Qt GUIでワンランク上のアプリケーション開発を目指せ！QWindow::setMouseGrabEnabled()を使いこなして自由自在な操作を実現

QWindow::setMouseGrabEnabled() 関数は、マウスイベントの処理方法を制御するために使用されます。この関数を true に設定すると、ウィンドウはマウスイベントを独占し、他のウィンドウにイベントが届かなくなります。一方、false に設定すると、マウスイベントは通常の処理に戻ります。

用途

この関数は、主に以下の用途で使用されます。

モーダルダイアログの制御
モーダルダイアログが表示されている間、他のウィンドウへのマウスイベントを無効化するために使用されます。
ポップアップメニューの表示
ポップアップメニューが表示されている間、他のウィンドウへのマウスイベントを無効化するために使用されます。
ドラッグ操作の実装
ドラッグ操作中に、マウスカーソルをウィンドウ内に留めるために使用されます。

使用方法

void QWindow::setMouseGrabEnabled(bool grab);

この関数は、grab というブール値パラメータを受け取ります。このパラメータが true の場合、マウスイベントはウィンドウによって独占されます。false の場合、マウスイベントは通常の処理に戻ります。

注意点

この関数は、ネストされたウィンドウには影響しません。ネストされたウィンドウは、親ウィンドウのマウスイベント処理の影響を受けます。
この関数は、モーダルウィンドウ内のウィジェットには影響しません。モーダルウィンドウ内のウィジェットは、通常どおりマウスイベントを受け取ることができます。
setMouseGrabEnabled() 関数は、マウスイベントのみを制御します。キーボードイベントは影響を受けません。キーボードイベントを制御するには、setKeyboardGrabEnabled() 関数を使用する必要があります。

QWindow window;
window.setMouseGrabEnabled(true);

// ドラッグ操作の実装
...

window.setMouseGrabEnabled(false);

例 1: ドラッグ操作の実装

この例では、ウィンドウをドラッグして移動できるドラッグ操作を実装します。

class DraggableWindow: public QWindow
{
public:
    DraggableWindow()
    {
        setMouseTracking(true);
        installEventFilter(this);
    }

protected:
    bool eventFilter(QEvent *event) override
    {
        if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress)
        {
            m_dragStartPosition = event->pos();
            setMouseGrabEnabled(true);
            return true;
        }

        if (event->type() == QEvent::MouseMove && hasMouseGrabEnabled())
        {
            QPoint newPosition = pos() + (event->pos() - m_dragStartPosition);
            setPos(newPosition);
            return true;
        }

        if (event->type() == QEvent::MouseButtonRelease)
        {
            setMouseGrabEnabled(false);
            return true;
        }

        return QWindow::eventFilter(event);
    }

private:
    QPoint m_dragStartPosition;
};

例 2: ポップアップメニューの表示

この例では、ウィンドウをクリックするとポップアップメニューが表示されるようにします。

class PopupMenuWindow: public QWindow
{
public:
    PopupMenuWindow()
    {
        connect(this, &QWindow::windowStateChanged, this, &PopupMenuWindow::onWindowStateChanged);
    }

protected:
    void onWindowStateChanged(QWindowStateChangeEvent *event)
    {
        if (event->state() == QWindowState::WindowActive)
        {
            QMenu menu;
            menu.addAction("Action 1");
            menu.addAction("Action 2");
            menu.exec(QCursor::pos());

            setMouseGrabEnabled(true);
        }
    }
};

例 3: モーダルダイアログの制御

この例では、モーダルダイアログが表示されている間、他のウィンドウへのマウスイベントを無効化します。

class ModalDialog: public QDialog
{
public:
    ModalDialog(QWidget *parent = nullptr)
        : QDialog(parent)
    {
        setModal(true);
    }

protected:
    void showEvent(QShowEvent *event) override
    {
        QWindow *window = parentWidget()->window();
        window->setMouseGrabEnabled(true);
        QDialog::showEvent(event);
    }

    void closeEvent(QCloseEvent *event) override
    {
        QWindow *window = parentWidget()->window();
        window->setMouseGrabEnabled(false);
        QDialog::closeEvent(event);
    }
};

QEventFilter を使用する

QEventFilter を使用すると、ウィンドウに送信されるすべてのイベントをフィルタリングして処理することができます。QWindow::setMouseGrabEnabled() 関数を使用するよりも柔軟性が高く、より細かい制御が可能ですが、コードが複雑になる可能性があります。

class MouseGrabFilter: public QEventFilter
{
public:
    bool eventFilter(QObject *obj, QEvent *event) override
    {
        if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress)
        {
            // マウスイベントを処理する
            return true;
        }

        return QEventFilter::eventFilter(obj, event);
    }
};

長所

より細かい制御が可能
柔軟性が高い

短所

コードが複雑になる可能性がある

QInputMethod を使用する

QInputMethod を使用すると、キーボードイベントとマウスイベントの入力を制御することができます。QWindow::setMouseGrabEnabled() 関数よりも汎用性が高く、テキスト入力などの複雑な操作を処理するのに適していますが、設定が複雑になる可能性があります。

QInputMethod inputMethod;
inputMethod.setInputContext(window);
inputMethod.start();

長所

テキスト入力などの複雑な操作を処理するのに適している
汎用性が高い

短所

設定が複雑になる可能性がある

ネイティブプラットフォーム API を使用する

ネイティブプラットフォーム API を使用すると、オペレーティングシステムレベルでマウスイベントを制御することができます。これは、最も低レベルの制御を提供しますが、プラットフォームごとに異なる API を使用する必要があるため、移植性が低くなります。

長所

最も低レベルの制御を提供する

プラットフォームごとに異なる API を使用する必要がある
移植性が低い