CMake: ビルドをもっとスマートに!「HEADER_DIRS_NAME」プロパティでヘッダーファイルを戦略的に配置
CMakeの"Properties: Targets"における"HEADER_DIRS_NAME"は、ターゲットに関連するヘッダーファイルディレクトリのリストを定義するためのプロパティです。これは、ターゲットがビルドされる際にヘッダーファイルを検索する場所を指定するために使用されます。
利点
"HEADER_DIRS_NAME"を使用する利点は次のとおりです。
- インクルードパスをハードコーディングする必要がなくなり、コードの移植性が向上します。
- 複数のターゲット間でヘッダーファイルディレクトリを共有することが容易になります。
- ヘッダーファイルの検索場所を明確に定義することで、ビルドプロセスの透明性と保守性を向上させることができます。
使用方法
"HEADER_DIRS_NAME"プロパティは、ターゲットの"target_properties"コマンドを使用して設定できます。構文は次のとおりです。
target_properties(target_name PROPERTIES HEADER_DIRS_NAME dir1;dir2;...)
ここで、
dir1
、dir2
は、ヘッダーファイルを含むディレクトリの名前です。target_name
は、プロパティを設定するターゲットの名前です。
例
次の例は、mytarget
というターゲットに関連するヘッダーファイルディレクトリとしてinclude
とinclude/subdir
を指定する方法を示しています。
target_properties(mytarget PROPERTIES HEADER_DIRS_NAME include;include/subdir)
- システムヘッダーファイルディレクトリを指定するには、
SYSTEM_HEADER_DIRS
プロパティを使用します。 - 相対パスと絶対パスの両方を指定できます。
- "HEADER_DIRS_NAME"プロパティは、複数のディレクトリをセミコロンで区切って指定できます。
例1: 単一ヘッダーファイルディレクトリ
この例では、mytarget
というターゲットに関連するヘッダーファイルディレクトリとしてinclude
を指定します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(myproject)
add_executable(mytarget main.cpp)
target_properties(mytarget PROPERTIES HEADER_DIRS_NAME include)
例2: 複数ヘッダーファイルディレクトリ
この例では、mytarget
というターゲットに関連するヘッダーファイルディレクトリとしてinclude
とinclude/subdir
を指定します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(myproject)
add_executable(mytarget main.cpp subdir/main.cpp)
target_properties(mytarget PROPERTIES HEADER_DIRS_NAME include;include/subdir)
例3: システムヘッダーファイルディレクトリの指定
この例では、mytarget
というターゲットに関連するシステムヘッダーファイルディレクトリを指定します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(myproject)
add_executable(mytarget main.cpp)
target_properties(mytarget PROPERTIES SYSTEM_HEADER_DIRS_NAME /usr/include)
説明
target_properties
コマンドを使用して、ターゲットのプロパティを設定しています。HEADER_DIRS_NAME
プロパティは、ターゲットに関連するヘッダーファイルディレクトリのリストを指定します。SYSTEM_HEADER_DIRS_NAME
プロパティは、ターゲットがビルドされる際に検索するシステムヘッダーファイルディレクトリのリストを指定します。
add_executable
コマンドを使用して、mytarget
という名前のターゲットを追加しています。このターゲットは、main.cpp
とsubdir/main.cpp
というソースファイルからビルドされます。project
コマンドを使用して、プロジェクトの名前をmyproject
に設定しています。- 上記の例では、
cmake_minimum_required
コマンドを使用して、CMakeの最小バージョンを3.10に設定しています。
これらの例は、"HEADER_DIRS_NAME"プロパティの基本的な使用方法を示しています。実際の使用例では、プロジェクトの構成に応じてプロパティを適宜設定する必要があります。
以下の例は、"HEADER_DIRS_NAME"プロパティのより高度な使用方法を示しています。
- ヘッダーファイルの場所を推測
target_properties(mytarget PROPERTIES AUTO_INCLUDE_DIRS ON)
- 特定のファイルタイプのヘッダーファイルを検索
target_properties(mytarget PROPERTIES HEADER_FILTER_REGEX ".*\.h$"
) - サブディレクトリを再帰的に検索
target_properties(mytarget PROPERTIES RECURSIVE_HEADER_DIRS_NAME include)
これらの例は、"HEADER_DIRS_NAME"プロパティの機能のほんの一例です。詳細については、CMakeのドキュメントを参照してください。
インクルードパスを直接指定する
最も単純な代替方法は、ソースファイルの#include
ディレクティブでインクルードパスを直接指定することです。これは、ヘッダーファイルが単一のディレクトリに保存されている場合や、ターゲットごとに異なるインクルードパスが必要ない場合に有効です。
#include "include/myheader.h"
target_include_directoriesコマンドを使用する
target_include_directories
コマンドは、ターゲットに関連するインクルードパスのリストを指定するために使用できます。"HEADER_DIRS_NAME"プロパティと異なり、このコマンドは相対パスと絶対パスの両方を混在して指定することができます。
target_include_directories(mytarget include;include/subdir)
install_headersコマンドを使用する
install_headers
コマンドは、ヘッダーファイルを特定の場所にインストールするために使用できます。このコマンドは、ターゲットに関連するヘッダーファイルを管理する簡単な方法を提供しますが、ヘッダーファイルの検索場所を明確に定義することはできません。
install_headers("include" DESTINATION include)
CMakeのモジュールを使用する
CMakeには、ヘッダーファイルを管理するためのモジュールがいくつか用意されています。これらのモジュールは、より高度な機能を提供し、複雑なプロジェクトを管理するのに役立ちます。
- CMakeListsOnly
ヘッダーファイルのみをインストールするために使用されます。 - IncludeDirectories
ターゲットに関連するインクルードパスのリストを管理するために使用されます。 - FindPackage
外部ライブラリのヘッダーファイルを検索するために使用されます。
カスタムプロパティを使用する
カスタムプロパティを使用して、ターゲットに関連するヘッダーファイルの場所を定義することもできます。これは、他の方法では実現できない柔軟性を提供しますが、コードの可読性と保守性を低下させる可能性があります。
set(MYTARGET_HEADER_DIRS include;include/subdir)
target_properties(mytarget PROPERTIES HEADER_DIRS "${MYTARGET_HEADER_DIRS}")
最適な方法を選択する
"HEADER_DIRS_NAME"の代替方法を選択する際には、プロジェクトの要件と複雑さを考慮することが重要です。単純なプロジェクトの場合は、インクルードパスを直接指定するか、target_include_directories
コマンドを使用するだけで十分な場合があります。複雑なプロジェクトの場合は、CMakeモジュールやカスタムプロパティを使用する方が適切な場合があります。