【初心者向け】CMakeの「IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY」で複雑なライブラリ構成をマスター
"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティは、CMake の "Properties: Targets" における重要な設定項目の一つであり、インポートされた静的ライブラリのリンクインターフェースの繰り返し回数を制御します。このプロパティは、特に循環依存関係を持つライブラリを扱う際に役立ちます。
詳細
"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティは、インポートされたターゲットのみに適用されます。つまり、CMake で明示的に定義されたターゲットではなく、外部ツールや他の CMake プロジェクトからインポートされたターゲットにのみ影響を与えます。
このプロパティの値は、整数で設定されます。値が 1 以上の場合は、リンク時にターゲットのライブラリが繰り返しインクルードされます。値が 0 以下の場合は、ライブラリは1回のみインクルードされます。
循環依存関係への対応
"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティは、循環依存関係を持つライブラリを扱う際に特に重要です。循環依存関係とは、複数のライブラリが互いに依存し、それぞれが相手のヘッダーファイルやライブラリを必要とする状況を指します。
このような状況では、単純にすべてのライブラリをリンクしようとすると、スタックオーバーフローなどのエラーが発生する可能性があります。"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティを使用することで、各ライブラリの繰り返し回数を制御し、循環依存関係を安全に解決することができます。
例
以下の例は、"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティを使用して、2つのライブラリ A
と B
の循環依存関係を解決する方法を示しています。
# ライブラリ A をインポート
target_link_libraries(myprogram PRIVATE IMPORTED "A")
# ライブラリ B をインポート
target_link_libraries(myprogram PRIVATE IMPORTED "B")
# ライブラリ B のリンクインターフェースの繰り返し回数を 2 回に設定
set_target_properties(B PROPERTIES IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY 2)
この例では、B
ライブラリは myprogram
ターゲットに2回リンクされます。これにより、循環依存関係が安全に解決されます。
"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティは、CMake 3.8 以降で使用できます。古いバージョンの CMake を使用している場合は、このプロパティを使用できない場合があります。
# ライブラリAとライブラリBを定義
add_library(A STATIC sources A.c)
add_library(B STATIC sources B.c)
# ターゲットmyprogramを定義
add_executable(myprogram main.c)
# ライブラリAとライブラリBをmyprogramにリンク
target_link_libraries(myprogram A B)
# ライブラリBのリンクインターフェースの繰り返し回数を2回に設定
set_target_properties(B PROPERTIES IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY 2)
このコードでは、以下の処理が行われます。
A.c
とB.c
というソースファイルからなる静的ライブラリA
とB
が作成されます。main.c
というソースファイルからなる実行可能ファイルmyprogram
が作成されます。myprogram
にA
とB
がリンクされます。B
のIMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY
プロパティが 2 に設定されます。
この設定により、myprogram
のビルド時に B
ライブラリが 2 回リンクされます。これは、A
と B
の間に循環依存関係がある場合に役立ちます。
説明
set_target_properties
コマンドは、ターゲットのプロパティを設定するために使用されます。最初の引数はターゲットの名前、2番目の引数はプロパティの名前、3番目の引数はプロパティの値です。target_link_libraries
コマンドは、ターゲットにライブラリをリンクするために使用されます。最初の引数はターゲットの名前、2番目の引数はライブラリのリストです。add_library
コマンドは、ライブラリを作成するために使用されます。最初の引数はライブラリの名前、2番目の引数はソースファイルのリストです。
以下のコードは、IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY
プロパティを使用して、より複雑な循環依存関係を解決する方法を示しています。
# ライブラリA、B、Cを定義
add_library(A STATIC sources A.c)
add_library(B STATIC sources B.c)
add_library(C STATIC sources C.c)
# ターゲットmyprogramを定義
add_executable(myprogram main.c)
# ライブラリA、B、Cをmyprogramにリンク
target_link_libraries(myprogram A B C)
# ライブラリBのリンクインターフェースの繰り返し回数を3回に設定
set_target_properties(B PROPERTIES IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY 3)
# ライブラリCのリンクインターフェースの繰り返し回数を2回に設定
set_target_properties(C PROPERTIES IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY 2)
このコードでは、A
、B
、C
という 3 つのライブラリ間の循環依存関係が解決されます。
C
はmyprogram
に 2 回リンクされます。B
はmyprogram
に 3 回リンクされます。
この設定により、各ライブラリが必要な回数だけインクルードされ、循環依存関係によるエラーを防ぐことができます。
ヘッダーファイルのみをインクルードする
循環依存関係を解決する最も簡単な方法は、ヘッダーファイルのみをインクルードすることです。これは、必要なヘッダーファイルを直接ターゲットにインクルードすることで実現できます。
利点
- 他の方法よりも設定が簡単
- シンプルで理解しやすい
欠点
- ライブラリの内部構造に依存するため、保守性が低くなる可能性がある
- ライブラリ全体をリンクする必要があるため、ビルド時間が長くなる可能性がある
例
add_executable(myprogram main.c)
target_include_directories(myprogram PRIVATE "A/include")
target_include_directories(myprogram PRIVATE "B/include")
この例では、myprogram
ターゲットは A
と B
のヘッダーファイルのみをインクルードします。
カスタムターゲットを使用する
より複雑な循環依存関係を解決するには、カスタムターゲットを使用することができます。カスタムターゲットは、ライブラリをリンクする代わりに、必要な処理を実行する特別なターゲットです。
利点
- ライブラリの内部構造に依存せずに、必要な処理のみを実行できる
- 柔軟性が高く、複雑な循環依存関係を解決できる
欠点
- ビルド時間が長くなる可能性がある
- 設定が複雑で、理解しにくい場合がある
例
add_custom_target(link_libraries)
add_dependencies(link_libraries A B)
target_link_libraries(myprogram PRIVATE link_libraries)
この例では、link_libraries
というカスタムターゲットが作成され、A
と B
のライブラリをリンクします。myprogram
ターゲットは link_libraries
ターゲットに依存するため、A
と B
が正しくリンクされます。
サブディレクトリツリーを再帰的にインクルードする
CMake の target_include_directories
コマンドには、RECURSE
オプションを指定して、サブディレクトリツリーを再帰的にインクルードすることができます。これは、ヘッダーファイルが複数のサブディレクトリに分散している場合に役立ちます。
利点
- サブディレクトリ構造が変更されても、設定を変更する必要がない
- ヘッダーファイルの場所を個別に指定する必要がない
欠点
- ビルド時間が長くなる可能性がある
- 不要なヘッダーファイルもインクルードされる可能性がある
例
add_executable(myprogram main.c)
target_include_directories(myprogram PRIVATE "A" "B" RECURSE)
この例では、myprogram
ターゲットは A
と B
ディレクトリツリー内のすべてのヘッダーファイルをインクルードします。
外部ビルドシステムを使用する
CMake 以外の外部ビルドシステムを使用することもできます。Make や Ninja などのツールは、循環依存関係を解決するための独自のメカニズムを提供している場合があります。
利点
- 他のプロジェクトとの互換性を確保できる
- CMake にない機能を利用できる
欠点
- 設定が複雑になる可能性がある
- CMake の知識が必要
例
# Makefile
all: myprogram
myprogram: main.c A.o B.o
$(CC) -o myprogram main.c A.o B.o
A.o: A.c
$(CC) -c A.c
B.o: B.c
$(CC) -c B.c
この例は、Makefile
を使用して myprogram
をビルドする方法を示しています。Makefile
は、A.c
と B.c
のソースファイルをコンパイルし、myprogram
を作成します。
"IMPORTED_LINK_INTERFACE_MULTIPLICITY" プロパティは、CMake における便利な機能ですが、状況によっては代替方法が必要になる場合があります。上記の代替方法を理解し、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。
- 具体的な状況に合わせて、最適な方法を選択してください。
- 上記以外にも、循環依存関係を解決するためのさまざまな方法があります。