【超解説】Qt WidgetsのQDataWidgetMapper::revert()を使いこなしてフォーム編集を元に戻す
QDataWidgetMapper::revert()
は、Qt Widgetsライブラリで提供されるクラスであるQDataWidgetMapper
のメソッドの一つです。このメソッドは、QDataWidgetMapper
によって管理されているすべてのウィジェットを、現在のモデルデータで再設定します。つまり、ユーザーによる編集内容が破棄され、モデルに格納されている元の値に戻されます。
役割
QDataWidgetMapper
は、データモデルとウィジェット間の双方向バインディングを容易にするためのクラスです。モデル内のデータに基づいてウィジェットを初期化し、ウィジェットの変更をモデルに反映することができます。
revert()
メソッドは、この双方向バインディングメカニズムを制御するために使用されます。具体的には、以下の役割を果たします。
- モデルデータの変更を反映するために、すべてのウィジェットを更新します。
- ユーザーによる編集内容を破棄し、モデルの元の値にウィジェットを戻します。
使用方法
revert()
メソッドは、QDataWidgetMapper
オブジェクトに対して直接呼び出すことができます。以下のコード例は、revert()
メソッドを呼び出す方法を示しています。
QDataWidgetMapper mapper;
mapper.setModel(myModel);
mapper.addMapping(myLineEdit, 0);
mapper.addMapping(myCheckBox, 1);
// ... ユーザーによる編集が行われた後 ...
mapper.revert();
このコード例では、myModel
というモデルとmyLineEdit
、myCheckBox
というウィジェットをQDataWidgetMapper
に関連付けます。その後、ユーザーによる編集が行われた後にrevert()
メソッドを呼び出すことで、すべてのウィジェットがモデルの元の値に更新されます。
注意点
revert()
メソッドは、すべてのウィジェットを更新するため、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。大規模なアプリケーションでは、個別にウィジェットを更新する方法を検討する必要があります。revert()
メソッドは、ユーザーによる編集内容を破棄するため、重要なデータ変更を破棄しないように注意する必要があります。revert()
メソッドは、モデル内のデータに基づいてウィジェットを更新するため、モデルにデータが存在しない場合や、モデルデータが無効な場合は、予期しない動作を引き起こす可能性があります。
代替手段
revert()
メソッド以外にも、モデルデータに基づいてウィジェットを更新する方法があります。例えば、以下の方法が考えられます。
- カスタムシグナルスロット接続を使用して、モデルデータの変更をウィジェットに反映する。
QAbstractItemDelegate::commitData()
メソッドを使用して、編集内容をモデルに反映する。QAbstractItemModel::setData()
メソッドを使用して、モデルデータを直接更新する。
これらの方法は、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。
例:フォームの編集内容を元に戻す
この例では、シンプルなフォームを作成し、QDataWidgetMapper
を使用してフォームフィールドをモデルデータにバインドします。その後、ユーザーがフォームを編集した後、revert()
メソッドを呼び出して編集内容を元に戻します。
#include <QApplication>
#include <QDataWidgetMapper>
#include <QFormLayout>
#include <QLineEdit>
#include <QSpinBox>
#include <QDialog>
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
// モデルを作成
QStandardItemModel model;
model.setColumnCount(2);
model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "名前");
model.setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "年齢");
// モデルにデータを追加
QStandardItem *item1 = new QStandardItem("田中 太郎");
item1->setData(30, 1);
model.appendRow(item1);
QStandardItem *item2 = new QStandardItem("佐藤 花子");
item2->setData(25, 1);
model.appendRow(item2);
// フォームを作成
QDialog dialog;
QFormLayout formLayout(&dialog);
// 名前フィールド
QLineEdit *nameLineEdit = new QLineEdit;
formLayout.addRow("名前:", nameLineEdit);
// 年齢フィールド
QSpinBox *ageSpinBox = new QSpinBox;
formLayout.addRow("年齢:", ageSpinBox);
// データウィジェットマッパーを作成
QDataWidgetMapper mapper;
mapper.setModel(&model);
mapper.addMapping(nameLineEdit, 0);
mapper.addMapping(ageSpinBox, 1);
// フォームレイアウトをダイアログに追加
dialog.setLayout(&formLayout);
// ダイアログを表示
dialog.show();
// ユーザーがフォームを編集した後、revert()メソッドを呼び出す
QTimer::singleShot(5000, &mapper, &QDataWidgetMapper::revert);
return app.exec();
}
このコードを実行すると、以下のようになります。
- ダイアログが表示され、フォームフィールドにはモデルデータが表示されます。
- ユーザーがフォームを編集します。
- 5秒後、
revert()
メソッドが呼び出され、フォームフィールドがモデルの元の値に戻されます。
以下に、revert()
メソッドの代替方法として考えられるいくつかの方法をご紹介します。
QAbstractItemModel::setData() メソッドを使用する
この方法は、モデルデータを直接更新することで、ウィジェットを更新します。以下のコード例は、QAbstractItemModel::setData()
メソッドを使用して、モデルの第 0 行の第 1 列のデータを更新する方法を示しています。
QModelIndex index = model.index(0, 1);
model.setData(index, newValue);
この方法の利点は、個別にウィジェットを更新できることです。一方、revert()
メソッドは、すべてのウィジェットを更新するため、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
QAbstractItemDelegate::commitData() メソッドを使用する
この方法は、編集内容をモデルに反映するために使用されます。以下のコード例は、QAbstractItemDelegate::commitData()
メソッドを使用して、編集内容をモデルに反映する方法を示しています。
QAbstractItemDelegate *delegate = mapper.itemDelegate();
if (delegate) {
delegate->commitData(editor);
}
この方法の利点は、編集内容のみをモデルに反映できることです。一方、revert()
メソッドは、すべてのウィジェットを更新するため、編集内容以外の変更も破棄してしまう可能性があります。
カスタムシグナルスロット接続を使用する
この方法は、モデルデータの変更をウィジェットに反映するために、カスタムシグナルスロット接続を使用します。以下のコード例は、モデルデータが変更されたときにスロットが呼び出されるように、カスタムシグナルスロット接続を設定する方法を示しています。
connect(model, &QAbstractItemModel::dataChanged, this, &MyClass::onDataChanged);
onDataChanged()
スロット内では、モデルデータの変更に応じてウィジェットを更新することができます。
この方法の利点は、柔軟性が高いことです。モデルデータの変更に応じて、任意の処理を実行することができます。一方、revert()
メソッドや QAbstractItemDelegate::commitData()
メソッドは、より単純な方法です。
適切な方法の選択
どの方法が適切かは、状況によって異なります。以下の点を考慮して、適切な方法を選択してください。
- 柔軟性
- 編集内容をモデルに反映する必要があるかどうか
- 更新する必要があるウィジェットの数