表示
    // treeView->hideColumn(2); // Type 列を非表示
    // treeView->hideColumn(3); // Date Modified 列を非表示

    // QTreeViewをウィンドウの中央ウィジェットとして設定
    window.setCentralWidget(treeView);
    window.show();

    return a.exec();
}

解説

  1. QTreeView *treeView = new QTreeView(&window);: ここでも同様に、QTreeViewを生成し、親ウィジェットを指定しています。

  2. QFileSystemModel *model = new QFileSystemModel();: ファイルシステムを扱うための特別なモデルであるQFileSystemModelを生成します。

  3. model->setRootPath(QDir::homePath());: QFileSystemModelが監視し、ツリービューに表示するルートディレクトリを設定します。ここでは、現在のユーザーのホームディレクトリを設定しています。

  4. treeView->setModel(model);: QTreeViewQFileSystemModelを設定します。

  5. treeView->setRootIndex(model->index(QDir::homePath()));: 重要QFileSystemModelの場合、QTreeViewが実際に表示を開始するツリーの「ルートインデックス」を設定する必要があります。これにより、QTreeViewはそのインデックスの子孫のみを表示します。QDir::homePath()のインデックスを設定することで、ホームディレクトリがツリーの最上位に表示されます。

これらの例からわかるように、QTreeView::QTreeView()コンストラクタ自体は、単にウィジェットのインスタンスを生成するだけです。しかし、その後にsetModel()メソッドを呼び出して、QTreeViewにデータを提供するためのモデル(QStandardItemModelQFileSystemModelなどのQAbstractItemModelから派生したクラス)を設定することが、QTreeViewを機能させる上で最も重要なステップです。



以下に、QTreeView::QTreeView() を直接呼び出すこと以外の、階層データを表示するアプローチや、QTreeView を UI に組み込む際の代替手段をいくつか説明します。

QTreeView 以外の Qt 標準ビュー

階層データであっても、必ずしも QTreeView が最適な表示方法とは限りません。他の Qt の標準ビューも検討する価値があります。

a. QListView (シンプルな階層表現)

  • 注意点
    各リストビュー間の同期や、階層間の移動ロジックを自分で実装する必要があります。QTreeView のような統一されたツリー展開機能はありません。
  • 代替理由
    非常にシンプルな階層構造で、ツリーの展開/折りたたみ機能が不要な場合や、各階層が明確に分離されている場合に、よりすっきりとした UI を提供できます。
  • 説明
    通常は単一のリストを表示しますが、モデルが階層構造を持つ場合、QListView を複数並べて連携させることで、擬似的な階層表示を実現できます(例: iTunes のアーティスト -> アルバム -> 曲 のような表示)。

b. QTableView (階層の各レベルが列に対応する場合)

  • 注意点
    階層の深さが固定されている場合に有効です。可変長の深い階層構造には向きません。
  • 代替理由
    データの各要素が複数の属性を持ち、それらの属性を列として表示したい場合に、QTableView の方が適しています。ただし、ネイティブなツリー展開はできません。
  • 説明
    複数の列を持つ表形式のデータを表示するのに適しています。階層の各レベルが明確な列として表現できるようなデータ構造の場合に利用できます。

c. QColumnView (Mac Finder のようなコラム表示)

  • 注意点
    画面スペースを多く消費する傾向があります。深い階層の場合、多くの列が横に伸びてスクロールが必要になる可能性があります。
  • 代替理由
    ユーザーが現在の階層レベルとその上位/下位の階層を同時に視覚的に把握したい場合に非常に有効です。QTreeView のように展開ボタンを押す手間がなく、直感的な操作が可能です。
  • 説明
    Mac OS の Finder や iTunes のコラム表示のように、階層の各レベルを独立した列(カラム)として表示するビューです。ユーザーが項目を選択すると、その子の項目が次の列に表示されます。

Qt Designer を使用した UI 構築

QTreeView::QTreeView() をコードで直接呼び出す代わりに、Qt Designer という GUI ツールを使って UI を構築し、QTreeView をドラッグ&ドロップで配置する方法があります。

  • 代替理由
    • 視覚的なレイアウト
      コードでレイアウトを記述するよりも、直感的に UI を設計できます。
    • 高速なプロトタイピング
      UI の変更が容易で、試行錯誤がしやすくなります。
    • コードと UI の分離
      UI の定義とアプリケーションロジックを分離できます。
  • 説明
    Qt Designer は、XML ベースの .ui ファイルとして UI のレイアウトとウィジェットを定義するツールです。.ui ファイルは uic ツールによって C++ コードに変換されるか、実行時に QUiLoader を使用してロードされます。

非常に特殊なケースですが、標準の QTreeView の機能では要件を満たせない場合、QWidget を継承した独自のカスタムウィジェットで、階層データを描画するロジックをゼロから実装することも考えられます。

  • 注意点
    • 非常に複雑
      モデル/ビューアーキテクチャのメリット(データと表示の分離、標準的なインタラクション)を失うため、多くのロジック(スクロール、選択、イベント処理、アクセシビリティなど)を自力で実装する必要があります。
    • 開発コストが高い
      実装とメンテナンスに非常に多くの労力と時間が必要です。
    • 原則として推奨されない
      既存の QTreeView や、QAbstractItemView を継承してカスタマイズする方が、はるかに効率的で堅牢なソリューションとなります。カスタム描画は、QTreeView のデリゲート(QStyledItemDelegate)で実現できる範囲を超える場合にのみ検討すべきです。
  • 代替理由
    • 究極のカスタマイズ性
      QTreeView の提供する描画やインタラクションの制限を超えた、非常に特殊な視覚的表現やインタラクションが必要な場合。
    • パフォーマンス最適化
      極めて大量のデータや特殊な描画が必要な場合に、特定の用途に最適化された描画ロジックを実装できる可能性があります。
  • 説明
    paintEvent() メソッドをオーバーライドし、QPainter を使用してツリーの各ノード、ライン、展開/折りたたみアイコンなどを自分で描画します。データはカスタムモデルや独自のデータ構造から取得します。

QTreeView::QTreeView() は、QTreeView インスタンスを作成するための唯一の標準的な入り口です。しかし、階層データを表示する「目的」を達成するための代替手段はいくつか存在します。

  • 究極のカスタマイズ: QWidget からのカスタム描画(最終手段)。
  • UI 設計の代替: コードで直接インスタンス化する代わりに、Qt Designer を使用して QTreeView を配置。
  • 表形式の階層データ: QTableView が適切。
  • 特定の属性でフィルタリングされたリスト: 複数の QListView の連携。
  • 列指向の階層表示: QColumnView が視覚的に魅力的。
  • ファイルシステム: QTreeView + QFileSystemModel が最も簡単。
  • 簡単なツリー表示: QTreeView + QStandardItemModel が最も一般的で簡単。