QTreeView::setFirstColumnSpannedの代替手段：カスタムデリゲートで自由な描画

QTreeView::setFirstColumnSpanned() とは？

QTreeView::setFirstColumnSpanned(int row, const QModelIndex &parent, bool span) は、QTreeView ウィジェットの特定の行（row）において、最初のカラム（列）のアイテムが残りのすべてカラムにまたがって表示されるように設定するメソッドです。

通常、QTreeView は表形式でデータを表示し、各カラムは独立した内容を持ちます。しかし、このメソッドを使うと、特定の行の最初のカラムのアイテムだけが、その行のすべてのカラムの幅を占めるように「結合」されたような表示になります。つまり、その行の2番目以降のカラムは表示されなくなります。

引数について

• span (bool): true を設定すると最初のカラムがスパンされ、false を設定するとスパンが解除されます。
• parent (const QModelIndex &): スパンを設定したいアイテムの親アイテムのモデルインデックスです。ルートレベルのアイテムの場合は、QModelIndex() (無効なQModelIndex) を渡します。
• row (int): スパン（結合）を設定したい行のインデックスです。

使用例と目的

この機能は、以下のような場合に特に役立ちます。

• セクションヘッダー: ツリービュー内で論理的なセクションを区切るためのヘッダー行として使用できます。例えば、あるカテゴリーのアイテムが続く前に、そのカテゴリー名を大きく表示したい場合などです。

注意点

• QTableView::setSpan() のように、任意の位置のセルを結合するような柔軟な機能は QTreeView には提供されていません。setFirstColumnSpanned() はあくまで「最初のカラムが残りのすべてをスパンする」という限定的な機能です。より複雑なセルの結合が必要な場合は、カスタムデリゲート (QStyledItemDelegate) を使用して描画を制御する必要があります。
• モデルのデータが変更されたり、フィルターが適用されたりすると、スパンの設定を再度行う必要がある場合があります。これは、setFirstColumnSpanned() がビューの内部的な設定であり、モデルの変更に自動的に追従しないためです。
• スパンされた行では、最初のカラム以外のカラムは表示されなくなります。
• このメソッドはビュー（QTreeView）の表示設定であり、モデル（QAbstractItemModel）のデータ構造を変更するものではありません。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QStandardItemModel model(0, 3); // 3列のモデルを作成
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "Name");
    model.setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "Value");
    model.setHeaderData(2, Qt::Horizontal, "Description");

    // 親アイテム1
    QStandardItem *parent1 = new QStandardItem("Parent Item 1");
    model.appendRow(parent1);

    // 子アイテム1-1
    QStandardItem *child1_1_col0 = new QStandardItem("Child 1-1 Name");
    QStandardItem *child1_1_col1 = new QStandardItem("Value A");
    QStandardItem *child1_1_col2 = new QStandardItem("Desc A");
    parent1->appendRow({child1_1_col0, child1_1_col1, child1_1_col2});

    // 子アイテム1-2 (最初のカラムをスパンする例)
    QStandardItem *child1_2_col0 = new QStandardItem("This is a very long description for Child 1-2 that spans all columns.");
    QStandardItem *child1_2_col1 = new QStandardItem("Value B"); // これは表示されない
    QStandardItem *child1_2_col2 = new QStandardItem("Desc B"); // これも表示されない
    parent1->appendRow({child1_2_col0, child1_2_col1, child1_2_col2});

    // 親アイテム2
    QStandardItem *parent2 = new QStandardItem("Parent Item 2");
    model.appendRow(parent2);

    // 子アイテム2-1
    QStandardItem *child2_1_col0 = new QStandardItem("Child 2-1 Name");
    QStandardItem *child2_1_col1 = new QStandardItem("Value X");
    QStandardItem *child2_1_col2 = new QStandardItem("Desc X");
    parent2->appendRow({child2_1_col0, child2_1_col1, child2_1_col2});

    QTreeView view;
    view.setModel(&model);

    // parent1の2番目の子（インデックス1）の最初のカラムをスパンする
    // 親アイテム1 (parent1) の行インデックスは、model.index(0, 0) で取得できる
    // その子アイテムの行は、parent1の内部の行インデックスになる
    view.setFirstColumnSpanned(1, parent1->index(), true); // parent1の2番目の子(child1_2)をスパン

    view.setWindowTitle("QTreeView::setFirstColumnSpanned Example");
    view.show();

    return a.exec();
}

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展開/折りたたみ（Expand/Collapse）が機能しない、またはクリックできない

問題点
setFirstColumnSpanned() を適用した行の、ツリーを展開/折りたたむための矢印アイコン（デコレーション）が、マウスでクリックしても反応しなくなることがあります。キーボード操作（左右矢印キーなど）では展開/折りたたみができるにも関わらず、マウス操作が効かない場合にこの問題が発生します。

原因
これはQtの既知のバグ（QTBUG-31384など、古いバージョンで報告されている）として報告されています。setFirstColumnSpanned() を使用すると、特にツリーの階層が深くなったり、最初のカラムの幅が狭すぎたりする場合に、展開/折りたたみアイコンのクリック領域が正しく認識されなくなることがあります。アイコンの位置が最初のカラムの視覚的な境界の外に出てしまうと、クリックイベントが正しく捕捉されません。

トラブルシューティング

• drawRow() をオーバーライドする
  QTreeView をサブクラス化し、drawRow() メソッドをオーバーライドして、特定の行の描画をカスタマイズする方法です。これにより、setFirstColumnSpanned() を使用せずに、同様の視覚効果を実現できます。この方法もデリゲートと同様に描画の制御が可能ですが、デリゲートに比べて適用範囲が広くなるため注意が必要です。
• カスタムデリゲートを使用する
  setFirstColumnSpanned() の代わりに、QStyledItemDelegate を継承したカスタムデリゲートを作成し、paint() メソッド内でセルを結合したように描画する方法です。このアプローチはより複雑ですが、描画を完全に制御できるため、展開/折りたたみの問題が発生しにくくなります。ただし、QTreeView の本来の展開/折りたたみ機能に加えて、視覚的なスパンを自分で描画する必要があるため、実装コストは高くなります。
• 最初のカラムの幅を調整する
  QTreeView の header() を介して QHeaderView の setSectionResizeMode() や setMinimumSectionSize() などを使用し、最初のカラムが十分に広くなるように設定することで、アイコンがクリック可能になる場合があります。
• Qtのバージョンを確認・更新する
  非常に古いQtバージョンを使用している場合、このバグが修正されている可能性があるので、新しいバージョンにアップグレードすることを検討してください。

モデルの変更時にスパンが正しく更新されない

問題点
QTreeView::setFirstColumnSpanned() でスパンを設定した後、モデルのデータ（行の追加/削除、データの変更など）が変更されても、スパンの設定が自動的に更新されず、スパンがずれたり、意図しない行に適用されたりする場合があります。

原因
setFirstColumnSpanned() はビュー（QTreeView）の表示設定であり、モデルのデータ構造とは独立しています。モデルが変更されても、ビューは以前に設定されたスパンの情報を保持しているため、手動で更新が必要です。

トラブルシューティング

• スパンのロジックを再評価する
  モデルの変更があった際に、どの行をスパンすべきかを再評価し、必要に応じて setFirstColumnSpanned(row, parent, false) で既存のスパンを解除し、再度 setFirstColumnSpanned(newRow, newParent, true) で新しいスパンを設定します。
• モデルのシグナルを捕捉する
  モデルの rowsInserted()、rowsRemoved()、dataChanged() などのシグナルに接続し、これらのシグナルが発行された際に、影響を受ける行に対して setFirstColumnSpanned() を再適用するようにします。

スクロールバーの挙動がおかしい、または表示されない

問題点
setFirstColumnSpanned() を使用していると、水平スクロールバーが予期せぬ挙動をしたり、本来表示されるべきなのに表示されなかったりすることがあります。

原因
スパンされた行の幅がビューの幅を超えても、Qtがスクロール領域を正しく計算しない場合があります。特に QHeaderView::stretchLastSection が有効になっている場合や、QHeaderView::ResizeToContents との組み合わせで問題が起こりやすいです。

トラブルシューティング

• resizeEvent() のオーバーライド（稀なケース）
  setHeaderHidden(true) を設定している場合で、かつ resizeEvent() をオーバーライドしていない場合に水平スクロールバーが表示されないという報告もあります。この場合は、カスタムの QTreeView クラスで resizeEvent() をオーバーライドし、必要に応じて resizeColumnToContents(0) などを呼び出すことで解決する場合があります。
• setHorizontalScrollBarPolicy() の確認
  view.setHorizontalScrollBarPolicy(Qt::ScrollBarAlwaysOff); などを設定している場合、スクロールバーが表示されないのは当然です。必要に応じて Qt::ScrollBarAsNeeded や Qt::ScrollBarAlwaysOn に設定し直してください。
• QHeaderView の設定を調整する
  
  • view.header()->setStretchLastSection(false); を設定して、最後のカラムが常にビューの残りのスペースを埋めるのを防ぎます。
  • view.header()->setSectionResizeMode(QHeaderView::ResizeToContents); を特定のカラム（特に最初のカラム）に適用して、内容に合わせてカラム幅が自動調整されるようにします。ただし、これが逆に問題を引き起こす場合もあるので、試行錯誤が必要です。
  • view.header()->setSectionResizeMode(QHeaderView::Interactive); を設定し、ユーザーが手動でカラム幅を調整できるようにします。

問題点
setFirstColumnSpanned(int row, const QModelIndex &parent, bool span) の parent 引数を正しく指定しないと、意図しない行がスパンされたり、全くスパンが適用されなかったりします。

原因
parent 引数は、スパンを設定したい アイテムの親 のモデルインデックスを指します。ルートレベルのアイテムをスパンしたい場合は QModelIndex() (無効なQModelIndex) を指定します。

• デバッグでインデックスを確認する
  デバッガを使用して、QModelIndex の row() や parent() メソッドを呼び出し、インデックスが正しいかどうかを確認します。
• QModelIndex の階層を理解する
  
  • ルートレベルのアイテムをスパンする場合: view.setFirstColumnSpanned(row_index, QModelIndex(), true);
  • ある親アイテムの子アイテムをスパンする場合: view.setFirstColumnSpanned(child_row_index_under_parent, parent_item_index, true); parent_item_index は、その親アイテム自体の QModelIndex です。例えば QStandardItem *parentItem; parentItem->index(); のように取得します。

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例1: 基本的な使い方 - ルートレベルのアイテムをスパンする

この例では、ツリービューのルートレベルにあるアイテムの1つをスパンします。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
#include <QHeaderView> // カラムヘッダーの設定用

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    // 3列のモデルを作成
    QStandardItemModel model(0, 3);
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "カテゴリー/項目");
    model.setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "値");
    model.setHeaderData(2, Qt::Horizontal, "詳細");

    // データ追加
    QList<QStandardItem*> row1_items;
    row1_items.append(new QStandardItem("製品A"));
    row1_items.append(new QStandardItem("1200円"));
    row1_items.append(new QStandardItem("最新モデルです。"));
    model.appendRow(row1_items);

    QList<QStandardItem*> row2_items;
    row2_items.append(new QStandardItem("製品B"));
    row2_items.append(new QStandardItem("800円"));
    row2_items.append(new QStandardItem("旧モデルですが、人気です。"));
    model.appendRow(row2_items);

    // スパンする行
    QList<QStandardItem*> spanned_row_items;
    spanned_row_items.append(new QStandardItem("--- 特別プロモーション情報 ---"));
    spanned_row_items.append(new QStandardItem("ダミーデータ1")); // これらのカラムは表示されない
    spanned_row_items.append(new QStandardItem("ダミーデータ2")); // これらのカラムは表示されない
    model.appendRow(spanned_row_items); // 3番目の行（インデックス2）に追加

    QList<QStandardItem*> row4_items;
    row4_items.append(new QStandardItem("製品C"));
    row4_items.append(new QStandardItem("2500円"));
    row4_items.append(new QStandardItem("高性能な新製品です。"));
    model.appendRow(row4_items);

    QTreeView view;
    view.setModel(&model);

    // 3番目の行（インデックス2）の最初のカラムをスパンする
    // ルートレベルのアイテムなので、parentはQModelIndex() (デフォルトコンストラクタ)
    view.setFirstColumnSpanned(2, QModelIndex(), true);

    // カラム幅をコンテンツに合わせる
    view.header()->setSectionResizeMode(QHeaderView::ResizeToContents);
    // 最後のカラムが伸びるのを防ぐ（スパンに影響しないように）
    view.header()->setStretchLastSection(false);

    view.setWindowTitle("QTreeView::setFirstColumnSpanned (Root Level)");
    view.show();

    return a.exec();
}

解説

• 結果として、「--- 特別プロモーション情報 ---」の行が、ツリービューの全幅を使って表示され、その行の「値」と「詳細」カラムの内容は見えなくなります。
• setFirstColumnSpanned(2, QModelIndex(), true); の部分が重要です。
  • 最初の引数 2 は、0から始まる行のインデックスで、3番目の行を意味します。
  • 2番目の引数 QModelIndex() は、この行がツリーのルートレベル（親がいない）であることを示します。
  • 3番目の引数 true は、スパンを有効にすることを意味します。
• QStandardItemModel を作成し、データを追加しています。

例2: 子アイテムをスパンする

この例では、親アイテムを持つ子アイテムの1つをスパンします。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
#include <QHeaderView>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QStandardItemModel model(0, 3);
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "アイテム");
    model.setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "数量");
    model.setHeaderData(2, Qt::Horizontal, "備考");

    // 親アイテム1
    QStandardItem *category1 = new QStandardItem("食品");
    model.appendRow(category1);

    // 子アイテム1-1
    QStandardItem *item1_1_col0 = new QStandardItem("りんご");
    QStandardItem *item1_1_col1 = new QStandardItem("3個");
    QStandardItem *item1_1_col2 = new QStandardItem("青森産");
    category1->appendRow({item1_1_col0, item1_1_col1, item1_1_col2});

    // 子アイテム1-2 (スパンするアイテム)
    QStandardItem *item1_2_col0 = new QStandardItem("※消費期限が近いため、お早めにお召し上がりください。");
    QStandardItem *item1_2_col1 = new QStandardItem(""); // スパンされるので見えない
    QStandardItem *item1_2_col2 = new QStandardItem(""); // スパンされるので見えない
    category1->appendRow({item1_2_col0, item1_2_col1, item1_2_col2}); // 親の子として追加

    // 子アイテム1-3
    QStandardItem *item1_3_col0 = new QStandardItem("牛乳");
    QStandardItem *item1_3_col1 = new QStandardItem("1本");
    QStandardItem *item1_3_col2 = new QStandardItem("北海道産");
    category1->appendRow({item1_3_col0, item1_3_col1, item1_3_col2});

    // 親アイテム2
    QStandardItem *category2 = new QStandardItem("文房具");
    model.appendRow(category2);

    // 子アイテム2-1
    QStandardItem *item2_1_col0 = new QStandardItem("ペン");
    QStandardItem *item2_1_col1 = new QStandardItem("5本");
    QStandardItem *item2_1_col2 = new QStandardItem("黒インク");
    category2->appendRow({item2_1_col0, item2_1_col1, item2_1_col2});

    QTreeView view;
    view.setModel(&model);

    // "食品" カテゴリを展開する（スパンされた子アイテムが見えるように）
    view.expandAll(); // または view.expand(category1->index());

    // category1 (親アイテム) の2番目の子アイテム（インデックス1）をスパンする
    // 親アイテムのインデックスを setFirstColumnSpanned の2番目の引数に渡す
    view.setFirstColumnSpanned(1, category1->index(), true);

    view.header()->setSectionResizeMode(QHeaderView::ResizeToContents);
    view.header()->setStretchLastSection(false);

    view.setWindowTitle("QTreeView::setFirstColumnSpanned (Child Item)");
    view.show();

    return a.exec();
}

解説

• これにより、「りんご」の次の行がツリービューの全幅を使って表示されます。
• setFirstColumnSpanned(1, category1->index(), true); の部分がポイントです。
  • 最初の引数 1 は、category1 の「子の中での」0から始まる行のインデックスで、2番目の子を意味します。
  • 2番目の引数 category1->index() は、スパンしたい子アイテムの「親」である category1 の QModelIndex を渡しています。
• 親アイテム category1 を作成し、その子アイテムとして複数の行を追加しています。

例3: 動的にスパンを切り替える（ボタンによる制御）

この例では、ボタンをクリックすることで、特定の行のスパン表示を有効/無効に切り替えます。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QVBoxLayout>
#include <QPushButton>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
#include <QHeaderView>

class MainWindow : public QMainWindow {
    Q_OBJECT // シグナル/スロットを使用するために必要

public:
    MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QMainWindow(parent) {
        setWindowTitle("QTreeView::setFirstColumnSpanned - Dynamic");

        QWidget *centralWidget = new QWidget(this);
        setCentralWidget(centralWidget);

        QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(centralWidget);

        model = new QStandardItemModel(0, 3, this);
        model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "項目");
        model->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, "詳細1");
        model->setHeaderData(2, Qt::Horizontal, "詳細2");

        // データ追加
        model->appendRow({new QStandardItem("アイテムA"), new QStandardItem("データA1"), new QStandardItem("データA2")});
        model->appendRow({new QStandardItem("アイテムB"), new QStandardItem("データB1"), new QStandardItem("データB2")});
        model->appendRow({new QStandardItem("スパン対象行"), new QStandardItem("非表示データ1"), new QStandardItem("非表示データ2")}); // インデックス2
        model->appendRow({new QStandardItem("アイテムC"), new QStandardItem("データC1"), new QStandardItem("データC2")});

        treeView = new QTreeView(this);
        treeView->setModel(model);
        treeView->header()->setSectionResizeMode(QHeaderView::ResizeToContents);
        treeView->header()->setStretchLastSection(false);

        layout->addWidget(treeView);

        QPushButton *toggleButton = new QPushButton("スパンを切り替える (行 2)", this);
        layout->addWidget(toggleButton);

        // ボタンのクリックシグナルとスロットを接続
        connect(toggleButton, &QPushButton::clicked, this, &MainWindow::toggleSpanning);

        isSpanned = false; // 初期状態はスパンなし
    }

private slots:
    void toggleSpanning() {
        // 2番目の行（インデックス2）のルートアイテムを対象
        // parentはQModelIndex()で良い
        treeView->setFirstColumnSpanned(2, QModelIndex(), !isSpanned);
        isSpanned = !isSpanned; // 状態を反転
    }

private:
    QStandardItemModel *model;
    QTreeView *treeView;
    bool isSpanned; // スパンが有効かどうかの状態を保持
};

#include "main.moc" // mocファイルをインクルード

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);
    MainWindow w;
    w.resize(400, 300);
    w.show();
    return a.exec();
}

解説

• ボタンをクリックするたびに、3番目の行（インデックス2）の表示がスパンされた状態と通常の表示状態で切り替わります。
• toggleSpanning() スロットで、isSpanned の状態に基づいて setFirstColumnSpanned() を呼び出しています。
• MainWindow クラスを作成し、QPushButton を追加しています。

QTreeView::setFirstColumnSpanned() は、QTableView::setSpan() とは大きく異なります。QTableView::setSpan() は任意のセル範囲を結合できるのに対し、QTreeView::setFirstColumnSpanned() は「最初のカラムが、その行の残りのすべてのカラムにわたる」という限定的な機能です。

QTableView::setSpan() の例:

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QStandardItemModel model(5, 5); // 5x5のモデル
    for (int row = 0; row < 5; ++row) {
        for (int col = 0; col < 5; ++col) {
            model.setItem(row, col, new QStandardItem(QString("%1,%2").arg(row).arg(col)));
        }
    }

    QTableView view;
    view.setModel(&model);

    // (1, 1)から2x3の範囲をスパン
    // row, column, rowSpan, columnSpan
    view.setSpan(1, 1, 2, 3); // row 1, col 1 から始まり、2行3列にわたる

    view.setWindowTitle("QTableView::setSpan Example");
    view.show();

    return a.exec();
}

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主な代替手段は以下の通りです。

カスタムデリゲート (QStyledItemDelegate / QItemDelegate) の使用

これは最も一般的で強力な代替手段です。QStyledItemDelegate を継承したカスタムクラスを作成し、paint() メソッドをオーバーライドすることで、セルの描画を完全に制御できます。

利点

• 展開/折りたたみアイコンの問題回避
  デリゲートで描画を制御するため、setFirstColumnSpanned() に関連するクリック領域の問題が発生しません。
• 柔軟なセル結合（視覚的）
  複数のカラムにわたるテキストを、まるでセルが結合されているかのように描画できます。setFirstColumnSpanned() と異なり、任意のカラムの範囲を視覚的に結合できます（ただし、これは描画上の「見た目」であり、モデル上のセル構造を変更するものではありません）。
• 描画の完全な制御
  セルの背景、テキストの配置、フォント、色、罫線など、すべての描画要素を自由にカスタマイズできます。

欠点

• 編集機能との連携
  編集可能なモデルの場合、createEditor() や setEditorData()、setModelData() などもオーバーライドする必要があり、さらに複雑になります。
• パフォーマンスの考慮
  大量のアイテムがある場合、デリゲートの paint() メソッドが頻繁に呼び出されるため、描画処理を最適化しないとパフォーマンスに影響が出る可能性があります。
• 実装の複雑さ
  paint() メソッド内での描画ロジックは、Qtの描画API（QPainter）を理解する必要があり、比較的複雑です。

// MyCustomDelegate.h
#include <QStyledItemDelegate>
#include <QPainter>
#include <QTreeView> // QTreeView の参照などが必要な場合

class MyCustomDelegate : public QStyledItemDelegate
{
    Q_OBJECT
public:
    explicit MyCustomDelegate(QObject *parent = nullptr);

    void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option,
               const QModelIndex &index) const override;

    // 必要に応じて、sizeHint() などもオーバーライド
    QSize sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
};

// MyCustomDelegate.cpp
#include "MyCustomDelegate.h"

MyCustomDelegate::MyCustomDelegate(QObject *parent)
    : QStyledItemDelegate(parent)
{}

void MyCustomDelegate::paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option,
                           const QModelIndex &index) const
{
    // 特定の条件（例えば、特定の行インデックスやデータロール）でスパン風に描画
    if (index.row() == 2 && index.column() == 0) { // 例: 3行目の最初のカラム
        // スパンされるべきテキストを取得
        QString text = index.data(Qt::DisplayRole).toString();

        // 描画領域をツリービューの全幅（または必要な幅）に拡張
        // QTreeView の幅を取得するために、デリゲートにビューの参照を渡すか、
        // QStyleOptionViewItem からビューポートの幅などを推測する必要がある。
        // 簡単のため、ここでは仮に3列分の幅を計算
        // 実際には QTreeView の header()->sectionSize(column) などで正確な幅を取得すべき
        QRect rect = option.rect;
        int totalWidth = option.rect.width(); // 最初のカラムの幅
        if (index.model()->columnCount() > 1) {
            // 他のカラムの幅も考慮して合計幅を計算（簡易的な例）
            QTreeView* treeView = qobject_cast<QTreeView*>(option.widget);
            if (treeView) {
                totalWidth = treeView->viewport()->width() - treeView->header()->sectionViewportPosition(0);
            } else {
                // treeViewが取得できない場合、適当な幅を使うか、より頑健な方法を考える
                totalWidth = option.rect.width() * index.model()->columnCount();
            }
        }
        QRect spannedRect = QRect(rect.x(), rect.y(), totalWidth, rect.height());

        painter->save();
        painter->setRenderHint(QPainter::Antialiasing);

        // 背景を描画 (通常はデフォルトの描画を先に行う)
        // QStyledItemDelegate::paint(painter, option, index); // 必要であればデフォルトを描画

        // スパン風の背景を描画
        painter->fillRect(spannedRect, option.palette.color(QPalette::Inactive, QPalette::Highlight)); // 例としてハイライト色

        // テキストを描画
        painter->setPen(option.palette.color(QPalette::Inactive, QPalette::HighlightedText));
        painter->drawText(spannedRect, Qt::AlignVCenter | Qt::AlignLeft, text);

        painter->restore();

        // 他のカラムでは何も描画しないようにする (重要)
        if (index.column() > 0) {
            // 何もしないか、デフォルトのpaintを呼び出して背景のみ描画など
            return;
        }

    } else {
        // 通常の描画
        QStyledItemDelegate::paint(painter, option, index);
    }
}

QSize MyCustomDelegate::sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
    // スパンする行の場合、高さはテキストに合わせて調整
    if (index.row() == 2 && index.column() == 0) {
        QString text = index.data(Qt::DisplayRole).toString();
        // ここでも幅の計算が必要になる（paintと同じロジック）
        // QFontMetrics を使ってテキストのサイズを計算
        QFontMetrics fm = option.fontMetrics;
        // 例として、全幅を使うとして行の高さを計算
        int totalWidth = option.rect.width() * index.model()->columnCount(); // 簡易的な例
        QRect textRect = fm.boundingRect(QRect(0, 0, totalWidth, 1000), Qt::TextWordWrap, text);
        return QSize(option.rect.width(), textRect.height() + 4); // パディングを追加
    }
    return QStyledItemDelegate::sizeHint(option, index);
}

そして、QTreeView にデリゲートを設定します。

// main.cpp または QTreeView を作成する場所
#include "MyCustomDelegate.h"
// ...
QTreeView view;
MyCustomDelegate *delegate = new MyCustomDelegate(&view);
view.setItemDelegate(delegate); // すべてのアイテムに適用
// または特定のカラムに適用: view.setItemDelegateForColumn(0, delegate);

QTreeView をサブクラス化し、drawRow() をオーバーライドする

QTreeView を継承し、drawRow(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) メソッドをオーバーライドする方法です。このメソッドは、行全体が描画される際に呼び出されます。

利点

• デリゲートよりも、ツリービューの構造全体に対する描画ロジックを集中管理しやすい場合があります。
• setFirstColumnSpanned() と同様に、行全体に影響を与える描画を制御できます。

欠点

• drawRow() は行全体の描画を担うため、特定のセルだけを描画したい場合は、さらに内部で drawBranches() や drawRowWidgets() などを呼び出す必要があります。
• QTreeView の内部構造に深く関わるため、デリゲートよりも強力ですが、扱いが難しい場合があります。

// MyTreeView.h
#include <QTreeView>
#include <QPainter>

class MyTreeView : public QTreeView
{
    Q_OBJECT
public:
    explicit MyTreeView(QWidget *parent = nullptr);

protected:
    void drawRow(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option,
                 const QModelIndex &index) const override;
};

// MyTreeView.cpp
#include "MyTreeView.h"
#include <QStyleOptionViewItem>
#include <QHeaderView>

MyTreeView::MyTreeView(QWidget *parent) : QTreeView(parent)
{}

void MyTreeView::drawRow(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option,
                       const QModelIndex &index) const
{
    if (index.isValid() && index.row() == 2 && !index.parent().isValid()) { // 例: ルートの3行目
        // 最初のカラムのデータのみを取得
        QString text = index.data(Qt::DisplayRole).toString();

        // 行全体の矩形を取得 (ツリーの全幅を使用)
        QRect rowRect = option.rect;
        // 行の幅をビューポートの幅に合わせる
        rowRect.setWidth(viewport()->width());

        // スパンされたような背景を描画
        painter->save();
        painter->fillRect(rowRect, option.palette.color(QPalette::Inactive, QPalette::Highlight));

        // テキストを描画
        painter->setPen(option.palette.color(QPalette::Inactive, QPalette::HighlightedText));
        // QStyleOptionViewItem からテキストの配置を取得し、行全体に描画
        painter->drawText(rowRect, Qt::AlignVCenter | Qt::AlignLeft, text);

        painter->restore();

        // 展開/折りたたみアイコンやブランチを描画したい場合は、ここで明示的に呼び出す
        // drawBranches(painter, option.rect, index); // 必要であれば
        // drawRowWidgets(painter, option.rect, index); // 必要であれば

    } else {
        // 通常の行は親クラスのメソッドに任せる
        QTreeView::drawRow(painter, option, index);
    }
}

モデルの構造を変更する

これは描画による解決策ではなく、データモデル自体を変更して望む表示を実現する方法です。

利点

• データの論理的な構造が、視覚的な表示に直接反映されます。
• ビューの描画ロジックがシンプルになります。

• 既存のデータ構造を大幅に変更する必要がある場合、コストが高くなります。
• setFirstColumnSpanned() のような「見た目の」結合とは異なり、モデルのデータ構造自体を変更する必要があります。

// 例:
QStandardItemModel model(0, 1); // 1列のモデルにする
model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "情報");

// スパンしたい行を追加
QList<QStandardItem*> spanned_row_items;
spanned_row_items.append(new QStandardItem("--- 特別プロモーション情報 ---"));
model.appendRow(spanned_row_items); // この行は1列しかないため、自動的に全幅を使用

// 通常のデータを表示したい場合は、別の行として追加
QList<QStandardItem*> normal_row_items;
normal_row_items.append(new QStandardItem("製品Aの詳細"));
model.appendRow(normal_row_items);

// もし同じ行内で他のカラムも使いたいなら、この方法は適用できません。
// この方法は、「この行全体がこのメッセージのためのもの」という場合にのみ適しています。

• データ自体が単一の情報の塊である場合
  モデルの構造自体を1列にするなど、データモデル側で対応する方法もシンプルで効果的です。ただし、これは setFirstColumnSpanned() が本来意図する「既存の多列データの一部をスパンする」用途とは異なります。

• QTreeView 全体への描画制御を深く行いたい場合
  QTreeView をサブクラス化し、drawRow() をオーバーライドする方法も検討できます。ただし、これはデリゲートよりも複雑になりがちです。

• 簡単な視覚的結合で、展開/折りたたみアイコンの問題を回避したい場合
  カスタムデリゲートが最も推奨されます。これは、ビューの描画を細かく制御できる最も標準的な方法です。