Vulkan レンダラーで物理デバイス消失時の処理をカスタマイズ:QVulkanWindowRenderer::physicalDeviceLost()の代替方法とカスタムクラス作成
QVulkanWindowRenderer::physicalDeviceLost()
は、Qt GUIにおける Vulkan レンダラークラス QVulkanWindowRenderer
の仮想関数です。この関数は、物理デバイスが失われた場合に呼び出されます。物理デバイスとは、Vulkan API でグラフィック処理を実行するために使用するハードウェアコンポーネントを指します。
物理デバイスが失われる状況
物理デバイスが失われる状況は以下の通りです。
- システムの休止状態からの復帰
システムが休止状態から復帰すると、グラフィックハードウェアの状態が変化する可能性があり、Vulkan API は物理デバイスを再初期化する必要がある場合があります。再初期化が失敗すると、物理デバイスが失われたとみなされます。 - ドライバのクラッシュ
グラフィックドライバがクラッシュすると、Vulkan API は物理デバイスとの通信を失い、失われたとみなされます。 - グラフィックカードの取り外し
コンピュータからグラフィックカードを取り外すと、Vulkan API はそのデバイスを認識できなくなり、失われたとみなされます。
physicalDeviceLost() 関数の役割
physicalDeviceLost()
関数は、物理デバイスが失われた場合にアプリケーションが適切に処理できるようにするために呼び出されます。この関数のデフォルトの実装は空ですが、アプリケーション開発者は独自の処理を実装することができます。
独自の処理を実装する場合
独自の処理を実装する場合は、以下の点に注意する必要があります。
- ユーザーに通知する
ユーザーが物理デバイスが失われたことを認識できるように、アプリケーションで適切な通知を表示する必要があります。 - レンダリングを停止する
物理デバイスが失われた後は、レンダリングを停止する必要があります。これには、QVulkanWindowRenderer::setSurface()
関数を使用して新しいサーフェスを設定し、レンダリングパイプラインを再構築することが含まれます。 - Vulkan API の呼び出しを避ける
物理デバイスが失われた後は、Vulkan API の呼び出しは失敗する可能性があります。そのため、この関数内では Vulkan API の呼び出しを避ける必要があります。
physicalDeviceLost()
関数は、Vulkan レンダラーを使用するアプリケーションでのみ使用されます。OpenGL レンダラーを使用する場合は、この関数は呼び出されません。
#include <QVulkanWindowRenderer>
class MyVulkanWindowRenderer : public QVulkanWindowRenderer
{
public:
void physicalDeviceLost() override
{
// Vulkan API の呼び出しを避ける
// ...
// レンダリングを停止する
setSurface(nullptr);
// ...
// ユーザーに通知する
QMessageBox::information(this, tr("Vulkan Error"), tr("Physical device lost."));
}
};
このコードでは、physicalDeviceLost()
関数内で以下の処理が行われます。
- Vulkan API の呼び出しを避けるために、コメントで囲まれています。
setSurface(nullptr)
関数を使用して新しいサーフェスを設定し、レンダリングを停止します。QMessageBox::information()
関数を使用して、ユーザーに物理デバイスが失われたことを通知します。
このコードはあくまで例であり、アプリケーションの要件に応じて変更する必要があります。
- ユーザーへの通知方法も、アプリケーションの設計に応じて変更する必要があります。
- 実際のアプリケーションでは、レンダリングパイプラインの再構築など、より複雑な処理が必要になる場合があります。
しかし、physicalDeviceLost()
関数にはいくつかの欠点があります。
- 複雑な処理が必要になる場合がある
実際のアプリケーションでは、レンダリングパイプラインの再構築など、より複雑な処理が必要になる場合があります。 - Vulkan API の呼び出しを避ける必要がある
物理デバイスが失われた後は、Vulkan API の呼び出しは失敗する可能性があります。そのため、この関数内では Vulkan API の呼び出しを避ける必要があります。 - デフォルトの実装が空である
この関数のデフォルトの実装は空であり、アプリケーション開発者は独自の処理を実装する必要があります。
これらの欠点を克服するために、physicalDeviceLost()
関数の代替方法をいくつか検討することができます。
QObject::connect() を使用してシグナルを接続する
QVulkanWindowRenderer
クラスは、physicalDeviceAboutToBeLost()
というシグナルを発行します。このシグナルは、物理デバイスが失われる前に発行されます。このシグナルを QObject::connect()
関数を使用してスロットに接続することで、物理デバイスが失われる前に処理を行うことができます。
connect(renderer, &QVulkanWindowRenderer::physicalDeviceAboutToBeLost, this, &MyClass::handlePhysicalDeviceAboutToBeLost);
この方法の利点は、Vulkan API の呼び出しを避ける必要がなく、物理デバイスが失われる前に処理を行うことができることです。
QTimer を使用して定期的にポーリングする
QTimer
クラスを使用して、定期的に物理デバイスの状態をポーリングすることができます。物理デバイスが失われた場合は、ポーリングタイマーのスロットで処理を行うことができます。
QTimer timer(this);
connect(&timer, &QTimer::timeout, this, &MyClass::checkPhysicalDeviceStatus);
timer.start(1000); // 1秒ごとにポーリング
この方法の利点は、Vulkan API の呼び出しを避ける必要がなく、シンプルな実装で済みます。
カスタム Vulkan レンダラークラスを作成する
QVulkanWindowRenderer
クラスは、Vulkan レンダラーの基底クラスです。独自の処理を実装するために、カスタム Vulkan レンダラークラスを作成することができます。カスタムクラスでは、physicalDeviceLost()
関数を独自に実装することができます。
この方法の利点は、完全な制御が可能で、アプリケーションの要件に合わせた処理を実装することができます。
最良の方法は?
どの方法が最良かは、アプリケーションの要件によって異なります。
- より多くの制御が必要な場合は、
QTimer
を使用して定期的にポーリングするか、カスタム Vulkan レンダラークラスを作成する方法がおすすめです。 - シンプルで軽量なソリューションが必要な場合は、
QObject::connect()
関数を使用してシグナルを接続する方法がおすすめです。