QTreeView 特定の列を隠す方法:Qtプログラミング実践ガイド
基本的な使い方
void QTreeView::setColumnHidden(int column, bool hidden);
hidden
: 列を非表示にするかどうかを指定するブール値です。true
を指定すると、指定された列は非表示になります。false
を指定すると、指定された列は再び表示されます。
column
: 非表示にしたい列のインデックス(0から始まる整数)を指定します。一番左の列がインデックス 0 になります。
この関数の目的
setColumnHidden()
を使用すると、ツリービューに表示する情報を柔軟に制御できます。例えば、以下のような場合に役立ちます。
- 表示する列を絞り込むことで、ユーザーが見るべき情報に焦点を当てやすくする。
- 特定の操作や状態に応じて、一時的に特定の列を隠したり表示したりする。
- ユーザーにとって重要ではない内部的な情報を含む列を非表示にする。
具体的な例
もし、QTreeView
に 3 つの列(「名前」、「サイズ」、「更新日時」)が表示されているとします。そして、「サイズ」の列を非表示にしたい場合、以下のように記述します。
QTreeView *treeView = new QTreeView(this);
// ... (モデルの設定など) ...
// 2番目の列(インデックスは 1)を非表示にする
treeView->setColumnHidden(1, true);
// 後で再び表示したい場合は
// treeView->setColumnHidden(1, false);
- ユーザーが列のヘッダーを操作して列の表示/非表示を切り替える機能は、
setColumnHidden()
とは別の設定で制御されます(通常はデフォルトで可能です)。setColumnHidden()
は、プログラム側から強制的に列の表示状態を設定するものです。 - 列が非表示になっても、その列に対応するデータはモデル内に存在し続けます。単にビュー上での表示がされなくなるだけです。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
setColumnHidden()
に渡すcolumn
引数が、ツリービューが持つ列の範囲外である場合。例えば、列数が 3 つなのにインデックスとして 3 や -1 を指定した場合などです。 - トラブルシューティング
QAbstractItemModel::columnCount()
関数を使用して、モデルが持つ列の総数を正確に確認してください。- 指定する列インデックスが 0 から
columnCount() - 1
の範囲内であることを確認してください。 - ループ処理などで列インデックスを扱う場合は、インデックスの範囲が正しいか注意深く確認してください。
- エラー
-
非表示にしたい列が意図した列と異なる
- エラー
誤った列インデックスを指定してしまい、意図しない列が非表示になる。 - トラブルシューティング
QTreeView
のヘッダービュー(QHeaderView
)の状態を確認し、各列がどのインデックスに対応しているかを視覚的に確認してください。- モデルの構造(データの並び順)とビューの列の対応関係を再確認してください。
- デバッグ時には、非表示にしようとしている列のインデックスをログ出力するなどして確認すると良いでしょう。
- エラー
-
列が再表示されない
- エラー
setColumnHidden(columnIndex, false)
を呼び出しても、列が再び表示されない。 - トラブルシューティング
- 本当に正しい
columnIndex
でfalse
を指定しているか確認してください。タイプミスや変数のスコープなどに注意が必要です。 - 他の場所で意図せず再度
setColumnHidden(columnIndex, true)
を呼び出していないか確認してください。 - 列の幅が 0 に設定されているなど、他の要因で視覚的に見えなくなっている可能性も考えられます。
QTreeView::setColumnWidth()
やQHeaderView::resizeSections()
などの関連する関数呼び出しを確認してください。 - モデルのデータが空になっているなど、表示するデータ自体が存在しない可能性も考慮してください。
- 本当に正しい
- エラー
-
モデルの変更後に列の表示状態がリセットされる
- エラー
モデルのデータをリセットしたり、新しいモデルを設定したりした後に、setColumnHidden()
で設定した列の非表示状態が失われる。 - トラブルシューティング
- モデルが変更された後に、再度
setColumnHidden()
を呼び出して、必要な列を非表示にする処理を実装してください。 - モデルの状態を保存し、リストアする仕組みを検討することも有効かもしれません。
- モデルが変更された後に、再度
- エラー
-
ヘッダービューとの連携に関する問題
- エラー
setColumnHidden()
で列を非表示にした後、ヘッダービューの操作(例えば、列のドラッグ&ドロップ)で予期しない挙動が発生する。 - トラブルシューティング
QHeaderView
のシグナル(例えば、sectionMoved
など)を監視し、列の移動が発生した際にsetColumnHidden()
の設定が維持されるように適切に処理してください。QHeaderView
のsetSectionsMovable()
などの設定が、意図しない動作を引き起こしていないか確認してください。
- エラー
-
パフォーマンスの問題
- エラー
大量の列を持つツリービューで頻繁にsetColumnHidden()
を呼び出すと、パフォーマンスに影響が出る可能性がある。 - トラブルシューティング
- 本当に頻繁な列の表示/非表示の切り替えが必要なのか、ユーザーインターフェースの設計を見直すことを検討してください。
- 必要な時だけ
setColumnHidden()
を呼び出すように最適化してください。
- エラー
デバッグのヒント
- シンプルな例
問題を切り分けるために、最小限のコードで再現できる簡単な例を作成してテストする。 - ステップ実行
デバッガを使用して、コードの実行をステップごとに追いかけ、setColumnHidden()
の呼び出しとその後のビューの状態の変化を確認する。 - ログ出力
問題が発生していると思われる箇所で、列インデックスやhidden
の値をqDebug()
などで出力して確認する。
例1: 初期化時に特定の列を非表示にする
この例では、QTreeView
を作成し、初期状態で特定の列(インデックス 1)を非表示にします。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// モデルの作成
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(5, 3); // 5行3列のモデル
model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, QObject::tr("名前"));
model->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, QObject::tr("サイズ"));
model->setHeaderData(2, Qt::Horizontal, QObject::tr("更新日時"));
// モデルにデータを追加 (簡略化)
for (int row = 0; row < 5; ++row) {
model->setItem(row, 0, new QStandardItem(QString("ファイル %1").arg(row + 1)));
model->setItem(row, 1, new QStandardItem(QString("%1 KB").arg((row + 1) * 10)));
model->setItem(row, 2, new QStandardItem("2025-05-15"));
}
// ツリービューの作成とモデルの設定
QTreeView *treeView = new QTreeView();
treeView->setModel(model);
// 2番目の列(インデックス 1、"サイズ")を非表示にする
treeView->setColumnHidden(1, true);
treeView->setWindowTitle(QObject::tr("QTreeView の例"));
treeView->show();
return a.exec();
}
このコードを実行すると、「名前」と「更新日時」の列だけが表示され、「サイズ」の列は非表示になります。
例2: ボタンクリックで列の表示/非表示を切り替える
この例では、ボタンをクリックするたびに、特定の列の表示/非表示を切り替えます。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
class MainWindow : public QWidget
{
public:
MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
// モデルの作成
model_ = new QStandardItemModel(5, 3);
model_->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, tr("名前"));
model_->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, tr("サイズ"));
model_->setHeaderData(2, Qt::Horizontal, tr("更新日時"));
for (int row = 0; row < 5; ++row) {
model_->setItem(row, 0, new QStandardItem(QString("ファイル %1").arg(row + 1)));
model_->setItem(row, 1, new QStandardItem(QString("%1 KB").arg((row + 1) * 10)));
model_->setItem(row, 2, new QStandardItem("2025-05-15"));
}
// ツリービューの作成とモデルの設定
treeView_ = new QTreeView();
treeView_->setModel(model_);
// ボタンの作成
toggleButton_ = new QPushButton(tr("サイズ列の表示/非表示"));
connect(toggleButton_, &QPushButton::clicked, this, &MainWindow::toggleSizeColumn);
// レイアウトの設定
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout();
layout->addWidget(treeView_);
layout->addWidget(toggleButton_);
setLayout(layout);
setWindowTitle(tr("QTreeView 列の表示/非表示例"));
}
private slots:
void toggleSizeColumn()
{
sizeColumnHidden_ = !sizeColumnHidden_;
treeView_->setColumnHidden(1, sizeColumnHidden_);
}
private:
QTreeView *treeView_;
QStandardItemModel *model_;
QPushButton *toggleButton_;
bool sizeColumnHidden_ = true;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MainWindow w;
w.show();
return a.exec();
}
このコードでは、「サイズ列の表示/非表示」ボタンをクリックすると、2番目の列(「サイズ」)の表示と非表示が切り替わります。
例3: 特定の条件に基づいて列を非表示にする
この例は少し応用で、モデルのデータに基づいて特定の列を非表示にするシナリオを想定しています。ここでは単純に、特定の行のデータに基づいて列の表示を制御するわけではありませんが、概念としては、モデルのシグナルや他のイベントに応じて setColumnHidden()
を呼び出すことで実現できます。
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStandardItem>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// モデルの作成
QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(3, 2); // 3行2列のモデル
model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, QObject::tr("カテゴリ"));
model->setHeaderData(1, Qt::Horizontal, QObject::tr("詳細"));
model->setItem(0, 0, new QStandardItem("画像"));
model->setItem(0, 1, new QStandardItem("JPEG, PNG, GIF"));
model->setItem(1, 0, new QStandardItem("動画"));
model->setItem(1, 1, new QStandardItem("MP4, MOV, AVI"));
model->setItem(2, 0, new QStandardItem("文書"));
model->setItem(2, 1, new QStandardItem("PDF, DOCX, TXT"));
// ツリービューの作成とモデルの設定
QTreeView *treeView = new QTreeView();
treeView->setModel(model);
// 特定の条件(ここでは単純に初期化時)で「詳細」列(インデックス 1)を非表示にする
// 実際のアプリケーションでは、何らかの条件に基づいてこの処理を行うことになります
bool hideDetails = true; // 例えば、ユーザーの設定やアプリケーションの状態による
if (hideDetails) {
treeView->setColumnHidden(1, true);
}
treeView->setWindowTitle(QObject::tr("QTreeView 列の条件付き非表示例"));
treeView->show();
return a.exec();
}
この例では、hideDetails
変数の値に基づいて、「詳細」列を初期状態で非表示にするかどうかを決定しています。実際のアプリケーションでは、この条件はより複雑になる可能性があります。
QHeaderView::hideSection() と QHeaderView::showSection() の使用
QTreeView
は内部的に QHeaderView
を使用して列ヘッダーを管理しています。QHeaderView
クラスには、個々のセクション(列)を直接的に非表示・表示するメソッドがあります。
QHeaderView *header = treeView->header();
header->hideSection(columnIndex); // 指定したインデックスの列を非表示にする
header->showSection(columnIndex); // 指定したインデックスの列を表示する
- 注意点
setColumnHidden()
と機能的にはほぼ同じですが、ヘッダービューの操作という点が異なります。 - 利点
QHeaderView
を直接操作するため、ヘッダーの表示状態とより密接に連携できます。
QTreeView::setColumnWidth(column, 0) と QTreeView::setColumnWidth(column, width) の使用
列の幅を 0 に設定することで、視覚的に列を非表示にすることができます。元の幅に戻すことで再表示します。
int originalWidth = treeView->columnWidth(columnIndex);
treeView->setColumnWidth(columnIndex, 0); // 列の幅を 0 にして非表示にする
// 後で再表示する場合
treeView->setColumnWidth(columnIndex, originalWidth);
- 注意点
完全に非表示になるわけではないため、ユーザーがヘッダーをドラッグして幅を変更しようとした場合、わずかに見える可能性があります。また、列が選択された際のハイライトなどが残る可能性もあります。 - 利点
列の非表示/表示に伴うレイアウトの再計算が、完全に非表示にするよりも軽量な場合があります。アニメーション効果を伴う表示/非表示の実装も比較的容易です。
プロキシモデル (QSortFilterProxyModel など) の使用
プロキシモデルを使用すると、元のモデルのデータをフィルタリングしたり、並べ替えたり、表示する列を制御したりすることができます。特定の列を非表示にするには、表示したい列のみを転送するようなフィルタリングロジックをプロキシモデルに実装します。
QSortFilterProxyModel *proxyModel = new QSortFilterProxyModel(this);
proxyModel->setSourceModel(originalModel);
// 表示したい列のインデックスを保持する (例: 名前と更新日時のみ表示)
QSet<int> visibleColumns = {0, 2};
// フィルタリングのためのカスタムロジック (例として、常に指定した列のみを通す)
proxyModel->setFilterCaseSensitivity(Qt::CaseInsensitive);
proxyModel->setFilterKeyColumn(-1); // 全ての列に対してフィルタリング
proxyModel->setFilterRegularExpression(QRegularExpression()); // 空の正規表現で初期化
class ColumnFilter : public QSortFilterProxyModel
{
public:
ColumnFilter(QObject *parent = nullptr) : QSortFilterProxyModel(parent) {}
QSet<int> visibleColumns;
protected:
bool filterAcceptsColumn(int source_column, const QModelIndex &source_parent) const override
{
return visibleColumns.contains(source_column);
}
};
ColumnFilter *columnFilter = new ColumnFilter(this);
columnFilter->setSourceModel(originalModel);
columnFilter->visibleColumns = {0, 2}; // 表示したい列のインデックスを設定
treeView->setModel(columnFilter);
- 注意点
プロキシモデルの導入と設定が必要となり、やや複雑になる場合があります。 - 利点
元のモデルの構造を変更せずに、ビューに表示するデータを柔軟に制御できます。フィルタリングやソートなどの他の機能と組み合わせることも容易です。
カスタムデリゲート (QStyledItemDelegate など) の使用
特定の列の描画処理をカスタムデリゲートでオーバーライドし、何も描画しないように実装することで、視覚的に列を非表示にすることができます。
class HiddenColumnDelegate : public QStyledItemDelegate
{
public:
HiddenColumnDelegate(QObject *parent = nullptr) : QStyledItemDelegate(parent) {}
void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override
{
// 何も描画しない
}
QSize sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override
{
return QSize(0, 0); // サイズヒントも 0 にする
}
};
// 特定の列にカスタムデリゲートを設定
treeView->setItemDelegateForColumn(columnIndex, new HiddenColumnDelegate(treeView));
- 注意点
列の選択やヘッダーとの連携など、他の機能に影響を与える可能性があります。また、デリゲートの管理が必要になります。 - 利点
視覚的な表示を完全に制御できます。
- 描画レベルでの制御
カスタムデリゲートが必要になる場合がありますが、他の方法に比べて複雑性が増します。 - より複雑な表示制御やデータのフィルタリング
プロキシモデルの使用を検討してください。 - アニメーションを伴う表示/非表示
setColumnWidth(0)
を使用する方法が適しています。 - 単純な表示/非表示の切り替え
setColumnHidden()
またはQHeaderView::hideSection()
/showSection()
が最も簡単です。