Qt GUI プログラミングにおけるスクロール操作の更新イベント処理: QWheelEvent::isUpdateEvent() を中心とした解説
QWheelEvent::isUpdateEvent()
は、Qt GUI におけるマウスホイールイベントの位相が Qt::ScrollUpdate
または Qt::ScrollMomentum
であるかどうかを確認するために使用されるメソッドです。これらの位相は、ユーザーによるスクロール操作の進行中に発生します。
使用方法
bool isUpdateEvent() const;
このメソッドは、QWheelEvent
オブジェクトに対して呼び出されます。返値は、イベントの位相が Qt::ScrollUpdate
または Qt::ScrollMomentum
である場合は true
、そうでない場合は false
です。
詳細
マウスホイールイベントには、スクロール操作の進行状況を示す 位相 という概念があります。QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドは、この位相情報を使用して、ユーザーによるスクロール操作の更新イベントかどうかを判断します。
Qt::ScrollMomentum
ユーザーがスクロール操作を終えた後、マウスホイールの慣性によってスクロールが継続していることを示します。この位相のイベントは、スクロール操作が完了するまで発生し、慣性によるスクロールの減速を反映します。Qt::ScrollUpdate
ユーザーがスクロール操作を継続していることを示します。この位相のイベントは頻繁に発生し、スクロール操作の進行状況をリアルタイムで反映します。
例
void widget_mouseWheelEvent(QWheelEvent *event)
{
if (event->isUpdateEvent()) {
// スクロール操作の更新イベントを処理する
int delta = event->angleDelta().y();
scrollContents(delta);
} else {
// スクロール操作の開始/終了イベントを処理する
}
}
この例では、widget_mouseWheelEvent()
関数は QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドを使用して、スクロール操作の更新イベントかどうかを判断しています。更新イベントの場合は、angleDelta().y()
メソッドを使用してスクロール量を取得し、scrollContents()
関数を呼び出してコンテンツをスクロールします。
QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドは、スクロール操作の更新イベントを処理するロジックを簡潔に記述するために役立ちます。
#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QScrollArea>
class MyWidget : public QWidget {
public:
MyWidget(QWidget *parent = nullptr);
protected:
void mouseWheelEvent(QWheelEvent *event) override;
};
MyWidget::MyWidget(QWidget *parent) : QWidget(parent) {
QLabel *label = new QLabel("This is a scrollable text label.", this);
label->setAlignment(Qt::AlignCenter);
QScrollArea *scrollArea = new QScrollArea(this);
scrollArea->setWidget(label);
scrollArea->setFixedSize(200, 100);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(scrollArea);
}
void MyWidget::mouseWheelEvent(QWheelEvent *event) {
if (event->isUpdateEvent()) {
int delta = event->angleDelta().y();
scrollArea()->verticalScrollBar()->setValue(scrollArea()->verticalScrollBar()->value() - delta);
}
}
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
MyWidget widget;
widget.show();
return app.exec();
}
このコードを実行すると、以下のウィンドウが表示されます。
マウスホイールを回すと、テキストラベルがスクロールされます。QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドを使用して、スクロール操作の更新イベントのみを処理しています。
MyWidget
クラスは、QWidget
を継承したカスタムウィジェットクラスです。- コンストラクタは、スクロール可能なテキストラベルと
QScrollArea
を作成し、レイアウトに追加します。 mouseWheelEvent()
メソッドは、QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドを使用して、スクロール操作の更新イベントかどうかを判断します。- 更新イベントの場合は、
angleDelta().y()
メソッドを使用してスクロール量を取得し、scrollArea()
メソッドを使用してスクロールバーの値を更新します。 main()
関数は、QApplication オブジェクトを作成し、MyWidget オブジェクトを表示します。
QWheelEvent::phase() を使用する
QWheelEvent::phase()
メソッドは、イベントの位相を返します。この位相情報を使用して、ユーザーによるスクロール操作の進行状況を判断することができます。
void widget_mouseWheelEvent(QWheelEvent *event)
{
if (event->phase() == QEvent::Phase::Running) {
// スクロール操作の更新イベントを処理する
int delta = event->angleDelta().y();
scrollContents(delta);
} else {
// スクロール操作の開始/終了イベントを処理する
}
}
この方法の利点は、QWheelEvent::isUpdateEvent()
メソッドよりも汎用性が高いことです。スクロール操作の開始、更新、終了のすべてのイベントを処理することができます。
欠点は、QWheelEvent::phase()
メソッドは QEvent::Phase::Running
以外の値を返す場合があることです。これらの場合は、イベントの位相を個別に判断する必要があります。
タイマーを使用する
スクロール操作の更新イベントを処理するために、タイマーを使用する方法があります。タイマーを一定間隔で起動し、その間にスクロール量の変化を監視します。
void widget_mouseWheelEvent(QWheelEvent *event)
{
if (event->phase() == QEvent::Phase::Began) {
lastScrollValue = scrollArea()->verticalScrollBar()->value();
timer->start(100); // 100 ミリ秒ごとにタイマーを起動
} else if (event->phase() == QEvent::Phase::Ended) {
timer->stop();
}
}
void timerEvent(QTimerEvent *event)
{
int currentScrollValue = scrollArea()->verticalScrollBar()->value();
int delta = currentScrollValue - lastScrollValue;
if (delta != 0) {
// スクロール操作の更新イベントを処理する
scrollContents(delta);
lastScrollValue = currentScrollValue;
}
}
この方法の利点は、スクロール操作の更新イベントをより正確に検出できることです。タイマーのインターバルを調整することで、感度を調整することができます。
欠点は、タイマーを使用するため、コードが複雑になる可能性があることです。また、タイマーのインターバルが短すぎると、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
シグナルとスロットを使用する
スクロールバーの valueChanged()
シグナルに接続することで、スクロール操作の更新イベントを処理することができます。
void MyWidget::connectSignals()
{
connect(scrollArea()->verticalScrollBar(), &QScrollBar::valueChanged, this, &MyWidget::handleScrollValueChanged);
}
void MyWidget::handleScrollValueChanged(int value)
{
// スクロール操作の更新イベントを処理する
int delta = value - lastScrollValue;
if (delta != 0) {
scrollContents(delta);
lastScrollValue = value;
}
}
この方法の利点は、コードがシンプルで分かりやすいことです。また、シグナルとスロットを使用することで、イベント処理を他のロジックと簡単に統合することができます。
欠点は、スクロールバーの値が変更されるたびに handleScrollValueChanged()
関数が呼び出されるため、パフォーマンスに影響を与える可能性があることです。
どの代替方法を使用するかは、状況によって異なります。
- コードがシンプルで分かりやすい方が良い場合は、シグナルとスロットを使用するのが良いでしょう。
- スクロール操作の更新イベントをより正確に検出する必要がある場合は、タイマーを使用するのが良いでしょう。
- スクロール操作の開始、更新、終了のすべてのイベントを処理する必要がある場合は、
QWheelEvent::phase()
を使用するのが良いでしょう。