PHP・PythonでMariaDBエラーをハンドリングする方法：コード例で学ぶエラー処理

2025-05-31

MariaDBのエラーコードは、通常、以下のような形式で表示されます。

ERROR NNNN (STATE SSSSS)

ここで、

SSSSS はSQLSTATEコードと呼ばれる5文字の英数字のコードで、SQL標準に準拠しています。
NNNN は数値のエラーコードです。

MariaDBのエラーコードの主なカテゴリと例

MariaDBのエラーコードは、大きくいくつかのカテゴリに分類できます。

- 例: ERROR 1045 (28000): Access denied for user 'user'@'host' (using password: YES)
  - これは最も一般的なエラーの一つで、指定されたユーザー名やパスワードが正しくない、またはそのユーザーにアクセス権がない場合に発生します。
  - 解決策
    ユーザー名とパスワードを確認し、必要であればGRANT文で適切な権限を付与します。
- 例: ERROR 2002 (HY000): Can't connect to local MySQL server through socket '/var/run/mysqld/mysqld.sock' (2)
  - MariaDBサーバーが起動していないか、指定されたソケットファイルが見つからない場合に発生します。
  - 解決策
    MariaDBサーバーが起動しているか確認します。起動していない場合は起動します。ソケットファイルのパスが正しいか設定を確認します。
構文エラー (1000番台後半)
- 例: ERROR 1064 (42000): You have an error in your SQL syntax; check the manual that corresponds to your MariaDB server version for the right syntax to use near '...' at line N
  - SQL文の記述に誤りがある場合に発生します。エラーメッセージに「near '...'」と表示される部分の近くに問題があります。
  - 解決策
    SQL文のスペルミス、句読点の誤り、予約語の誤用などを確認し、MariaDBのドキュメントを参照して正しい構文に修正します。
テーブル/データベース関連のエラー (1000番台後半〜1100番台)
- 例: ERROR 1146 (42S02): Table 'database.table' doesn't exist
  - 指定されたテーブルが存在しない場合に発生します。
  - 解決策
    テーブル名が正しいか、現在接続しているデータベースが正しいかを確認します。
重複エントリ/キー関連のエラー (1062番)
- 例: ERROR 1062 (23000): Duplicate entry 'value' for key 'PRIMARY'
  - PRIMARY KEYやUNIQUE KEYに、既に存在する値を挿入しようとした場合に発生します。
  - 解決策
    挿入しようとしている値が重複していないか確認します。必要であれば、UNIQUE KEYの設定を見直すことも検討します。
データ型/値の範囲に関するエラー (1200番台)
- 例: ERROR 1264 (22003): Out of range value for column 'column_name' at row N
  - カラムのデータ型で許容される範囲を超える値を挿入しようとした場合に発生します。
  - 解決策
    挿入しようとしている値がカラムのデータ型と一致しているか、範囲内に収まっているかを確認します。
トリガー/ストアドプロシージャ関連のエラー
- これらは通常、上記の一般的なエラーコードと組み合わせて発生することが多いですが、トリガーやストアドプロシージャのロジックに問題があることを示唆します。

エラーコードの調べ方

MariaDBのエラーコードの詳細については、MariaDBの公式ドキュメントで確認できます。

このドキュメントでは、各エラーコードの番号、SQLSTATE、簡単な説明、そして多くの場合、考えられる原因と解決策が示されています。

ここでは、MariaDBでよく遭遇するエラーと、それに対する一般的なトラブルシューティング方法をいくつかご紹介します。

接続関連のエラー

MariaDBサーバーへの接続時に発生するエラーは非常に頻繁です。

エラーコード
ERROR 2002 (HY000) または ERROR 2003 (HY000)
- エラーメッセージの例
  Can't connect to local MySQL server through socket '/var/run/mysqld/mysqld.sock' (2) (Linux/Unix系)
- エラーメッセージの例
  Can't connect to MySQL server on '127.0.0.1' (10061) (Windows系やTCP/IP接続)
- 意味
  MariaDBサーバーが起動していないか、指定されたソケットファイルまたはホスト/ポートでリッスンしていません。
- トラブルシューティング
  - MariaDBサーバーの起動状態確認
    - Linuxの場合: sudo systemctl status mariadb または sudo service mariadb status
    - Windowsの場合: サービスマネージャー (services.msc) で "MariaDB" または "MySQL" 関連のサービスが「実行中」になっているか確認。
    - 起動していない場合は起動します: sudo systemctl start mariadb または sudo service mariadb start
  - ソケットファイルのパス確認 (Linux/Unix系)
    - エラーメッセージに表示されているソケットファイルのパスが正しいか確認します。
    - MariaDBの設定ファイル (my.cnf など) で [mysqld] セクションの socket の設定を確認します。
    - アプリケーションが接続しようとしているソケットパスと、MariaDBサーバーが使用しているソケットパスが一致しているか確認します。
  - ホスト名/IPアドレスとポート番号の確認 (TCP/IP接続)
    - 接続しようとしているホスト名（例: localhost、127.0.0.1、サーバーのIPアドレス）とポート番号（デフォルトは3306）が正しいか確認します。
    - ファイアウォールがポート3306（またはMariaDBが使用しているポート）をブロックしていないか確認します。
    - MariaDBの設定ファイル (my.cnf など) で bind-address の設定を確認します。127.0.0.1 に設定されている場合、そのサーバー自身からしか接続できません。他のホストからも接続したい場合は 0.0.0.0 にするか、コメントアウトします。
エラーコード
ERROR 1045 (28000)
- エラーメッセージの例
  Access denied for user 'your_user'@'localhost' (using password: YES)
- 意味
  指定されたユーザー名またはパスワードが間違っているか、そのユーザーに接続元のホストからのアクセスが許可されていません。
- トラブルシューティング
  - ユーザー名とパスワードの確認
    最も一般的な原因です。入力したユーザー名とパスワードが正確であることを再確認してください。特に、大文字・小文字、記号の間違いがないか注意します。
  - アクセス権の確認
    GRANT 文で、そのユーザーが接続元のホスト（例: localhost、% (任意のホスト)）からアクセスできる権限が付与されているか確認します。
```
-- 例: 'your_user'に'localhost'からのアクセス権限を付与
GRANT ALL PRIVILEGES ON your_database.* TO 'your_user'@'localhost' IDENTIFIED BY 'your_password';
FLUSH PRIVILEGES;
```
  - rootユーザーの利用
    root ユーザーはデフォルトで localhost からしかアクセスできない設定になっていることが多いです。もしリモートから root で接続したい場合は、適切な GRANT 設定が必要です（ただしセキュリティ上推奨されません）。

構文エラー

SQL文の記述ミスは非常によくあるエラーです。

データ関連のエラー

データの挿入、更新、削除時に発生するエラーです。

エラーコード
ERROR 1264 (22003)
- エラーメッセージの例
  Out of range value for column 'column_name' at row N
- 意味
  特定のカラムに、そのデータ型で許容される範囲を超える値を挿入しようとしました。
- トラブルシューティング
  - カラムのデータ型確認
    該当カラムのデータ型（例: TINYINT, SMALLINT, INT, BIGINT, DECIMAL, DATETIME など）を確認します。
  - 挿入値の確認
    挿入しようとしている値が、そのデータ型の範囲内に収まっているか確認します。
  - 例
    TINYINT (符号付き) は -128 から 127 までですが、これを超える値を入れようとするとこのエラーになります。DATETIME 型に不正な日付文字列を入れようとした場合も発生します。
エラーコード
ERROR 1062 (23000)
- エラーメッセージの例
  Duplicate entry 'value' for key 'PRIMARY' または Duplicate entry 'value' for key 'column_name_UNIQUE'
- 意味
  PRIMARY KEY または UNIQUE KEY が設定されているカラムに、既に存在する値を挿入しようとしました。
- トラブルシューティング
  - 挿入データの確認
    挿入しようとしている値が本当に重複していないか確認します。
  - キー制約の理解
    そのカラムに重複が許されない制約があることを理解します。ビジネスロジック上、そのデータが重複しても良いのであれば、スキーマ設計を見直す必要があります（ただし慎重に）。
  - 既存データの確認
    SELECT 文を使って、そのキーを持つ既存のデータが存在するか確認します。
  - INSERT IGNORE / ON DUPLICATE KEY UPDATE
    プログラムで重複エラーを許容し、既存行を無視したり更新したりしたい場合は、INSERT IGNORE や INSERT ... ON DUPLICATE KEY UPDATE を検討します。

テーブル/データベース関連のエラー

エラーコード
ERROR 1146 (42S02)
- エラーメッセージの例
  Table 'your_database.your_table' doesn't exist
- 意味
  指定されたデータベースまたはテーブルが存在しません。
- トラブルシューティング
  - データベース名とテーブル名のスペル確認
    大文字・小文字も含め、正確に記述されているか確認します。特にLinux環境ではテーブル名やデータベース名が大文字・小文字を区別する場合があります。
  - 現在接続しているデータベースの確認
    USE database_name; で正しいデータベースに切り替えているか、またはクエリで database_name.table_name のように明示的に指定しているか確認します。
  - テーブルの存在確認
    SHOW TABLES; や SHOW CREATE TABLE your_table; を実行して、実際にテーブルが存在するか確認します。

エラーコード
ERROR 1054 (42S22)
- エラーメッセージの例
  Unknown column 'column_name' in 'field list'
- 意味
  SQL文で指定されたカラム名が存在しません。
- トラブルシューティング
  - カラム名のスペルミスがないか確認します。
  - DESCRIBE your_table; や SHOW COLUMNS FROM your_table; を実行して、テーブルに存在するカラム名を確認します。
  - エイリアスを使用している場合、正しくエイリアスが適用されているか確認します。
エラーコード
ERROR 1044 (42000)
- エラーメッセージの例
  Access denied for user 'your_user'@'localhost' to database 'your_database'
- 意味
  指定されたユーザーに、そのデータベースへのアクセス権限がありません。
- トラブルシューティング
  - GRANT 文を使って、該当ユーザーに適切な権限を付与します。
```
GRANT ALL PRIVILEGES ON your_database.* TO 'your_user'@'localhost';
FLUSH PRIVILEGES;
```
  - 必要最小限の権限を付与することがセキュリティ上重要です。

エラーメッセージをよく読む
エラーコードだけでなく、エラーメッセージ全体が重要です。特に near '...' や at line N の情報はデバッグに非常に役立ちます。
ログファイルを確認する
MariaDBサーバーのエラーログファイル (/var/log/mysql/error.log や mysqld.log など) に、より詳細な情報が記録されている場合があります。
SQL文を単純化する
複雑なSQL文でエラーが発生した場合、問題の箇所を特定するために、クエリを小さな部分に分割して実行してみます。
環境設定を確認する
my.cnf (または my.ini) ファイルの設定を確認し、サーバーの動作や制限に影響がないか確認します。
MariaDBのバージョンを確認する
使用しているMariaDBのバージョンによって、サポートされる機能や構文が異なる場合があります。
権限を確認する
ファイルシステム上のパーミッション（特にソケットファイルやデータディレクトリ）が正しく設定されているか確認します。

ここでは、一般的なプログラミング言語（PHPとPythonを例に挙げます）でMariaDBのエラーコードをどのように処理するか、コード例を交えて説明します。

エラーハンドリングの基本的な考え方

データベース操作でエラーが発生した場合、通常以下の情報が提供されます。

エラーメッセージ (Error Message)
エラーの具体的な内容を説明する文字列。
SQLSTATE
SQL標準に準拠した5文字の英数字コード (例: '28000', '23000', '42S02'など)。
エラーコード (Error Code)
数値で表現されるMariaDB固有のエラーコード (例: 1045, 1062, 1146など)。

これらの情報を使って、プログラムはエラーの種類を判別し、適切な処理（ユーザーへのメッセージ表示、ログ記録、処理の再試行、トランザクションのロールバックなど）を行うことができます。

PHPでのエラーハンドリングの例

PHPでは、PDO (PHP Data Objects) や MySQLi 拡張機能を使ってMariaDBに接続できます。ここではPDOを使った例を示します。

PDOは例外 (Exception) をスローすることでエラーを通知するのが一般的です。

<?php

// データベース接続情報
$host = 'localhost';
$db   = 'your_database';
$user = 'your_user';
$pass = 'your_password';
$charset = 'utf8mb4';

$dsn = "mysql:host=$host;dbname=$db;charset=$charset";
$options = [
    PDO::ATTR_ERRMODE            => PDO::ERRMODE_EXCEPTION, // エラー時に例外をスローする
    PDO::ATTR_DEFAULT_FETCH_MODE => PDO::FETCH_ASSOC,
    PDO::ATTR_EMULATE_PREPARES   => false,
];

try {
    $pdo = new PDO($dsn, $user, $pass, $options);
    echo "データベースに接続しました。\n\n";

    // --- 例1: テーブルが存在しない場合 (ERROR 1146) ---
    echo "--- 例1: 存在しないテーブルへのクエリ ---\n";
    try {
        $stmt = $pdo->query("SELECT * FROM non_existent_table");
        $results = $stmt->fetchAll();
        print_r($results);
    } catch (PDOException $e) {
        echo "エラーが発生しました。\n";
        echo "エラーコード: " . $e->getCode() . "\n";       // MariaDBのエラーコード
        echo "SQLSTATE: " . $e->errorInfo[0] . "\n";     // SQLSTATE
        echo "エラーメッセージ: " . $e->getMessage() . "\n\n"; // 詳細メッセージ

        if ($e->getCode() == 1146) {
            echo "-> テーブルが存在しません。テーブル名を確認してください。\n\n";
        } else {
            echo "-> その他のデータベースエラーです。\n\n";
        }
    }

    // --- 例2: 重複エントリの場合 (ERROR 1062) ---
    echo "--- 例2: 重複エントリの挿入 ---\n";
    // まずテーブルを作成 (PRIMARY KEYを持つ)
    $pdo->exec("DROP TABLE IF EXISTS users");
    $pdo->exec("CREATE TABLE users (id INT PRIMARY KEY, name VARCHAR(50))");
    echo "usersテーブルを作成しました。\n";

    // 最初の挿入 (成功)
    try {
        $stmt = $pdo->prepare("INSERT INTO users (id, name) VALUES (?, ?)");
        $stmt->execute([1, 'Alice']);
        echo "id=1, name='Alice' を挿入しました。\n";
    } catch (PDOException $e) {
        // ここではエラーにならないはず
        echo "最初の挿入でエラーが発生しました。\n";
    }

    // 重複するIDでの挿入 (エラーが発生するはず)
    try {
        $stmt = $pdo->prepare("INSERT INTO users (id, name) VALUES (?, ?)");
        $stmt->execute([1, 'Bob']); // id=1 は既に存在する
        echo "id=1, name='Bob' を挿入しました。\n"; // ここは実行されない
    } catch (PDOException $e) {
        echo "エラーが発生しました。\n";
        echo "エラーコード: " . $e->getCode() . "\n";
        echo "SQLSTATE: " . $e->errorInfo[0] . "\n";
        echo "エラーメッセージ: " . $e->getMessage() . "\n\n";

        if ($e->getCode() == 1062) {
            echo "-> 重複するエントリです。主キーまたはユニークキーの値を確認してください。\n\n";
        } else {
            echo "-> その他のデータベースエラーです。\n\n";
        }
    }

    // --- 例3: アクセス拒否 (接続時エラー: ERROR 1045) ---
    // これはtry-catchブロックのトップレベルで捕まえる必要があります。
    // 例として別のPDOインスタンスを試みますが、通常は接続時に発生します。
    echo "--- 例3: 不正な認証情報での接続試行 (通常はスクリプト開始時に発生) ---\n";
    try {
        $bad_pdo = new PDO("mysql:host=$host;dbname=$db;charset=$charset", 'bad_user', 'bad_password', $options);
        echo "不正なユーザーで接続成功？ (これは表示されないはず)\n";
    } catch (PDOException $e) {
        echo "エラーが発生しました。\n";
        echo "エラーコード: " . $e->getCode() . "\n";
        echo "SQLSTATE: " . $e->errorInfo[0] . "\n";
        echo "エラーメッセージ: " . $e->getMessage() . "\n\n";

        if ($e->getCode() == 1045) {
            echo "-> アクセスが拒否されました。ユーザー名とパスワードを確認してください。\n\n";
        } else {
            echo "-> その他の接続エラーです。\n\n";
        }
    }

} catch (PDOException $e) {
    // 接続失敗などの致命的なエラーをここで捕まえる
    echo "致命的なデータベース接続エラーが発生しました。\n";
    echo "エラーコード: " . $e->getCode() . "\n";
    echo "SQLSTATE: " . $e->errorInfo[0] . "\n";
    echo "エラーメッセージ: " . $e->getMessage() . "\n\n";

    if ($e->getCode() == 1045) {
        echo "-> 接続ユーザーまたはパスワードが間違っています。\n";
    } elseif ($e->getCode() == 2002) {
        echo "-> MariaDBサーバーに接続できません。サーバーが起動しているか、ホスト名とポートが正しいか確認してください。\n";
    } else {
        echo "-> 不明な接続エラーです。\n";
    }
}

?>

PHPコードのポイント

これらの情報に基づいて、エラーの種類に応じた条件分岐を行い、適切なエラー処理を実行します。
$e->getMessage() でエラーの詳細メッセージを取得できます。
$e->errorInfo[0] でSQLSTATEコードを取得できます。
$e->getCode() でMariaDBのエラーコード（数値）を取得できます。
try-catch ブロックを使って例外を捕捉します。
PDO::ATTR_ERRMODE => PDO::ERRMODE_EXCEPTION を設定することで、エラー発生時に PDOException がスローされます。

Pythonでは、mysql-connector-python や PyMySQL などのライブラリを使ってMariaDBに接続できます。ここでは mysql-connector-python を使用した例を示します。

import mysql.connector
from mysql.connector import errorcode

# データベース接続情報
DB_CONFIG = {
    'host': 'localhost',
    'database': 'your_database',
    'user': 'your_user',
    'password': 'your_password'
}

def connect_to_mariadb():
    """MariaDBに接続し、接続オブジェクトを返す"""
    try:
        cnx = mysql.connector.connect(**DB_CONFIG)
        print("データベースに接続しました。\n")
        return cnx
    except mysql.connector.Error as err:
        print("致命的なデータベース接続エラーが発生しました。")
        if err.errno == errorcode.ER_ACCESS_DENIED_ERROR:
            print("-> ユーザー名かパスワードが間違っています。")
        elif err.errno == errorcode.ER_BAD_DB_ERROR:
            print("-> データベースが存在しません。")
        else:
            print(f"-> その他の接続エラー: {err}")
        return None

def main():
    cnx = connect_to_mariadb()
    if not cnx:
        return

    cursor = cnx.cursor()

    # --- 例1: テーブルが存在しない場合 (ERROR 1146) ---
    print("--- 例1: 存在しないテーブルへのクエリ ---")
    try:
        cursor.execute("SELECT * FROM non_existent_table")
        # results = cursor.fetchall() # 通常はここに到達しない
        # print(results)
    except mysql.connector.Error as err:
        print("エラーが発生しました。")
        print(f"エラーコード: {err.errno}")  # MariaDBのエラーコード
        print(f"SQLSTATE: {err.sqlstate}")   # SQLSTATE
        print(f"エラーメッセージ: {err.msg}\n")  # 詳細メッセージ

        if err.errno == errorcode.ER_NO_SUCH_TABLE:
            print("-> テーブルが存在しません。テーブル名を確認してください。\n")
        else:
            print("-> その他のデータベースエラーです。\n")

    # --- 例2: 重複エントリの場合 (ERROR 1062) ---
    print("--- 例2: 重複エントリの挿入 ---")
    try:
        cursor.execute("DROP TABLE IF EXISTS users")
        cursor.execute("CREATE TABLE users (id INT PRIMARY KEY, name VARCHAR(50))")
        print("usersテーブルを作成しました。")

        # 最初の挿入 (成功)
        cursor.execute("INSERT INTO users (id, name) VALUES (%s, %s)", (1, 'Alice'))
        cnx.commit() # 変更をコミット
        print("id=1, name='Alice' を挿入しました。")

        # 重複するIDでの挿入 (エラーが発生するはず)
        cursor.execute("INSERT INTO users (id, name) VALUES (%s, %s)", (1, 'Bob'))
        cnx.commit() # ここはエラーで到達しない
        print("id=1, name='Bob' を挿入しました。") # ここは実行されない

    except mysql.connector.Error as err:
        print("エラーが発生しました。")
        print(f"エラーコード: {err.errno}")
        print(f"SQLSTATE: {err.sqlstate}")
        print(f"エラーメッセージ: {err.msg}\n")

        if err.errno == errorcode.ER_DUP_ENTRY:
            print("-> 重複するエントリです。主キーまたはユニークキーの値を確認してください。\n")
            cnx.rollback() # エラー時はロールバック
        else:
            print("-> その他のデータベースエラーです。\n")
            cnx.rollback() # エラー時はロールバック
    finally:
        # 必ず閉じる
        if 'cursor' in locals() and cursor:
            cursor.close()
        if 'cnx' in locals() and cnx:
            cnx.close()
            print("データベース接続を閉じました。")

if __name__ == "__main__":
    main()

Pythonコードのポイント

finally ブロックでカーソルと接続を確実に閉じます。
変更を伴う操作では、エラー時に cnx.rollback() を呼び出してトランザクションをロールバックすることが重要です。
mysql.connector.errorcode モジュールには、よく使われるMariaDBのエラーコードに対応する定数が定義されており、数値で直接比較するよりも可読性が向上します（例: errorcode.ER_NO_SUCH_TABLE は1146、errorcode.ER_DUP_ENTRY は1062）。
mysql.connector.Error クラスのインスタンスから以下の情報を取得できます。
- err.errno: MariaDBのエラーコード（数値）
- err.sqlstate: SQLSTATEコード
- err.msg: エラーの詳細メッセージ
try-except ブロックを使ってエラーを捕捉します。

プログラミングでMariaDBのエラーを扱う際には、以下の点を意識することが重要です。

エラーハンドリングの実施
データベース操作は常にエラーが発生する可能性があるため、適切なエラーハンドリング（try-catch / try-except）を必ず行います。
エラー情報の取得
プログラムが提供するエラーコード、SQLSTATE、エラーメッセージを取得し、デバッグやユーザーへのフィードバックに活用します。
エラー種別に応じた処理
エラーコードやSQLSTATEを基に、エラーの種類（接続エラー、構文エラー、重複エラーなど）を判別し、それぞれに応じた適切な処理（ログ記録、ユーザー通知、再試行、ロールバックなど）を実行します。
トランザクション管理
データの整合性を保つために、エラー発生時にはトランザクションをロールバックすることを忘れないようにします。
リソースの解放
データベース接続やカーソルなどのリソースは、エラーが発生した場合でも必ず解放（クローズ）するようにします。

SQLSTATEコードによるハンドリング

多くのデータベースシステム（MariaDBを含む）は、SQL標準に準拠した5桁の英数字のSQLSTATEコードをエラー情報として提供します。MariaDBのエラーコードがMariaDB固有であるのに対し、SQLSTATEはより汎用性が高く、異なるRDBMS間での互換性を考慮する場合に有効です。

特徴

カテゴリ分け
先頭2文字がエラーのカテゴリを示します (例: 23は整合性制約違反、42は構文エラー)。
汎用性
SQL標準に準拠しているため、他のSQL準拠データベースでも同様のロジックが適用できる可能性があります。

利用例 (PHPのPDO)

try {
    // データベース操作
} catch (PDOException $e) {
    $sqlstate = $e->errorInfo[0]; // SQLSTATEコードを取得

    if ($sqlstate === '23000') { // 整合性制約違反 (例: 重複エントリ、外部キー制約違反)
        echo "データベースの整合性違反が発生しました。\n";
        // 詳細なエラーコード (e.g., 1062 for ER_DUP_ENTRY) でさらに分岐することも可能
        if ($e->getCode() == 1062) {
             echo "-> 重複するエントリです。\n";
        } else {
             echo "-> その他の整合性違反です。\n";
        }
    } elseif ($sqlstate === '42S02') { // 基底テーブルまたはビューが存在しない
        echo "指定されたテーブルが見つかりません。\n";
    } elseif ($sqlstate === '08006') { // 接続失敗
        echo "データベースへの接続に失敗しました。\n";
    } else {
        echo "予期せぬデータベースエラーが発生しました: " . $e->getMessage() . "\n";
    }
}

考慮事項

SQLSTATEの全てのコードとその意味を把握するのは、MariaDBエラーコードと同様に学習コストがかかります。
SQLSTATEはMariaDBエラーコードほど粒度が細かくない場合があります。特定のMariaDB固有の動作に基づくエラーを識別するには、MariaDBエラーコードの方が適しています。

エラーメッセージの解析（非推奨だが、特定のケースで考慮）

エラーメッセージの文字列を解析して、エラーの種類を判別する方法も理論的には可能です。

特徴

柔軟性
エラーコードでは捕捉できない、より詳細なニュアンスをメッセージから読み取れる場合があります。

利用例 (概念的)

try {
    // データベース操作
} catch (PDOException $e) {
    $errorMessage = $e->getMessage();

    if (strpos($errorMessage, 'Duplicate entry') !== false) {
        echo "重複エントリエラーです。\n";
    } elseif (strpos($errorMessage, 'Table') !== false && strpos($errorMessage, 'doesn\'t exist') !== false) {
        echo "テーブルが存在しません。\n";
    } else {
        echo "不明なエラー: " . $errorMessage . "\n";
    }
}

考慮事項

パフォーマンス
文字列検索は、数値比較に比べてオーバーヘッドが大きくなる可能性があります。
多言語対応
エラーメッセージが国際化されている場合、特定の言語に依存するコードは適切に機能しません。
非推奨
これは非常に推奨されません。エラーメッセージはMariaDBのバージョン、言語設定、または特定の操作によって変化する可能性があり、信頼性が低いです。将来のバージョンアップでメッセージが変わると、コードが動かなくなるリスクがあります。

この方法は、デバッグ時の一時的な対応や、エラーコードではどうしても判別できない特殊なケース（非常に稀ですが）に限定されるべきです。

ORM (Object-Relational Mapping) フレームワークのエラーハンドリング

Laravel (PHP), Django (Python), SQLAlchemy (Python) などのORMフレームワークを使用している場合、ORMがデータベースエラーを抽象化し、よりアプリケーションレベルのエラー（例: IntegrityError, DoesNotExist, ValidationError など）として提供することがよくあります。

特徴

開発効率
エラーハンドリングのコード量が削減され、可読性が向上します。
言語/フレームワーク固有の例外
各言語やフレームワークの標準的な例外クラスを利用してエラーを処理できます。
抽象化
データベース固有のエラーコードを意識する必要が少なくなり、アプリケーションのロジックに集中できます。

利用例 (PythonのDjango ORM)

# models.py
from django.db import models

class Product(models.Model):
    sku = models.CharField(max_length=100, unique=True) # UNIQUE制約
    name = models.CharField(max_length=255)

    def __str__(self):
        return self.name

# views.py (または他のロジック)
from django.db import IntegrityError
from .models import Product

def create_product(sku, name):
    try:
        product = Product.objects.create(sku=sku, name=name)
        print(f"製品 '{name}' (SKU: {sku}) を作成しました。")
        return product
    except IntegrityError:
        print(f"エラー: SKU '{sku}' は既に存在します。別のSKUを使用してください。")
        # ここで、より具体的なエラーコード (ER_DUP_ENTRY) は直接扱わないが、
        # IntegrityErrorとして捕捉できる
        return None
    except Exception as e:
        print(f"予期せぬエラーが発生しました: {e}")
        return None

# 使用例
create_product("P001", "Laptop")
create_product("P001", "Monitor") # IntegrityErrorが発生するはず

考慮事項

ORMの抽象化レイヤーが、特定のエラーの原因特定を難しくする場合もあります。
ORMはデータベース操作の全てをカバーできるわけではありません。複雑なクエリやデータベース固有の機能を利用する場合、生SQLやDBドライバのエラーハンドリングに戻る必要があるかもしれません。

アプリケーション内で、MariaDBのエラーコードに対応するカスタム例外クラスを定義し、それらをスローして捕捉する方法です。

特徴

再利用性
エラーハンドリングロジックを共通化できます。
セマンティックなハンドリング
特定のビジネスロジックに関連するエラーを、データベースエラーから切り離して扱えます。
可読性
catch (DuplicateEntryException $e) のように、例外の種類を見ただけで何が起こったか分かりやすくなります。

利用例 (PHPの概念)

// 例外クラスの定義
class DatabaseException extends \Exception {
    protected $dbErrorCode;
    protected $sqlState;

    public function __construct($message, $dbErrorCode = 0, $sqlState = '', \Throwable $previous = null) {
        parent::__construct($message, $dbErrorCode, $previous);
        $this->dbErrorCode = $dbErrorCode;
        $this->sqlState = $sqlState;
    }

    public function getDbErrorCode() { return $this->dbErrorCode; }
    public function getSqlState() { return $this->sqlState; }
}

class DuplicateEntryException extends DatabaseException {}
class TableNotFoundException extends DatabaseException {}
class AccessDeniedException extends DatabaseException {}

// データベース操作ラッパー (例)
class MyDbHandler {
    private $pdo;

    public function __construct(PDO $pdo) {
        $this->pdo = $pdo;
    }

    public function query($sql, $params = []) {
        try {
            $stmt = $this->pdo->prepare($sql);
            $stmt->execute($params);
            return $stmt;
        } catch (PDOException $e) {
            $dbErrorCode = $e->getCode();
            $sqlState = $e->errorInfo[0];

            switch ($dbErrorCode) {
                case 1045:
                    throw new AccessDeniedException("データベースへのアクセスが拒否されました。", $dbErrorCode, $sqlState, $e);
                case 1062:
                    throw new DuplicateEntryException("重複するエントリが見つかりました。", $dbErrorCode, $sqlState, $e);
                case 1146:
                    throw new TableNotFoundException("テーブルが見つかりません。", $dbErrorCode, $sqlState, $e);
                default:
                    throw new DatabaseException("データベースエラーが発生しました。", $dbErrorCode, $sqlState, $e);
            }
        }
    }
}

// アプリケーションコード
try {
    $dbHandler = new MyDbHandler($pdo);
    $dbHandler->query("INSERT INTO users (id, name) VALUES (?, ?)", [1, 'Alice']);
    $dbHandler->query("INSERT INTO users (id, name) VALUES (?, ?)", [1, 'Bob']); // ここで DuplicateEntryException がスローされる
} catch (DuplicateEntryException $e) {
    echo "カスタムエラーハンドリング: 重複エントリです。ユーザーに再入力を促します。\n";
} catch (TableNotFoundException $e) {
    echo "カスタムエラーハンドリング: テーブルが見つかりませんでした。\n";
} catch (AccessDeniedException $e) {
    echo "カスタムエラーハンドリング: 認証情報に問題があります。\n";
} catch (DatabaseException $e) {
    echo "カスタムエラーハンドリング: 予期せぬデータベースエラー: " . $e->getMessage() . "\n";
    // ログ記録など
}

考慮事項

全てのMariaDBエラーコードに対してカスタム例外を定義する必要はありません。アプリケーションにとって特に意味のある、頻繁に遭遇するエラーに限定するのが良いでしょう。
カスタム例外クラスを定義するための初期コストがかかります。

MariaDBのエラーコードハンドリングにおいて、最も直接的で信頼性の高い方法は、依然としてエラーコードの直接比較です。これはMariaDBの公式ドキュメントで推奨されており、エラーの具体的な原因を正確に特定できます。

しかし、以下のような代替方法や補完的なアプローチも有効です。

カスタム例外クラスの定義
アプリケーションのビジネスロジックとデータベースエラーをより密接に連携させ、可読性と保守性を高めたい場合。
ORMフレームワークの利用
データベースの詳細を抽象化し、アプリケーションレベルのセマンティックなエラーとして扱いたい場合。
SQLSTATEによるハンドリング
他のRDBMSとの互換性を考慮する場合や、エラーの一般的なカテゴリを判別する場合。