【Qt入門】QTreeViewのtimerEvent():知っておくべき内部動作と安全なプログラミング
QTreeView::timerEvent()
は、QtのウィジェットであるQTreeView
クラスの保護された仮想関数です。これは、Qtのオブジェクトがタイマーイベントを受け取ったときに自動的に呼び出される関数です。
timerEvent
とは何か?
まず、Qtにおける「タイマーイベント」と「イベントハンドリング」の基本的な概念を理解することが重要です。
- タイマー
プログラム内で一定時間ごとに特定の処理を実行したい場合、Qtのタイマー機能を使用します。QTimer
クラスを使うのが一般的ですが、より低レベルな方法としてQObject::startTimer()
関数を使ってタイマーIDを取得し、そのタイマーイベントをtimerEvent()
で処理することもできます。 - QObjectとイベントシステム
QtのほとんどのクラスはQObject
から派生しており、Qtの強力なイベントシステムを利用できます。イベントは、ユーザーの入力(マウス、キーボード)、システムイベント(タイマー、ネットワーク)、カスタムイベントなど、様々な出来事を表します。
QTreeView::timerEvent()
の役割
QTreeView
は、ツリー構造のデータを表示するためのウィジェットです。このクラスが独自にtimerEvent()
をオーバーライドしているのは、内部的な処理のためにタイマーイベントを利用しているためです。
具体的には、QTreeView::timerEvent()
は以下のような目的で使われる可能性があります(実装の詳細によって異なる場合がありますが、一般的なパターンです):
- アニメーションの制御
QTreeView
がアニメーション(例えば、ノードの展開/折りたたみ時のアニメーション)をサポートしている場合、そのアニメーションの各フレームを更新するためにタイマーが使用されることがあります。timerEvent()
は、一定の間隔でアニメーションの状態を更新し、ビューを再描画するトリガーとなります。 - 遅延処理
パフォーマンスの最適化や、ユーザー操作に対するスムーズな応答を確保するために、特定の処理をすぐに行わず、少し遅延させて実行したい場合があります。例えば、ドラッグ&ドロップ操作中に特定のノードの上にカーソルがしばらく留まったときに自動的に展開する機能(autoExpandDelay
プロパティに関連)などは、内部的にタイマーを使って実現されている可能性があります。 - UIの更新
大量のデータを扱う場合や、複雑な描画を伴う場合、QTreeView
が内部的にUIの更新を効率的に行うためにタイマーを利用することがあります。例えば、スクロールや項目の変更後に、描画範囲を最適化するために非同期的に更新処理をスケジュールするなどが考えられます。
通常、アプリケーション開発者がQTreeView::timerEvent()
を直接オーバーライドしたり、呼び出すことはありません。
QTreeView
の内部的な動作に深く関わる部分であり、誤った方法で変更すると、QTreeView
の表示やパフォーマンスに予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。
もし自分で特定のタイミングでQTreeView
の表示を更新したり、カスタムアニメーションを実装したい場合は、通常は以下のようなQtの標準的な方法を使用します。
QTreeView
が提供する公開されたAPI(例:expand()
、collapse()
、updateGeometries()
など)を利用する。- モデルのデータ変更通知(シグナル)を監視し、それに応じてビューを更新する。
QTimer
クラスを使用してカスタムなタイマーを設定し、そのtimeout()
シグナルをスロットに接続して処理を実行する。
前述の通り、QTreeView::timerEvent()
はQTreeView
の内部的な処理のために使用される保護された仮想関数であり、通常、開発者が直接オーバーライドしたり、利用することは稀です。 したがって、この関数自体が直接的なエラーの原因となることはほとんどありません。
しかし、間接的にQTreeView
のタイマーイベントに関連する動作で問題が発生することはあります。ここでは、そのような一般的なシナリオとトラブルシューティングについて説明します。
QTreeViewの内部アニメーションや自動展開が期待通りに動作しない
QTreeView
には、animated
(アニメーションの有効/無効)やautoExpandDelay
(ドラッグ&ドロップ時の自動展開遅延)といったプロパティがあります。これらは内部的にタイマーイベントを使用して実現されています。
考えられる原因とトラブルシューティング
- イベントループがブロックされている
- 原因
メインスレッドで時間のかかる処理を実行しているため、Qtのイベントループがブロックされ、タイマーイベントが処理されない。 - トラブルシューティング
時間のかかる処理は別スレッドに移動させるか、QApplication::processEvents()
を定期的に呼び出してイベント処理を強制します(ただし、processEvents()
は乱用すると別の問題を引き起こす可能性があるため注意が必要です)。
- 原因
- 自動展開遅延が設定されていないか、不適切
- 原因
QTreeView::setAutoExpandDelay()
が呼び出されていないか、-1
(無効)に設定されている。または、設定された値が短すぎるか長すぎる。 - トラブルシューティング
treeView->setAutoExpandDelay(500);
のように、適切なミリ秒単位の遅延時間を設定してみてください。
- 原因
- アニメーションが無効になっている
- 原因
QTreeView::setAnimated(false)
が呼び出されているか、デフォルトで無効になっている(Qtのバージョンや環境によって異なる場合がある)。 - トラブルシューティング
treeView->setAnimated(true);
を呼び出してアニメーションを有効にしてみてください。
- 原因
QTreeViewの表示更新が遅延する、または行われない
QTreeView
が内部的にタイマーを使って表示更新をスケジュールしている場合、その更新が遅れることがあります。
考えられる原因とトラブルシューティング
- 描画イベントの抑制
- 原因
何らかの理由でQTreeView
またはその親ウィジェットの描画イベントが抑制されている。 - トラブルシューティング
widget->setAttribute(Qt::WA_NoSystemBackground)
やwidget->setPalette(Qt::NoBrush)
など、カスタム描画を最適化しようとして意図せず描画を阻害している設定がないか確認します。
- 原因
- モデルのデータ変更通知が適切でない
- 原因
QAbstractItemModel
を継承したカスタムモデルを使用している場合、データの変更があった際にdataChanged()
などの適切なシグナルを発行していない。QTreeView
はこれらのシグナルを受け取って表示を更新します。 - トラブルシューティング
モデル内でデータが変更されたら、必ずdataChanged()
、rowsInserted()
、rowsRemoved()
、layoutChanged()
などの適切なシグナルを発行しているか確認してください。
- 原因
タイマーイベントとは直接関係ないが、誤って関連付けられる可能性のある問題
timerEvent()
自体を直接操作することは稀であるため、もしタイマー関連で問題が起きていると感じる場合、それは実はQTimer
クラスの使い方や、イベントループの理解不足が原因である可能性が高いです。
- 独自のtimerEvent()オーバーライドの問題(稀なケース)
- 原因
もし、何らかの理由であなたがQTreeView
を継承し、protected
関数であるtimerEvent()
をオーバーライドしてしまった場合、そのオーバーライドの実装にバグがある可能性があります。例えば、基底クラスのtimerEvent()
を呼び出し忘れている、無限ループに陥っている、重い処理を実行しているなど。 - トラブルシューティング
オーバーライドしている場合は、まずそのオーバーライドを削除して問題が解決するか確認します。もしオーバーライドが必要な場合は、QTreeView::timerEvent(event);
を呼び出すこと、そして自身の処理が軽量で高速であることを確認してください。
- 原因
- QTimerの誤用
- 原因
QTimer
のstart()
を呼び忘れている、timeout()
シグナルとスロットの接続が正しくない、QTimer
オブジェクトがスコープ外に出て破棄されてしまう(特にスタック上のオブジェクトとして作成した場合)。 - トラブルシューティング
QTimer *timer = new QTimer(this);
のように、適切な親オブジェクトを指定してヒープに作成し、connect(timer, &QTimer::timeout, this, &MyClass::mySlot);
のように正しく接続されていることを確認します。
- 原因
- 最小限の再現コード
問題を切り分けるために、問題が再現する最小限のコードを作成し、そのコードをレビューしたり、他の開発者に相談したりします。 - Qtのドキュメント参照
QTreeView
のプロパティや、関連するクラス(QAbstractItemModel
、QTimer
など)のドキュメントを再確認し、正しい使用方法を理解します。 - ログ出力
qDebug()
を使って、特定の処理が実行されているか、タイマーイベントがいつ発生しているかなどをログに出力し、動作のフローを追跡します。 - デバッガの使用
プログラムをデバッガで実行し、問題が発生している箇所や、タイマーイベントが期待通りに発行されているか(またはブロックされていないか)を確認します。
繰り返しになりますが、QTreeView::timerEvent()
はQTreeView
クラスの保護された仮想関数であり、QtフレームワークがQTreeView
の内部的な描画やアニメーション、自動展開などのために利用するものです。通常、アプリケーション開発者がこの関数を直接オーバーライドしたり、利用することは推奨されません。
しかし、もし何らかの理由でQTreeView
を継承し、その内部動作をカスタマイズする必要がある場合に、timerEvent
をオーバーライドするという選択肢がありえます。ただし、その場合でも非常に注意が必要です。
QTreeView::timerEvent()
をオーバーライドする例 (推奨されないが、概念理解のため)
以下の例は、QTreeView
を継承し、そのtimerEvent()
をオーバーライドする場合の基本的な構造を示します。この例は、あくまでtimerEvent
の概念的な利用方法を示すものであり、実際のアプリケーションでこのようなカスタマイズが必要になることは稀であり、多くの場合、より高レベルなQtのAPI(QTimer
の使用やQTreeView
のプロパティ設定など)で十分対応可能です。
MyTreeView.h
#ifndef MYTREEVIEW_H
#define MYTREEVIEW_H
#include <QTreeView>
#include <QTimerEvent>
#include <QDebug> // デバッグ出力用
class MyTreeView : public QTreeView
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyTreeView(QWidget *parent = nullptr);
protected:
// QObject::timerEvent() をオーバーライド
// QTreeView::timerEvent() は QObject::timerEvent() をオーバーライドしているため、
// QTreeView の継承クラスで timerEvent をオーバーライドするとこれが呼び出される
void timerEvent(QTimerEvent *event) override;
private:
// カスタムタイマーID
int myCustomTimerId;
int animationStep; // アニメーションのステップを追跡
};
#endif // MYTREEVIEW_H
MyTreeView.cpp
#include "MyTreeView.h"
#include <QApplication> // QApplication::instance() のために必要
MyTreeView::MyTreeView(QWidget *parent)
: QTreeView(parent),
animationStep(0)
{
// カスタムタイマーを開始(例えば50ミリ秒ごとにイベントを発生させる)
// QObject::startTimer() を呼び出すと、タイマーIDが返される
// このタイマーIDは、timerEvent でどのタイマーイベントかを識別するために使用される
myCustomTimerId = startTimer(50); // 50ミリ秒ごとにtimerEventが呼び出される
qDebug() << "MyTreeView: Custom timer started with ID:" << myCustomTimerId;
// QTreeViewの組み込みアニメーションを有効にする例(timerEventとは直接関係ないが)
setAnimated(true);
// 自動展開遅延を設定する例
setAutoExpandDelay(500); // 0.5秒後に自動展開
}
void MyTreeView::timerEvent(QTimerEvent *event)
{
// 受け取ったイベントのタイマーIDを確認
if (event->timerId() == myCustomTimerId) {
// ここにカスタムタイマーイベントで実行したい処理を記述
qDebug() << "MyTreeView: My custom timer event triggered! Step:" << animationStep++;
// 例: 特定のアニメーションステップに達したらタイマーを停止する
if (animationStep > 100) {
killTimer(myCustomTimerId);
qDebug() << "MyTreeView: Custom timer stopped.";
}
// QTreeViewの基底クラスのtimerEventを呼び出すことが非常に重要!
// これを呼び出さないと、QTreeViewの内部的なタイマーイベント処理(アニメーション、自動展開など)が機能しなくなる
QTreeView::timerEvent(event);
} else {
// ここはQTreeView自身が開始した内部タイマーイベントの処理
// 何もしなくても良いが、基底クラスの処理を呼び出すことは必須
QTreeView::timerEvent(event);
}
}
main.cpp (使用例)
#include <QApplication>
#include <QStandardItemModel>
#include <QSplitter>
#include <QTextEdit>
#include "MyTreeView.h"
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// モデルの作成
QStandardItemModel model;
QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("Item %0").arg(i));
parentItem->appendRow(item);
for (int j = 0; j < 3; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child %0-%1").arg(i).arg(j));
item->appendRow(childItem);
}
}
// MyTreeView のインスタンス化
MyTreeView treeView;
treeView.setModel(&model);
treeView.setWindowTitle("My Custom QTreeView with timerEvent");
treeView.resize(400, 300);
treeView.show();
// 複数のウィンドウやレイアウトを使う例
QSplitter *splitter = new QSplitter();
splitter->addWidget(&treeView);
splitter->addWidget(new QTextEdit("このTextEditはビューの隣にあります。\nQTreeViewが内部でどのように動くかを観察してください。"));
splitter->setWindowTitle("QTreeView Example");
splitter->show();
return a.exec();
}
コードの解説
-
QTreeView
を公開継承しています。protected
セクションでvoid timerEvent(QTimerEvent *event) override;
を宣言しています。これは、QObject
から継承される仮想関数をオーバーライドするものです。QTreeView
もこの関数をオーバーライドして内部処理を行っています。- カスタムタイマーID (
myCustomTimerId
) とアニメーションステップ (animationStep
) を保持するためのメンバー変数を追加しています。
-
コンストラクタ MyTreeView::MyTreeView()
startTimer(50);
を呼び出して、50ミリ秒ごとにタイマーイベントが発生するように設定しています。この関数は、新しく開始されたタイマーを一意に識別するためのint
型のタイマーIDを返します。setAnimated(true);
やsetAutoExpandDelay(500);
は、QTreeView
の組み込み機能を有効にするものです。これらも内部的にはタイマーイベントを利用している可能性があります。
-
timerEvent(QTimerEvent *event) のオーバーライド
- この関数は、
startTimer()
で開始したカスタムタイマーだけでなく、QTreeView
自身が内部的に使用しているすべてのタイマーイベントを受け取ります。 event->timerId()
をチェックすることで、どのタイマーがイベントを発生させたかを識別できます。event->timerId() == myCustomTimerId
のブロック内で、カスタムタイマーがトリガーされた場合の処理を記述しています。ここでは、デバッグ出力を出してanimationStep
をインクリメントし、一定回数に達したらkillTimer()
でタイマーを停止しています。- 重要:
QTreeView::timerEvent(event);
の呼び出し- これが最も重要な点です。
timerEvent()
をオーバーライドする場合、必ず基底クラスのtimerEvent()
を呼び出す必要があります。 これを忘れると、QTreeView
の組み込みの機能(アニメーション、自動展開、スクロールなどのスムーズな更新など)が正常に機能しなくなります。基底クラスのtimerEvent
は、QTreeView
のプライベートな状態を更新したり、描画の再スケジュールを行ったりするためです。
- これが最も重要な点です。
- この関数は、
なぜ直接オーバーライドが推奨されないのか?
- デバッグの困難さ
複数のタイマーが同じtimerEvent
内で処理されるため、デバッグが複雑になる可能性があります。 - 責任の分離
QTreeView
は表示を担当するビューであり、内部的なタイマーイベントはビューの描画や最適化に特化しています。アプリケーションのロジックでタイマーが必要な場合は、QTimer
クラスを使って、ビューとは独立した形でタイマーを管理するべきです。 - 内部実装への依存
QTreeView
のtimerEvent
の具体的な実装は、Qtのバージョンや内部的な最適化によって変更される可能性があります。これを直接オーバーライドすると、将来のQtのバージョンで予期せぬ動作や互換性の問題が発生する可能性があります。
ほとんどの場合、QTreeView::timerEvent()
を直接オーバーライドする代わりに、以下の方法を使用するべきです。
-
QTimerクラスの使用
最も一般的で推奨される方法です。QTimer
オブジェクトを作成し、そのtimeout()
シグナルをカスタムスロットに接続します。#include <QTimer> #include <QDebug> #include <QTreeView> // 例としてQTreeViewを仮定 class MyWidget : public QWidget { Q_OBJECT public: MyWidget(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent) { QTimer *timer = new QTimer(this); // MyWidgetを親とする connect(timer, &QTimer::timeout, this, &MyWidget::onTimerTimeout); timer->start(1000); // 1秒ごとにタイムアウト qDebug() << "QTimer started."; } private slots: void onTimerTimeout() { qDebug() << "QTimer timeout!"; // ここにQTreeViewの表示更新やカスタムロジックを記述 // 例えば、QTreeViewの特定の項目をハイライトするなど } };
-
QTreeViewの公開APIとプロパティの利用
setAnimated()
,setAutoExpandDelay()
,expand()
,collapse()
,scrollTo()
などの既存のAPIやプロパティを利用することで、QTreeView
の振る舞いを制御できます。これらはQtが内部でタイマーを適切に処理してくれます。
QTimer クラスの使用 (最も一般的で推奨される方法)
Qtのイベントシステムにおいて、一定時間ごとに処理を実行したい場合に最も標準的で推奨されるのが QTimer
クラスです。
特徴
- スレッドセーフなタイマーを扱う場合は、
QTimer
を適切なスレッドで作成し、そのスレッドのイベントループが実行されていることを確認する必要があります。 - シングルショットタイマー(一度だけ実行)とリピートタイマー(繰り返し実行)の両方に対応しています。
- 使い方が非常にシンプルで直感的です。
QObject
を継承しており、シグナル/スロットメカニズムと統合されています。
使用例
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QTimer>
#include <QDebug>
class MyWindow : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyWindow(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
// QTreeView のセットアップ
treeView = new QTreeView(this);
model = new QStandardItemModel(this);
treeView->setModel(model);
// ダミーデータの追加
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QStandardItem *parentItem = new QStandardItem(QString("Parent %1").arg(i + 1));
model->appendRow(parentItem);
for (int j = 0; j < 3; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child %1-%2").arg(i + 1).arg(j + 1));
parentItem->appendRow(childItem);
}
}
// QTreeView のアニメーション設定
treeView->setAnimated(true); // QTreeView 組み込みのアニメーションを有効化
// レイアウト
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(treeView);
// QTimer のセットアップ
// ヒープに作成し、MyWindow を親にすることで MyWindow が破棄される際に自動的に解放される
timer = new QTimer(this);
// timeout() シグナルを onTimerTimeout() スロットに接続
connect(timer, &QTimer::timeout, this, &MyWindow::onTimerTimeout);
timer->start(1000); // 1000ミリ秒(1秒)ごとに onTimerTimeout() を呼び出す
qDebug() << "QTimer started to update view every 1 second.";
}
private slots:
void onTimerTimeout()
{
static int count = 0;
qDebug() << "Timer timeout! Count:" << ++count;
// 例: QTreeView の特定項目を展開/折りたたむ
// または、モデルのデータを変更してビューを更新するなど
if (count % 2 == 1) {
// 奇数回目: 最初の親項目を展開
treeView->expand(model->index(0, 0));
} else {
// 偶数回目: 最初の親項目を折りたたむ
treeView->collapse(model->index(0, 0));
}
// 必要に応じて、ビューの表示を強制的に更新
// treeView->viewport()->update();
}
private:
QTreeView *treeView;
QStandardItemModel *model;
QTimer *timer;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyWindow window;
window.resize(400, 300);
window.setWindowTitle("QTimer with QTreeView Example");
window.show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // moc ファイルのインクルード(Qt Creator や CMake で自動生成される)
解説
onTimerTimeout()
スロット内で、タイマーがタイムアウトするたびに実行したい処理を記述します。ここでは、QTreeView
の特定の項目を交互に展開/折りたたむ例を示しています。timer->start(1000);
:タイマーを1000ミリ秒(1秒)間隔で開始します。connect(timer, &QTimer::timeout, this, &MyWindow::onTimerTimeout);
:タイマーが設定時間経過後に発行するtimeout()
シグナルを、MyWindow
クラスのonTimerTimeout()
スロットに接続しています。QTimer *timer = new QTimer(this);
:QTimer
オブジェクトをヒープに作成し、MyWindow
を親に設定しています。これにより、MyWindow
が破棄されるときにtimer
も自動的に解放されます。
QTreeView の公開APIとプロパティの利用
QTreeView
は、内部的にタイマーイベントを使用するいくつかの便利なプロパティや関数を提供しています。これらを設定するだけで、QTreeView::timerEvent()
を意識することなく、望む振る舞いを実現できます。
主な機能
- スクロールアニメーション
QTreeView
のスクロールバーを操作した際に、スムーズにスクロールするアニメーションも内部的なタイマー処理によって実現されています。これは通常、デフォルトで有効になっています。
- 自動展開遅延 (autoExpandDelay プロパティ)
treeView->setAutoExpandDelay(500);
(ミリ秒単位)- ドラッグ&ドロップ操作中に、カーソルが特定の項目上でしばらく留まると、その項目が自動的に展開されるようになります。これも内部的にタイマーを利用しています。
-1
に設定すると無効になります。
- アニメーション (animated プロパティ)
treeView->setAnimated(true);
- 項目が展開・折りたたみされる際に、スムーズなアニメーションが表示されるようになります。これは
QTreeView
が内部でタイマーを利用して実現しています。
使用例
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QVBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QTreeView treeView;
QStandardItemModel model;
treeView.setModel(&model);
// ダミーデータの追加
QStandardItem *rootItem = model.invisibleRootItem();
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QStandardItem *parentItem = new QStandardItem(QString("Parent Item %1").arg(i + 1));
rootItem->appendRow(parentItem);
for (int j = 0; j < 3; ++j) {
QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("Child Item %1-%2").arg(i + 1).arg(j + 1));
parentItem->appendRow(childItem);
}
}
// QTreeView のプロパティを設定するだけでアニメーションや自動展開が有効になる
treeView.setAnimated(true); // アニメーションを有効化
treeView.setAutoExpandDelay(700); // ドラッグ時に0.7秒で自動展開
QVBoxLayout layout(&treeView); // treeView自体にレイアウトを設定(必要に応じて)
treeView.resize(400, 300);
treeView.setWindowTitle("QTreeView Properties Example");
treeView.show();
return a.exec();
}
解説
この例では、QTreeView
の setAnimated()
と setAutoExpandDelay()
メソッドを呼び出すだけで、内部的にタイマーイベントが利用され、指定されたアニメーションや自動展開機能が有効になります。開発者は timerEvent()
を直接触る必要はありません。
QTreeView
は、その表示するデータモデル (QAbstractItemModel
の派生クラス) からのシグナルを受け取って自身の表示を更新します。データが変更された場合、適切なシグナルを発行することで、QTreeView
が自動的に再描画されます。
特徴
- タイマーイベントを直接扱うのではなく、データの変更という論理的なイベントに基づいてビューを更新します。
- モデルとビューの設計パターンに基づいた、Qtの標準的なデータ表示メカニズムです。
使用例
これは具体的なコード例というよりは概念的な説明になります。
-
カスタムモデルの作成
QAbstractItemModel
またはQStandardItemModel
を使用して、QTreeView
に表示するデータモデルを作成します。 -
データ変更時のシグナル発行
モデル内のデータが変更された場合、適切なシグナル(例:dataChanged(const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QVector<int> &roles = QVector<int>())
、rowsInserted()
、layoutChanged()
など)を発行します。 -
QTreeView の自動更新
QTreeView
はこれらのシグナルを自動的に監視しており、シグナルを受け取ると自身の描画を更新します。特別なタイマー処理は不要です。
これは、QTreeView
の最も基本的な使用方法であり、タイマーイベントとは異なるレイヤーでの「更新」の仕組みです。
void QTreeView::timerEvent()
を直接オーバーライドすることは、Qtの内部実装に依存する低レベルな操作であり、ほとんどのアプリケーション開発者にとっては必要ありません。
代わりに、以下のより安全で効果的な代替手段を推奨します。
- データ変更に応じてビューを更新したい場合
モデルから適切なデータ変更通知シグナルを発行します。QTreeView
はそれに応じて自動的に更新されます。 - QTreeView の組み込み機能(アニメーション、自動展開など)を利用したい場合
QTreeView
が提供するsetAnimated()
,setAutoExpandDelay()
などの公開APIやプロパティを設定します。 - アプリケーションロジックで時間駆動の処理が必要な場合
QTimer
クラスを使用し、そのtimeout()
シグナルを適切なスロットに接続します。