【完全網羅】Qt Widgetsのジェスチャー認識：QGestureRecognizer::create()の使い方から応用まで

QGestureRecognizer::create() 関数は、Qt Widgets フレームワークにおけるジェスチャー認識機能の重要な要素です。この関数は、特定のターゲットオブジェクト (QWidget または QGraphicsObject) に関連する新しい QGesture オブジェクトを生成します。生成された QGesture オブジェクトは、ユーザー入力に関する情報を保持し、ジェスチャーイベントの処理に使用されます。

詳細解説

QGestureRecognizer::create() 関数は、次の引数を取ります。

target: ジェスチャーが関連付けられるターゲットオブジェクト (QWidget または QGraphicsObject)。

この関数は、以下の処理を実行します。

新しい QGesture オブジェクトを生成します。
生成された QGesture オブジェクトにターゲットオブジェクトを関連付けます。
生成された QGesture オブジェクトを返します。

例

class MyGestureRecognizer : public QGestureRecognizer
{
public:
    QGesture *create(QObject *target) override
    {
        MyGesture *gesture = new MyGesture(target);
        return gesture;
    }
};

// ...

MyGestureRecognizer recognizer;
QGestureRecognizer::registerRecognizer(&recognizer);

QWidget widget;
QGesture *gesture = recognizer.create(&widget);

この例では、MyGestureRecognizer という新しいジェスチャー認識クラスが定義されています。このクラスの create() メソッドは、MyGesture という新しいジェスチャーオブジェクトを生成し、ターゲットオブジェクト widget に関連付けて返します。

ジェスチャー認識を独自に実装するには、QGestureRecognizer クラスを継承する必要があります。
QGestureRecognizer::create() 関数は、ジェスチャー認識の内部処理で使用されます。開発者は通常、この関数を直接呼び出す必要はありません。

QGestureRecognizer::create() 関数は、Qt Widgets フレームワークにおけるジェスチャー認識機能の基盤となる重要な要素です。ジェスチャー認識を独自に実装する場合、この関数の動作を理解することが重要です。

ジェスチャー認識は、Qt の高度な機能の一つです。詳細な理解には、実践的な経験と学習が必要です。
Qt のバージョンによって、API 仕様が異なる場合があります。
本解説は、Qt Widgets 6.7.1 を基に作成されています。

class ClickGestureRecognizer : public QGestureRecognizer
{
public:
    QGesture *create(QObject *target) override
    {
        ClickGesture *gesture = new ClickGesture(target);
        return gesture;
    }
};

class ClickGesture : public QGesture
{
public:
    ClickGesture(QObject *target)
        : QGesture(target)
    {
    }

protected:
    void recognize(QGestureRecognizer::Result *result, QObject *watched, QEvent *event) override
    {
        if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress)
        {
            *result = QGestureRecognizer::Trigger;
        }
        else
        {
            *result = QGestureRecognizer::Ignore;
        }
    }
};

// ...

ClickGestureRecognizer recognizer;
QGestureRecognizer::registerRecognizer(&recognizer);

QWidget widget;
widget.installEventFilter(&recognizer);

この例では、ClickGestureRecognizer クラスが定義されています。このクラスの create() メソッドは、ClickGesture という新しいジェスチャーオブジェクトを生成し、ターゲットオブジェクト widget に関連付けて返します。

ClickGesture クラスの recognize() メソッドは、ターゲットオブジェクト上でクリックされた場合にジェスチャーを認識します。このメソッドは、QEvent::MouseButtonPress イベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Trigger を返し、それ以外のイベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Ignore を返します。

例2: カスタムジェスチャー認識

この例では、ターゲットオブジェクト上でドラッグされた場合にジェスチャーを認識するカスタムジェスチャー認識クラスを作成します。

class DragGestureRecognizer : public QGestureRecognizer
{
public:
    QGesture *create(QObject *target) override
    {
        DragGesture *gesture = new DragGesture(target);
        return gesture;
    }
};

class DragGesture : public QGesture
{
public:
    DragGesture(QObject *target)
        : QGesture(target)
    {
        m_startPosition = QPoint();
    }

protected:
    void recognize(QGestureRecognizer::Result *result, QObject *watched, QEvent *event) override
    {
        if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress)
        {
            m_startPosition = static_cast<QMouseEvent *>(event)->pos();
            *result = QGestureRecognizer::Trigger;
        }
        else if (event->type() == QEvent::MouseMove)
        {
            QPoint currentPosition = static_cast<QMouseEvent *>(event)->pos();
            if (currentPosition.x() != m_startPosition.x() || currentPosition.y() != m_startPosition.y())
            {
                *result = QGestureRecognizer::Update;
            }
        }
        else if (event->type() == QEvent::MouseButtonRelease)
        {
            *result = QGestureRecognizer::Finish;
        }
        else
        {
            *result = QGestureRecognizer::Ignore;
        }
    }

private:
    QPoint m_startPosition;
};

// ...

DragGestureRecognizer recognizer;
QGestureRecognizer::registerRecognizer(&recognizer);

QWidget widget;
widget.installEventFilter(&recognizer);

DragGesture クラスの recognize() メソッドは、ターゲットオブジェクト上でドラッグされた場合にジェスチャーを認識します。このメソッドは、QEvent::MouseButtonPress イベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Trigger を返し、QEvent::MouseMove イベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Update を返し、QEvent::MouseButtonRelease イベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Finish を返し、それ以外のイベントが発生した場合に QGestureRecognizer::Ignore を返します。

これらの例はあくまで基本的なものです。実際のアプリケーションでは、より複雑なジェスチャー認識ロジックが必要となる場合があります。

代替方法

- 複雑なジェスチャー認識ロジックが必要な場合、QGestureRecognizer を継承して独自のカスタムジェスチャークラスを作成するのが最も柔軟な方法です。
- この方法により、ジェスチャー認識のすべての側面を完全に制御できます。
- ただし、より多くのコード記述とデバッグが必要になります。
ジェスチャーイベントフィルタリング
- 単純なジェスチャー認識の場合、QObject::installEventFilter() 関数を使用してジェスチャーイベントをフィルタリングする方法があります。
- この方法により、コード記述量を減らすことができます。
- ただし、複雑なジェスチャー認識には柔軟性が不足します。
シグナルとスロットの使用
- 特定のジェスチャーアクションにのみ反応したい場合、シグナルとスロットを使用してジェスチャーイベントを処理する方法があります。
- この方法により、コードをよりモジュール化できます。
- ただし、ジェスチャー認識のすべての側面を制御することはできません。

例

カスタムジェスチャークラス

class MyGestureRecognizer : public QGestureRecognizer
{
public:
    QGesture *create(QObject *target) override
    {
        MyGesture *gesture = new MyGesture(target);
        return gesture;
    }
};

class MyGesture : public QGesture
{
public:
    MyGesture(QObject *target)
        : QGesture(target)
    {
    }

protected:
    void recognize(QGestureRecognizer::Result *result, QObject *watched, QEvent *event) override
    {
        // 独自のジェスチャー認識ロジックを実装
        if (/* 条件が満たされた場合 */)
        {
            *result = QGestureRecognizer::Trigger;
        }
        else
        {
            *result = QGestureRecognizer::Ignore;
        }
    }
};

ジェスチャーイベントフィルタリング

class MyWidget : public QWidget
{
public:
    bool eventFilter(QObject *watched, QEvent *event) override
    {
        if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress)
        {
            // ジェスチャーが開始されたことを処理
            return true;
        }
        else if (event->type() == QEvent::MouseMove)
        {
            // ジェスチャーが進行していることを処理
            return true;
        }
        else if (event->type() == QEvent::MouseButtonRelease)
        {
            // ジェスチャーが完了したことを処理
            return true;
        }

        return QWidget::eventFilter(watched, event);
    }
};

シグナルとスロット

class MyWidget : public QWidget
{
public:
    signals:
        void gestureStarted();
        void gestureUpdated();
        void gestureFinished();

public slots:
    void handleMouseButtonPress(QMouseEvent *event);
    void handleMouseMove(QMouseEvent *event);
    void handleMouseButtonRelease(QMouseEvent *event);
};

void MyWidget::handleMouseButtonPress(QMouseEvent *event)
{
    // ジェスチャーが開始されたことを処理
    emit gestureStarted();
}

void MyWidget::handleMouseMove(QMouseEvent *event)
{
    // ジェスチャーが進行していることを処理
    emit gestureUpdated();
}

void MyWidget::handleMouseButtonRelease(QMouseEvent *event)
{
    // ジェスチャーが完了したことを処理
    emit gestureFinished();
}

最適な方法の選択

最適な方法は、具体的な要件と状況によって異なります。

特定のジェスチャーアクションにのみ反応したい場合
シグナルとスロットが最適です。
コード記述量を減らしたい場合
ジェスチャーイベントフィルタリングが最適です。
複雑なジェスチャー認識が必要な場合
カスタムジェスチャークラスが最適です。

ジェスチャー認識は、Qt の高度な機能の一つです。詳細な理解には、実践的な経験と学習が必要です。
上記の例はあくまで基本的なものです。実際のアプリケーションでは、より複雑なロジックが必要となる場合があります。

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