QTreeView::indexBelow()だけじゃない！Qtツリーモデル走査の代替テクニック

QTreeView::indexBelow(const QModelIndex &index) const は、QtのウィジェットであるQTreeViewクラスのメンバー関数です。この関数は、引数として与えられたQModelIndexの直下にあるアイテムのQModelIndexを返します。

QModelIndexは、モデル（QAbstractItemModel）内の特定のデータ項目を指すための抽象的な表現です。QTreeViewは、このモデル内のデータを階層的なツリー形式で表示します。

具体的な動作

indexBelow()関数は、ツリービュー内でのカーソルの移動や、プログラムによるアイテムの選択などの際に役立ちます。例えば、現在の選択項目（currentIndex()）の次の項目に移動したい場合に、以下のように使用できます。

QModelIndex currentIndex = treeView->currentIndex();
QModelIndex nextIndex = treeView->indexBelow(currentIndex);

if (nextIndex.isValid()) { // 有効なインデックスが返された場合
    treeView->setCurrentIndex(nextIndex); // 次の項目を選択
}

注意点

• パフォーマンス: 大規模なモデルを扱う場合、indexBelow()のようなナビゲーション関数を頻繁に呼び出すと、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
• 有効性の確認: indexBelow()が返すQModelIndexは、必ずしも有効な項目を指すとは限りません。例えば、引数として与えられたindexがツリーの最後の項目である場合、それより下に項目は存在しないため、無効なQModelIndexが返されます。そのため、返されたQModelIndexがisValid()であるかを確認することが重要です。
• 論理的な「下」: indexBelow()は、表示されているツリーの論理的な「下」の項目を返します。これは、同じ親を持つ次の兄弟項目であったり、親が展開されている場合はその親の子項目であったりします。

用途

• 特定の項目から開始して、その下の項目を探索する。
• カスタムのナビゲーション機能（例えば、キーボードショートカットで「次へ」移動）を実装する。
• ツリービューの項目をプログラムで順次処理する。

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QTreeView::indexBelow() は、Qtのモデル/ビューアーキテクチャでツリーを走査する際に便利な関数ですが、その動作を正しく理解していないと、意図しない結果やエラーに遭遇することがあります。

QModelIndex が無効になる

エラー/現象
indexBelow()を呼び出した後、返されたQModelIndexが有効（isValid()がtrueを返す）でないにもかかわらず、そのインデックスを使用しようとしてクラッシュしたり、何も起こらなかったりする。

原因

• 非表示の項目
  QTreeViewで項目が非表示に設定されている場合（例: setRowHidden(), setColumnHidden()）、indexBelow()は表示されているツリーの論理的な「下」の項目を返すため、非表示の項目をスキップする可能性があります。ただし、モデル自体は非表示の項目も持っているため、この挙動が期待と異なる場合があります。
• ツリーの終端に達した
  引数として渡されたインデックスがツリーの最後の項目である場合、それ以上下に項目は存在しないため、indexBelow()は無効なQModelIndexを返します。

トラブルシューティング

• ループ処理の終了条件
  ツリーをループで走査する場合、isValid()がfalseになったらループを終了する条件を設けてください。

• isValid() で常にチェックする
  indexBelow()の戻り値は、必ずisValid()でチェックしてから使用してください。

  QModelIndex nextIndex = treeView->indexBelow(currentIndex);
  if (nextIndex.isValid()) {
      treeView->setCurrentIndex(nextIndex);
  } else {
      // ツリーの終端に達した、または他の理由で有効なインデックスがない
      qDebug() << "No item below the current index.";
  }
  

予期しない「次」の項目に移動する（特に展開されていない子項目）

エラー/現象
親項目に子項目があるが、その親項目が展開されていない場合、indexBelow()を呼び出すと、子項目ではなく、親項目の次の兄弟項目に移動してしまう。

原因
indexBelow()は、現在表示されているツリーの論理的な順序に基づいて「下」の項目を決定します。つまり、親項目が展開されていない場合、その子項目は「表示されているツリー」の一部ではないため、スキップされます。

トラブルシューティング

• QAbstractItemModelのメソッドを利用する
  QTreeViewの表示状態に依存しない、モデル自体の階層構造を走査したい場合は、QAbstractItemModelのindex(), parent(), child()などの関数を組み合わせて使用することを検討してください。これにより、表示状態に左右されない論理的なツリー構造をたどることができます。
• 親項目の展開状態を確認/制御する
  子項目に移動させたい場合は、indexBelow()を呼び出す前に、対象の親項目が展開されていることを確認するか、強制的に展開します。

  QModelIndex current = treeView->currentIndex();
  if (treeView->model()->hasChildren(current) && !treeView->isExpanded(current)) {
      treeView->expand(current); // 子項目にアクセスするために展開
  }
  QModelIndex next = treeView->indexBelow(current);
  if (next.isValid()) {
      treeView->setCurrentIndex(next);
  }
  

プロキシモデル (QSortFilterProxyModel など) との組み合わせ

エラー/現象
QSortFilterProxyModelなどのプロキシモデルを使用している場合、indexBelow()が期待通りに動作しない、または奇妙な順序で項目を返す。

原因
QTreeViewはプロキシモデルを介してデータを表示しているため、indexBelow()はプロキシモデルのインデックスを返します。しかし、プロキシモデルがソートやフィルタリングを行っている場合、元のソースモデルとは異なる順序やサブセットが表示されます。indexBelow()はプロキシモデルの論理的な順序に従うため、ソースモデルの論理的な順序とは異なる可能性があります。

トラブルシューティング

• 必要に応じて mapToSource() / mapFromSource() を使用する
  プロキシモデルのインデックスとソースモデルのインデックス間で変換が必要な場合は、QAbstractProxyModel::mapToSource()とQAbstractProxyModel::mapFromSource()を使用します。 例えば、indexBelow()で得られたプロキシモデルのインデックスに対応するソースモデルのインデックスを取得したい場合は、proxyModel->mapToSource(proxyIndex)を使用します。
• プロキシモデルの動作を理解する
  QSortFilterProxyModelのフィルタリングやソートのロジックが、indexBelow()の返す順序にどのように影響するかを理解することが重要です。

QModelIndexが同じ位置に留まる（特にループ処理で）

エラー/現象
indexBelow()をループ内で使用してツリーを走査しようとすると、常に同じインデックスが返され、無限ループに陥る。

原因
これは通常、ループ内でindexBelow()の引数として渡すインデックスを更新し忘れている場合に発生します。

トラブルシューティング

• ループ変数としてインデックスを適切に更新する
  

  QModelIndex currentIndex = treeView->rootIndex(); // またはツリーの開始点
  while (true) {
      currentIndex = treeView->indexBelow(currentIndex); // 次のインデックスを取得
      if (!currentIndex.isValid()) {
          break; // 有効なインデックスがなくなったらループを終了
      }
      // ここでcurrentIndexに対する処理を行う
      qDebug() << "Processing item:" << treeView->model()->data(currentIndex).toString();
  }
  

  上記のコードは、ルートインデックスから開始して、ツリーの表示されている項目を順に処理していく例です。

一般的なヒント

• QTreeViewの表示設定
  rootIsDecorated、itemsExpandableなどのQTreeViewのプロパティが、期待するツリーの表示と一致しているか確認してください。これらがindexBelow()の動作に直接影響を与えることは少ないですが、ツリーの見た目や操作性と関連しており、デバッグの際に混乱を招く可能性があります。
• モデルの理解
  QTreeView::indexBelow()は、基になるQAbstractItemModelの構造と密接に関連しています。モデルのrowCount(), columnCount(), index(), parent()の実装が正しいことを確認してください。特にカスタムモデルを実装している場合、これらの関数にバグがあると、QTreeViewのナビゲーション関数が正しく動作しないことがあります。
• デバッグ
  問題が発生した場合、qDebug()を使用してQModelIndexのrow(), column(), parent().row(), isValid()、そしてそのインデックスのdata()（テキストなど）を出力し、インデックスが何を示しているのかを追跡してください。

---

QTreeView::indexBelow()は、ツリービューの表示順序に基づいて、与えられたQModelIndexの直下のアイテムのQModelIndexを取得するために使用されます。以下にいくつかの典型的な使用例を示します。

例1: 現在選択されているアイテムから下のアイテムへ移動する

この例では、ユーザーがボタンをクリックするたびに、現在選択されているアイテムの次のアイテムにツリービューの選択を移動させます。

// mainwindow.h (例)
#ifndef MAINWINDOW_H
#define MAINWINDOW_H

#include <QMainWindow>
#include <QTreeView>
#include <QPushButton>
#include <QStandardItemModel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

class MainWindow : public QMainWindow
{
    Q_OBJECT

public:
    MainWindow(QWidget *parent = nullptr);
    ~MainWindow();

private slots:
    void moveSelectionDown();

private:
    QTreeView *treeView;
    QStandardItemModel *model;
    QPushButton *downButton;
};

#endif // MAINWINDOW_H

// mainwindow.cpp (例)
#include "mainwindow.h"
#include <QDebug> // デバッグ出力用

MainWindow::MainWindow(QWidget *parent)
    : QMainWindow(parent)
{
    // モデルのセットアップ
    model = new QStandardItemModel(0, 1, this); // 1列のモデル
    model->setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "アイテム");

    // ルートアイテム
    QStandardItem *rootItem = model->invisibleRootItem();

    // トップレベルアイテムの追加
    QStandardItem *item1 = new QStandardItem("親項目 A");
    QStandardItem *item2 = new QStandardItem("親項目 B");
    QStandardItem *item3 = new QStandardItem("親項目 C");

    rootItem->appendRow(item1);
    rootItem->appendRow(item2);
    rootItem->appendRow(item3);

    // 子アイテムの追加
    item1->appendRow(new QStandardItem("子項目 A-1"));
    item1->appendRow(new QStandardItem("子項目 A-2"));
    item1->appendRow(new QStandardItem("子項目 A-3"));

    item2->appendRow(new QStandardItem("子項目 B-1"));
    item2->appendRow(new QStandardItem("子項目 B-2"));

    // QTreeViewのセットアップ
    treeView = new QTreeView(this);
    treeView->setModel(model);
    treeView->expandAll(); // すべての項目を展開

    // ボタンのセットアップ
    downButton = new QPushButton("下に移動", this);
    connect(downButton, &QPushButton::clicked, this, &MainWindow::moveSelectionDown);

    // レイアウト
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout();
    layout->addWidget(treeView);
    layout->addWidget(downButton);

    QWidget *centralWidget = new QWidget(this);
    centralWidget->setLayout(layout);
    setCentralWidget(centralWidget);

    setWindowTitle("QTreeView::indexBelow() の例");

    // 初期選択を最初の項目に設定
    if (model->rowCount() > 0) {
        treeView->setCurrentIndex(model->index(0, 0));
    }
}

MainWindow::~MainWindow()
{
}

void MainWindow::moveSelectionDown()
{
    QModelIndex currentIndex = treeView->currentIndex();
    if (!currentIndex.isValid()) {
        qDebug() << "現在の選択がありません。";
        return;
    }

    QModelIndex nextIndex = treeView->indexBelow(currentIndex);

    if (nextIndex.isValid()) {
        treeView->setCurrentIndex(nextIndex);
        treeView->scrollTo(nextIndex); // 選択された項目が見えるようにスクロール
        qDebug() << "選択を下に移動しました: " << model->data(nextIndex).toString();
    } else {
        qDebug() << "これ以上下に項目はありません。";
    }
}

// main.cpp
#include <QApplication>
#include "mainwindow.h"

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    MainWindow w;
    w.show();
    return a.exec();
}

解説

1. MainWindowのコンストラクタでQStandardItemModelを作成し、いくつかの階層的なデータを追加します。
2. QTreeViewにこのモデルを設定し、expandAll()で全ての項目を展開しておきます。これにより、indexBelow()が子項目も考慮して正しく動作することを確認しやすくなります。
3. "下に移動"ボタンがクリックされると、moveSelectionDown()スロットが呼び出されます。
4. moveSelectionDown()では、まずtreeView->currentIndex()で現在の選択項目を取得します。
5. 次に、treeView->indexBelow(currentIndex)を呼び出して、現在の項目の直下の項目（表示順序に基づいて）のQModelIndexを取得します。
6. nextIndex.isValid()で、取得したインデックスが有効かどうかを確認します。無効な場合（例: ツリーの最後の項目にいる場合）、それ以上下に項目がないことを示します。
7. 有効なインデックスが返された場合、treeView->setCurrentIndex(nextIndex)でツリービューの選択を新しい項目に移動させ、treeView->scrollTo(nextIndex)でその項目が見えるようにスクロールします。

例2: ツリービューの全項目を走査する（表示順序で）

この例では、indexBelow()を使って、ツリービューに表示されているすべての項目を、表示されている順序で走査し、そのテキストをコンソールに出力します。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // モデルのセットアップ
    QStandardItemModel model;
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "アイテム");

    QStandardItem *rootItem = model.invisibleRootItem();

    QStandardItem *parent1 = new QStandardItem("フルーツ");
    QStandardItem *child1_1 = new QStandardItem("りんご");
    QStandardItem *child1_2 = new QStandardItem("バナナ");
    parent1->appendRow(child1_1);
    parent1->appendRow(child1_2);

    QStandardItem *parent2 = new QStandardItem("野菜");
    QStandardItem *child2_1 = new QStandardItem("トマト");
    QStandardItem *child2_2 = new QStandardItem("きゅうり");
    parent2->appendRow(child2_1);
    parent2->appendRow(child2_2);

    // ネストされた子項目
    QStandardItem *grandchild2_1_1 = new QStandardItem("ミニトマト");
    child2_1->appendRow(grandchild2_1_1);

    rootItem->appendRow(parent1);
    rootItem->appendRow(parent2);

    // QTreeViewのセットアップ
    QTreeView treeView;
    treeView.setModel(&model);
    treeView.expandAll(); // 全ての項目を展開

    // ツリービューの表示 (オプション)
    treeView.setWindowTitle("ツリービューの全項目走査");
    treeView.show();

    qDebug() << "--- ツリービューの表示順序で項目を走査 ---";

    // ツリービューのルートインデックスから開始
    QModelIndex currentIndex = treeView.rootIndex();

    // 最初の項目から開始するために、rootIndex の最初の有効な子を取得
    // もしrootIndex自体が何らかのデータを持つなら、直接 currentIndex = rootIndex; でもよい
    if (model.rowCount(currentIndex) > 0) {
        currentIndex = model.index(0, 0, currentIndex);
    } else {
        currentIndex = QModelIndex(); // モデルが空の場合
    }

    while (currentIndex.isValid()) {
        qDebug() << "  " << model.data(currentIndex).toString();

        // 次の項目を取得
        currentIndex = treeView.indexBelow(currentIndex);
    }

    qDebug() << "--- 走査終了 ---";

    return a.exec();
}

1. QStandardItemModelに階層的なデータを追加します。
2. QTreeViewにモデルを設定し、expandAll()で全てを展開します。これにより、すべてのノードが表示され、indexBelow()がすべての項目を検出できるようにします。
3. 走査の開始点として、まずtreeView.rootIndex()（非表示のルート）を取得します。
4. 次に、そのルートインデックスの最初の有効な子（通常、ツリーの最初のトップレベル項目）をmodel.index(0, 0, currentIndex)で取得し、currentIndexに設定します。
5. while (currentIndex.isValid())ループを使って、indexBelow()が無効なインデックスを返すまで走査を続けます。
6. ループ内で、現在のインデックスが指すアイテムのデータをmodel.data(currentIndex)で取得し、出力します。
7. currentIndex = treeView.indexBelow(currentIndex);で、currentIndexを次の項目に更新します。このステップが最も重要で、これによってツリービューの表示順序に従って項目を順にたどることができます。

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QTreeView::indexBelow()の代替方法は、主に以下の2つのカテゴリに分けられます。

1. モデル（QAbstractItemModel）の論理的な構造を直接利用する
2. ビュー（QTreeView）の他のナビゲーション機能を利用する

モデルの論理的な構造を直接利用する

QTreeView::indexBelow()はビューの表示に依存するため、項目が折りたたまれていると子項目をスキップしたり、プロキシモデル（QSortFilterProxyModelなど）によって順序が変わったりします。モデルの論理的な構造を直接走査することで、これらの影響を受けずに、モデル内のすべての項目や特定の階層を正確にたどることができます。

使用する主なメソッドは、QAbstractItemModelの以下の関数です。

• bool QAbstractItemModel::hasChildren(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const
• int QAbstractItemModel::rowCount(const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const
• QModelIndex QAbstractItemModel::index(int row, int column, const QModelIndex &parent = QModelIndex()) const
• QModelIndex QAbstractItemModel::parent(const QModelIndex &child) const

a. 深度優先探索 (DFS - Depth-First Search) でモデルを走査する

これは、ツリーの各ブランチを可能な限り深く探索し、その後バックトラックする一般的なアルゴリズムです。

#include <QApplication>
#include <QStandardItemModel>
#include <QTreeView>
#include <QDebug>

// 補助関数: モデルを深度優先で走査
void traverseModelDFS(const QAbstractItemModel* model, const QModelIndex& parentIndex, int depth = 0)
{
    int rowCount = model->rowCount(parentIndex);
    for (int row = 0; row < rowCount; ++row) {
        QModelIndex currentIndex = model->index(row, 0, parentIndex); // 0列目のインデックスを取得
        if (currentIndex.isValid()) {
            QString indent(depth * 2, ' '); // 視覚的なインデント
            qDebug() << indent << model->data(currentIndex).toString();

            // 子がある場合は再帰的に探索
            if (model->hasChildren(currentIndex)) {
                traverseModelDFS(model, currentIndex, depth + 1);
            }
        }
    }
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QStandardItemModel model;
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "アイテム");

    QStandardItem *root = model.invisibleRootItem();

    QStandardItem *folder1 = new QStandardItem("フォルダ 1");
    QStandardItem *file1_1 = new QStandardItem("ファイル 1.1");
    QStandardItem *file1_2 = new QStandardItem("ファイル 1.2");
    folder1->appendRow(file1_1);
    folder1->appendRow(file1_2);

    QStandardItem *subFolder = new QStandardItem("サブフォルダ A");
    subFolder->appendRow(new QStandardItem("ファイル A.1"));
    file1_2->appendRow(subFolder); // ファイルの下にサブフォルダ

    QStandardItem *folder2 = new QStandardItem("フォルダ 2");
    folder2->appendRow(new QStandardItem("ファイル 2.1"));

    root->appendRow(folder1);
    root->appendRow(folder2);

    QTreeView treeView;
    treeView.setModel(&model);
    // treeView.expandAll(); // DFS走査はビューの展開状態に依存しない

    qDebug() << "--- モデルの深度優先走査 ---";
    traverseModelDFS(&model, QModelIndex()); // ルートインデックスから開始

    treeView.setWindowTitle("モデル走査の例");
    treeView.show();

    return a.exec();
}

メリット

• 全項目を網羅的に処理できる。
• モデルの実際の階層構造を正確にたどれる。
• ビューの展開状態に左右されない。

デメリット

• QTreeViewの表示順序（フィルタリングやソートが適用された場合）とは異なる順序になることがある。
• indexBelow()のような単純な「次へ」のナビゲーションとは異なり、再帰的なロジックが必要になる場合がある。

b. 幅優先探索 (BFS - Breadth-First Search) でモデルを走査する

ツリーをレベルごとに走査したい場合に適しています。QQueueなどのデータ構造を使用して実装します。

#include <QApplication>
#include <QStandardItemModel>
#include <QTreeView>
#include <QDebug>
#include <QQueue> // BFS用

// 補助関数: モデルを幅優先で走査
void traverseModelBFS(const QAbstractItemModel* model)
{
    QQueue<QModelIndex> queue;

    // ルートの子をキューに追加
    int rootRowCount = model->rowCount(QModelIndex());
    for (int row = 0; row < rootRowCount; ++row) {
        queue.enqueue(model->index(row, 0, QModelIndex()));
    }

    while (!queue.isEmpty()) {
        QModelIndex currentIndex = queue.dequeue();
        if (currentIndex.isValid()) {
            qDebug() << model->data(currentIndex).toString();

            // 現在のインデックスの子をキューに追加
            int childRowCount = model->rowCount(currentIndex);
            for (int row = 0; row < childRowCount; ++row) {
                queue.enqueue(model->index(row, 0, currentIndex));
            }
        }
    }
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QStandardItemModel model;
    model.setHeaderData(0, Qt::Horizontal, "アイテム");

    QStandardItem *root = model.invisibleRootItem();

    QStandardItem *p1 = new QStandardItem("レベル1-A");
    QStandardItem *c1_1 = new QStandardItem("レベル2-A1");
    QStandardItem *c1_2 = new QStandardItem("レベル2-A2");
    p1->appendRow(c1_1);
    p1->appendRow(c1_2);

    QStandardItem *gc1_1_1 = new QStandardItem("レベル3-A1a");
    c1_1->appendRow(gc1_1_1);

    QStandardItem *p2 = new QStandardItem("レベル1-B");
    QStandardItem *c2_1 = new QStandardItem("レベル2-B1");
    p2->appendRow(c2_1);

    root->appendRow(p1);
    root->appendRow(p2);

    QTreeView treeView;
    treeView.setModel(&model);
    treeView.expandAll();
    treeView.setWindowTitle("モデル走査 (BFS) の例");
    treeView.show();

    qDebug() << "--- モデルの幅優先走査 ---";
    traverseModelBFS(&model);
    qDebug() << "--- 走査終了 ---";

    return a.exec();
}

メリット

• 深すぎる再帰呼び出しを避けることができる。
• ツリーをレベルごとに処理したい場合に便利。

デメリット

• 再帰ではないため、実装にキューが必要。

ビューの他のナビゲーション機能を利用する

QTreeViewやその基底クラスであるQAbstractItemViewには、indexBelow()以外にも、特定のナビゲーションに役立つ関数がいくつかあります。

a. QTreeView::indexAbove()

indexBelow()の逆で、指定されたインデックスの「上」のアイテムを取得します。連続的な上下移動が必要な場合に利用できます。

// QTreeViewのコードの一部
void MyTreeViewClass::moveSelectionUp()
{
    QModelIndex currentIndex = treeView->currentIndex();
    if (!currentIndex.isValid()) return;

    QModelIndex prevIndex = treeView->indexAbove(currentIndex);
    if (prevIndex.isValid()) {
        treeView->setCurrentIndex(prevIndex);
        treeView->scrollTo(prevIndex);
    } else {
        qDebug() << "これ以上上に項目はありません。";
    }
}

b. QAbstractItemView::moveCursor() (QKeyEventと組み合わせて)

キーイベント処理内でカーソルを移動させるために使用できます。これは内部的にindexBelow()のような関数を呼び出している可能性が高いですが、より高レベルな抽象化を提供します。

// QTreeViewを継承したカスタムクラスでイベントをオーバーライドする例
void MyTreeView::keyPressEvent(QKeyEvent *event)
{
    if (event->key() == Qt::Key_Down) {
        // デフォルトのDownキーの動作を模倣
        QAbstractItemView::moveCursor(QAbstractItemView::MoveDown, Qt::NoModifier);
        event->accept();
    } else if (event->key() == Qt::Key_Up) {
        // デフォルトのUpキーの動作を模倣
        QAbstractItemView::moveCursor(QAbstractItemView::MoveUp, Qt::NoModifier);
        event->accept();
    } else {
        QTreeView::keyPressEvent(event); // 親クラスのハンドラを呼び出す
    }
}

メリット

• キーボード操作に合わせたナビゲーションを容易に実装できる。
• Qtのデフォルトのカーソル移動ロジックを再利用できる。