【実践編】Qt WidgetsでQCompleter::filterModeを駆使して、あなただけの補完システムを構築

QCompleter::filterModeは、QCompleterウィジェットが補完候補をどのようにフィルタリングするかを制御するプロパティです。これは、入力された文字列と一致する候補のみを表示するかどうかを決定します。

デフォルトの動作

デフォルトでは、filterModeはQt::MatchStartsWithに設定されています。これは、入力された文字列が候補の最初の部分と一致する候補のみが表示されることを意味します。例えば、入力された文字列が "app" の場合、QApplication と QApplet などの候補が表示されますが、QPushButton や QLineEdit などの候補は表示されません。

filterModeには、以下のフラグも設定できます。

Qt::MatchFuzzy: 入力された文字列と類似する候補が表示されます。
Qt::MatchWordContains: 入力された単語が候補の任意の単語と一致する候補が表示されます。
Qt::MatchWordStartsWith: 入力された単語が候補の最初の単語と一致する候補が表示されます。
Qt::MatchContains: 入力された文字列が候補の任意の部分と一致する候補が表示されます。

カスタムフィルタリング

filterModeをQt::CustomMatchに設定すると、独自のフィルタリングロジックを実装できます。これは、QCompleterModelInterface::filter()メソッドを再実装することで行います。

例

以下の例は、Qt::MatchWordStartsWithモードを設定する方法を示しています。

QCompleter completer(this);
completer.setFilterMode(Qt::MatchWordStartsWith);

以下の例は、QCompleterModelInterface::filter()メソッドを再実装して、大文字小文字を区別しないフィルタリングを行う方法を示しています。

class MyCompleterModel : public QCompleterModelInterface
{
public:
    virtual QModelIndexList filter(const QString &prefix, const QModelIndex &parent) const override
    {
        QModelIndexList matches;
        for (int row = 0; row < model()->rowCount(); ++row) {
            QModelIndex index = model()->index(row, 0, parent);
            QString text = model()->data(index).toString();
            if (text.toLower().startsWith(prefix.toLower())) {
                matches.append(index);
            }
        }
        return matches;
    }
};

QCompleter::filterModeプロパティを使用して、QCompleterウィジェットの動作をカスタマイズすることができます。デフォルトの動作はQt::MatchStartsWithですが、他のモードを設定したり、独自のフィルタリングロジックを実装したりすることもできます。

例1: Qt::MatchWordStartsWithモードの設定

この例では、QCompleterウィジェットをQLineEditウィジェットに関連付け、Qt::MatchWordStartsWithモードを設定します。入力された単語が候補の最初の単語と一致する候補のみが表示されます。

#include <QApplication>
#include <QCompleter>
#include <QLineEdit>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // データモデルを作成
    QStringList data = {"apple", "orange", "banana", "grape"};
    QCompleterModel *model = new QStringListModel(data);

    // QCompleter を作成
    QCompleter completer(model);
    completer.setFilterMode(Qt::MatchWordStartsWith);

    // QLineEdit を作成
    QLineEdit lineEdit;
    lineEdit.setCompleter(&completer);

    // ウィジェットを表示
    lineEdit.show();

    return app.exec();
}

#include <QApplication>
#include <QCompleter>
#include <QLineEdit>
#include <QCompleterModelInterface>

class MyCompleterModel : public QCompleterModelInterface
{
public:
    virtual QModelIndexList filter(const QString &prefix, const QModelIndex &parent) const override
    {
        QModelIndexList matches;
        for (int row = 0; row < model()->rowCount(); ++row) {
            QModelIndex index = model()->index(row, 0, parent);
            QString text = model()->data(index).toString();
            if (text.toLower().startsWith(prefix.toLower())) {
                matches.append(index);
            }
        }
        return matches;
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // データモデルを作成
    QStringList data = {"apple", "orange", "banana", "grape"};
    MyCompleterModel *model = new MyCompleterModel(data);

    // QCompleter を作成
    QCompleter completer(model);

    // QLineEdit を作成
    QLineEdit lineEdit;
    lineEdit.setCompleter(&completer);

    // ウィジェットを表示
    lineEdit.show();

    return app.exec();
}

カスタムフィルタリングロジックの実装

最も柔軟な方法は、QCompleterModelInterface::filter()メソッドを再実装して独自のフィルタリングロジックを実装することです。

長所:

特殊な要件にも対応可能
完全な制御が可能

短所:

コード量が増える
複雑になる可能性がある

例:

class MyCompleterModel : public QCompleterModelInterface
{
public:
    virtual QModelIndexList filter(const QString &prefix, const QModelIndex &parent) const override
    {
        // 独自のフィルタリングロジックを実装
        ...
    }
};

QRegExp を使用する

より単純な代替方法として、QRegExpを使用して入力された文字列と候補を比較することができます。

長所:

カスタムフィルタリングロジックよりもコード量が少ない
比較的シンプル

短所:

正規表現の構文を理解する必要がある
QCompleter::filterModeほど柔軟ではない

例:

QCompleter completer(this);

// 正規表現を作成
QRegExp regexp(prefix, Qt::CaseInsensitive);

// 候補をフィルタリング
for (int i = 0; i < model()->rowCount(); ++i) {
    QModelIndex index = model()->index(i, 0);
    QString text = model()->data(index).toString();
    if (regexp.exactMatch(text)) {
        matches.append(index);
    }
}

Qt::MatchContains を使用する

QCompleter::filterModeには、Qt::MatchContainsフラグもあります。これは、入力された文字列が候補の任意の部分と一致する候補をすべて表示します。

長所:

コード変更が不要
シンプル

短所:

QCompleter::MatchWordStartsWithなどの他のモードほど精度が高くない
望ましくない候補も表示される可能性がある

例:

QCompleter completer(this);
completer.setFilterMode(Qt::MatchContains);

別の補完ウィジェットを使用する

QCompleter以外にも、QComboBoxやQListViewなどの補完ウィジェットがあります。これらのウィジェットは、独自のフィルタリング機能を備えている場合があります。

長所:

使用が簡単
コード変更が不要

短所:

すべての要件を満たせない可能性がある
QCompleterほど柔軟ではない

例:

QComboBox comboBox(this);
comboBox.setEditable(true);
comboBox.addItems({"apple", "orange", "banana", "grape"});

// 補完候補をフィルタリング
comboBox.setModelCompleter(new QCompletionModel(data));

最適な代替方法の選択

最適な代替方法は、具体的な要件によって異なります。複雑なフィルタリングロジックが必要な場合は、カスタムフィルタリングロジックを実装する必要があります。より単純な解決策が必要な場合は、QRegExp、Qt::MatchContains、または別の補完ウィジェットを使用することを検討してください。

使いやすさ: ユーザーにとって使いやすいインターフェースを設計することが重要です。複雑なフィルタリングロジックは、ユーザーにとって理解しにくいかもしれません。
パフォーマンス: カスタムフィルタリングロジックを実装する場合は、パフォーマンスへの影響を考慮する必要があります。複雑なロジックは、補完候補の生成を遅らせる可能性があります。