QTreeView::setModel()を使いこなす!モデルの種類とプログラミング例
QtのModel/Viewアーキテクチャでは、データそのもの(モデル)、データを表示する方法(ビュー)、ユーザーがデータを操作する方法(デリゲート)が分離されています。QTreeView
は「ビュー」の一つであり、階層的なデータをツリー形式で表示する役割を担います。
void QTreeView::setModel()
の役割
この関数の主な役割は以下の通りです。
-
モデルとの関連付け:
QTreeView
がどのデータソースからデータを取得して表示するかを決定します。引数として渡されるQAbstractItemModel
の派生クラスのインスタンス(例:QStringListModel
,QStandardItemModel
,QFileSystemModel
など、またはカスタムモデル)が、QTreeView
に表示されるデータの「実体」となります。 -
データの表示:
setModel()
が呼び出されると、QTreeView
は指定されたモデルからデータを取得し、その階層構造に基づいてツリー形式で表示を開始します。モデルが提供する情報(行、列、親子関係、表示データなど)がビューに反映されます。 -
シグナル/スロット接続:
setModel()
内部では、ビュー(QTreeView
)とモデル(QAbstractItemModel
)の間で、データの変更を通知するためのシグナルとスロットの接続が行われます。これにより、モデルのデータが変更された場合(例えば、新しいアイテムが追加された、既存のアイテムが削除された、データが編集されたなど)に、ビューが自動的に更新され、表示が同期されます。 -
既存モデルの解除: もし既に別のモデルが設定されている場合、
setModel()
はまず既存のモデルとの接続を解除し、関連する内部状態をクリアしてから新しいモデルを設定します。これにより、モデルの切り替えがスムーズに行われます。
以下は、QTreeView
にQStandardItemModel
を設定する簡単な例です。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// モデルを作成
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel();
// ルートアイテムを作成
QStandardItem *parentItem = model->invisibleRootItem();
// アイテムを追加
QStandardItem *item1 = new QStandardItem("親アイテム1");
parentItem->appendRow(item1);
QStandardItem *childItem1_1 = new QStandardItem("子アイテム1-1");
item1->appendRow(childItem1_1);
QStandardItem *item2 = new QStandardItem("親アイテム2");
parentItem->appendRow(item2);
// QTreeViewを作成
QTreeView *treeView = new QTreeView();
// QTreeViewにモデルを設定
treeView->setModel(model); // ここで setModel() が呼び出されます
// ウィンドウを表示
treeView->setWindowTitle("QTreeView 例");
treeView->show();
return a.exec();
}
このコードでは、まずQStandardItemModel
を作成し、そこに階層的なデータを追加しています。次に、QTreeView
のインスタンスを作成し、setModel(model)
を呼び出すことで、このモデルをQTreeView
に「紐付け」ています。これにより、QTreeView
はモデル内のデータをツリー形式で表示するようになります。
モデルの初期化忘れ/不適切な初期化
エラー/問題点:
- モデルが空っぽであるか、期待するデータがロードされていない。
- クラッシュ(セグメンテーション違反など)が発生する。
QTreeView
に何も表示されない。
原因:
- 非同期でデータをロードしている場合、データがロードされる前に
setModel()
を呼び出している。 - モデルを生成したが、そのモデルにデータを適切に追加していない。
setModel()
を呼び出す前に、モデルオブジェクト(例:QStandardItemModel
、QFileSystemModel
など)をnew
で生成していない。
トラブルシューティング:
- 同期の問題: 非同期でデータをロードする場合は、データロード完了後に
setModel()
を呼び出すか、モデルにデータがセットされたことを通知するシグナルを使い、ビューを更新するようにします。 - データのロード確認: モデルにデータが正しく追加されているか、またはファイルパスなどが正しく設定されているかを確認します。
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(0, 1, this); // 0行1列のモデル model->appendRow(new QStandardItem("Root Item")); // データが追加されているか treeView->setModel(model);
- モデルのインスタンス生成を確認:
QAbstractItemModel
の派生クラスをnew
で正しくインスタンス化しているか確認してください。// 悪い例: モデルがnewされていない // QStandardItemModel *model; // treeView->setModel(model); // クラッシュの可能性 // 良い例 QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(this); // 親オブジェクトを指定するとメモリ管理が楽 treeView->setModel(model);
モデルのライフサイクル管理の誤り
エラー/問題点:
- 既に解放されたモデルを
setModel()
に渡してしまい、不正なメモリアクセスが発生する。 QTreeView
を閉じた後に、モデルがまだ存在していてメモリリークを起こす。- アプリケーション終了時にクラッシュする(ダブルフリーなど)。
原因:
- モデルを
delete
した後に、そのポインタを再度setModel()
に渡してしまう。 - モデルを
new
したが、親オブジェクトを設定していないため、親オブジェクトが破棄されてもモデルが破棄されない。 - モデルを
new
したが、delete
し忘れている(メモリリーク)。
トラブルシューティング:
- モデルの再設定:
setModel(nullptr)
を呼び出すことで、ビューからモデルを切り離すことができます。これにより、ビューがモデルへの参照を解除します。モデルを削除する前にこれを行うのが安全です。 - 明示的な解放: 親オブジェクトを設定しない場合は、適切なタイミングで
delete
する必要がありますが、これはエラーの元になりやすいので推奨されません。 - 親オブジェクトの設定:
QObject
を継承するクラス(QAbstractItemModel
も含む)は、コンストラクタで親オブジェクトを指定すると、親が破棄されるときに子も自動的に破棄されるため、メモリ管理が楽になります。// 良い例: ウィジェットが親なので、ウィジェットが破棄されるときにモデルも破棄される QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(this); // thisはQTreeViewまたはその親ウィジェット treeView->setModel(model); // あるいは、モデルをQTreeViewの親に設定することもできます // QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(); // treeView->setModel(model); // model->setParent(treeView); // setModel()が内部でやってくれることが多いが、明示的に設定することも可能
モデルの変更通知不足
エラー/問題点:
- 新しい行や列を追加しても表示されない、または削除しても消えない。
- モデルのデータが変更されたのに、
QTreeView
の表示が更新されない。
原因:
- カスタムモデルを作成している場合、これらのシグナルを正しく実装していない。
- モデルのデータが変更された際に、対応するシグナル(例:
dataChanged()
、rowsInserted()
、rowsRemoved()
など)を発行していない。
トラブルシューティング:
- カスタムモデルの場合:
QAbstractItemModel
を継承してカスタムモデルを作成している場合、以下のシグナルをデータ変更時に必ず発行する必要があります。- データ変更時:
dataChanged(const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QVector<int> &roles = QVector<int>())
- 行の追加時:
beginInsertRows(const QModelIndex &parent, int first, int last)
とendInsertRows()
- 行の削除時:
beginRemoveRows(const QModelIndex &parent, int first, int last)
とendRemoveRows()
- 列の追加/削除時も同様に
beginInsertColumns
/endInsertColumns
、beginRemoveColumns
/endRemoveColumns
を使用します。 これらのシグナルをbegin...()
とend...()
で囲むペアで呼び出すことが重要です。
- データ変更時:
- 標準モデルの場合:
QStandardItemModel
などの標準モデルを使用している場合は、通常、これらのシグナルは自動的に発行されます。もし更新されない場合は、データ変更の方法を見直してください。例えば、QStandardItem::setText()
を使った場合は自動更新されますが、直接内部のデータを変更した場合は反映されないことがあります。
QModelIndexの不一致/不正な使用
エラー/問題点:
QModelIndex
が不正な状態になり、クラッシュする。- デリゲートの描画がおかしい。
- クリックや選択が期待通りに動作しない。
原因:
QModelIndex
をキャッシュしているが、モデルの構造が変更された(行が追加/削除された)にもかかわらず、キャッシュされたインデックスを更新していない。QModelIndex
を扱う際に、行、列、親インデックスの計算を間違えている。
トラブルシューティング:
QTreeView
はQModelIndex
を使ってモデルとやり取りします。data()
、index()
、parent()
、rowCount()
、columnCount()
などのモデル関数が正しく実装されていることを確認してください。QModelIndex
は一時的なものであり、モデルの構造が変更されると無効になる可能性があることを理解してください。長期的に保存する必要がある場合は、QPersistentModelIndex
を使用します。
エラー/問題点:
- マルチスレッド環境で、モデルのデータがUIスレッド以外から変更されたときに、
QTreeView
の表示が更新されない、またはクラッシュする。
原因:
- QtのGUI要素(
QTreeView
を含む)やモデルのデータは、UIスレッド(メインスレッド)からのみアクセス・変更するのが原則です。異なるスレッドから直接モデルのデータを変更すると、スレッドセーフティの問題が発生します。
トラブルシューティング:
- モデルのデータ変更をUIスレッドに**キュー(信号とスロット、
QMetaObject::invokeMethod
など)**で送信し、UIスレッドで実際のデータ変更とシグナル発行を行うようにしてください。// 別のスレッドでデータを処理し、UIスレッドに通知する例 // (MyWorkerObjectはQObjectを継承し、適切なシグナルを持つ) QObject::connect(worker, &MyWorkerObject::dataReady, model, &QStandardItemModel::appendRow); // UIスレッドで実行される
ここでは、最も一般的な3つのモデル(QStandardItemModel
、QFileSystemModel
、カスタムモデル)を使った例を挙げます。
QStandardItemModelを使った例
QStandardItemModel
は、単純なツリー構造のデータをプログラム内で構築するのに最もよく使われるモデルです。柔軟性が高く、手動でデータを追加・削除する際に便利です。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem> // QStandardItemを使用するために必要
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// 1. QTreeViewのインスタンスを作成
QTreeView *treeView = new QTreeView();
// 2. QStandardItemModelのインスタンスを作成
// 親オブジェクトとしてtreeViewを指定することで、treeViewが破棄されるときにモデルも自動的に破棄されます
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(treeView);
// 3. モデルにデータを追加
// ルートアイテムは通常見えないため、モデルのinvisibleRootItem()を取得して子を追加します。
// visibleRootItem()という概念もありますが、通常はinvisibleRootItem()から始めます。
QStandardItem *rootItem = model->invisibleRootItem();
// 親アイテム1 (Top-level item)
QStandardItem *parentItem1 = new QStandardItem("フルーツ");
rootItem->appendRow(parentItem1); // ルートに親アイテム1を追加
// 親アイテム1の子アイテム
parentItem1->appendRow(new QStandardItem("リンゴ"));
parentItem1->appendRow(new QStandardItem("バナナ"));
parentItem1->appendRow(new QStandardItem("オレンジ"));
// 親アイテム2 (Top-level item)
QStandardItem *parentItem2 = new QStandardItem("野菜");
rootItem->appendRow(parentItem2); // ルートに親アイテム2を追加
// 親アイテム2の子アイテム
QStandardItem *childItem2_1 = new QStandardItem("根菜");
parentItem2->appendRow(childItem2_1);
// 子アイテム2-1のさらに子アイテム
childItem2_1->appendRow(new QStandardItem("ニンジン"));
childItem2_1->appendRow(new QStandardItem("ダイコン"));
parentItem2->appendRow(new QStandardItem("葉物野菜"));
// 4. QTreeViewにモデルを設定
treeView->setModel(model);
// (オプション) ツリーを全て展開して表示する
treeView->expandAll();
// ウィンドウのタイトルを設定
treeView->setWindowTitle("QStandardItemModelを使ったQTreeView");
treeView->resize(400, 300); // ウィンドウサイズを設定
treeView->show(); // ウィンドウを表示
return a.exec();
}
解説:
QTreeView
オブジェクトを作成します。QStandardItemModel
オブジェクトを作成し、QStandardItem
を使って階層的なデータを構築します。invisibleRootItem()
は、ツリーの最上位の(見えない)ルートノードを表し、そこから子アイテムを追加していきます。treeView->setModel(model);
を呼び出すことで、QTreeView
がこのモデルからデータを取得し、ツリー形式で表示するようになります。
QFileSystemModelを使った例
QFileSystemModel
は、ファイルシステム(ディレクトリやファイル)の構造をモデルとして提供するQt標準のモデルです。エクスプローラのようなファイルツリービューを作成する際に非常に便利です。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QFileSystemModel>
#include <QDir> // QDirを使用するために必要
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// 1. QTreeViewのインスタンスを作成
QTreeView *treeView = new QTreeView();
// 2. QFileSystemModelのインスタンスを作成
QFileSystemModel *model = new QFileSystemModel(treeView);
// (オプション) モデルのフィルタ設定
// ドットファイル(. や ..)や隠しファイルを除外する
model->setFilter(QDir::NoDotAndDotDot | QDir::AllDirs | QDir::Files);
// ファイルシステム内の特定の情報を除外することもできます
// model->setNameFilters(QStringList("*.txt")); // .txtファイルのみ表示
// 3. モデルのルートパスを設定
// ここでは、アプリケーションの実行ディレクトリをルートとします。
// 特定のディレクトリを表示したい場合は、以下のように変更します。
// model->setRootPath("C:/Users/YourUser/Documents"); // Windowsの場合
// model->setRootPath("/home/youruser"); // Linuxの場合
model->setRootPath(QDir::currentPath());
// 4. QTreeViewにモデルを設定
treeView->setModel(model);
// 5. ルートディレクトリをQTreeViewに表示されるように設定
// setRootIndex()を呼び出さないと、何も表示されないか、予期せぬディレクトリが表示されることがあります。
treeView->setRootIndex(model->index(QDir::currentPath()));
// (オプション) 特定の列を非表示にする(例: サイズ、タイプ、最終更新日時など)
treeView->setColumnHidden(1, true); // size
treeView->setColumnHidden(2, true); // type
treeView->setColumnHidden(3, true); // date modified
// (オプション) 最初の列(ファイル名)を自動的にサイズ調整する
treeView->header()->setSectionResizeMode(0, QHeaderView::ResizeToContents);
// ウィンドウのタイトルを設定
treeView->setWindowTitle("QFileSystemModelを使ったQTreeView");
treeView->resize(600, 400); // ウィンドウサイズを設定
treeView->show(); // ウィンドウを表示
return a.exec();
}
解説:
QTreeView
オブジェクトを作成します。QFileSystemModel
オブジェクトを作成します。model->setRootPath()
で、どのディレクトリをツリーの最上位とするかを指定します。treeView->setModel(model);
でモデルを設定します。treeView->setRootIndex(model->index(model->rootPath()));
は非常に重要です。QTreeView
はデフォルトではルートディレクトリを自動的に表示しないため、setModel()
の後に明示的に表示したいルートインデックスを設定する必要があります。
QAbstractItemModel
を継承して独自のデータ構造を持つモデルを作成することもできます。これは、複雑なデータ構造を扱う場合や、特定の動作をモデルに持たせたい場合に必要になります。
以下は、非常にシンプルなカスタムモデルの骨格です。実際に動作させるには、data()
, index()
, parent()
, rowCount()
, columnCount()
などの純粋仮想関数をすべて実装する必要があります。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QAbstractItemModel>
#include <QModelIndex>
#include <QVariant>
#include <QDebug> // デバッグ用
// 簡易的なデータ構造のノード
class TreeNode {
public:
explicit TreeNode(const QString &data, TreeNode *parent = nullptr)
: m_data(data), m_parent(parent) {}
~TreeNode() {
qDeleteAll(m_children);
}
void appendChild(TreeNode *child) {
m_children.append(child);
}
TreeNode *child(int row) {
if (row < 0 || row >= m_children.size())
return nullptr;
return m_children.at(row);
}
int childCount() const {
return m_children.count();
}
QString data() const {
return m_data;
}
int row() const {
if (m_parent)
return m_parent->m_children.indexOf(const_cast<TreeNode*>(this));
return 0;
}
TreeNode *parentItem() {
return m_parent;
}
private:
QString m_data;
TreeNode *m_parent;
QList<TreeNode*> m_children;
};
// カスタムモデルの定義
class MyCustomTreeModel : public QAbstractItemModel
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyCustomTreeModel(QObject *parent = nullptr)
: QAbstractItemModel(parent)
{
// ルートノードの作成 (見えないルート)
m_rootItem = new TreeNode("Root");
setupModelData(); // モデルにデータをセット
}
~MyCustomTreeModel() override {
delete m_rootItem;
}
// 必須実装関数:
QModelIndex index(int row, int column, const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const override {
if (!hasIndex(row, column, parent))
return QModelIndex();
TreeNode *parentItem;
if (!parent.isValid())
parentItem = m_rootItem;
else
parentItem = static_cast<TreeNode*>(parent.internalPointer());
TreeNode *childItem = parentItem->child(row);
if (childItem)
return createIndex(row, column, childItem);
else
return QModelIndex();
}
QModelIndex parent(const QModelIndex &index) const override {
if (!index.isValid())
return QModelIndex();
TreeNode *childItem = static_cast<TreeNode*>(index.internalPointer());
TreeNode *parentItem = childItem->parentItem();
if (parentItem == m_rootItem)
return QModelIndex();
return createIndex(parentItem->row(), 0, parentItem);
}
int rowCount(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const override {
TreeNode *parentItem;
if (parent.column() > 0)
return 0; // 列を持つことは想定しない
if (!parent.isValid())
parentItem = m_rootItem;
else
parentItem = static_cast<TreeNode*>(parent.internalPointer());
return parentItem->childCount();
}
int columnCount(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const override {
// 例として、常に1列のみとします
Q_UNUSED(parent);
return 1;
}
QVariant data(const QModelIndex &index, int role = Qt::DisplayRole) const override {
if (!index.isValid())
return QVariant();
if (role != Qt::DisplayRole)
return QVariant();
TreeNode *item = static_cast<TreeNode*>(index.internalPointer());
return item->data();
}
// ヘッダーデータの取得 (任意実装だが、通常は実装する)
QVariant headerData(int section, Qt::Orientation orientation, int role = Qt::DisplayRole) const override {
if (orientation == Qt::Horizontal && role == Qt::DisplayRole) {
if (section == 0) return "アイテム";
}
return QVariant();
}
private:
void setupModelData() {
// 例のデータ作成
TreeNode *parent1 = new TreeNode("動物", m_rootItem);
m_rootItem->appendChild(parent1);
parent1->appendChild(new TreeNode("犬", parent1));
parent1->appendChild(new TreeNode("猫", parent1));
TreeNode *parent2 = new TreeNode("植物", m_rootItem);
m_rootItem->appendChild(parent2);
TreeNode *child2_1 = new TreeNode("木", parent2);
parent2->appendChild(child2_1);
child2_1->appendChild(new TreeNode("桜", child2_1));
child2_1->appendChild(new TreeNode("松", child2_1));
parent2->appendChild(new TreeNode("花", parent2));
}
TreeNode *m_rootItem;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// QTreeViewを作成
QTreeView *treeView = new QTreeView();
// カスタムモデルを作成
MyCustomTreeModel *model = new MyCustomTreeModel(treeView); // 親オブジェクト指定
// QTreeViewにモデルを設定
treeView->setModel(model);
// (オプション) ツリーを全て展開して表示
treeView->expandAll();
treeView->setWindowTitle("カスタムモデルを使ったQTreeView");
treeView->resize(400, 300);
treeView->show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // MOCファイルを含めることでシグナル/スロットが機能します
解説:
TreeNode
クラス: データを保持し、階層構造を管理するためのヘルパークラスです。実際のデータ構造は、アプリケーションの要件によって様々です。MyCustomTreeModel
クラス:QAbstractItemModel
を継承しています。index()
:QModelIndex
を作成し、ビューがモデルのデータにアクセスできるようにします。createIndex()
を使って、行、列、およびデータを指すinternalPointer()
(ここではTreeNode
へのポインタ)を渡します。parent()
: 与えられたQModelIndex
の親のQModelIndex
を返します。rowCount()
: 与えられた親のモデルインデックスの子の数を返します。columnCount()
: モデルが持つ列の数を返します。data()
: 特定のQModelIndex
とロール(表示、編集など)に対応するデータをQVariant
として返します。headerData()
: 列ヘッダーに表示されるテキストを返します。
main()
関数内で、MyCustomTreeModel
のインスタンスを作成し、treeView->setModel(model);
で設定します。
重要な注意点:
internalPointer()
は、モデルの内部データ構造へのポインタとして使用されます。これにより、QModelIndex
から元のデータ項目にアクセスできます。- モデルのデータが変更された際には、ビューに更新を通知するために適切なシグナル(例:
dataChanged()
、rowsInserted()
、rowsRemoved()
など)を必ず発行する必要があります。上記の簡易例ではデータ変更の機能は含まれていませんが、実際のアプリケーションでは必須です。 QAbstractItemModel
を継承したカスタムモデルを作成する場合、純粋仮想関数をすべてオーバーライドし、正しく実装することが不可欠です。
QTreeView::setModel()
は、QTreeView
にデータを表示させるための唯一の標準的な方法であり、この関数自体に「代替方法」は存在しません。QtのModel/Viewアーキテクチャの根幹をなすものであり、この関数を使わずにQTreeView
にデータを表示することはできません。
しかし、「QTreeView::setModel()
のプログラミングに関連する代替方法」という文脈で考えると、以下のような視点から解説できます。
QTreeView::setModel()に渡す「モデルの種類」の選択
これはsetModel()
の代替というよりも、setModel()
に渡すモデルオブジェクトの「選択肢」に関する話です。どのモデルを使用するかは、アプリケーションのデータ構造や要件によって変わります。
- カスタムモデル (
QAbstractItemModel
の派生クラス):- 特徴: 上記の標準モデルでは対応できないような、独自の複雑なデータ構造や外部データソース(Web API、XML、JSONなど)を扱う場合に作成します。
- 代替というより選択肢: 開発者が
rowCount()
、columnCount()
、data()
、index()
、parent()
などの純粋仮想関数をすべて実装する必要があります。最も柔軟ですが、最も開発コストがかかります。
QSqlQueryModel
/QSqlTableModel
/QSqlRelationalTableModel
:- 特徴: データベースのデータを直接モデルとして扱うことができます。
- 代替というより選択肢: データベースのデータを
QTreeView
に表示したい場合に選択します。QSqlQueryModel
はSQLクエリの結果を読み取り専用で表示、QSqlTableModel
は単一テーブルのデータを読み書き可能に、QSqlRelationalTableModel
はリレーションを持つテーブルを扱えます。
QFileSystemModel
:- 特徴: ファイルシステム上のディレクトリ構造やファイルを自動的にモデルとして提供します。
- 代替というより選択肢: エクスプローラのようなファイルブラウザ機能を実装する際に最も適しています。
QStandardItemModel
:- 特徴: 最もシンプルで柔軟なモデル。ツリー構造のデータをプログラム内で手動で構築するのに適しています。
- 代替というより選択肢: データが小規模で、複雑なデータベースアクセスやファイルシステム連携が不要な場合によく使われます。ユーザーがプログラム内でデータを追加・編集するような場面に適しています。
setModel()
はデータ源を設定するものであり、データの見た目や操作方法は「ビュー」と「デリゲート」が担当します。setModel()
の「代替」というよりは、QTreeView
の表示をカスタマイズする別の方法です。
-
QSortFilterProxyModel
:- 特徴: 既存のモデルのデータを直接変更することなく、ソートやフィルタリング(絞り込み)を行うためのプロキシ(仲介役)モデルです。
- 代替というより仲介:
QTreeView
はQSortFilterProxyModel
をモデルとして設定し、そのプロキシモデルが元のモデルからデータを取得して、フィルタリングされたりソートされたりした状態でビューに渡します。
#include <QApplication> #include <QTreeView> #include <QStandardItemModel> #include <QSortFilterProxyModel> #include <QLineEdit> #include <QVBoxLayout> #include <QWidget> int main(int argc, char *argv[]) { QApplication a(argc, argv); // 元のモデルを作成 QStandardItemModel *sourceModel = new QStandardItemModel(0, 1); sourceModel->appendRow(new QStandardItem("Apple")); sourceModel->appendRow(new QStandardItem("Banana")); sourceModel->appendRow(new QStandardItem("Cherry")); sourceModel->appendRow(new QStandardItem("Date")); // プロキシモデルを作成し、元のモデルを設定 QSortFilterProxyModel *proxyModel = new QSortFilterProxyModel(); proxyModel->setSourceModel(sourceModel); proxyModel->setFilterCaseSensitivity(Qt::CaseInsensitive); // 大文字小文字を区別しない // QTreeViewを作成し、プロキシモデルを設定 QTreeView *treeView = new QTreeView(); treeView->setModel(proxyModel); // ここでプロキシモデルを設定 // フィルタリング用のQLineEdit QLineEdit *filterLineEdit = new QLineEdit(); QObject::connect(filterLineEdit, &QLineEdit::textChanged, proxyModel, &QSortFilterProxyModel::setFilterFixedString); // レイアウト QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(); layout->addWidget(filterLineEdit); layout->addWidget(treeView); QWidget *window = new QWidget(); window->setLayout(layout); window->setWindowTitle("QSortFilterProxyModelの例"); window->resize(300, 250); window->show(); return a.exec(); }
この例では、
treeView->setModel()
に直接sourceModel
ではなくproxyModel
を渡しています。ユーザーがQLineEditにテキストを入力すると、proxyModel
が自動的にデータをフィルタリングし、QTreeView
の表示が更新されます。 -
QItemDelegate
またはカスタムデリゲート:- 特徴:
QTreeView
の各アイテムの描画(見た目)や編集(ユーザー入力)をカスタマイズするための方法です。 - 代替というより追加機能:
setModel()
でデータ源を設定した後、特定の列やアイテムの表示を特別にしたい場合にsetItemDelegate()
やsetItemDelegateForColumn()
を使います。例えば、プログレスバーを表示したり、日付ピッカーで日付を入力させたりすることができます。
// 例: 特定の列にカスタムデリゲートを設定 // MyCustomDelegateはQItemDelegateを継承したクラス treeView->setItemDelegateForColumn(0, new MyCustomDelegate(treeView));
- 特徴:
-
QTreeView
のプロパティとメソッドによる表示制御:setHeaderHidden(bool)
: ヘッダーの表示/非表示を切り替える。setColumnHidden(int column, bool hide)
: 特定の列を非表示にする。setAlternatingRowColors(bool)
: 行の背景色を交互に変える。setSelectionMode(QAbstractItemView::SelectionMode)
: 選択モード(単一選択、複数選択など)を設定する。expandAll()
,collapseAll()
,expand(const QModelIndex &index)
: ツリーの展開/折りたたみ。scrollTo(const QModelIndex &index)
: 特定のアイテムまでスクロールする。 これらはsetModel()
の後に呼び出し、表示を調整するためのものです。
QTreeView::setModel()
は、QtのModel/ViewアーキテクチャにおいてQTreeView
にデータを提供するための唯一かつ中心的な関数です。したがって、「代替方法」というよりは、どのような種類のモデルをsetModel()
に渡すかという選択肢や、setModel()
でモデルを設定した後に、そのビューの表示や操作をどのようにカスタマイズするかという関連機能と理解するのが適切です。