Qt Widgets:QScrollArea::focusNextPrevChild()メソッドで知っておくべき5つのこと


QScrollArea::focusNextPrevChild()メソッドは、スクロール領域内に配置された子ウィジェット間でフォーカス移動を制御するために使用されます。このメソッドは、QWidget::focusNextPrevChild()メソッドをオーバーライドしており、スクロール領域特有のフォーカス移動ロジックを実装しています。

機能

  • nextパラメータをfalseに設定すると、前のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動します。
  • nextパラメータをtrueに設定すると、次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動します。

処理の流れ

  1. スクロール領域内のフォーカス可能な子ウィジェットリストを取得します。
  2. 現在のフォーカス位置をリスト内で特定します。
  3. nextパラメータに基づいて、リスト内の次のまたは前のインデックスを計算します。
  4. 計算されたインデックスがリストの範囲内に収まっている場合は、そのインデックスに対応する子ウィジェットにフォーカスを移動します。
  5. 計算されたインデックスがリストの範囲外の場合は、フォーカス移動を行いません。

注意点

  • フォーカス移動ポリシーによって、フォーカス移動が制限される場合があります。
  • 子ウィジェットが非表示の場合は、フォーカス可能な子ウィジェットとして認識されません。
  • スクロール領域内にフォーカス可能な子ウィジェットが存在しない場合は、フォーカス移動は行われません。

QScrollArea scrollArea;
QLabel label1("Label 1");
QLabel label2("Label 2");
QLabel label3("Label 3");

scrollArea.setWidget(&label1);

label2.show();
label3.show();

label1.setFocus();

// 次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
scrollArea.focusNextPrevChild(true); // label2 にフォーカスが移動します

// 前のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
scrollArea.focusNextPrevChild(false); // label1 にフォーカスが移動します
  • スクロール領域内のフォーカス移動をより詳細に制御したい場合は、QWidget::focusPolicy()メソッドを使用してフォーカスポリシーを設定することができます。

この解説が、Qt Widgetsにおける QScrollArea::focusNextPrevChild() メソッドの理解に役立つことを願っています。

  • 本解説は、Qt 6.7.2 を基に記述されています。他のバージョンでは、動作や API が異なる場合があります。


例1:基本的なフォーカス移動

この例では、3つのラベルをスクロール領域内に配置し、focusNextPrevChild()メソッドを使用してフォーカスを移動します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QScrollArea>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QScrollArea scrollArea;
  QLabel label1("Label 1");
  QLabel label2("Label 2");
  QLabel label3("Label 3");

  scrollArea.setWidget(&label1);

  label2.show();
  label3.show();

  label1.setFocus();

  // 次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
  scrollArea.focusNextPrevChild(true); // label2 にフォーカスが移動します

  // 前のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
  scrollArea.focusNextPrevChild(false); // label1 にフォーカスが移動します

  return app.exec();
}

例2:フォーカスポリシーによる制限

この例では、QWidget::setFocusPolicy()メソッドを使用して、ラベル2のフォーカスポリシーをQt::NoFocusに設定し、フォーカス移動を制限します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QScrollArea>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QScrollArea scrollArea;
  QLabel label1("Label 1");
  QLabel label2("Label 2");
  QLabel label3("Label 3");

  scrollArea.setWidget(&label1);

  label2.show();
  label3.show();

  label1.setFocus();

  // 次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
  scrollArea.focusNextPrevChild(true); // label2 にフォーカスが移動しません

  // フォーカスポリシーを Qt::NoFocus に設定
  label2.setFocusPolicy(Qt::NoFocus);

  // 再度、次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
  scrollArea.focusNextPrevChild(true); // label3 にフォーカスが移動します

  return app.exec();
}
  • 例2では、ラベル2のフォーカスポリシーを Qt::NoFocus に設定することで、focusNextPrevChild()メソッドによるフォーカス移動を制限しています。ラベル2にフォーカスしようとすると、次のフォーカス可能な子ウィジェットであるラベル3にフォーカスが移動します。
  • 例1では、focusNextPrevChild()メソッドを呼び出すことで、ラベル1からラベル2、ラベル3へとフォーカスを移動することができます。


制限

  • フォーカス移動ポリシーによって、フォーカス移動が制限される場合があります。
  • 子ウィジェットが非表示の場合は、フォーカス可能な子ウィジェットとして認識されません。
  • スクロール領域内にフォーカス可能な子ウィジェットが存在しない場合は、フォーカス移動は行われません。

これらの制限を克服するために、QScrollArea::focusNextPrevChild()メソッドの代替方法をいくつか検討することができます。

代替方法

  1. QWidget::focusNextPrevChild()`メソッドを使用する

QScrollArea::focusNextPrevChild()メソッドは、QWidget::focusNextPrevChild()メソッドをオーバーライドして実装されています。そのため、QScrollArea内のフォーカス移動を制御するために、直接QWidget::focusNextPrevChild()メソッドを使用することができます。

QLabel label1("Label 1");
QLabel label2("Label 2");
QLabel label3("Label 3");

label1.setFocus();

// 次のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
label1.focusNextPrevChild(true); // label2 にフォーカスが移動します

// 前のフォーカス可能な子ウィジェットにフォーカスを移動
label1.focusNextPrevChild(false); // label1 にフォーカスが移動します
  1. フォーカス移動イベントを処理する

QScrollArea内で発生するフォーカス移動イベントを処理することで、より詳細なフォーカス制御を行うことができます。

void focusEvent(QFocusEvent *event) {
  if (event->reason() == QFocusReason::FocusIn) {
    // フォーカスが取得された時の処理
  } else if (event->reason() == QFocusReason::FocusOut) {
    // フォーカスが失われた時の処理
  }
}
  1. カスタムフォーカスナビゲーションロジックを実装する

より複雑なフォーカス移動ロジックが必要な場合は、カスタムフォーカスナビゲーションロジックを実装することができます。

メリットとデメリット

それぞれの代替方法には、メリットとデメリットがあります。

方法メリットデメリット
QWidget::focusNextPrevChild()メソッドを使用するシンプルで使いやすいスクロール領域特有の機能を利用できない
フォーカス移動イベントを処理するより詳細なフォーカス制御が可能コードが複雑になる
カスタムフォーカスナビゲーションロジックを実装する完全な制御が可能難易度が高い

選択の指針

必要に応じて、これらの代替方法を組み合わせることもできます。

例:非表示の子ウィジェットをスキップする

以下の例では、QWidget::focusNextPrevChild()メソッドとフォーカス移動イベントを組み合わせて、非表示の子ウィジェットをスキップするフォーカス移動ロジックを実装しています。

void focusEvent(QFocusEvent *event) {
  if (event->reason() == QFocusReason::FocusIn) {
    QWidget *nextWidget = focusNextPrevChild(true);
    if (nextWidget && !nextWidget->isVisible()) {
      nextWidget = focusNextPrevChild(true);
    }
    if (nextWidget) {
      nextWidget->setFocus();
    }
  } else if (event->reason() == QFocusReason::FocusOut) {
    // フォーカスが失われた時の処理
  }
}

この例は、あくまで一例です。具体的な実装は、アプリケーションの要件に応じて設計する必要があります。