行列の知識がなくても大丈夫！ Qt GUI で QTransform::isInvertible() を活用する方法

QTransform::isInvertible() 関数は、2D 変換行列を表す QTransform オブジェクトが逆行列を持つかどうかを判定します。逆行列が存在する場合、元の変換を元に戻すことができます。

機能

この関数は、行列の行列式を計算することで動作します。行列式が 0 ではない場合、行列は逆行列を持ち、関数は true を返します。行列式が 0 の場合、行列は逆行列を持たず、関数は false を返します。

構文

bool QTransform::isInvertible() const;

戻り値

false: 行列が逆行列を持たない場合
true: 行列が逆行列を持つ場合

QTransform transform;
transform.translate(10, 20);
transform.rotate(45);

if (transform.isInvertible()) {
  QTransform inverseTransform = transform.inverted();
  // ... 使用例
} else {
  // 行列は逆行列を持たない
}

QTransform オブジェクトは、スケーリング、回転、移動などの 2D 変換を表すために使用されます。
行列が非正則行列である場合、isInvertible() 関数は false を返し、inverted() 関数は例外をスローします。
QTransform::inverted() 関数を使用して、逆行列を取得できます。

#include <QApplication>
#include <QPainter>
#include <QTransform>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // 変換を作成
  QTransform transform;
  transform.translate(50, 50);
  transform.rotate(45);
  transform.scale(2, 2);

  // 変換を適用した図形を描画
  QPainter painter;
  painter.begin(new QPixmap(200, 200));
  painter.setPen(Qt::black);
  painter.drawRect(QRect(0, 0, 100, 100));
  painter.setTransform(transform);
  painter.drawRect(QRect(0, 0, 100, 100));
  painter.end();

  // 逆行列を取得
  QTransform inverseTransform = transform.inverted();

  // 逆変換を適用した図形を描画
  QPainter inversePainter;
  inversePainter.begin(new QPixmap(200, 200));
  inversePainter.setPen(Qt::red);
  inversePainter.drawRect(QRect(0, 0, 100, 100));
  inversePainter.setTransform(inverseTransform);
  inversePainter.drawRect(QRect(0, 0, 100, 100));
  inversePainter.end();

  // 描画されたピクセルマップを表示
  QImage image1 = *painter.pixmap();
  image1.save("original_transform.png");

  QImage image2 = *inversePainter.pixmap();
  image2.save("inverse_transform.png");

  return 0;
}

このコードを実行すると、2 つの画像ファイルが生成されます。

inverse_transform.png: 逆変換を適用した図形
original_transform.png: 元の変換を適用した図形

行列式を直接計算する

最も基本的な方法は、行列式を直接計算することです。行列式が 0 ではない場合、行列は逆行列を持ちます。

bool isInvertable(const QTransform& transform) {
  QMatrix matrix = transform.toTransformMatrix();
  double determinant = matrix.determinant();
  return determinant != 0;
}

この方法はシンプルですが、行列演算の知識が必要となります。また、行列のサイズが大きくなると計算量が増加します。

QSingularMatrixException を捕捉する

QTransform::inverted() 関数を呼び出し、QSingularMatrixException 例外がスローされないかどうかを確認する方法もあります。

bool isInvertable(const QTransform& transform) {
  try {
    transform.inverted();
    return true;
  } catch (QSingularMatrixException& e) {
    return false;
  }
}

この方法は例外処理が必要となるため、コードが煩雑になります。また、例外処理はパフォーマンスを低下させる可能性があります。

QFuzzyCompare を使用する

行列式が 0 に非常に近い場合でも、行列は実質的に逆行列を持つとみなせる場合があります。このような場合、QFuzzyCompare を使用して行列式を 0 と比較することができます。

bool isInvertable(const QTransform& transform) {
  QMatrix matrix = transform.toTransformMatrix();
  double determinant = matrix.determinant();
  return !qFuzzyCompare(determinant, 0.0);
}

この方法は、行列式が 0 に非常に近い場合でも、行列を逆行列とみなすことができます。ただし、QFuzzyCompare の精度設定によっては、誤判定が発生する可能性があります。

最適な方法の選択

どの方法が最適かは、状況によって異なります。

パフォーマンスが重要である場合は、QTransform::isInvertible() 関数を使用するのが最善です。
例外処理を避けたい場合は、QFuzzyCompare を使用する方が良いでしょう。
シンプルでわかりやすい方法が必要な場合は、行列式を直接計算する方法がおすすめです。

上記以外にも、以下のような代替方法があります。

QR分解を使用して、行列が正則行列かどうかを判定する
LU分解を使用して、行列が正則行列かどうかを判定する

これらの方法は、より高度な数学的知識が必要となります。

QTransform::isInvertible() 関数は、行列が逆行列を持つかどうかを判定する最も一般的な方法です。しかし、状況によっては、上記のような代替方法の方が適している場合があります。