【Qt Widgets】スピンボックスの入力をリアルタイムに追跡？ QAbstractSpinBox::keyboardTracking徹底解説

QAbstractSpinBox::keyboardTracking は、Qt Widgetsライブラリにおける QAbstractSpinBox ウィジェットの重要なプロパティです。これは、スピンボックス内の値をキーボード入力中にリアルタイムで更新するかどうかに影響を与えます。

デフォルト動作

デフォルトでは、keyboardTracking プロパティは true に設定されています。つまり、スピンボックスに値を入力すると、スピンボックス内の値はリアルタイムで更新され、valueChanged() シグナルが各キーストローク後に送信されます。

keyboardTracking を false に設定した場合

keyboardTracking プロパティを false に設定すると、スピンボックス内の値は、Enterキーが押されるまで更新されません。つまり、ユーザーがスピンボックスに入力しても、スピンボックス内の値は可視的に変化せず、valueChanged() シグナルも送信されません。

例

以下の例は、keyboardTracking プロパティが true および false に設定されている場合のスピンボックスの動作を示しています。

// keyboardTracking = true

QAbstractSpinBox spinBox1;
spinBox1.setValue(50);
spinBox1.setKeyboardTracking(true);

connect(&spinBox1, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
        [this](int value) {
            // 値が変更されるたびにこのスロットが呼び出されます
            qDebug() << "Value changed to:" << value;
        });

spinBox1.show();

// keyboardTracking = false

QAbstractSpinBox spinBox2;
spinBox2.setValue(50);
spinBox2.setKeyboardTracking(false);

connect(&spinBox2, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
        [this](int value) {
            // Enterキーが押されるまでこのスロットは呼び出されません
            qDebug() << "Value changed to:" << value;
        });

spinBox2.show();

この例では、spinBox1 の keyboardTracking プロパティは true に設定されているため、ユーザーがスピンボックスに値を入力すると、スピンボックス内の値はリアルタイムで更新され、valueChanged() シグナルが各キーストローク後に送信されます。一方、spinBox2 の keyboardTracking プロパティは false に設定されているため、ユーザーがスピンボックスに入力しても、スピンボックス内の値は可視的に変化せず、valueChanged() シグナルも送信されません。Enterキーが押されるまで、スピンボックス内の値は更新されません。

使用例

keyboardTracking プロパティは、さまざまな状況で使用できます。例えば、スピンボックスの値をリアルタイムで更新する必要がない場合、またはユーザーがスピンボックスに入力する前に値を確認したい場合は、keyboardTracking プロパティを false に設定できます。

keyboardTracking プロパティは、QLineEdit ウィジェットの inputMethodQuery() メソッドを使用して変更することもできます。
keyboardTracking プロパティは、Qt 4.3 以降で使用できます。

keyboardTracking を true に設定

#include <QApplication>
#include <QAbstractSpinBox>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QAbstractSpinBox spinBox;
    spinBox.setValue(50);
    spinBox.setKeyboardTracking(true);

    connect(&spinBox, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
            [](int value) {
                qDebug() << "Value changed to:" << value;
            });

    spinBox.show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、スピンボックスが表示されます。ユーザーがスピンボックスに値を入力すると、スピンボックス内の値はリアルタイムで更新され、コンソールに新しい値が出力されます。

keyboardTracking を false に設定

この例では、keyboardTracking プロパティを false に設定し、Enterキーが押されるまでスピンボックスの値を更新しません。

#include <QApplication>
#include <QAbstractSpinBox>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QAbstractSpinBox spinBox;
    spinBox.setValue(50);
    spinBox.setKeyboardTracking(false);

    connect(&spinBox, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
            [](int value) {
                qDebug() << "Value changed to:" << value;
            });

    spinBox.show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、スピンボックスが表示されます。ユーザーがスピンボックスに値を入力しても、スピンボックス内の値は可視的に変化しません。Enterキーが押されるまで、スピンボックス内の値は更新されず、コンソールに新しい値が出力されます。

この例では、inputMethodQuery() メソッドを使用して keyboardTracking プロパティを動的に変更します。

#include <QApplication>
#include <QAbstractSpinBox>
#include <QInputMethodEvent>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QAbstractSpinBox spinBox;
    spinBox.setValue(50);

    connect(&spinBox, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
            [](int value) {
                qDebug() << "Value changed to:" << value;
            });

    spinBox.show();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、スピンボックスが表示されます。ユーザーがスピンボックスをクリックすると、keyboardTracking プロパティは true に設定され、スピンボックス内の値はリアルタイムで更新されます。ユーザーがスピンボックスからフォーカスを外すと、keyboardTracking プロパティは false に設定され、スピンボックス内の値は更新されなくなります。

カスタム QValidator を使用する

QValidator クラスを使用して、スピンボックスに入力できる値を制限することができます。これにより、ユーザーが入力できる値を制御し、スピンボックスの値をリアルタイムで更新する必要性を排除できます。

#include <QApplication>
#include <QAbstractSpinBox>
#include <QIntValidator>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QAbstractSpinBox spinBox;
    spinBox.setValue(50);

    // 0 から 100 までの値のみを許可するバリデータを作成
    QIntValidator validator(0, 100);
    spinBox.setValidator(&validator);

    connect(&spinBox, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
            [](int value) {
                qDebug() << "Value changed to:" << value;
            });

    spinBox.show();

    return app.exec();
}

この例では、QIntValidator を使用して、スピンボックスに入力できる値を 0 から 100 の範囲に制限しています。ユーザーがスピンボックスに無効な値を入力すると、スピンボックス内の値は変更されません。

QLineEdit を使用する

QLineEdit ウィジェットを使用して、数値を入力することもできます。QLineEdit には、inputMethodQuery() メソッドを使用して keyboardTracking プロパティを変更する機能が備わっています。

#include <QApplication>
#include <QLineEdit>
#include <QInputMethodEvent>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QLineEdit lineEdit;
    lineEdit.setText("50");

    connect(&lineEdit, &QLineEdit::textChanged,
            [](const QString &text) {
                qDebug() << "Value changed to:" << text;
            });

    lineEdit.show();

    return app.exec();
}

この例では、QLineEdit を使用して数値を入力しています。ユーザーが QLineEdit に値を入力すると、textChanged() シグナルが送信され、新しい値が出力されます。

シグナルとスロットを使用する

valueChanged() シグナルとスロットを使用して、スピンボックスの値が変更されたときにコードを実行することもできます。

#include <QApplication>
#include <QAbstractSpinBox>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QAbstractSpinBox spinBox;
    spinBox.setValue(50);

    connect(&spinBox, &QAbstractSpinBox::valueChanged,
            &spinBox, [this](int value) {
                // ここでスピンボックスの値に基づいて処理を実行
            });

    spinBox.show();

    return app.exec();
}

この例では、valueChanged() シグナルとスロットを使用して、スピンボックスの値が変更されたときに匿名スロットを呼び出しています。このスロット内で、スピンボックスの値に基づいて処理を実行することができます。