CMakeでUIファイルを自動処理:AUTOUICプロパティの解説と代替方法
CMakeの「AUTOUIC」プロパティは、QtプロジェクトにおけるUIファイル(*.ui)の自動処理を制御します。このプロパティを有効化すると、CMakeはビルドプロセス中に自動的にUIファイルをC++コードに変換し、必要なヘッダーファイルを生成します。これにより、手動でUIファイルを処理する必要がなくなり、開発者の生産性が向上します。
設定方法
「AUTOUIC」プロパティは、ターゲットレベルとプロジェクトレベルの両方で設定できます。
- ターゲットレベル
target_properties(mytarget AUTOUIC ON)
- プロジェクトレベル
set(CMAKE_AUTOUIC ON)
動作
「AUTOUIC」プロパティが有効な場合、CMakeは次の処理を行います。
- プロジェクトディレクトリ内のすべての*.uiファイルを検索します。
- 各UIファイルに対して、対応するui_.hヘッダーファイルとui_.ccソースファイルを生成します。
- 生成されたヘッダーファイルとソースファイルをターゲットのソースファイルリストに追加します。
利点
「AUTOUIC」プロパティを使用する主な利点は次のとおりです。
- 保守性の向上
UIファイルと生成されたC++コードが常に同期されているため、コードの保守が容易になります。 - コードの簡潔性
UIファイルをC++コードに自動的に変換することで、プロジェクトのコードベースが簡潔になります。 - 生産性の向上
手動でのUIファイル処理が不要になり、開発者の負担が軽減されます。
注意点
「AUTOUIC」プロパティを使用する際には、次の点に注意する必要があります。
- ヘッダーファイルのインクルードパスを設定します。生成されたヘッダーファイルは、ターゲットのインクルードパスに含まれている必要があります。
- UIファイルの命名規則を守ります。UIファイルは、対応するC++クラスと同じ名前でなければなりません。
- Qtが必要です。「AUTOUIC」プロパティはQtに依存するため、プロジェクトでQtを使用していることを確認する必要があります。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(myproject)
set(CMAKE_AUTOUIC ON)
# UIファイルを指定
set(QT_UI_FILES mainwindow.ui)
# ターゲットを作成
add_executable(myproject mainwindow.cpp ${QT_UI_FILES})
# Qtライブラリをリンク
target_link_libraries(myproject Qt::Widgets)
説明
このコード例では、次の処理が行われます。
cmake_minimum_required
コマンドを使用して、CMakeの最小バージョンを3.10に設定します。project
コマンドを使用して、プロジェクトの名前を「myproject」に設定します。set(CMAKE_AUTOUIC ON)
コマンドを使用して、「AUTOUIC」プロパティを有効化します。set(QT_UI_FILES mainwindow.ui)
コマンドを使用して、処理するUIファイルを指定します。add_executable
コマンドを使用して、実行可能ファイルターゲット「myproject」を作成します。target_link_libraries
コマンドを使用して、ターゲット「myproject」に必要なQtライブラリをリンクします。
このコードを実行すると、mainwindow.ui
ファイルが自動的に処理され、mainwindow.h
ヘッダーファイルとmainwindow.cc
ソースファイルが生成されます。これらのファイルは、myproject
ターゲットに含まれます。
手動でUIファイルを処理する
最も基本的な方法は、手動でUIファイルを処理することです。Qt CreatorなどのIDEを使用して、UIファイルをC++コードとヘッダーファイルに直接編集できます。この方法は、以下の場合に適しています。
- コード生成スクリプトを使用するよりも柔軟な方法が必要な場合
- UIファイルのレイアウトを細かく制御する必要がある場合
- 少数のUIファイルのみを処理する場合
qt5_wrap_uiマクロを使用する
CMake 3.1以降では、qt5_wrap_ui
マクロを使用して、UIファイルを処理することができます。このマクロは、AUTOUIC
プロパティとほぼ同じ機能を提供しますが、より多くの制御オプションを提供します。qt5_wrap_ui
マクロを使用するには、次の手順に従います。
- UIファイルの場所を指定するソースファイルプロパティ
QT5_WRAP_UI_FILES
を設定します。 - 生成されたヘッダーファイルとソースファイルの名前を指定するソースファイルプロパティ
QT5_WRAP_UI_HEADERS
とQT5_WRAP_UI_SOURCES
を設定します。 - ターゲットに生成されたヘッダーファイルとソースファイルをリンクします。
例
set(QT5_WRAP_UI_FILES mainwindow.ui)
set(QT5_WRAP_UI_HEADERS ui_mainwindow.h)
set(QT5_WRAP_UI_SOURCES ui_mainwindow.cc)
add_executable(myproject mainwindow.cpp ${QT5_WRAP_UI_SOURCES})
target_link_libraries(myproject Qt::Widgets)
カスタムコード生成スクリプトを使用する
より高度な制御が必要な場合は、カスタムコード生成スクリプトを使用して、UIファイルを処理することができます。この方法は、以下の場合に適しています。
- テスト駆動開発(TDD)ワークフローに統合する必要がある場合
- 複数のプロジェクトでUIファイルを共有する必要がある場合
- 独自のコード生成ロジックを実装する必要がある場合
カスタムコード生成スクリプトは、Python、Perl、Bashなどの任意の言語で記述できます。スクリプトは、uicツールとQt C++ APIを使用して、UIファイルを処理し、必要なC++コードとヘッダーファイルを生成する必要があります。
UIファイルをビルドプロセスから除外する
どうしてもUIファイルを自動処理したくない場合は、UIファイルをビルドプロセスから除外することができます。この方法は、以下の場合に適しています。
- ビルドプロセスをできるだけシンプルにしたい場合
- UIファイルをバージョン管理システムで管理したくない場合
- UIファイルをデプロイメント時に手動でコピーする必要がある場合
UIファイルをビルドプロセスから除外するには、次の手順に従います。
- ターゲットのソースファイルリストからUIファイルを削除します。
- 生成されたヘッダーファイルとソースファイルをビルドプロセスから除外します。
- UIファイルをデプロイメント時に手動でコピーします。
set(QT_UI_FILES mainwindow.ui)
add_executable(myproject mainwindow.cpp)
target_link_libraries(myproject Qt::Widgets)