QML初心者必見: オブジェクト属性の理解と実践コード例

2025-05-27

QMLオブジェクトの主な属性には、以下の種類があります。

  1. id 属性 (The id Attribute)

    • すべてのQMLオブジェクトタイプに、言語自体によって提供される唯一のid属性があります。これは再定義やオーバーライドできません。
    • id属性に値を割り当てることで、他のオブジェクトからそのオブジェクトを識別し、参照できるようになります。
    • idは小文字またはアンダースコアで始まり、文字、数字、アンダースコア以外の文字を含めることはできません。JavaScriptの予約語も使用できません。
    • 同じQMLコンテキスト内では、idの値は常に一意である必要があります。
    • 一度オブジェクトインスタンスが作成されると、そのid属性の値を変更することはできません。
    TextInput {
        id: myTextInput // ここでidを"myTextInput"として設定
        text: "Hello"
    }
    
    Text {
        text: myTextInput.text // myTextInputのtextプロパティを参照
    }
    
  2. プロパティ属性 (Property Attributes)

    • プロパティは、オブジェクトの属性であり、静的な値を割り当てるか、動的な式にバインドすることができます。
    • プロパティの値は他のオブジェクトから読み取ることができ、通常は変更も可能です。ただし、特定のQMLタイプが特定のプロパティに対して明示的に変更を許可していない場合もあります。
    • プロパティ名は小文字で始まり、文字、数字、アンダースコアのみを含めることができます。JavaScriptの予約語は無効です。
    • カスタムプロパティを定義することもできます。
      Rectangle {
          property int myCustomProperty: 10 // 新しいカスタムプロパティを定義
          width: 100
          height: 100
      }
      
    • default, required, readonly などのキーワードはオプションで、プロパティのセマンティクスを変更します。
      • default プロパティ
        ある型のデフォルトプロパティとしてマークされたプロパティは、子要素としてその値を指定できます。例えば、Itemのデフォルトプロパティはchildrenです。
        Item {
            // children: [ Rectangle {}, Rectangle {} ] と同じ意味
            Rectangle {}
            Rectangle {}
        }
        
      • readonly プロパティ
        読み取り専用のプロパティを定義します。
    • カスタムプロパティを宣言すると、そのプロパティの値が変更されたときに自動的にシグナル(on<PropertyName>Changed)が生成されます。
  3. シグナル属性 (Signal Attributes)

    • シグナルは、特定のイベントが発生したことを示すためのメッセージです。
    • オブジェクトにカスタムシグナルを定義することができます。
    Item {
        signal myCustomSignal(int value) // int型の引数を持つカスタムシグナル
    }
    
  4. シグナルハンドラー属性 (Signal Handler Attributes)

    • シグナルハンドラーは、シグナルが発せられたときに実行されるコードブロックです。
    • プロパティの変更シグナルにはon<PropertyName>Changedという命名規則のハンドラーが自動的に生成されます。
    • カスタムシグナルに対しても、on<SignalName>という命名規則でハンドラーを記述します。
    MouseArea {
        onClicked: { // クリックシグナルに対するハンドラー
            console.log("MouseAreaがクリックされました!");
        }
    }
    
  5. メソッド属性 (Method Attributes)

    • QMLオブジェクトはJavaScript関数をメソッドとして持つことができます。
    • これらのメソッドは、オブジェクトの内部から、または他のオブジェクトから呼び出すことができます。
    Rectangle {
        function doSomething() { // カスタムメソッドを定義
            console.log("何かを実行中...");
        }
    }
    
  6. アタッチプロパティとアタッチシグナルハンドラー (Attached Properties and Attached Signal Handlers)

    • 一部のオブジェクトタイプは、他のオブジェクトに「アタッチ」される特別なプロパティやシグナルハンドラーを提供します。これらは、特定のコンテキスト(例: ListView内のDelegate)において、親オブジェクトの機能を利用するために使用されます。
    • 例: ListViewListView.onContentYChangedListView.isCurrentItemなど。
  7. 列挙型属性 (Enumeration Attributes)

    • 特定のプロパティの値として、事前に定義された列挙値を使用できる場合があります。


QMLオブジェクト属性に関する一般的なエラーとトラブルシューティング

    • エラーの例

      • id: my-item (ハイフンが含まれている)
      • id: 123item (数字で始まっている)
      • id: var (JavaScriptの予約語)
      • 同じQMLファイル内で、異なるオブジェクトに同じidを割り当てる。
        Rectangle { id: myRect }
        Text { id: myRect } // エラー
        
      • コンポーネントがロードされた後にidを変更しようとする。
        // QMLでは直接idを変更することはできません。
        // JavaScriptでmyRect.id = "newId" のような操作は無効です。
        
    • 原因

      • idの命名規則違反(小文字またはアンダースコアで始まり、英数字とアンダースコアのみ)。
      • JavaScriptの予約語の使用。
      • QMLコンテキスト内でのidの一意性違反。
      • idはオブジェクトの識別子であり、実行時に変更できないため。
    • トラブルシューティング

      • idの命名規則に従う(例: myRectangle, my_text_input)。
      • JavaScriptの予約語(var, function, ifなど)をidとして使用しない。
      • 同じQMLコンテキスト内でidが重複しないように確認する。特に、インポートされたQMLコンポーネント内で重複するidがないか注意する。
      • idは不変であることを理解し、変更しようとしない。プロパティの値を動的に変更したい場合は、idではなくプロパティを使用する。
  1. プロパティバインディングに関するエラー

    • エラーの例

      • 存在しないプロパティを参照する。
        Rectangle {
            id: rect1
            width: 100
        }
        Rectangle {
            width: rect1.heights // rect1に"heights"というプロパティは存在しない
        }
        
      • バインディングループ(相互参照による無限ループ)。
        Rectangle {
            property int myWidth: myHeight * 2
            property int myHeight: myWidth / 2 // 無限ループ
        }
        
      • 異なる型のプロパティに、型変換なしで値をバインドする。
        Rectangle {
            property color rectColor: "red" // color型
        }
        Text {
            color: rectColor // OK
            font.pixelSize: rectColor // エラー(color型をint型にバインド)
        }
        
      • カスタムプロパティを宣言せずに使用する。
        Rectangle {
            myProperty: 10 // myPropertyが宣言されていない
        }
        
    • 原因

      • タイプミスや参照するプロパティの誤解。
      • プロパティ間の循環参照。
      • 暗黙的な型変換ができない場合の型不一致。
      • propertyキーワードなしでカスタムプロパティを使用しようとした。
    • トラブルシューティング

      • QMLオブジェクトのドキュメントを確認し、正しいプロパティ名と型を使用していることを確認する。
      • バインディングが循環参照になっていないか確認する。特に複雑なUIでは注意深く設計する。
      • 型が異なる場合は、適切な型変換(例: parseInt(), String()など)を行うか、Qt.binding()を使用して複雑なバインディングを定義する。
      • カスタムプロパティを使用する際は、必ずproperty <型> <名前>: <初期値>の形式で宣言する。
  2. シグナルハンドラーに関するエラー

    • エラーの例

      • シグナルハンドラー名のタイプミス。
        MouseArea {
            onClicke: { // onClickedのタイプミス
                console.log("クリック");
            }
        }
        
      • 存在しないシグナルに対するハンドラーを定義する。
        Item {
            onNonExistentSignal: { // このシグナルは存在しない
                console.log("エラー");
            }
        }
        
      • カスタムシグナルの引数を受け取らない、または誤った引数名を使用する。
        // MyComponent.qml
        Item {
            signal mySignal(int value)
        }
        
        // main.qml
        MyComponent {
            onMySignal: { // value引数を受け取っていない
                console.log("シグナル発生");
            }
        }
        
    • 原因

      • シグナルハンドラーの命名規則(on<SignalName>)の誤り。
      • シグナル自体がQMLオブジェクトに定義されていない。
      • シグナルの引数リストとハンドラーの引数リストが一致しない。
    • トラブルシューティング

      • 正しいシグナルハンドラー名(例: onClicked, onPressAndHold, onSomethingChanged)を使用していることを確認する。
      • QMLオブジェクトが実際にそのシグナルを発するかどうか、ドキュメントで確認する。
      • カスタムシグナルを定義した場合は、ハンドラーでその引数を正しく受け取るようにする(例: onMySignal: function(value) { console.log(value); })。
  3. アタッチプロパティ/ハンドラーに関するエラー

    • エラーの例

      • 特定のコンテキスト外でアタッチプロパティを使用する。
        // ListViewのデリゲートではない場所でisCurrentItemを使用
        Rectangle {
            ListView.isCurrentItem: true // エラー
        }
        
      • 存在しないアタッチプロパティやアタッチハンドラーを使用する。
    • 原因

      • アタッチプロパティやハンドラーは、特定のQMLコンポーネント(例: ListView, Loader, Component)の内部にある子要素にのみ意味を持つ。そのコンテキスト外では無効。
    • トラブルシューティング

      • アタッチプロパティ/ハンドラーが設計されたコンテキスト内で使用されていることを確認する。例えば、ListView.isCurrentItemListViewdelegate内で使用する必要がある。
      • ドキュメントを読み、特定のアタッチプロパティ/ハンドラーがどのコンテキストで有効かを確認する。
  4. 型の不一致と暗黙の型変換

    • エラーの例

      • 数値プロパティに文字列をバインドしようとする(逆も然り)。
        Rectangle {
            width: "100" // widthはint型だが文字列を代入
        }
        
      • colorプロパティに無効な色文字列を代入する。
        Text {
            color: "invalidColor" // 無効な色名
        }
        
    • 原因

      • QMLの型システムとJavaScriptの型変換規則を混同している。
      • プロパティが予期する型と、与えられた値の型が一致しない。
    • トラブルシューティング

      • プロパティの型を理解し、正しい型の値を割り当てる。
      • 必要に応じて明示的な型変換を行う(例: parseInt("100"), String(100))。
      • 色や列挙型などの特殊な型では、QMLがサポートする形式(例: "red", "#RRGGBB", Qt.rgba(r, g, b, a)Qt.AlignHCenter)を使用する。
  • ドキュメントの参照
    QtおよびQMLの公式ドキュメントは非常に包括的です。プロパティ、シグナル、メソッドなどの詳細について常に参照するようにしましょう。
  • 最小限の再現可能な例 (Minimal Reproducible Example: MRE) の作成
    問題を再現できる最小限のコードスニペットを作成することで、問題を切り分け、他人からの助けを得やすくなります。
  • コードの段階的な追加
    一度に大量のコードを追加するのではなく、少しずつ機能を追加し、都度テストすることで、問題の特定が容易になります。
  • Qt Creatorの強力な機能
    • QMLシンタックスチェック
      Qt CreatorはQMLコードの構文エラーをリアルタイムでハイライト表示します。
    • QMLデバッガー
      ブレークポイントを設定し、ステップ実行してプロパティの値やシグナルの流れを確認できます。
    • QMLプロファイラー
      パフォーマンスの問題を特定するのに役立ちます。
    • QMLライブプレビュー
      コード変更がUIにどのように反映されるかを即座に確認できます。
  • コンソール出力の確認
    QMLエラーは通常、アプリケーションのコンソールに出力されます。エラーメッセージを注意深く読み、どの行で何が問題なのかを特定します。


id 属性の例

id属性は、QMLコンテキスト内でオブジェクトを一意に識別し、他のオブジェクトから参照するために使用されます。


// main.qml
import QtQuick

ApplicationWindow {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "ID属性の例"

    Rectangle {
        id: myRectangle // Rectangleオブジェクトにidを設定
        width: 100
        height: 100
        color: "blue"
        x: 50
        y: 50
    }

    Text {
        // myRectangleのプロパティを参照してテキストを設定
        text: "Rectangleの色: " + myRectangle.color + "\n幅: " + myRectangle.width
        x: 50
        y: 160
        font.pixelSize: 18
        color: "black"
    }

    Button {
        text: "色を変更"
        x: 50
        y: 200
        width: 100
        height: 30
        onClicked: {
            // ButtonがクリックされたらmyRectangleの色を変更
            myRectangle.color = "red";
            console.log("myRectangleの色が変更されました: " + myRectangle.color);
        }
    }
}

解説

  • Buttonがクリックされると、onClickedシグナルハンドラー内でmyRectangle.colorプロパティが変更されます。
  • TextオブジェクトはmyRectangle.colormyRectangle.widthのように、idを使ってRectangleのプロパティを参照しています。
  • myRectangleというidRectangleオブジェクトに割り当てられています。

プロパティ属性の例 (組み込みプロパティとカスタムプロパティ)

QMLのほとんどのオブジェクトは、width, height, x, y, color, textなどの組み込みプロパティを持っています。また、propertyキーワードを使って独自のカスタムプロパティを定義することもできます。


// main.qml
import QtQuick

ApplicationWindow {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "プロパティ属性の例"

    Rectangle {
        id: myRect
        width: 200
        height: 150
        color: "lightgray"
        x: 50
        y: 50

        // カスタムプロパティの定義
        property int clickCount: 0
        property string statusText: "まだクリックされていません"

        Text {
            anchors.centerIn: parent
            text: parent.statusText // 親(myRect)のカスタムプロパティを参照
            font.pixelSize: 20
        }

        MouseArea {
            anchors.fill: parent
            onClicked: {
                // クリックされるたびにカスタムプロパティを更新
                parent.clickCount++;
                parent.statusText = "クリック回数: " + parent.clickCount;
                console.log("クリック回数: " + parent.clickCount);
            }
        }
    }

    // myRectのカスタムプロパティの変更を監視する(on<PropertyName>Changedハンドラー)
    Text {
        id: statusDisplay
        x: 50
        y: 220
        width: 300
        text: "外部からのステータス: " + myRect.statusText // 外部からも参照
        font.pixelSize: 16
        color: "darkgreen"

        // myRectのstatusTextプロパティが変更されたときに自動的に呼び出されるハンドラー
        onMyRectStatusTextChanged: {
            console.log("statusTextが外部で変更されたことを検知: " + myRect.statusText);
            // ここで追加のロジックを実行できる
        }
    }
}

解説

  • onMyRectStatusTextChangedは、myRectオブジェクトのstatusTextプロパティが変更されたときに自動的に呼び出されるシグナルハンドラーです。QMLはプロパティごとにこの形式のハンドラーを自動生成します。
  • Textオブジェクトはparent.statusTextのように、親のカスタムプロパティにアクセスして表示しています。
  • MouseAreaがクリックされるたびに、これらのカスタムプロパティの値が更新されます。
  • myRectというRectangleオブジェクトは、clickCountint型)とstatusTextstring型)という2つのカスタムプロパティを持っています。

シグナル属性とシグナルハンドラー属性の例

シグナルは、特定のイベント(例: マウスクリック、プロパティの変更)が発生したことを他のオブジェクトに通知するものです。シグナルハンドラーは、そのシグナルを受け取って特定のコードを実行します。


// MyCustomButton.qml (カスタムコンポーネント)
import QtQuick

Rectangle {
    id: root
    width: 100
    height: 40
    color: "green"
    radius: 5

    // カスタムシグナルを定義
    signal buttonPressed(string message, int pressure)

    Text {
        anchors.centerIn: parent
        text: "押してね"
        color: "white"
        font.pixelSize: 16
    }

    MouseArea {
        anchors.fill: parent
        onClicked: {
            // MouseAreaのonClickedシグナルハンドラー
            root.color = "darkgreen"
            // カスタムシグナルを発行
            root.buttonPressed("ボタンがクリックされました!", 100);
        }
        onReleased: {
            root.color = "green"
        }
    }
}
// main.qml
import QtQuick

ApplicationWindow {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "シグナルとハンドラーの例"

    // 上で定義したカスタムボタンを使用
    MyCustomButton {
        id: myButton
        x: 50
        y: 50

        // MyCustomButtonのbuttonPressedシグナルに対するハンドラー
        onButtonPressed: function(msg, prs) { // シグナルが持つ引数を受け取る
            console.log("シグナルを受け取りました!");
            console.log("メッセージ: " + msg);
            console.log("圧力: " + prs);
            statusText.text = "ボタンイベント: " + msg + " (圧力: " + prs + ")";
        }
    }

    Text {
        id: statusText
        x: 50
        y: 120
        width: 400
        text: "ボタンを押してください"
        font.pixelSize: 18
        color: "blue"
    }
}

解説

  • main.qmlでは、MyCustomButtonインスタンスのonButtonPressedというシグナルハンドラーが定義されています。このハンドラーは、buttonPressedシグナルが発行されると実行され、シグナルから渡された引数(msg, prs)を受け取って使用します。
  • MyCustomButton内のMouseAreaがクリックされると、root.buttonPressed(...)を使ってこのカスタムシグナルが発行されます。
  • MyCustomButton.qml内でbuttonPressedというカスタムシグナルが定義されています。このシグナルはmessagestring)とpressureint)という2つの引数を持っています。

メソッド属性の例

QMLオブジェクトはJavaScript関数をメソッドとして持つことができます。これにより、オブジェクトに特定の振る舞いをカプセル化できます。


// main.qml
import QtQuick

ApplicationWindow {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "メソッド属性の例"

    Rectangle {
        id: calculatorRect
        width: 300
        height: 200
        color: "lightgray"
        x: 50
        y: 50

        property int value1: 0
        property int value2: 0
        property int result: 0

        // メソッドの定義
        function add(a, b) {
            return a + b;
        }

        function subtract(a, b) {
            return a - b;
        }

        function calculateAndDisplay() {
            // メソッドを呼び出す
            calculatorRect.result = calculatorRect.add(calculatorRect.value1, calculatorRect.value2);
            resultText.text = "結果: " + calculatorRect.result;
            console.log("計算実行: " + calculatorRect.value1 + " + " + calculatorRect.value2 + " = " + calculatorRect.result);
        }

        Column {
            anchors.centerIn: parent
            spacing: 10

            TextInput {
                id: input1
                width: 100
                height: 30
                placeholderText: "値1"
                validator: IntValidator {}
                onTextChanged: calculatorRect.value1 = parseInt(text || "0")
            }

            TextInput {
                id: input2
                width: 100
                height: 30
                placeholderText: "値2"
                validator: IntValidator {}
                onTextChanged: calculatorRect.value2 = parseInt(text || "0")
            }

            Button {
                text: "計算"
                onClicked: {
                    calculatorRect.calculateAndDisplay(); // Rectangle内のメソッドを呼び出す
                }
            }

            Text {
                id: resultText
                text: "結果: -"
                font.pixelSize: 20
            }
        }
    }
}

解説

  • Buttonがクリックされると、calculatorRect.calculateAndDisplay()が呼び出され、Rectangle内のメソッドが実行されます。
  • calculateAndDisplayメソッドは、入力フィールドから値を取得し、addメソッドを呼び出して結果を計算し、Text要素に表示します。
  • addsubtractはシンプルな計算を行うメソッドです。
  • calculatorRectというRectangleオブジェクトは、add, subtract, calculateAndDisplayという3つのメソッドを持っています。

アタッチプロパティとアタッチハンドラーは、特定の親要素が子要素に特別なプロパティやシグナルハンドラーを提供するメカニズムです。


// main.qml
import QtQuick

ApplicationWindow {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "アタッチプロパティの例"

    ListView {
        width: 200
        height: 300
        x: 50
        y: 50
        model: 5 // 5つのアイテムを生成

        delegate: Rectangle {
            width: parent.width
            height: 50
            color: index % 2 === 0 ? "lightblue" : "lightsteelblue"
            border.color: "gray"
            border.width: 1

            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "アイテム " + (index + 1)

                // ListView.isCurrentItem はListViewのデリゲートにアタッチされるプロパティ
                // 現在のアイテム(スクロール中に中央に来るアイテムなど)かどうかを示す
                color: ListView.isCurrentItem ? "red" : "black"
                font.pixelSize: 20
                font.bold: ListView.isCurrentItem // 現在のアイテムであれば太字
            }

            // ListView.onCurrentItemChanged はListViewのデリゲートにアタッチされるハンドラー
            // このデリゲートが現在のアイテムになったり、そうでなくなったりしたときに発火
            ListView.onCurrentItemChanged: {
                console.log("アイテム " + (index + 1) + " の currentItem 状態が変更されました: " + ListView.isCurrentItem);
            }
        }
    }
}
  • ListView.onCurrentItemChangedは、このデリゲートが現在のアイテムになったり、そうでなくなったりしたときに呼び出されるアタッチシグナルハンドラーです。
  • Textcolorfont.boldプロパティは、このListView.isCurrentItemの値に基づいて動的に変更されます。
  • ListViewdelegate内で定義されたRectangleTextは、ListView.isCurrentItemというアタッチプロパティにアクセスできます。これは、現在のデリゲートがListViewによって「現在のアイテム」と見なされているかどうかを示します。


id 属性の代替: Context Property (コンテキストプロパティ) と シングルトンオブジェクト

idはQMLコンテキスト内での参照に便利ですが、グローバルなデータや、複数の異なるQMLファイルからアクセスしたいデータがある場合、より構造的な代替手法が考えられます。

  • シングルトンオブジェクト (Singleton Objects): QML固有のグローバルオブジェクト QMLモジュール内でシングルトンタイプを登録することで、そのモジュールをインポートするすべてのQMLファイルから、そのシングルトンのインスタンスにアクセスできます。これは、アプリケーション全体で共有される設定やユーティリティ関数などに適しています。

    QML Singleton (MySingleton.qml)

    // MySingleton.qml (このファイルはQMLモジュールとして登録される必要がある)
    pragma Singleton
    import QtQuick
    
    QtObject {
        property string globalSetting: "デフォルト設定"
        property int counter: 0
    
        function incrementCounter() {
            counter++;
            console.log("カウンター: " + counter);
        }
    }
    

    qmltypesファイル (myqmlmodule/qmldir)

    singleton MySingleton MySingleton.qml
    

    QMLコード (main.qml)

    import QtQuick
    import QtQuick.Controls
    import MyQmlModule // シングルトンを含むモジュールをインポート
    
    ApplicationWindow {
        width: 640
        height: 480
        visible: true
        title: "シングルトンの例"
    
        Text {
            x: 50
            y: 50
            // シングルトンオブジェクトのプロパティにアクセス
            text: "グローバル設定: " + MySingleton.globalSetting
            font.pixelSize: 20
        }
    
        Button {
            x: 50
            y: 100
            text: "カウンター増加"
            onClicked: {
                // シングルトンオブジェクトのメソッドを呼び出し
                MySingleton.incrementCounter();
            }
        }
    }
    
  • Context Property (コンテキストプロパティ): C++からのデータ公開 QMLのルートコンテキストにC++オブジェクトを公開することで、QMLのどこからでもそのC++オブジェクトのプロパティやメソッドにアクセスできます。これは、アプリケーションのモデルデータやバックエンドロジックをQMLに提供する際に非常に強力な手法です。

    C++コード

    // main.cpp
    #include <QGuiApplication>
    #include <QQmlApplicationEngine>
    #include <QObject>
    #include <QQmlContext> // QQmlContextを使うために必要
    
    class MyBackend : public QObject {
        Q_OBJECT
        Q_PROPERTY(QString appStatus READ appStatus WRITE setAppStatus NOTIFY appStatusChanged)
    public:
        explicit MyBackend(QObject *parent = nullptr) : QObject(parent), m_appStatus("初期ステータス") {}
    
        QString appStatus() const { return m_appStatus; }
        void setAppStatus(const QString &status) {
            if (m_appStatus != status) {
                m_appStatus = status;
                Q_EMIT appStatusChanged();
            }
        }
    
        Q_INVOKABLE void performAction() {
            setAppStatus("アクションが実行されました!");
            qDebug() << "C++側でアクション実行";
        }
    
    Q_SIGNALS:
        void appStatusChanged();
    
    private:
        QString m_appStatus;
    };
    
    int main(int argc, char *argv[]) {
        QGuiApplication app(argc, argv);
        QQmlApplicationEngine engine;
    
        MyBackend backend;
        // QMLコンテキストに"myBackend"という名前でMyBackendオブジェクトを公開
        engine.rootContext()->setContextProperty("myBackend", &backend);
    
        engine.load(QUrl(QStringLiteral("qrc:/main.qml")));
        return app.exec();
    }
    
    #include "main.moc" // mocファイルをインクルード
    
    import QtQuick
    import QtQuick.Controls
    
    ApplicationWindow {
        width: 640
        height: 480
        visible: true
        title: "コンテキストプロパティの例"
    
        Text {
            x: 50
            y: 50
            // C++で公開されたmyBackendオブジェクトのappStatusプロパティにアクセス
            text: "アプリのステータス: " + myBackend.appStatus
            font.pixelSize: 20
        }
    
        Button {
            x: 50
            y: 100
            text: "C++アクション実行"
            onClicked: {
                // C++で公開されたmyBackendオブジェクトのperformActionメソッドを呼び出し
                myBackend.performAction();
            }
        }
    }
    

プロパティバインディングの代替: Binding オブジェクトと JavaScript ロジック

プロパティの値を動的に設定するために、通常は直接バインディング(例: width: parent.width * 0.5)を使用しますが、より複雑なロジックや条件分岐が必要な場合は代替手法があります。

  • JavaScript 関数によるプロパティ設定
    プロパティの値を複雑なロジックに基づいて設定する場合、JavaScript関数内で計算を行い、結果をプロパティに代入する方法があります。これは、単なるバインディングでは表現しきれない場合に特に有効です。


    Rectangle {
        id: myRect
        width: 200
        height: 100
        color: "blue"
    
        property int dynamicValue: 0
    
        // プロパティを計算するJavaScript関数
        function calculateWidth() {
            if (dynamicValue < 50) {
                return 100;
            } else if (dynamicValue < 100) {
                return 200;
            } else {
                return 300;
            }
        }
    
        // ボタンでdynamicValueを変化させる
        Button {
            x: 50
            y: 120
            text: "値変更"
            onClicked: {
                myRect.dynamicValue = (myRect.dynamicValue + 20) % 120;
                // dynamicValueが変更されたら幅を再計算して設定
                myRect.width = myRect.calculateWidth();
                console.log("新しい幅: " + myRect.width);
            }
        }
    }
    
  • Binding オブジェクト
    Bindingオブジェクトは、プロパティバインディングを明示的に宣言し、特定の条件に基づいてバインディングを有効/無効にしたり、異なるバインディングを切り替えたりするのに使われます。


    Rectangle {
        width: 200
        height: 200
        color: "lightgray"
    
        property bool useAltWidth: false
    
        // 条件に応じてwidthプロパティのバインディングを切り替える
        Binding {
            target: parent
            property: "width"
            value: 300 // 通常の幅
            when: !useAltWidth // useAltWidthがfalseの場合に適用
        }
        Binding {
            target: parent
            property: "width"
            value: 400 // 代替幅
            when: useAltWidth // useAltWidthがtrueの場合に適用
        }
    
        Button {
            text: "幅を切り替え"
            onClicked: parent.useAltWidth = !parent.useAltWidth
        }
    }
    

シグナルハンドラーの代替: Connections オブジェクト

複数のシグナルを同じオブジェクトで処理したい場合や、シグナルを発するオブジェクトとハンドラーを定義するオブジェクトが異なる場合に、Connectionsオブジェクトが便利です。

  • Connections オブジェクト
    Connectionsオブジェクトは、特定のターゲットオブジェクトのシグナルを受け取り、そのハンドラーを定義できます。これにより、シグナルソースとハンドラーの定義を分離でき、コードの可読性が向上します。


    Rectangle {
        width: 300
        height: 200
        color: "lightgray"
    
        Button {
            id: myButton
            x: 50
            y: 50
            text: "押してね"
        }
    
        Text {
            id: statusMessage
            x: 50
            y: 120
            text: "待機中..."
            font.pixelSize: 18
        }
    
        // myButtonのシグナルを処理するためにConnectionsを使用
        Connections {
            target: myButton // シグナルを発するオブジェクト
            // myButtonのonClickedシグナルを処理
            onClicked: {
                statusMessage.text = "ボタンがクリックされました!";
                console.log("Connections経由でクリックを検知");
            }
            // myButtonにhoveredというプロパティがあると仮定し、その変更を検知
            // onMyButtonHoveredChanged: { // 仮のプロパティ変更シグナル
            //     console.log("ボタンのホバー状態が変わりました");
            // }
        }
    }
    

メソッドの代替: C++によるバックエンドロジック

複雑な計算、ファイル操作、ネットワーク通信など、純粋なQML/JavaScriptでは効率が悪かったり、アクセスできないシステムリソースを扱う必要がある場合、C++でロジックを実装し、QMLに公開するのが最適な代替手法です。

  • C++のQ_INVOKABLEメソッドとシグナル
    C++クラスにQ_INVOKABLEマクロを付けたメソッドを定義することで、QMLからそのメソッドを呼び出すことができます。また、C++からQMLにイベントを通知するためにシグナルを使用できます。これは前述の「コンテキストプロパティ」の例でも示されています。

    C++ (再掲)

    class MyBackend : public QObject {
        // ... (省略) ...
        Q_INVOKABLE void performAction() {
            setAppStatus("アクションが実行されました!");
            Q_EMIT actionCompleted("C++側での処理が完了しました"); // QMLにシグナル通知
        }
    Q_SIGNALS:
        void actionCompleted(QString message);
    };
    

    QML

    // ... (省略) ...
    Button {
        text: "C++アクション実行"
        onClicked: {
            myBackend.performAction(); // C++メソッドを呼び出す
        }
    }
    
    Connections {
        target: myBackend
        onActionCompleted: function(msg) { // C++からのシグナルを受け取る
            console.log("C++からの完了通知: " + msg);
        }
    }