CMake: ターゲットのコンパイルフラグを詳細解説!「Properties: Targets」と「COMPILE_FLAGS」のすべて
CMake の "Properties: Targets" における "COMPILE_FLAGS" は、ターゲットのソースコードをコンパイルする際に使用される追加のコンパイラフラグを指定するためのプロパティです。これらのフラグは、コンパイラの設定や動作を調整し、特定のコンパイル要件を満たすために役立ちます。
用途
"COMPILE_FLAGS" は、以下のような様々な目的で使用できます。
- デバッグ情報を生成
- 特定のコンパイラ機能を有効化
- インクルードパスやライブラリパスを追加
- コンパイルされたオブジェクトファイルの最適化レベルを設定
- 特定のコンパイラ警告を有効化または無効化
設定方法
"COMPILE_FLAGS" は、ターゲットプロパティとして設定できます。これは、CMakeLists.txt ファイル内の target_properties
コマンドを使用して行います。
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-Wall -O2 -I/usr/local/include")
上記の例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、以下のフラグが使用されます。
-I/usr/local/include
: インクルードパス/usr/local/include
を追加-O2
: 最適化レベル 2 を設定-Wall
: すべての警告を有効化
"COMPILE_FLAGS" と "COMPILE_OPTIONS" の違い
CMake には、ターゲットのソースコードをコンパイルする際に使用される追加のコンパイラオプションを指定するための別のプロパティ COMPILE_OPTIONS
もあります。
"COMPILE_FLAGS" と "COMPILE_OPTIONS" の主な違いは、以下の通りです。
- サポート: 一部の古い CMake ジェネレータは、"COMPILE_OPTIONS" をサポートしていない場合があります。
- エスケープ処理: "COMPILE_OPTIONS" は適切にエスケープ処理されるため、特殊文字を含むオプションを指定する際に便利です。一方、"COMPILE_FLAGS" は手動でエスケープ処理する必要がある場合があります。
- 形式: "COMPILE_FLAGS" は文字列として管理され、フラグをセミコロンで区切ります。一方、"COMPILE_OPTIONS" はリストとして管理され、各要素は個別のオプションを表します。
一般的には、"COMPILE_OPTIONS" を使用することを推奨します。これは、より明確で扱いやすく、特殊文字を含むオプションを指定する際に安全だからです。
- 使用するコンパイラフラグは、コンパイラとコンパイルするソースコードによって異なります。適切なフラグを選択するには、コンパイラのドキュメントを参照してください。
- "COMPILE_FLAGS" は、ターゲット全体のコンパイルフラグに追加されます。個々のソースファイルに固有のフラグを設定するには、
target_compile_features
コマンドまたはset_property
コマンドを使用する必要があります。
特定のコンパイラ警告を有効化
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-Wall")
この例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、すべての警告を有効にする -Wall
フラグが使用されます。
コンパイルされたオブジェクトファイルの最適化レベルを設定
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-O2")
この例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、最適化レベル 2 を設定する -O2
フラグが使用されます。
インクルードパスとライブラリパスを追加
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-I/usr/local/include -L/usr/local/lib")
-L/usr/local/lib
: ライブラリパス/usr/local/lib
を追加-I/usr/local/include
: インクルードパス/usr/local/include
を追加
特定のコンパイラ機能を有効化
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-std=c++11")
この例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、C++11 標準モードを有効にする -std=c++11
フラグが使用されます。
デバッグ情報を生成
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-g")
この例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、デバッグ情報を生成する -g
フラグが使用されます。
上記はほんの一例であり、"COMPILE_FLAGS" を使用して様々な設定を行うことができます。
- 複数のフラグを指定する場合は、セミコロンで区切ります。
- 使用するコンパイラフラグは、コンパイラとコンパイルするソースコードによって異なります。適切なフラグを選択するには、コンパイラのドキュメントを参照してください。
代替方法
以下に、"COMPILE_FLAGS" の代替方法をいくつか紹介します。
target_compile_features コマンド
target_compile_features
コマンドは、ターゲットのコンパイル時に特定のコンパイラ機能を有効化または無効化するために使用できます。このコマンドは、個々のソースファイルに固有の機能を設定する場合に役立ちます。
target_compile_features(my_target PUBLIC CXX11)
上記の例では、my_target
ターゲットのソースコードをコンパイルする際に、C++11 標準モードを有効にする CXX11
機能が使用されます。
set_property コマンド
set_property
コマンドは、ターゲットのプロパティを設定するために使用できます。このコマンドを使用して、COMPILE_FLAGS
以外にも様々なプロパティを設定できます。
set_property(TARGET my_target PROPERTY COMPILE_FLAGS_DEBUG "-g")
上記の例では、my_target
ターゲットのデバッグビルド時に使用されるコンパイラフラグを -g
に設定します。
サブディレクトリ CMakeLists.txt ファイル
サブディレクトリに CMakeLists.txt ファイルを配置することで、そのディレクトリ内のソースファイルに固有のコンパイラフラグを設定できます。
# CMakeLists.txt (プロジェクトのルートディレクトリ)
add_subdirectory(src)
# src/CMakeLists.txt
target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-I/usr/local/include")
上記の例では、src
ディレクトリ内のソースコードをコンパイルする際に、-I/usr/local/include
フラグが使用されます。
外部ビルドシステム
CMake 以外の外部ビルドシステム (Make、Ninja など) を使用している場合は、そのシステムの機能を使用してコンパイラフラグを設定できます。
どの方法を選択すべきか
どの方法を選択すべきかは、状況によって異なります。
- 外部ビルドシステムを使用している場合は、そのシステムの機能を使用してコンパイラフラグを設定する必要があります。
- サブディレクトリ構造を持つプロジェクトの場合は、サブディレクトリ CMakeLists.txt ファイルを使用すると、コードをより整理することができます。
- ターゲット全体のコンパイルフラグを設定する場合は、"COMPILE_FLAGS" を使用するのが一般的です。
- 個々のソースファイルに固有のフラグを設定する場合は、
target_compile_features
コマンドまたはset_property
コマンドを使用することを推奨します。
- 複数のフラグを指定する場合は、セミコロンで区切ります。
- 使用するコンパイラフラグは、コンパイラとコンパイルするソースコードによって異なります。適切なフラグを選択するには、コンパイラのドキュメントを参照してください。