QTreeViewで可変行高を実現!indexRowSizeHintのエラーとトラブルシューティング
この関数は、QTreeView
が特定のモデルインデックス(index
)が指す行の推奨される高さ(ピクセル単位)を決定するために使用される保護された仮想関数です。
どのような時に使われるか?
QTreeView
は、表示するアイテムのレイアウトを計算する際に、各行の適切な高さを知る必要があります。特に、以下のような場合にこの情報が役立ちます。
- uniformRowHeightsプロパティとの関連
QTreeView
にはuniformRowHeights
というプロパティがあります。これがtrue
に設定されている場合、すべての行が同じ高さであると仮定され、ビューはパフォーマンスを向上させるためにこのヒントを使用します。この場合、indexRowSizeHint()
が返す値は、すべての行に適用される高さのヒントとして考慮される可能性があります。false
の場合、各行は異なる高さを持つ可能性があるため、ビューはより動的に高さを計算しようとします。 - 可変行の高さへの対応
QTreeView
のデフォルトの行の高さは、通常、フォントサイズやスタイルに基づいて自動的に決定されます。しかし、特定の行に大きなアイコン、複数行のテキスト、カスタムウィジェットなどが含まれる場合、デフォルトの高さでは適切に表示されないことがあります。このような場合、QTreeView
を継承し、indexRowSizeHint()
をオーバーライドすることで、その行に合わせた適切な高さを提供できます。 - 描画パフォーマンスの最適化
ツリービューが非常に多くのアイテムを表示する場合、すべてのアイテムの正確な高さを一度に計算するとパフォーマンスが低下する可能性があります。indexRowSizeHint()
は、ビューが表示領域内の行の高さを見積もるために使用できます。
QTreeView::indexRowSizeHint()
は、QTreeView
の行の高さを動的に調整する際に使用されます。この関数を適切にオーバーライドしないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
パフォーマンスの低下 (Degraded Performance)
エラーの原因
- キャッシュの不足
以前計算した行の高さをキャッシュせずに、毎回計算し直してしまう。 - 不必要な計算の繰り返し
各行の高さが同じであるにもかかわらず、毎回複雑な計算を行ってしまう。 - 重い計算
indexRowSizeHint()
の中で、時間のかかる計算やファイルI/O、ネットワークアクセスなど、重い処理を行ってしまう。この関数はビューの描画時に頻繁に呼び出される可能性があるため、少しの遅延でも全体的なパフォーマンスに大きな影響を与えます。
トラブルシューティング
- QModelIndex の有効性チェック
index.isValid()
を使って、渡されたQModelIndex
が有効であることを常に確認してください。無効なインデックスでデータアクセスを試みるとクラッシュする可能性があります。 - 高さのキャッシュ
indexRowSizeHint()
が頻繁に呼ばれるにもかかわらず、計算結果が変化しない場合、モデルやビューの内部で計算結果をキャッシュすることを検討してください。QPersistentModelIndex
やQModelIndex::internalPointer()
を利用して、アイテム固有のデータを保存し、それに基づいて高さを計算できます。 - uniformRowHeights の利用
もしすべての行の高さが同じか、ほとんど同じである場合は、QTreeView::setUniformRowHeights(true)
を設定してください。これにより、ビューは行の高さを一度だけ計算するか、最初のアイテムのヒントを利用してすべての行に適用するため、描画パフォーマンスが大幅に向上します。indexRowSizeHint()
が返す値が、すべての行に適用される高さの「ヒント」として機能します。 - 計算の軽量化
可能な限り、indexRowSizeHint()
内で行われる計算を軽量化してください。複雑なデータ解析が必要な場合は、その結果をモデル内にキャッシュするか、別のスレッドで非同期に計算するように検討してください。
行の表示の不整合 (Inconsistent Row Display)
エラーの原因
- dataChanged() シグナルの不足
モデルのデータが変更されたときに、対応するdataChanged()
シグナルを発していない。これにより、ビューが行の高さを再計算せず、古いレイアウトのまま表示されることがあります。 - 高さが動的に変化するアイテムへの対応不足
ユーザーの操作やデータ変更によって行の高さが変わる可能性があるにもかかわらず、ビューがそれを認識しない。 - indexRowSizeHint() が返す値と実際の描画内容の不一致
例えば、indexRowSizeHint()
が 20px を返しているにもかかわらず、その行に表示されるテキストやアイコンが 30px の高さが必要な場合、アイテムが途中で切れたり、重なって表示されたりすることがあります。
トラブルシューティング
- sizeHint() と paint() の連携
カスタムデリゲートを使用している場合、デリゲートのsizeHint()
関数とpaint()
関数が返すサイズと描画内容が一致していることを確認してください。QTreeView
はデリゲートのsizeHint()
を利用して行のサイズを決定することもあります。 - レイアウトの再計算の強制
どうしても表示が更新されない場合、updateGeometries()
やviewport()->update()
を呼び出すことで、ビューのレイアウトを強制的に再計算させることができますが、これはパフォーマンスに影響を与えるため、最終手段としてください。より良いのは、dataChanged()
やlayoutChanged()
シグナルに依存することです。 - モデルからの通知
モデルのデータが変更され、それが表示上の行の高さに影響する場合、必ずQAbstractItemModel::dataChanged()
シグナルを発行してください。ビューはこのシグナルを受け取ると、該当するアイテムの再描画やレイアウトの再計算を行います。 - 正確な高さの計算
実際に描画されるコンテンツ(フォント、アイコンサイズ、カスタムウィジェットなど)の高さに基づいて、indexRowSizeHint()
が正確な値を返すようにしてください。QFontMetrics
やQSize
を利用して、テキストや画像のサイズを正確に測定します。// 例: テキストの高さに基づいて計算 QFontMetrics fm(font()); int textHeight = fm.height(); return textHeight + somePadding; // 余白を考慮
不適切なオーバーライド (Improper Overriding)
エラーの原因
- オーバーライドする際に、親クラスの関数を呼び忘れている(特に特定の条件に合致しない場合)。
QTreeView::indexRowSizeHint()
が仮想関数ではないと誤解している。Qt 4.8以前の一部のバージョンでは仮想関数ではありませんでしたが、最近のQtでは仮想関数です。
トラブルシューティング
- デフォルトの動作へのフォールバック
特定の条件に合致しないインデックスの場合、親クラスのindexRowSizeHint()
を呼び出して、デフォルトの動作に任せるようにしてください。int MyCustomTreeView::indexRowSizeHint(const QModelIndex &index) const { if (/* 特定の条件 */) { // カスタムの高さを計算 return customHeight; } return QTreeView::indexRowSizeHint(index); // デフォルトの動作 }
- override キーワードの使用
C++11以降のコンパイラを使用している場合は、override
キーワードを関数宣言に明示的に追加することで、オーバーライドが正しく行われているかコンパイラにチェックさせることができます。protected: int indexRowSizeHint(const QModelIndex &index) const override;
QModelIndex の不正な使用 (Invalid QModelIndex Usage)
エラーの原因
QModelIndex
が指すデータが、期待する型ではない場合に、誤ったキャストやデータアクセスを行ってしまう。indexRowSizeHint()
に渡されるQModelIndex
が無効な場合がある(例えば、モデルがリセットされた後など)。
- QVariant::canConvert() の使用
index.data()
から取得したQVariant
の内容を特定の型に変換する前に、QVariant::canConvert<T>()
を使用して、変換が可能かどうかを確認してください。QVariant data = index.data(Qt::DecorationRole); if (data.canConvert<QIcon>()) { QIcon icon = qvariant_cast<QIcon>(data); // ... }
- QModelIndex::isValid() の確認
常にindex.isValid()
を使用して、モデルインデックスが有効であることを確認してから、そのインデックスを使用してモデルからデータを取得してください。
目的
この例では、QTreeView
を使用して、各行に異なる高さのコンテンツ(例えば、通常のテキスト行と、より大きなアイコンや複数行のテキストを含む行)を表示する方法を示します。
構成要素
- カスタムモデル (MyModel)
QStandardItemModel
を継承し、特定のデータに基づいて行のコンテンツを変えます。 - カスタムツリービュー (MyTreeView)
QTreeView
を継承し、indexRowSizeHint()
をオーバーライドして、モデルのデータに基づいて行の高さを決定します。 - メインアプリケーション
上記のモデルとビューを設定し、表示します。
カスタムモデル (MyModel) の定義
このモデルは、Qt::DecorationRole
に大きなアイコンを持つアイテムや、複数行のテキストを持つアイテムを含めることで、行の高さが異なることをシミュレートします。
mymodel.h
#ifndef MYMODEL_H
#define MYMODEL_H
#include <QStandardItemModel>
#include <QIcon> // QIconを使うため
class MyModel : public QStandardItemModel
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyModel(QObject *parent = nullptr);
};
#endif // MYMODEL_H
mymodel.cpp
#include "mymodel.h"
#include <QStandardItem> // QStandardItemを使うため
MyModel::MyModel(QObject *parent)
: QStandardItemModel(parent)
{
// ヘッダーを設定
setHorizontalHeaderLabels({"名前", "説明"});
// 通常の行
QList<QStandardItem*> row1;
row1 << new QStandardItem("アイテムA") << new QStandardItem("これは通常の短い説明です。");
appendRow(row1);
// アイコンが大きな行
QList<QStandardItem*> row2;
QStandardItem *item2_col0 = new QStandardItem("アイテムB (アイコン)");
item2_col0->setData(QIcon(":/icons/large_icon.png"), Qt::DecorationRole); // 大きなアイコンを設定
row2 << item2_col0 << new QStandardItem("この行には大きなアイコンがあります。そのため、より多くのスペースが必要です。");
appendRow(row2);
// 複数行のテキストがある行
QList<QStandardItem*> row3;
row3 << new QStandardItem("アイテムC (複数行)");
row3 << new QStandardItem("この説明は非常に長いため、\n複数行にわたって表示されるはずです。\n行の高さもそれに応じて調整されます。");
appendRow(row3);
// 通常の行
QList<QStandardItem*> row4;
row4 << new QStandardItem("アイテムD") << new QStandardItem("別の短い説明です。");
appendRow(row4);
// さらに複雑なデータを含む行
QList<QStandardItem*> row5;
QStandardItem *item5_col0 = new QStandardItem("アイテムE (複雑)");
item5_col0->setData(QIcon(":/icons/small_icon.png"), Qt::DecorationRole); // 小さなアイコン
row5 << item5_col0 << new QStandardItem("この行は通常のアイコンと、\nやや長いテキストを含みます。\n高さの計算が正しく行われるか確認します。");
appendRow(row5);
}
注意
QIcon(":/icons/large_icon.png")
と QIcon(":/icons/small_icon.png")
は、Qt のリソースシステムを使用しています。プロジェクトに icons.qrc
のようなファイルを作成し、アイコン画像を含める必要があります。
例: icons.qrc
<!DOCTYPE RCC><RCC version="1.0">
<qresource prefix="/icons">
<file>large_icon.png</file>
<file>small_icon.png</file>
</qresource>
</RCC>
そして、.pro
ファイルに RESOURCE = icons.qrc
を追加してください。
カスタムツリービュー (MyTreeView) の定義
ここで indexRowSizeHint()
をオーバーライドし、モデルのデータ(特にアイコンのサイズやテキストの行数)に基づいて行の高さを計算します。
mytreeview.h
#ifndef MYTREEVIEW_H
#define MYTREEVIEW_H
#include <QTreeView>
#include <QAbstractItemModel> // QAbstractItemModelを使うため
class MyTreeView : public QTreeView
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyTreeView(QWidget *parent = nullptr);
protected:
// この関数をオーバーライドして行の高さをヒントとして提供
int indexRowSizeHint(const QModelIndex &index) const override;
};
#endif // MYTREEVIEW_H
mytreeview.cpp
#include "mytreeview.h"
#include <QPainter> // 描画情報(フォントメトリクスなど)を得るため
#include <QTextDocument> // HTMLライクなテキストのサイズ計算用(今回は使用しないが、複雑なテキストで役立つ)
#include <QApplication> // QApplication::font() を使うため
MyTreeView::MyTreeView(QWidget *parent)
: QTreeView(parent)
{
// 行の高さが均一ではないことを明示的に設定
// これにより、indexRowSizeHint()が各行で評価されるようになります。
setUniformRowHeights(false);
}
int MyTreeView::indexRowSizeHint(const QModelIndex &index) const
{
// デフォルトの行の高さを取得(現在のフォントやスタイルに基づく)
// QTreeView::rowHeight(index) は表示されているアイテムの高さ、
// QFontMetrics(font()).height() はフォントの高さ、
// どれを使うかは状況によって調整
int defaultHeight = QTreeView::indexRowSizeHint(index); // 親クラスのヒントを利用
// または、以下のようにデフォルトフォントの高さから計算
// int defaultHeight = fontMetrics().height() + 4; // フォントの高さ + 上下余白
if (!index.isValid()) {
return defaultHeight; // 無効なインデックスの場合はデフォルトを返す
}
// まず、アイコンのサイズを考慮
QVariant iconData = index.data(Qt::DecorationRole);
if (iconData.canConvert<QIcon>()) {
QIcon icon = qvariant_cast<QIcon>(iconData);
QSize iconSize = icon.actualSize(QSize(32, 32)); // 32x32pxを基準に実際のアイコンサイズを取得
// ここでより大きいサイズを考慮してもよい
if (iconSize.height() > 0) {
// アイコンの高さとデフォルトの高さを比較し、大きい方を選ぶ
// 適切なパディングを追加することを忘れない
defaultHeight = std::max(defaultHeight, iconSize.height() + 4); // アイコンの高さ + 上下4pxのパディング
}
}
// 次に、テキストの行数を考慮
// モデルから表示テキストを取得 (Qt::DisplayRole)
QVariant textData = index.data(Qt::DisplayRole);
if (textData.canConvert<QString>()) {
QString text = textData.toString();
int lineCount = text.count('\n') + 1; // 改行文字の数 + 1 がおおよその行数
if (lineCount > 1) {
// 現在のフォントメトリクスを使って1行のテキストの高さを取得
QFontMetrics fm = fontMetrics(); // ツリービューのフォントメトリクス
int singleLineHeight = fm.height();
// 複数行のテキストが必要とするおおよその高さを計算
int requiredTextHeight = singleLineHeight * lineCount;
// アイコンや他の要因で計算された高さと、テキストの必要な高さを比較し、大きい方を選ぶ
defaultHeight = std::max(defaultHeight, requiredTextHeight + 4); // テキストの高さ + 上下4pxのパディング
}
}
return defaultHeight;
}
ポイント
- パディング(例:
+ 4
)を追加することで、テキストやアイコンが描画領域の端にぴったりくっつくのを防ぎ、見た目を改善します。 std::max()
を使用して、アイコンやテキストなど、様々な要素が必要とする高さの中で最も大きいものを選択し、行の高さとします。fontMetrics()
を使用して、ビューが現在使用しているフォントに基づいてテキストの高さを正確に計算します。setUniformRowHeights(false);
を設定することが重要です。これにより、各行の高さが異なることをQTreeView
に伝え、indexRowSizeHint()
が個々の行に対して呼び出されるようになります。true
の場合、ビューはほとんどの場合、単一の行の高さのヒントしか使用しません。
メインアプリケーション (main.cpp)
モデルとビューをインスタンス化し、表示します。
main.cpp
#include <QApplication>
#include <QDebug> // デバッグ出力用
#include "mymodel.h"
#include "mytreeview.h"
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
// カスタムモデルのインスタンスを作成
MyModel *model = new MyModel(&a);
// カスタムツリービューのインスタンスを作成
MyTreeView view;
view.setModel(model); // モデルをビューに設定
// 必要に応じてカラム幅を調整
view.setColumnWidth(0, 150);
view.setColumnWidth(1, 300);
// デフォルトのアイコンパスを作成 (存在しない場合は警告が出ます)
// 実際のアプリケーションでは、QRCファイルにアイコンを含めるか、
// 有効なパスを指定してください。
// QIcon::setThemeName("...");
// QIcon::setThemeSearchPaths(QStringList() << ":/icons"); // QRCパスを設定
view.setWindowTitle("QTreeView::indexRowSizeHint() Example");
view.show();
return a.exec();
}
実行結果の期待
このコードを実行すると、QTreeView
が表示され、以下のように行の高さが異なります。
- "アイテムE (複雑)" の行: アイコンと複数行のテキストを考慮し、適切な高さ
- "アイテムD" の行: 通常の高さ
- "アイテムC (複数行)" の行: 複数行のテキストに合わせて、より高い行
- "アイテムB (アイコン)" の行: 大きなアイコンに合わせて、より高い行
- "アイテムA" の行: 通常の高さ
QAbstractItemModel::data() で Qt::SizeHintRole を返す
これは、indexRowSizeHint()
と同様にモデル/ビューフレームワークの思想に沿った方法です。ビューがアイテムの推奨サイズを知る必要があるとき、モデルの data()
関数に Qt::SizeHintRole
を指定して問い合わせます。
利点
- データと共にサイズヒントをカプセル化できます。
- ビュー(
QTreeView
)をサブクラス化する必要がないため、よりモジュール性が高まります。モデルがビューから独立してサイズ情報を提供できます。
欠点
- 特に、同じ行の異なるカラムが異なる高さのヒントを必要とする場合、どのカラムのサイズヒントを優先するかをビューが決定する必要があります(通常は最も大きいもの)。
- すべてのアイテムについて
data()
でQt::SizeHintRole
を処理する必要があるため、モデルの実装が複雑になる場合があります。
プログラミング例
#include <QStandardItemModel>
#include <QTreeView>
#include <QApplication>
#include <QIcon>
#include <QFontMetrics>
class MyModelWithRoleHint : public QStandardItemModel
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyModelWithRoleHint(QObject *parent = nullptr);
QVariant data(const QModelIndex &index, int role = Qt::DisplayRole) const override;
};
MyModelWithRoleHint::MyModelWithRoleHint(QObject *parent)
: QStandardItemModel(parent)
{
setHorizontalHeaderLabels({"名前", "説明"});
// 通常の行
QList<QStandardItem*> row1;
row1 << new QStandardItem("アイテムA") << new QStandardItem("これは通常の短い説明です。");
appendRow(row1);
// アイコンが大きな行
QList<QStandardItem*> row2;
QStandardItem *item2_col0 = new QStandardItem("アイテムB (アイコン)");
// 注: 実際のアイコンパスを指定してください
item2_col0->setData(QIcon(":/icons/large_icon.png"), Qt::DecorationRole);
row2 << item2_col0 << new QStandardItem("この行には大きなアイコンがあります。そのため、より多くのスペースが必要です。");
appendRow(row2);
// 複数行のテキストがある行
QList<QStandardItem*> row3;
row3 << new QStandardItem("アイテムC (複数行)");
row3 << new QStandardItem("この説明は非常に長いため、\n複数行にわたって表示されるはずです。\n行の高さもそれに応じて調整されます。");
appendRow(row3);
}
QVariant MyModelWithRoleHint::data(const QModelIndex &index, int role) const
{
if (!index.isValid()) {
return QVariant();
}
if (role == Qt::SizeHintRole) {
// ここで、このインデックスの推奨サイズを計算して返す
int baseHeight = fontMetrics().height() + 4; // 基本的な行の高さ(フォント+パディング)
// アイコンのサイズを考慮
QVariant iconData = QStandardItemModel::data(index, Qt::DecorationRole);
if (iconData.canConvert<QIcon>()) {
QIcon icon = qvariant_cast<QIcon>(iconData);
// 実際のアプリケーションでは、QApplication::style()->pixelMetric(QStyle::PM_SmallIconSize)などを考慮
QSize iconSize = icon.actualSize(QSize(32, 32)); // 32x32pxを基準に実際のアイコンサイズを取得
if (iconSize.height() > 0) {
baseHeight = std::max(baseHeight, iconSize.height() + 4);
}
}
// テキストの行数を考慮(カラム0または1のテキストに基づいて)
// 実際には、その行の最も高い要素を考慮する必要がある
QVariant textData = QStandardItemModel::data(index, Qt::DisplayRole);
if (textData.canConvert<QString>()) {
QString text = textData.toString();
int lineCount = text.count('\n') + 1;
if (lineCount > 1) {
QFontMetrics fm = fontMetrics();
int singleLineHeight = fm.height();
int requiredTextHeight = singleLineHeight * lineCount;
baseHeight = std::max(baseHeight, requiredTextHeight + 4);
}
}
// 幅はビューが決定するため、ここでは高さのみを考慮
return QSize(-1, baseHeight); // -1はビューが幅を決定することを意味
}
return QStandardItemModel::data(index, role);
}
// main.cpp は MyModelWithRoleHint を使う以外は同じ
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyModelWithRoleHint *model = new MyModelWithRoleHint(&a);
QTreeView view;
view.setModel(model);
view.setUniformRowHeights(false); // 異なる高さを許容
view.setColumnWidth(0, 150);
view.setColumnWidth(1, 300);
view.setWindowTitle("Qt::SizeHintRole Example");
view.show();
return a.exec();
}
QStyledItemDelegate::sizeHint() をオーバーライドする
QItemDelegate
または QStyledItemDelegate
を継承し、その sizeHint()
関数をオーバーライドすることで、アイテムの描画とサイズのロジックを一元化できます。これは、アイテムの見た目が複雑で、ビューにカスタムデリゲートを設定する場合に特に有効です。
利点
- 特定のカラムや特定のアイテムにのみカスタムデリゲートを設定することで、柔軟に対応できます。
- ビューが複数存在する場合でも、同じデリゲートを共有できます。
- 描画ロジックとサイズ計算ロジックがデリゲート内にカプセル化され、コードの再利用性が高まります。
欠点
QTreeView
のsetUniformRowHeights(true)
と組み合わせると、デリゲートのsizeHint()
が期待通りにすべての行で呼ばれない場合があります。- デリゲートの知識と実装が必要になるため、
indexRowSizeHint()
よりも少し複雑になります。
プログラミング例
#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QStyledItemDelegate>
#include <QPainter>
#include <QTextDocument> // 複数行テキストの正確な高さ計算用
class MyDelegate : public QStyledItemDelegate
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyDelegate(QObject *parent = nullptr);
// この関数をオーバーライドしてアイテムの推奨サイズを提供
QSize sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
};
MyDelegate::MyDelegate(QObject *parent)
: QStyledItemDelegate(parent)
{
}
QSize MyDelegate::sizeHint(const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
// デフォルトのサイズヒントから始める
QSize baseSize = QStyledItemDelegate::sizeHint(option, index);
if (!index.isValid()) {
return baseSize;
}
// アイコンのサイズを考慮
QVariant iconData = index.data(Qt::DecorationRole);
if (iconData.canConvert<QIcon>()) {
QIcon icon = qvariant_cast<QIcon>(iconData);
QSize iconSize = icon.actualSize(QSize(32, 32)); // 32x32pxを基準
if (iconSize.height() > 0) {
baseSize.setHeight(std::max(baseSize.height(), iconSize.height() + 4));
}
}
// テキストの行数を考慮 (特に複数行テキストの場合)
QVariant textData = index.data(Qt::DisplayRole);
if (textData.canConvert<QString>()) {
QString text = textData.toString();
// QTextDocument を使用して、より正確な複数行テキストの高さを計算できます
// QStyleOptionViewItem option にはすでにフォント情報が含まれています
QTextDocument doc;
doc.setDefaultFont(option.font);
doc.setHtml(text); // 必要に応じて setPlainText も使用
// 幅を考慮したテキストの高さを計算するために、有効な幅が必要です
// option.rect.width() はアイテムの描画領域の幅ですが、正確ではない場合があります
// 実際には QTreeView のカラム幅や、他のコンテンツを考慮する必要があります
// ここでは便宜上、ある程度の仮の幅を設定するか、あるいは現在のオプションから推測
int contentWidth = option.rect.width();
if (contentWidth <= 0) { // 幅が取得できない場合など
contentWidth = 200; // 仮の幅
}
doc.setTextWidth(contentWidth); // テキストがこの幅で折り返されることを前提
int textHeight = static_cast<int>(doc.size().height());
baseSize.setHeight(std::max(baseSize.height(), textHeight + 4));
}
return baseSize;
}
// main.cpp は MyDelegate を使う以外は同じ
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyModelWithRoleHint *model = new MyModelWithRoleHint(&a); // 上記のMyModelWithRoleHintを使用
MyTreeView view; // MyTreeViewではなく、QTreeViewを直接使用することも可能
view.setModel(model);
view.setUniformRowHeights(false); // 異なる高さを許容
// カスタムデリゲートを設定
MyDelegate *delegate = new MyDelegate(&view);
view.setItemDelegate(delegate);
// あるいは特定のカラムに設定: view.setItemDelegateForColumn(1, delegate);
view.setColumnWidth(0, 150);
view.setColumnWidth(1, 300);
view.setWindowTitle("QStyledItemDelegate::sizeHint() Example");
view.show();
return a.exec();
}
QTreeView::setRowHeight() / QTreeView::setRowHidden() (限定的)
これらの関数は、個々の行の高さや表示/非表示を直接設定するために使用できますが、これは非常に限定的なシナリオでのみ役立ちます。
利点
- モデル/ビューフレームワークに深く立ち入る必要がない場合があります。
- 最も直接的な方法で、特定の行の高さや表示を制御できます。
欠点
- モデル/ビューの分離の原則に反するため、通常は推奨されません。
- 動的なコンテンツの高さ変化に対応するのが困難です。データが変更されたときに、手動で高さを再計算して設定する必要があります。
- 非推奨
QTreeView
はsetRowHeight()
関数を直接持っていません。(QTableWidget
やQListWidget
には同様の関数がありますが、QTreeView
はモデル/ビューアーキテクチャであるため、ビュー自身が行の高さに責任を持つことは一般的ではありません。)
QTreeView::resizeRowsToContents() (ビューの再計算)
この関数は、現在表示されているすべての行のコンテンツに合わせて行の高さを自動的に調整します。
利点
QModelIndex::data(Qt::SizeHintRole)
またはデリゲートのsizeHint()
が正しく実装されていれば、それらのヒントに基づいて高さを調整してくれます。- 手動で高さを計算する手間が省けます。
欠点
- 個々の行のデータが変更されたときに、自動的に高さを調整するには、モデルから
dataChanged()
シグナルを発行する必要があります。dataChanged()
はビューに再描画を促し、必要に応じてsizeHint
を再評価させます。 - 通常、初期表示時や、カラム幅の変更など、ビューのレイアウトが大きく変更されたときにのみ呼び出すことを検討します。
- パフォーマンスコストが高いため、頻繁に呼び出すべきではありません。特に大量のアイテムがある場合。
// データの変更後や、ビューのリサイズ後に呼び出す
// QTreeViewを継承したクラスのメソッド内、または外部から呼び出す
myTreeView->resizeRowsToContents();
// 例えば、モデルのdataChangedシグナルに接続して、関連する行だけを更新することも可能
connect(myModel, &QAbstractItemModel::dataChanged, [=](const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QVector<int> &roles) {
if (roles.contains(Qt::DisplayRole) || roles.contains(Qt::DecorationRole) || roles.empty()) {
// 変更された行の範囲で高さを調整
for (int row = topLeft.row(); row <= bottomRight.row(); ++row) {
QModelIndex index = myModel->index(row, 0, topLeft.parent());
myTreeView->resizeRowToContents(index.row()); // 個別の行のみを調整
}
}
});
- 非推奨
QTreeView::setRowHeight()
のような直接的な関数は存在しないか、Qt のモデル/ビューの哲学に反するため、避けるべきです。 - 限定的な使用
resizeRowsToContents()
は、初期表示時や大規模なレイアウト変更時に便利ですが、頻繁な呼び出しはパフォーマンスに影響します。 - 次に推奨される方法
QAbstractItemModel::data()
でQt::SizeHintRole
を返す、またはQStyledItemDelegate::sizeHint()
をオーバーライドする。特に、モデルが複数のビューで使用される場合や、複雑な描画ロジックとサイズ計算を一元化したい場合に適しています。 - 最も推奨される方法
QTreeView::indexRowSizeHint()
をオーバーライドする。ビューとモデルの役割分担が明確であり、パフォーマンスと柔軟性のバランスが取れています。