【Qtプログラミング】visualRect() のエラー解決とトラブルシューティング
2025-05-16
もう少し詳しく説明します。
-
visualRect(): この関数は、引数として渡されたQModelIndexが示すアイテムが、現在のQTreeViewの表示上で占めているピクセル単位の長方形の領域を返します。この長方形は、ビューポート（QTreeViewのスクロール可能な表示領域）の座標系で表されます。 -
QModelIndex: これは、QAbstractItemModel（またはその派生クラス）によって提供されるデータモデル内の特定のアイテムの位置を示すための、一時的なインデックスです。データ自体ではなく、データへの参照を提供します。 -
QTreeView: これはQtのウィジェットの一つで、階層的なデータをツリー構造で表示するために使われます。ファイルシステムのエクスプローラーのような表示をイメージするとわかりやすいでしょう。
visualRect()の主な用途
無効な QRect が返される (rect.isValid() == false)
これは最も一般的な問題です。visualRect() は、指定された QModelIndex が示すアイテムが現在ビューポート内に表示されていない場合に、無効な QRect を返します。
原因
- 無効な QModelIndex を渡している
渡されたQModelIndex自体が有効でない場合（例: 存在しない行/列を指定している、モデルにセットされていないインデックスを使用しているなど）。 - モデルがリセット中
beginResetModel()とendResetModel()の間など、モデルがデータのリセット処理を行っている最中は、ビューが一時的にデータを表示しない状態になるため、無効な矩形が返されることがあります。 - アイテムがスクロールアウトしている
ビューポートの範囲外にスクロールしてしまっている場合。 - アイテムが折りたたまれている
親アイテムが折りたたまれていて、目的のアイテムが非表示になっている場合。
トラブルシューティング
- QModelIndexの有効性を確認する
index.isValid()で渡す前にQModelIndexが有効であることを確認します。 - モデルのリセット期間を避ける
モデルのデータを大幅に変更する際は、beginResetModel()とendResetModel()の間でvisualRect()を呼び出すのを避けるか、その期間は結果が無効になることを考慮してください。 - アイテムの可視性を確認し、必要に応じてスクロールする
アイテムを操作する前に、QTreeView::isExpanded()で親が展開されているか確認し、必要に応じてQTreeView::expand()やQTreeView::scrollTo()を使用してアイテムがビューポートに表示されるようにします。scrollTo(index, QAbstractItemView::EnsureVisible)は、アイテムがビューポート内に確実に表示されるようにスクロールします。
- isValid()でチェックする
visualRect()の戻り値を使用する前に、必ずrect.isValid()で有効性をチェックしてください。無効な矩形に対して座標計算などを行うと、間違った結果やクラッシュにつながる可能性があります。QRect rect = treeView->visualRect(index); if (rect.isValid()) { // 有効な矩形なので、処理を続ける qDebug() << "Item rect: " << rect; } else { // アイテムは表示されていない qDebug() << "Item is not visible or index is invalid."; }
予期しない位置やサイズの矩形が返される
返される QRect が、期待するアイテムの位置やサイズと異なる場合があります。
原因
- ヘッダー
ヘッダーの高さが考慮されていない場合、特にQTreeViewの上端を基準にした描画を行う際にオフセットが発生することがあります。 - ビューポートのスクロール位置
visualRect()はビューポート座標を返します。スクロールバーの位置が変わると、同じアイテムでも返される矩形のY座標が変わります。 - 列の幅
列の幅が動的に変更された場合や、stretchLastSectionの設定によっては、アイテムの幅が予想と異なることがあります。 - インデント
QTreeViewは階層構造を表現するためにインデントを使用します。このインデントは、アイテムの矩形のX座標に影響を与えます。特に、インデント値や、アイテムが持つ子要素の数、親アイテムの階層深度によって、X座標が変わります。
トラブルシューティング
- columnWidth() や setColumnWidth() を確認する
列の幅がどのように設定されているか確認します。 - indentation プロパティを確認する
QTreeView::indentation()の値が期待通りか確認します。 - スクロール位置を考慮する
visualRect()の結果はビューポート座標なので、ウィジェット全体に対する相対座標が必要な場合は、viewport()の位置とサイズを考慮に入れる必要があります。 - デバッグ描画
paintEventなどで、visualRect()で取得した矩形を実際に描画してみることで、問題の原因を視覚的に特定できます。void MyTreeView::paintEvent(QPaintEvent *event) { QTreeView::paintEvent(event); // デフォルトの描画 QPainter painter(viewport()); // デバッグ用の描画 QModelIndex someIndex = model()->index(0, 0); // 例として最初のアイテム QRect rect = visualRect(someIndex); if (rect.isValid()) { painter.setPen(Qt::red); painter.drawRect(rect); qDebug() << "Drawing debug rect for " << someIndex << ": " << rect; } }
visualRect() が常に同じ QRect を返す（特に動的なビューで）
ビューやモデルの更新後も visualRect() が古い、または静的な値を返し続ける。
原因
- 誤ったインデックス
常に同じインデックスを使用している、またはインデックスが正しく更新されていない。 - 非同期処理
複数のスレッドでモデルを操作している場合、ビューの更新が遅れることがあります。 - ビューの更新不足
モデルのデータが変更されても、ビューがその変更を認識して再描画されていない場合。
トラブルシューティング
- イベントループの処理
長時間の処理中にvisualRect()を呼び出している場合、イベントループがブロックされ、ビューの更新が停止している可能性があります。QCoreApplication::processEvents()を呼び出して、イベントを一時的に処理することを検討しますが、これは慎重に使用する必要があります。 - viewport()->update() または update() の呼び出し
モデルの変更がビューに反映されるまでに時間がかかる場合や、明示的な再描画が必要な場合は、treeView->viewport()->update()またはtreeView->update()を呼び出して、ビューの再描画を強制します。 - モデルシグナルの確認
モデルのデータ変更後にdataChanged(),rowsInserted(),rowsRemoved(),modelReset()などの適切なシグナルが発信されていることを確認します。これらのシグナルはビューを自動的に更新します。
QAbstractItemView などの親クラスの挙動
QTreeView は QAbstractItemView から派生しており、その挙動の一部は親クラスによって定義されます。
原因
QAbstractItemViewの共通の振る舞いがvisualRect()の結果に影響を与えることがあります。
トラブルシューティング
- Qtのドキュメントで
QAbstractItemViewの関連する関数（例:indexAt(),visualRegion()）を確認し、QTreeViewの挙動をより深く理解します。
- Qtのソースコードを参照する
究極的には、Qtのソースコード（qtreeview.cppやqabstractitemview.cpp）を読んで、visualRect()がどのように計算されているかを理解することが、深いレベルでのデバッグに役立ちます。 - シンプルなテストケースを作成する
複雑なアプリケーションの一部で問題が発生している場合、その部分だけを切り出して、最小限のコードで問題を再現できるテストケースを作成します。これにより、原因の特定が容易になります。 - Qtのデバッグ出力を使用する
qDebug()を多用して、QModelIndexの情報（row(),column(),parent().row()など）とvisualRect()の結果を追跡します。
アイテムの中心にツールチップを表示する
アイテムが画面上に表示されている場合、その中心座標を取得してツールチップを表示する例です。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QDebug>
#include <QToolTip>
#include <QMouseEvent>
#include <QTimer> // ツールチップの表示遅延用
// QTreeViewを継承して、イベントを処理するカスタムクラス
class MyTreeView : public QTreeView
{
public:
MyTreeView(QWidget *parent = nullptr) : QTreeView(parent) {}
protected:
void mouseMoveEvent(QMouseEvent *event) override
{
QModelIndex index = indexAt(event->pos()); // マウスカーソル位置のインデックスを取得
if (index.isValid()) {
// visualRect() を使用して、アイテムの表示領域を取得
QRect rect = visualRect(index);
if (rect.isValid()) {
// アイテムがビューポート内に表示されている場合
QString tooltipText = model()->data(index, Qt::DisplayRole).toString();
// アイテムの中心にツールチップを表示
QPoint globalPos = viewport()->mapToGlobal(rect.center());
QToolTip::showText(globalPos, tooltipText, this);
} else {
// アイテムがビューポート外にあるか、無効なインデックスの場合、ツールチップを非表示にする
QToolTip::hideText();
}
} else {
// 有効なアイテムがない場合、ツールチップを非表示にする
QToolTip::hideText();
}
QTreeView::mouseMoveEvent(event); // 親クラスのmouseMoveEventも呼び出す
}
void leaveEvent(QEvent *event) override
{
// マウスがTreeViewから離れたらツールチップを非表示にする
QToolTip::hideText();
QTreeView::leaveEvent(event);
}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QStandardItemModel model;
QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
// サンプルのデータを追加
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("Parent Item %1").arg(i + 1));
parentItem->appendRow(item);
for (int j = 0; j < 3; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child Item %1-%2").arg(i + 1).arg(j + 1));
item->appendRow(childItem);
}
}
MyTreeView treeView;
treeView.setModel(&model);
treeView.setWindowTitle("visualRect() Example: Tooltip");
treeView.setFixedSize(400, 300);
treeView.show();
// すべてのアイテムを展開し、ツールチップを見やすくする
treeView.expandAll();
return a.exec();
}
解説
leaveEventでマウスがビューから離れたときにツールチップを非表示にします。viewport()->mapToGlobal(rect.center())を使って、アイテムの中心座標をスクリーン全体の座標に変換し、QToolTip::showText()でツールチップを表示します。rect.isValid()で矩形が有効かどうかを確認します。スクロールアウトしているアイテムや折りたたまれているアイテムの場合、isValid()はfalseを返します。visualRect(index)を呼び出して、そのアイテムの表示領域（QRect）を取得します。indexAt(event->pos())で、マウスカーソルの現在の位置にあるアイテムのQModelIndexを取得します。MyTreeViewクラスを定義し、mouseMoveEventをオーバーライドしています。
特定のアイテムがビューポートに表示されているか確認し、スクロールする
特定のアイテムが現在画面に表示されているか確認し、表示されていなければ表示されるようにスクロールする例です。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
#include <QMessageBox>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QStandardItemModel model;
QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
// 大量のデータを追加してスクロール可能にする
for (int i = 0; i < 50; ++i) {
QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("Parent Item %1").arg(i + 1));
parentItem->appendRow(item);
for (int j = 0; j < 5; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child Item %1-%2").arg(i + 1).arg(j + 1));
item->appendRow(childItem);
}
}
QTreeView treeView;
treeView.setModel(&model);
treeView.setWindowTitle("visualRect() Example: Scroll & Check");
treeView.setFixedSize(400, 300);
treeView.expandAll(); // すべて展開
// 特定のインデックス（例: 20番目の親アイテムの最初の子供）
QModelIndex targetIndex = model.index(19, 0, model.index(19, 0)); // 20番目の親アイテムのインデックス
if (targetIndex.isValid() && model.hasChildren(targetIndex)) {
targetIndex = model.index(0, 0, targetIndex); // その最初の子供のインデックス
} else {
qWarning() << "Target index could not be set properly.";
return -1;
}
QPushButton *checkButton = new QPushButton("Check Visibility & Scroll to Target");
QObject::connect(checkButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
if (!targetIndex.isValid()) {
QMessageBox::warning(&window, "Error", "Target index is invalid.");
return;
}
// まず、対象のアイテムの親が展開されていることを確認
// targetIndexの親が展開されていないと、visualRectは無効なRectを返す
QModelIndex currentParent = targetIndex.parent();
while (currentParent.isValid()) {
if (!treeView.isExpanded(currentParent)) {
treeView.expand(currentParent);
qDebug() << "Expanded parent:" << model.data(currentParent, Qt::DisplayRole).toString();
}
currentParent = currentParent.parent();
}
QRect rect = treeView.visualRect(targetIndex);
if (rect.isValid()) {
// アイテムがビューポート内に表示されている
QRect viewportRect = treeView.viewport()->rect(); // ビューポートの矩形を取得
if (viewportRect.contains(rect)) {
QMessageBox::information(&window, "Visibility",
QString("Item '%1' is FULLY visible at %2")
.arg(model.data(targetIndex, Qt::DisplayRole).toString())
.arg(rect.toString()));
} else if (viewportRect.intersects(rect)) {
QMessageBox::information(&window, "Visibility",
QString("Item '%1' is PARTIALLY visible at %2")
.arg(model.data(targetIndex, Qt::DisplayRole).toString())
.arg(rect.toString()));
} else {
QMessageBox::warning(&window, "Visibility",
QString("Item '%1' is valid but NOT visible (should not happen if isValid() is true and rect is outside viewport, this case implies a logical error or a very narrow viewport)")
.arg(model.data(targetIndex, Qt::DisplayRole).toString()));
}
} else {
// アイテムがビューポート外にあるか、無効なインデックス
QMessageBox::information(&window, "Visibility",
QString("Item '%1' is NOT visible. Scrolling to it...")
.arg(model.data(targetIndex, Qt::DisplayRole).toString()));
// アイテムがビューポートに表示されるようにスクロール
treeView.scrollTo(targetIndex, QAbstractItemView::EnsureVisible);
// スクロール後にもう一度確認
rect = treeView.visualRect(targetIndex);
if (rect.isValid()) {
QMessageBox::information(&window, "Visibility",
QString("Item '%1' is now visible at %2 after scrolling.")
.arg(model.data(targetIndex, Qt::DisplayRole).toString())
.arg(rect.toString()));
} else {
QMessageBox::critical(&window, "Error", "Failed to make item visible after scrolling.");
}
}
});
layout->addWidget(&treeView);
layout->addWidget(checkButton);
window.setLayout(layout);
window.resize(450, 400);
window.show();
return a.exec();
}
解説
- スクロール後に再度
visualRect()を呼び出し、アイテムが本当に表示されたかを確認しています。 - アイテムが有効な矩形を返さない（つまり表示されていない）場合、
treeView.scrollTo(targetIndex, QAbstractItemView::EnsureVisible)を呼び出して、対象のアイテムがビューポート内に確実に見えるようにスクロールさせます。 treeView.viewport()->rect()でビューポート自身の表示領域を取得し、rect.contains()やrect.intersects()で、アイテムがビューポート内に完全に収まっているか、部分的に交差しているかを確認します。rect.isValid()で矩形が有効か確認します。visualRect(targetIndex)で対象アイテムの矩形を取得します。- ボタンがクリックされると、まず
targetIndexの親アイテムがすべて展開されているかを確認し、展開されていなければexpand()を呼び出しています。これが重要で、親が折りたたまれていると子アイテムは表示されないため、visualRect()は無効な矩形を返します。 targetIndexという特定のアイテムを定義しています。- 大量のデータを追加して、スクロールが必要な状況を作り出しています。
アイテムの矩形に基づいて、その上に何か追加の要素を描画する例です。これは、paintEvent をオーバーライドして行います。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QPainter>
#include <QDebug>
#include <QPen>
class CustomPaintTreeView : public QTreeView
{
public:
CustomPaintTreeView(QWidget *parent = nullptr) : QTreeView(parent) {}
protected:
void paintEvent(QPaintEvent *event) override
{
QTreeView::paintEvent(event); // まずデフォルトのTreeView描画を行う
QPainter painter(viewport());
painter.setRenderHint(QPainter::Antialiasing);
// 例: 特定のアイテム（例えば、モデルの最初の子供）に赤い枠線を描画
QModelIndex targetIndex;
if (model() && model()->hasChildren(model()->invisibleRootItem())) {
QModelIndex root = model()->invisibleRootItem()->index();
if (model()->hasChildren(root)) {
targetIndex = model()->index(0, 0, root); // 最初の親アイテム
if (model()->hasChildren(targetIndex)) {
targetIndex = model()->index(0, 0, targetIndex); // その最初の子供
}
}
}
if (targetIndex.isValid()) {
QRect rect = visualRect(targetIndex);
if (rect.isValid()) {
// 有効な矩形が取得できた場合のみ描画
painter.setPen(QPen(Qt::red, 2)); // 赤い太いペン
painter.drawRect(rect.adjusted(1, 1, -1, -1)); // 矩形の内側に少しずらして描画
// さらに、矩形の中心にテキストを描画
painter.setPen(Qt::blue);
painter.setFont(QFont("Arial", 8, QFont::Bold));
painter.drawText(rect, Qt::AlignCenter, "OVERLAY");
} else {
qDebug() << "Target item not visible, cannot draw overlay.";
}
}
}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QStandardItemModel model;
QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("Parent Item %1").arg(i + 1));
parentItem->appendRow(item);
for (int j = 0; j < 3; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child Item %1-%2").arg(i + 1).arg(j + 1));
item->appendRow(childItem);
}
}
CustomPaintTreeView treeView;
treeView.setModel(&model);
treeView.setWindowTitle("visualRect() Example: Custom Overlay");
treeView.setFixedSize(400, 300);
treeView.expandAll();
treeView.show();
return a.exec();
}
rect.isValid()で矩形が有効であれば、その矩形を使用して赤い枠線と "OVERLAY" テキストを描画します。adjusted()を使って矩形を少し縮小し、デフォルトの描画と重なりすぎないようにしています。targetIndexで指定されたアイテムのvisualRect()を取得します。QPainterをviewport()で初期化することで、ツリービューの表示領域（スクロール可能な部分）に描画できます。QTreeView::paintEvent(event)を最初に呼び出すことで、デフォルトのツリービューの描画が行われます。CustomPaintTreeViewクラスを定義し、paintEventをオーバーライドします。
visualRect() はビューポート上の実際の描画領域を返すため、スクロール位置や展開状態、列幅など、ビューの現在の状態を考慮した正確な情報を提供します。したがって、アイテムの実際の表示位置が必要な場合は、まず visualRect() の使用を検討すべきです。
しかし、以下のようなケースでは、別の方法が役立つことがあります。
QItemDelegate を利用した描画
目的
アイテムの見た目をカスタマイズしたいが、visualRect() の計算結果に依存せずに、Qtのモデル/ビューフレームワークに沿った形で描画したい場合。
説明
QTreeView のアイテムの描画は、内部的には QItemDelegate によって行われます。カスタム描画が必要な場合、通常は QStyledItemDelegate を継承したカスタムデリゲートを作成し、paint() メソッドをオーバーライドします。
paint() メソッドには、QPainter、QStyleOptionViewItem、QModelIndex が引数として渡されます。
- この
rectは、visualRect()が返す矩形と非常に似ており、描画のコンテキストにおいてはほぼ同等と見なせます。 QStyleOptionViewItemには、描画しようとしているアイテムに関する様々な情報（アイテムのスタイル、状態、フォント、色など）が含まれており、その中にrect(アイテムの描画領域) も含まれています。
メリット
- アイテムの状態（選択、ホバーなど）に応じて描画を調整しやすいです。
- Qtの描画パイプラインに統合されているため、効率的で正しい描画が行われます。
デメリット
QTreeViewの外部からアイテムの位置を取得する目的には直接使えません。あくまで、デリゲートのpaint()メソッド内で描画を行うためのものです。
// MyCustomDelegate.h
#include <QStyledItemDelegate>
#include <QPainter>
class MyCustomDelegate : public QStyledItemDelegate
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyCustomDelegate(QObject *parent = nullptr) : QStyledItemDelegate(parent) {}
void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override
{
// デフォルトの描画を行う
QStyledItemDelegate::paint(painter, option, index);
// option.rect は、このアイテムの描画領域（visualRectに相当）
// ここにカスタム描画を追加する
if (index.data(Qt::DisplayRole).toString().contains("Important")) {
painter->save();
painter->setPen(QPen(Qt::green, 3));
painter->drawRect(option.rect.adjusted(1, 1, -1, -1)); // 少し内側に枠を描画
painter->restore();
}
}
};
// 使用方法 (メイン関数など)
// treeView->setItemDelegate(new MyCustomDelegate(treeView));