【Qtプログラミング】QTreeViewで実現する!カスタムデリゲートによる単語折り返しの具体例
QTreeView::wordWrap
とは何か?
QTreeView::wordWrap
は、Qt の QTreeView
ウィジェットのプロパティ(属性)の一つです。このプロパティが true
に設定されている場合、ツリービュー内のアイテムに表示されるテキストが、そのアイテムの列幅を超えたときに、自動的に次の行に折り返して表示されるように動作することを期待されます。つまり、長いテキストが一列に収まらない場合に、テキストが途中で切り捨てられたり、スクロールバーが表示されたりするのではなく、自動的に複数行にわたって表示されるようになるというものです。
setWordWrap(bool on)
メソッドでこのプロパティを設定し、wordWrap()
メソッドで現在の設定値を取得できます。
なぜ QTreeView::wordWrap
は注意が必要か?
しかし、実際には QTreeView::wordWrap
プロパティを true
に設定しても、デフォルトのままでは期待通りに単語の折り返しが行われないことが多いという現状があります。これは、QTreeView
が描画に使用するデフォルトのアイテムデリゲート (QStyledItemDelegate
) が、単語の折り返しに対応していないためです。
QTreeView
でテキストの単語折り返しを正しく機能させるには、通常、カスタムのアイテムデリゲートを実装する必要があります。
カスタムデリゲートでは、主に以下の2つのメソッドをオーバーライド(再実装)します。
-
- このメソッドで、アイテムのテキストを実際に描画します。ここでは、
QTextDocument
を使用してテキストを描画することで、HTMLタグの解釈や単語の折り返しなどのリッチテキスト機能を利用できます。 QTextDocument::setPageSize()
をoption.rect.size()
に設定することで、アイテムの利用可能な領域に合わせてテキストが折り返されるようにします。
- このメソッドで、アイテムのテキストを実際に描画します。ここでは、
-
sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
- このメソッドで、アイテムの適切なサイズ(特に高さ)を計算して返します。単語の折り返しが有効な場合、テキストの長さによってアイテムの高さが変わるため、この計算が非常に重要になります。
paint
メソッドと同様にQTextDocument
を使用して、指定された幅(option.rect.width()
)でテキストが折り返された場合の高さを計算します。
- 解決策:
QStyledItemDelegate
を継承したカスタムデリゲートを作成し、paint()
とsizeHint()
メソッドをオーバーライドすることで、単語の折り返しを適切に実装できます。 - 注意点: デフォルトではこのプロパティを
true
にしても、単語の折り返しは機能しないことが多いです。 QTreeView::wordWrap
プロパティ: ツリービュー内のアイテムのテキストを自動的に折り返すための設定です。
QTreeView::wordWrap
のよくあるエラーとトラブルシューティング
前回の説明でも触れましたが、QTreeView::wordWrap
は、設定しても期待通りに動作しないことが最も一般的な「エラー」であり、トラブルシューティングの核心はカスタムデリゲートの実装にあります。
setWordWrap(true)を設定してもテキストが折り返されない
エラーの内容
QTreeView
のインスタンスに対してsetWordWrap(true)
を呼び出したにもかかわらず、長いテキストが列の幅を超えても折り返されず、テキストが途中で切れて表示されたり、水平スクロールバーが表示されたりする。
原因
これは、QtのQTreeView
が内部的に使用するデフォルトの描画メカニズム(QStyledItemDelegate
)が、wordWrap
プロパティだけでは単語の折り返しに対応していないためです。QTreeView::wordWrap
は、単独でテキストの描画方法を変更するわけではありません。
トラブルシューティング/解決策
- カスタムアイテムデリゲートを実装する
これが最も確実で推奨される解決策です。QStyledItemDelegate
を継承したクラスを作成します。paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
メソッドをオーバーライドします。- このメソッド内で、
QTextDocument
を使用してテキストを描画します。QTextDocument
はHTMLタグの解釈や、指定された幅内でのテキストの自動折り返しをサポートしています。 QTextDocument::setTextWidth(option.rect.width())
を呼び出して、利用可能な幅を設定することが重要です。QTextDocument::drawContents(painter)
で実際に描画します。
- このメソッド内で、
sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
メソッドをオーバーライドします。- 単語の折り返しによってアイテムの高さが変わるため、このメソッドで正しい高さを返す必要があります。
paint
メソッドと同様にQTextDocument
を使用し、QTextDocument::setTextWidth(option.rect.width())
を設定した後、QTextDocument::size().height()
などを利用して適切な高さを計算して返します。
- 作成したカスタムデリゲートのインスタンスを、
QTreeView::setItemDelegateForColumn(int column, QAbstractItemDelegate *delegate)
またはQTreeView::setItemDelegate(QAbstractItemDelegate *delegate)
を使ってツリービューに設定します。
テキストは折り返されるが、行の高さが適切に調整されない(テキストが重なる)
エラーの内容
カスタムデリゲートを実装して単語の折り返しが機能するようになったが、複数行にわたるテキストの場合、次の行のアイテムとテキストが重なって表示される。
原因
sizeHint()
メソッドの実装が不適切であるためです。QTreeView
は、sizeHint()
が返すサイズに基づいてアイテムの描画領域を決定します。このサイズが小さすぎると、テキスト全体が表示されず、次のアイテムと重なってしまいます。
トラブルシューティング/解決策
- QTreeView::setUniformRowHeights(false) を確認する
- もし
setUniformRowHeights(true)
が設定されている場合、すべての行が同じ高さになります。これは、異なる高さのテキストを扱う単語折り返しとは相性が悪いです。デフォルトはfalse
ですが、明示的にfalse
に設定することで、行ごとに異なる高さを許容するようにします。
- もし
- sizeHint() で正確な高さを計算する
paint()
メソッドでテキストを描画する際に使用したのと同じロジック(特にQTextDocument
とsetTextWidth()
の使用)をsizeHint()
でも適用し、そのテキストが描画されるために必要な正確な高さを計算して返します。- 例:
QSize CustomDelegate::sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const { QTextDocument doc; doc.setHtml(index.data().toString()); // または doc.setPlainText() doc.setTextWidth(option.rect.width()); // 利用可能な幅を設定 // QTextDocumentが計算した適切なサイズを返す return QSize(doc.idealWidth(), doc.size().height()); }
テキストが折り返されるが、なぜか右端で切れてしまう
エラーの内容
テキストが折り返されてはいるが、列の右端で完全に単語の切れ目ではないところで切れてしまう。
原因
これは、描画領域の幅の計算にわずかなずれがあるか、QTextDocument
のsetTextWidth()
に渡す値が不正確である場合に発生することがあります。また、スタイルの余白(マージン)が考慮されていない可能性もあります。
トラブルシューティング/解決策
- デバッグ描画
paint()
メソッド内でpainter->drawRect(option.rect);
のようにして、アイテムの描画領域(option.rect
)を可視化し、実際にテキストが描画されている領域と比較してみると、どこに問題があるか特定しやすくなります。 - option.rect.width() の値を確認する
paint()
とsizeHint()
の両方で、option.rect.width()
を正しく使用しているか確認してください。これは、アイテムの描画に利用可能な幅を示します。
デリゲートを設定したが、特定の列でしか動作しない
エラーの内容
QTreeView
全体で単語の折り返しをしたいのに、特定の列でしか機能しない。
原因
setItemDelegateForColumn()
を使用してデリゲートを設定した場合、それはその特定の列にのみ適用されます。
- 複数の列にデリゲートを設定する
- 異なる列で異なるデリゲートが必要な場合は、それぞれの列に対して
setItemDelegateForColumn()
を呼び出し、適切なデリゲートを設定します。
- 異なる列で異なるデリゲートが必要な場合は、それぞれの列に対して
- QTreeView::setItemDelegate(QAbstractItemDelegate *delegate) を使用する
- すべての列に同じデリゲートを適用したい場合は、このメソッドを使用します。
- 最小限の再現コードを作成する
問題を再現する最小限のコードを作成し、切り分けて考えることで、問題の原因を特定しやすくなります。 - デバッグ出力を活用する
qDebug()
を使って、paint()
やsizeHint()
メソッド内でoption.rect.width()
や計算された高さなどの値を出力し、期待通りの値になっているか確認します。 - Qtのドキュメントを参照する
QTreeView
,QAbstractItemDelegate
,QStyledItemDelegate
,QTextDocument
の公式ドキュメントは非常に詳細で、多くのヒントが含まれています。
QTreeView::setWordWrap(true)
を設定してもテキストが自動的に折り返されない問題は、カスタムデリゲートを実装することで解決できます。以下にそのためのC++コード例を示します。
この例では、QStandardItemModel
をデータモデルとして使用し、QTextDocument
を利用してテキストの描画と高さの計算を行うカスタムデリゲート WordWrapDelegate
を作成します。
ヘッダーファイル (wordwrapdelegate.h)
#ifndef WORDWRAPDELEGATE_H
#define WORDWRAPDELEGATE_H
#include <QStyledItemDelegate>
#include <QTextDocument> // QTextDocument を使用するために必要
class WordWrapDelegate : public QStyledItemDelegate
{
Q_OBJECT
public:
explicit WordWrapDelegate(QObject *parent = nullptr);
// アイテムの描画をカスタマイズする
void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
// アイテムのサイズ(特に高さ)を計算する
QSize sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
};
#endif // WORDWRAPDELEGATE_H
ソースファイル (wordwrapdelegate.cpp)
#include "wordwrapdelegate.h"
#include <QPainter>
#include <QAbstractTextDocumentLayout> // QTextDocumentLayout を使用するために必要
WordWrapDelegate::WordWrapDelegate(QObject *parent)
: QStyledItemDelegate(parent)
{
}
void WordWrapDelegate::paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
// 基本的なスタイル(選択状態の背景色など)を描画
// QStyledItemDelegate::paint(painter, option, index); // これを呼び出すとデフォルトのテキスト描画も行われるため、カスタム描画と競合する可能性あり
// テキストデータの取得
QString text = index.data(Qt::DisplayRole).toString();
// QTextDocument を作成し、テキストを設定
QTextDocument doc;
// 必要であればHTMLタグを解釈させるために setHtml を使う
// doc.setHtml(text);
doc.setPlainText(text); // シンプルなテキストの場合はこちらで十分
// アイテムの利用可能な幅を設定し、テキストを折り返す
// オプション rect の幅がゼロになることがあるため、最小値を保証する
qreal textWidth = option.rect.width();
if (textWidth <= 0) { // 幅が不正な場合は、適当なデフォルト値を使用するか、描画をスキップ
textWidth = 100; // 例: 100px
}
doc.setTextWidth(textWidth);
// QPainter の状態を保存
painter->save();
// 描画位置をアイテムの左上隅に移動
painter->translate(option.rect.topLeft());
// テキストドキュメントを描画
doc.drawContents(painter);
// QPainter の状態を復元
painter->restore();
}
QSize WordWrapDelegate::sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
// テキストデータの取得
QString text = index.data(Qt::DisplayRole).toString();
// paint と同じロジックで QTextDocument を作成
QTextDocument doc;
// doc.setHtml(text);
doc.setPlainText(text);
// アイテムの利用可能な幅を設定
qreal textWidth = option.rect.width();
if (textWidth <= 0) {
textWidth = 100; // paint と同じデフォルト値を使用
}
doc.setTextWidth(textWidth);
// QTextDocument が計算した理想的なサイズを返す
// doc.idealWidth() は、折り返しを考慮しない場合の最小幅
// doc.size().height() は、折り返しを考慮した現在の幅での高さ
return QSize(static_cast<int>(doc.idealWidth()), static_cast<int>(doc.size().height()));
}
メインウィンドウまたはアプリケーションのセットアップ (mainwindow.cpp など)
#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include "wordwrapdelegate.h" // 作成したデリゲートをインクルード
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QMainWindow window;
QWidget *centralWidget = new QWidget(&window);
window.setCentralWidget(centralWidget);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(centralWidget);
QTreeView *treeView = new QTreeView(centralWidget);
layout->addWidget(treeView);
// モデルの作成
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(&a);
model->setHorizontalHeaderLabels({"名前", "詳細な説明"});
// データアイテムの追加
QStandardItem *item1 = new QStandardItem("親アイテム 1");
QStandardItem *item2 = new QStandardItem("長い説明テキストがここに入ります。このテキストは、列の幅に合わせて自動的に複数行に折り返されるはずです。これはデリゲートの単語折り返し機能のテストです。");
item1->appendColumn({item2});
model->appendRow(item1);
QStandardItem *item3 = new QStandardItem("親アイテム 2");
QStandardItem *item4 = new QStandardItem("これは短いテキストです。");
item3->appendColumn({item4});
model->appendRow(item3);
QStandardItem *item5 = new QStandardItem("親アイテム 3");
QStandardItem *item6 = new QStandardItem("さらに長いテキストの例です。QtのQTreeViewで単語折り返しを実装するには、カスタムデリゲートが必須であることを示します。デフォルトのQStyledItemDelegateでは、QTreeView::wordWrapプロパティだけではこの機能は提供されません。");
item5->appendColumn({item6});
model->appendRow(item5);
treeView->setModel(model);
// ここが重要: カスタムデリゲートをツリービューに設定する
WordWrapDelegate *delegate = new WordWrapDelegate(&a); // アプリケーションの終了時に自動削除されるように親を設定
treeView->setItemDelegateForColumn(1, delegate); // 2列目(インデックス1)にデリゲートを適用
// QTreeView::wordWrap プロパティを true に設定 (慣習的な設定だが、デリゲートが本質)
treeView->setWordWrap(true);
// 行の高さがテキストに合わせて可変になるようにする (重要)
treeView->setUniformRowHeights(false);
// 2列目の幅を設定(適当な初期値)
treeView->setColumnWidth(1, 250); // 例: 250px
// すべてのアイテムを展開して、折り返しを確認しやすくする
treeView->expandAll();
window.setWindowTitle("QTreeView Word Wrap Example");
window.resize(600, 400);
window.show();
return a.exec();
}
解説
-
QStyledItemDelegate
を継承しています。paint()
メソッド:index.data(Qt::DisplayRole).toString()
でモデルから表示するテキストを取得します。QTextDocument doc;
でQTextDocument
オブジェクトを作成します。これはリッチテキストのレイアウトと描画を扱える強力なクラスです。doc.setPlainText(text);
でテキストを設定します。HTML形式のテキストを扱う場合はdoc.setHtml(text);
を使用します。doc.setTextWidth(option.rect.width());
が最も重要な部分です。これにより、QTextDocument
が利用可能な幅(列の幅)に基づいてテキストを自動的に折り返すようになります。option.rect.width()
がゼロになる可能性があるため、小さい値にならないように安全策を入れています。painter->translate(option.rect.topLeft());
で描画の原点をアイテムの左上隅に移動させます。doc.drawContents(painter);
でQTextDocument
の内容をQPainter
を使って描画します。
sizeHint()
メソッド:QTreeView
はこのメソッドを呼び出して、各アイテムに必要な適切なサイズ(特に高さ)を問い合わせます。paint()
メソッドと同様にQTextDocument
を作成し、doc.setTextWidth(option.rect.width());
を設定します。QSize(static_cast<int>(doc.idealWidth()), static_cast<int>(doc.size().height()));
を返します。doc.size().height()
は、設定されたテキスト幅でテキストが折り返された場合に必要となる正確な高さを返します。これにより、行の高さがテキストの内容に合わせて動的に調整されます。
-
main()
関数内の設定:QStandardItemModel
を作成し、いくつかの長いテキストを持つアイテムを追加します。WordWrapDelegate *delegate = new WordWrapDelegate(&a);
でカスタムデリゲートのインスタンスを作成します。&a
を親として渡すことで、アプリケーション終了時に自動的に解放されます。treeView->setItemDelegateForColumn(1, delegate);
で、**2列目(インデックス1)**に対してこのカスタムデリゲートを設定します。これにより、この列のアイテムのみが単語折り返しの対象となります。すべての列に適用したい場合は、treeView->setItemDelegate(delegate);
を使用します。treeView->setWordWrap(true);
は、技術的にはカスタムデリゲートがなければ効果はありませんが、意図を示すために設定しておくのが良いでしょう。treeView->setUniformRowHeights(false);
を設定することは非常に重要です。これがtrue
(デフォルト)だと、すべての行の高さが同じになってしまい、単語折り返しによる行の高さの動的な調整が機能しません。
QTreeView::setWordWrap(true) と \n (改行文字) を組み合わせる
これは最もシンプルで、しばしば誤解されやすい方法です。
- 使用に適したケース
- テキストの内容が常に固定で、開発者が手動で改行位置を制御したい場合。
- 列幅が変化しない、または変化しても動的な折り返しが必要ないシンプルなケース。
- 欠点
- 動的な単語折り返しは行われません。 列幅が変わっても、テキストは自動的に再折り返しされません。挿入された
\n
の位置でしか改行されません。 - 行の高さも自動的に調整されません。各行の高さが均一(
setUniformRowHeights(true)
の場合)であるか、または手動で調整する必要があります。 - 表示されるテキストが固定幅でない場合(例:プロポーショナルフォント)、改行位置が不適切になる可能性があります。
- 動的な単語折り返しは行われません。 列幅が変わっても、テキストは自動的に再折り返しされません。挿入された
- 利点
- カスタムデリゲートのような複雑なコードは不要です。
- 非常に簡単に実装できます。
- 方法
QTreeView::setWordWrap(true)
を設定します。- モデル内のテキストデータに明示的に改行文字
\n
を挿入します。
QTreeView::setItemWidget() を使用してカスタムウィジェットを埋め込む
QTreeView
の各アイテムに、任意のQtウィジェットを埋め込むことができます。この方法を使えば、QLabel
のような単語折り返し機能を持つウィジェットをアイテムに配置できます。
- 使用に適したケース
- アイテム数が非常に少ない場合。
- アイテムに単なるテキスト表示以上の複雑なUI要素(ボタン、チェックボックス、進捗バーなど)を含めたい場合。
- QtDesignerで視覚的にアイテムのレイアウトを設計したい場合。
- 欠点
- パフォーマンスの問題
大量のアイテムがある場合、各アイテムにウィジェットを作成・管理することは、多くのリソースを消費し、スクロール時のパフォーマンスを著しく低下させる可能性があります。これは、ウィジェットが描画されるたびに独自のペイントイベントを発生させるためです。 - 均一でない行の高さ
QTreeView
は通常、埋め込まれたウィジェットのサイズを考慮しますが、動的な高さ調整が常にスムーズに行くとは限りません。 - ウィジェットのライフサイクル管理
埋め込んだウィジェットのライフサイクルを適切に管理する必要があります(親を設定するなど)。 - 編集機能との相性
デフォルトの編集機能(ダブルクリックでテキスト編集など)とは相性が悪いです。
- パフォーマンスの問題
- 利点
QLabel
などの既存のウィジェットの単語折り返し機能を利用できます。- デリゲートよりも、視覚的な要素の配置や複雑なカスタム表示を簡単に実現できる場合があります。
- 方法
QLabel
のインスタンスを作成し、setWordWrap(true)
を設定します。- その
QLabel
をQTreeView::setItemWidget(QTreeWidgetItem *item, int column, QWidget *widget)
またはQTreeWidget::setItemWidget(QTreeWidgetItem *item, int column, QWidget *widget)
(QTreeWidgetの場合) でツリーアイテムに設定します。
モデルの data() メソッドで Qt::SizeHintRole を利用する
これはカスタムデリゲートと似ていますが、描画そのものではなく、アイテムのサイズヒントの提供に焦点を当てます。
- 使用に適したケース
- シンプルなテキストの折り返しと、それに対応する行の高さ調整が必要で、カスタム描画は不要な場合。
- モデル層でアイテムのサイズ情報を一元的に管理したい場合。
- 欠点
- 描画自体はデフォルトのデリゲートに依存するため、
QTextDocument
を使ったリッチテキスト描画や、複雑な描画は行えません。基本的なテキストの折り返しはQt::TextWordWrap
フラグを使えば可能かもしれませんが、行の高さの計算が正確に行われる必要があります。 - ビューが再サイズされた際に、モデルの
dataChanged()
シグナルを発行してビューを更新する必要がある場合があり、実装が複雑になることがあります。
- 描画自体はデフォルトのデリゲートに依存するため、
- 利点
- モデルの責務(データの提供)とビューの責務(描画)をより明確に分離できます。
- デリゲートの
sizeHint()
メソッドに似たロジックを再利用できます。
- 方法
- カスタムモデル(
QAbstractItemModel
またはその派生クラス)を作成します。 data(const QModelIndex &index, int role) const
メソッドをオーバーライドし、role
がQt::SizeHintRole
の場合に、QFontMetrics
やQTextDocument
を使用してテキストの高さ(および幅)を計算してQSize
を返します。QTreeView::setUniformRowHeights(false)
を設定します。
- カスタムモデル(