MariaDB で「LOCK IN SHARE MODE」以外のロックを使用する代替方法:効率と安全性を高めるロック戦略
MariaDB でトランザクション処理を行う際に、データの競合を防ぎ、整合性を保つために重要な役割を果たすのが "ロック" です。ロックには様々な種類があり、それぞれ異なる用途と特性を持っています。
本解説では、MariaDB の "SQL Statements & Structure" における "LOCK IN SHARE MODE" のプログラミングについて、分かりやすく詳しく解説します。
"LOCK IN SHARE MODE" とは?
"LOCK IN SHARE MODE" は、読み取り専用ロック と呼ばれる一種のロックであり、ロックされたオブジェクトに対して 読み取り操作のみ を許可するモードです。書き込み操作は許可されないため、データの整合性を保ち、競合を防止することができます。
"LOCK IN SHARE MODE" の用途
"LOCK IN SHARE MODE" は、以下の用途で主に使用されます。
- 複数の読み取り操作が同時に安全に行われるようにする
- 更新処理を行う前に、データがロックされていないことを確認する
- SELECT クエリの実行前に、データが変更されていないことを確認する
"LOCK IN SHARE MODE" の構文
"LOCK IN SHARE MODE" は、以下の構文で使用されます。
SELECT * FROM table_name WHERE condition
LOCK IN SHARE MODE;
例:
SELECT * FROM customers WHERE customer_id = 123
LOCK IN SHARE MODE;
上記の例では、customers
テーブルの customer_id
が 123 であるレコードを 読み取り専用ロック し、その後、そのレコードを SELECT
クエリで取得します。
"LOCK IN SHARE MODE" と他のロックモードとの比較
ロックモード | 許可される操作 | 詳細 |
---|---|---|
LOCK IN SHARE MODE | 読み取り | 読み取り専用ロック。書き込み操作は許可されない。 |
LOCK IN EXCLUSIVE MODE | 読み取り、書き込み | 排他ロック。読み取り操作と書き込み操作の両方を許可する。 |
UPDATE | 読み取り、書き込み | 排他ロック。更新処理を実行する際に自動的に取得される。 |
"LOCK IN SHARE MODE" の注意点
- ロックは、トランザクションがコミットまたはロールバックされた際に自動的に解放されます。
- ロックを取得したまま長時間放置すると、他のトランザクションの処理を妨げる可能性があります。ロックは必要最低限の時間のみ保持するようにしましょう。
- "LOCK IN SHARE MODE" は、読み取り操作のみ を許可するロックです。書き込み操作を行う場合は、他のロックモードを使用する必要があります。
"LOCK IN SHARE MODE" は、MariaDB でトランザクション処理を行う際に、データの競合を防ぎ、整合性を保つために重要な役割を果たすロックモードです。
本解説では、"LOCK IN SHARE MODE" の基本的な概念、用途、構文、他のロックモードとの比較、注意点などを詳しく解説しました。
BEGIN TRANSACTION;
SELECT * FROM customers WHERE customer_id = 123
LOCK IN SHARE MODE;
-- データ更新処理
UPDATE customers
SET customer_name = '新顧客名'
WHERE customer_id = 123;
COMMIT;
解説:
BEGIN TRANSACTION;
でトランザクションを開始します。SELECT * FROM customers WHERE customer_id = 123 LOCK IN SHARE MODE;
で、customer_id
が 123 であるレコードを 読み取り専用ロック し、その後、そのレコードをSELECT
クエリで取得します。- ロックされたレコードに対して、
customer_name
を '新顧客名' に更新します。 COMMIT;
でトランザクションをコミットし、変更を確定します。
この例では、SELECT
クエリを実行する前に LOCK IN SHARE MODE
を使用することで、データが更新されていないことを確認してから更新処理を実行しています。
例2:更新処理を行う前にデータがロックされていないことを確認する
BEGIN TRANSACTION;
SELECT * FROM accounts WHERE account_id = 456
FOR UPDATE;
-- 残高確認処理
UPDATE accounts
SET balance = balance - 100
WHERE account_id = 456;
COMMIT;
解説:
BEGIN TRANSACTION;
でトランザクションを開始します。SELECT * FROM accounts WHERE account_id = 456 FOR UPDATE;
で、account_id
が 456 であるレコードを 更新ロック し、その後、そのレコードをSELECT
クエリで取得します。- ロックされたレコードの残高を確認します。
- 残高が十分であれば、
balance
を 100 減額します。 COMMIT;
でトランザクションをコミットし、変更を確定します。
この例では、FOR UPDATE
を使用して account_id
が 456 であるレコードを 更新ロック し、他のトランザクションによる更新処理をブロックしてから、残高確認と更新処理を実行しています。
例3:複数の読み取り操作が同時に安全に行われるようにする
SELECT * FROM products
WHERE category_id = 10
LOCK IN SHARE MODE;
解説:
上記の例では、category_id
が 10 であるすべての製品情報を SELECT
クエリで取得し、同時に読み取り操作が行われるように LOCK IN SHARE MODE
を使用しています。
この例のように、複数の読み取り操作が同時に安全に行われる必要がある場合に、LOCK IN SHARE MODE
を使用することができます。
- ロックの取得方法や解放方法については、MariaDB の公式ドキュメントを参照してください。
- 上記の例では、
BEGIN TRANSACTION;
とCOMMIT;
を使用してトランザクションを明示的に開始・終了していますが、省略することもできます。
排他ロック
- 代表的なロックモード
LOCK IN EXCLUSIVE MODE
UPDATE
- 用途
データを書き換える必要がある場合
共有ロック
- 代表的なロックモード
READ WRITE
- 用途
読み取り操作と書き込み操作を同時に行う必要がある場合
行ロック
- 代表的なロックモード
SELECT ... FOR UPDATE
UPDATE ... WHERE ... FOR UPDATE
- 用途
特定の行のみをロックしたい場合
ロックの取得方法
- トランザクション分離レベル:
SERIALIZABLE
およびREPEATABLE READ
は、行ロックを使用して競合を防止します。 LOCK IN ... MODE
句:SELECT
、UPDATE
、DELETE
などのステートメント内に記述して、特定のレコードまたは行をロックします。LOCK TABLE
ステートメント: 明示的にテーブル全体をロックします。
ロックの注意点
- デッドロックを避けるために、ロックを使用する際には十分に注意する必要があります。
- ロックは、トランザクションがコミットまたはロールバックされた際に自動的に解放されます。
- ロックを取得したまま長時間放置すると、他のトランザクションの処理を妨げる可能性があります。ロックは必要最低限の時間のみ保持するようにしましょう。
代替方法の例
以下に、"LOCK IN SHARE MODE" の代替となるロックの使用方法例をいくつか示します。
例1:排他ロックを使用してデータを書き換える
BEGIN TRANSACTION;
UPDATE customers
SET customer_name = '新顧客名'
WHERE customer_id = 123
LOCK IN EXCLUSIVE MODE;
COMMIT;
例2:共有ロックを使用して読み取り操作と書き込み操作を同時に行う
BEGIN TRANSACTION;
SELECT * FROM accounts WHERE account_id = 456
LOCK IN SHARE MODE;
UPDATE accounts
SET balance = balance - 100
WHERE account_id = 456;
COMMIT;
例3:行ロックを使用して特定の行のみをロックする
BEGIN TRANSACTION;
SELECT * FROM products WHERE product_id = 789
FOR UPDATE;
UPDATE products
SET product_price = product_price * 1.1
WHERE product_id = 789;
COMMIT;
これらの例はあくまでも一例であり、状況に応じて様々な使い方が可能です。