Qtツリービューでマウス操作！indexAt()でアイテム情報を取得する方法

2025-05-27

QTreeView::indexAt() 関数は、QTreeView（ツリービュー）内の特定の位置（ポイント）にあるモデルインデックス (QModelIndex) を取得するために使用されます。

より詳しく説明すると：

QModelIndex: これは、Qtのモデル/ビューアーキテクチャにおいて、データモデル内の特定のアイテムを一意に識別するためのオブジェクトです。モデル内の行、列、そして親との関係性などの情報を持っています。
indexAt(const QPoint &point): この関数が受け取る唯一の引数です。QPoint オブジェクトは、ツリービューのビューポート（実際に表示されている領域）内の座標（x, y）を表します。
QTreeView: 階層的なデータを表示するためのQtのビュークラスです。ファイルシステムのエクスプローラーや、組織図などを表示するのに適しています。

この関数の役割と使い方：

QTreeView::indexAt() 関数を使うと、ユーザーがツリービュー内のどこをクリックしたか、マウスカーソルがどこにあるかといった視覚的な位置情報から、その位置に対応するデータモデル内のアイテムを特定できます。

具体的な使用例：

例えば、ユーザーがツリービュー内の特定のエントリーを右クリックしたとします。このとき、マウスカーソルの位置 (QPoint) を indexAt() 関数に渡すことで、右クリックされたエントリーに対応する QModelIndex を取得できます。この QModelIndex を使って、そのアイテムのデータを取得したり、関連する操作（コンテキストメニューの表示など）を実行したりすることができます。

指定された QPoint にアイテムが存在しない場合（例えば、空白の領域をクリックした場合）、無効な QModelIndex（QModelIndex()）が返されます。無効な QModelIndex は、isValid() 関数で false を返すことで確認できます。
指定された QPoint に対応するアイテムが存在する場合、そのアイテムの QModelIndex が返されます。

一般的なエラーとトラブルシューティング：

- エラー
  関数に渡す QPoint が、ツリービューのビューポートの範囲外である場合、または不正な値（例えば負の値）である場合、期待される QModelIndex が返ってこない可能性があります。多くの場合、無効な QModelIndex（isValid() が false を返す）が返されますが、場合によっては予期せぬ動作を引き起こす可能性も否定できません。
- トラブルシューティング
  - QMouseEvent などのイベントから取得した QPoint を直接渡す場合は、その座標がビューポートの範囲内であることを確認してください。
  - 固定の座標を使用する場合は、ツリービューのサイズやスクロール状態を考慮して、適切な範囲内の QPoint を指定してください。
  - デバッガーを使用して、渡している QPoint の値が正しいか確認してください。
期待するアイテムが存在しない位置を指定する：
- エラー
  指定した QPoint に対応するツリービューのアイテムが存在しない場合（例えば、アイテム間の空白領域をクリックした場合）、indexAt() は無効な QModelIndex を返します。
- トラブルシューティング
  - indexAt() の戻り値である QModelIndex の isValid() メソッドを必ずチェックし、有効なインデックスかどうかを確認してください。
  - 有効なインデックスの場合のみ、そのインデックスに対する操作（データの取得、子アイテムの取得など）を行うようにしてください。
誤ったタイミングで indexAt() を呼び出す：
- エラー
  ツリービューのレイアウトがまだ完了していない状態や、アイテムがまだ完全にロードされていない状態などで indexAt() を呼び出すと、意図したアイテムのインデックスを取得できないことがあります。
- トラブルシューティング
  - ツリービューの初期化やデータのロードが完了した後で indexAt() を呼び出すようにしてください。
  - 必要に応じて、レイアウトが更新されるシグナル（例えば QTreeView::layoutChanged()）などを利用して、適切なタイミングで処理を行うようにしてください。
スクロールを考慮しない：
- エラー
  ツリービューがスクロールされている場合、ビューポート内の同じ視覚的な位置でも、対応するモデルインデックスは変わる可能性があります。indexAt() に渡す QPoint は、常にビューポートの左上を原点とする座標であるため、スクロール位置を考慮する必要はありません。ただし、誤ってグローバル座標やウィジェット全体の座標を渡してしまうと、意図しない結果になります。
- トラブルシューティング
  - QMouseEvent::pos() など、イベントが発生したウィジェット内のローカル座標をそのまま indexAt() に渡すようにしてください。グローバル座標 (QMouseEvent::globalPos()) を使用する場合は、QWidget::mapFromGlobal() などでビューポートのローカル座標に変換する必要があります。
カスタムデリゲートとの連携の問題：
- エラー
  カスタムデリゲートを使用している場合、デリゲートが描画する領域が標準のアイテムの領域と異なることがあります。この場合、indexAt() が期待通りに動作しない可能性があります。
- トラブルシューティング
  - カスタムデリゲートの sizeHint() や paint() メソッドが、アイテムの実際の描画領域を正しく反映しているか確認してください。
  - デリゲート内でマウスイベントを処理する場合は、イベントの座標がデリゲート内のどの要素に対応するかを考慮する必要があります。
モデルの構造が動的に変化する場合：
- エラー
  indexAt() を呼び出した後にモデルの構造が大きく変化した場合（行や列の挿入・削除、並べ替えなど）、以前に取得した QModelIndex が無効になる可能性があります。
- トラブルシューティング
  - モデルの構造が変化する可能性がある場合は、QModelIndex を長期的に保存して使用することは避けるべきです。必要なときに indexAt() を再度呼び出して、最新の QModelIndex を取得するようにしてください。
  - モデルのシグナル（例えば rowsInserted(), rowsRemoved(), modelReset() など）を監視し、必要に応じて関連する処理を更新してください。

デバッグのヒント：

簡単なテストケースを作成し、特定の問題を再現させて、原因を特定しやすくしてください。
デバッガーのブレークポイントを設定し、indexAt() が呼び出される際の変数の状態をステップ実行で確認してください。
qDebug() を使用して、indexAt() に渡している QPoint の値と、返ってきた QModelIndex の row(), column(), parent() などの情報を出力して確認してください。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QMouseEvent>
#include <QDebug>

class MyTreeView : public QTreeView
{
public:
    MyTreeView(QWidget *parent = nullptr) : QTreeView(parent) {}

protected:
    void mousePressEvent(QMouseEvent *event) override
    {
        if (event->button() == Qt::LeftButton) {
            QPoint clickPos = event->pos();
            QModelIndex index = indexAt(clickPos);

            if (index.isValid()) {
                qDebug() << "クリックされたアイテムの行:" << index.row();
                QVariant data = model()->data(index, Qt::DisplayRole);
                qDebug() << "クリックされたアイテムのデータ:" << data.toString();
            } else {
                qDebug() << "アイテムのない場所がクリックされました。";
            }
        }
        QTreeView::mousePressEvent(event); // 親クラスのイベント処理も忘れずに呼び出す
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // モデルの作成
    QStandardItemModel model;
    QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
    for (int i = 0; i < 3; ++i) {
        QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("親アイテム %1").arg(i));
        parentItem->appendRow(item);
        for (int j = 0; j < 2; ++j) {
            QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("子アイテム %1-%2").arg(i).arg(j));
            item->appendRow(childItem);
        }
    }

    // ビューの作成とモデルの設定
    MyTreeView view;
    view.setModel(&model);
    view.expandAll(); // すべてのアイテムを展開して表示

    view.show();

    return a.exec();
}

コードの説明：

MyTreeView クラスは QTreeView を継承し、マウスプレスイベントをオーバーライドしています。
mousePressEvent() 関数内で、左マウスボタンがクリックされたかどうかを確認します。
クリックされた位置 (event->pos()) を indexAt() 関数に渡して、対応する QModelIndex を取得します。
取得した QModelIndex が isValid() であるか（有効なインデックスであるか）を確認します。
有効なインデックスであれば、その行番号 (index.row()) と表示データ (model()->data(index, Qt::DisplayRole)) を取得して出力します。
クリックされた位置にアイテムがない場合は、その旨をコンソールに出力します。
最後に、親クラスの mousePressEvent() を呼び出して、デフォルトのイベント処理も行います。
main() 関数では、簡単な階層構造を持つ QStandardItemModel を作成し、それを MyTreeView に設定して表示しています。

この例では、ツリービュー内でマウスの右ボタンがクリックされたときに、クリックされたアイテムに対応するコンテキストメニューを表示します。

#include <QApplication>
#include <QTreeView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QMouseEvent>
#include <QMenu>
#include <QAction>
#include <QDebug>

class MyTreeView : public QTreeView
{
public:
    MyTreeView(QWidget *parent = nullptr) : QTreeView(parent) {}

protected:
    void mousePressEvent(QMouseEvent *event) override
    {
        if (event->button() == Qt::RightButton) {
            QPoint clickPos = event->pos();
            QModelIndex index = indexAt(clickPos);

            if (index.isValid()) {
                QMenu menu(this);
                QAction *infoAction = menu.addAction(QString("アイテム '%1' の情報を表示").arg(model()->data(index, Qt::DisplayRole).toString()));
                QAction *selectedAction = menu.exec(viewport()->mapToGlobal(clickPos));

                if (selectedAction == infoAction) {
                    qDebug() << "アイテムの情報表示アクションが選択されました。";
                    // ここでアイテムの情報を表示する処理などを実装します。
                }
            }
        }
        QTreeView::mousePressEvent(event);
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // モデルの作成 (サンプルコード 1 と同様)
    QStandardItemModel model;
    QStandardItem *parentItem = model.invisibleRootItem();
    for (int i = 0; i < 3; ++i) {
        QStandardItem *item = new QStandardItem(QString("親アイテム %1").arg(i));
        parentItem->appendRow(item);
        for (int j = 0; j < 2; ++j) {
            QStandardItem *childItem = new QStandardItem(QString("子アイテム %1-%2").arg(i).arg(j));
            item->appendRow(childItem);
        }
    }

    // ビューの作成とモデルの設定 (サンプルコード 1 と同様)
    MyTreeView view;
    view.setModel(&model);
    view.expandAll();

    view.show();

    return a.exec();
}

コードの説明：

mousePressEvent() 関数内で、右マウスボタンがクリックされたかどうかを確認します。
クリックされた位置の QModelIndex を indexAt() で取得します。
有効なインデックスであれば、新しい QMenu オブジェクトを作成します。
メニューに、クリックされたアイテムの表示名を含むアクションを追加します。
menu.exec() を呼び出してコンテキストメニューを表示します。このとき、クリック位置をグローバル座標に変換 (viewport()->mapToGlobal(clickPos)) して渡す必要があります。
選択されたアクションに応じて、対応する処理（ここではコンソールにメッセージを出力）を行います。

コンテキストメニューを表示する際には、メニューの位置をグローバル座標で指定する必要があります。そのため、viewport()->mapToGlobal(clickPos) を使用して、クリック位置をグローバル座標に変換しています。
indexAt() の戻り値である QModelIndex が有効かどうかを isValid() で確認することは非常に重要です。無効なインデックスに対して操作を行うと、予期せぬエラーが発生する可能性があります。
indexAt() に渡す QPoint は、ビューポートのローカル座標である必要があります。マウスイベントから取得する pos() は、ウィジェット（この場合は MyTreeView）のローカル座標なので、そのまま indexAt() に渡すことができます。

indexAt() の代替となるプログラミング手法：

選択モデル (QItemSelectionModel) の利用
- ツリービューは、現在選択されているアイテムを管理するための QItemSelectionModel を持っています。selectionModel()->currentIndex() を使用すると、現在フォーカスがある（通常は最後にクリックまたはキー操作で選択された）アイテムの QModelIndex を取得できます。
- 利点
  ユーザーの選択状態に基づいて処理を行いたい場合に便利です。複数のアイテムが選択されている場合は、selectionModel()->selectedIndexes() で選択されたすべてのインデックスのリストを取得できます。
- 使用例
  選択されたアイテムに対して特定のアクションを実行したり、選択状態の変化に応じてUIを更新したりする場合。

```
QModelIndex currentIndex = view->selectionModel()->currentIndex();
if (currentIndex.isValid()) {
    qDebug() << "現在の選択アイテムのインデックス:" << currentIndex;
    // 選択されたアイテムに対する処理
}

QModelIndexList selectedIndexes = view->selectionModel()->selectedIndexes();
for (const QModelIndex &index : selectedIndexes) {
    qDebug() << "選択されたアイテムのインデックス:" << index;
    // 選択された各アイテムに対する処理
}
```

モデルのデータに、アイテムを一意に識別するための情報（IDなど）をカスタムデータロールとして格納しておき、その情報に基づいてアイテムを検索する方法です。QAbstractItemModel::index(row, column, parent) や、モデルによっては検索用の専用メソッドを提供している場合があります。
利点
視覚的な位置に依存せず、論理的なIDやキーに基づいてアイテムを特定できます。モデルの構造が変化しても、IDが変わらなければアイテムを特定できます。
使用例
データベースのレコードに対応するアイテムを、そのレコードのIDに基づいて操作したい場合など。

// モデルにカスタムデータロールを設定（例：ItemIdRole = Qt::UserRole + 1）
model->setData(index, itemId, Qt::UserRole + 1);

// IDに基づいてインデックスを検索する（モデルの実装に依存）
QModelIndex findIndexById(QAbstractItemModel *model, const QVariant &id)
{
    for (int row = 0; row < model->rowCount(); ++row) {
        QModelIndex index = model->index(row, 0);
        if (model->data(index, Qt::UserRole + 1) == id) {
            return index;
        }
        // 子アイテムも再帰的に検索する必要があるかもしれません。
    }
    return QModelIndex(); // 見つからなかった場合
}

QVariant targetId = 123;
QModelIndex foundIndex = findIndexById(view->model(), targetId);
if (foundIndex.isValid()) {
    qDebug() << "ID '" << targetId << "' のアイテムのインデックス:" << foundIndex;
}

アイテムのパスや識別子に基づく検索

モデルが階層構造を持つ場合、ルートからのパス（例えば、親アイテムのテキストと子アイテムのテキストの組み合わせなど）に基づいてアイテムを検索するロジックを実装できます。
利点
視覚的な位置が変わっても、論理的なパスが同じであればアイテムを特定できます。
使用例
ファイルシステムのような階層構造で、特定のパスのファイルやディレクトリに対応するアイテムを操作したい場合。

QModelIndex findIndexByPath(QAbstractItemModel *model, const QStringList &path, const QModelIndex &parent = QModelIndex())
{
    if (path.isEmpty()) {
        return parent;
    }
    QString currentName = path.first();
    for (int row = 0; row < model->rowCount(parent); ++row) {
        QModelIndex index = model->index(row, 0, parent);
        if (model->data(index, Qt::DisplayRole).toString() == currentName) {
            QStringList remainingPath = path;
            remainingPath.removeFirst();
            return findIndexByPath(model, remainingPath, index);
        }
    }
    return QModelIndex(); // 見つからなかった場合
}

QStringList targetPath = {"親アイテム 0", "子アイテム 0-1"};
QModelIndex foundIndex = findIndexByPath(view->model(), targetPath);
if (foundIndex.isValid()) {
    qDebug() << "パス '" << targetPath.join("/") << "' のアイテムのインデックス:" << foundIndex;
}

indexAt() の適切な使用場面

indexAt() は、主にビューの視覚的な位置に基づいてアイテムを特定する必要がある場合に適しています。例えば、

Qt QTreeView::collapseAll()徹底解説：ツリー表示を効率的に折りたたむ方法

QTreeView は、Qtのウィジェットの一つで、階層的なデータをツリー形式で表示するために使われます。例えば、ファイルエクスプローラーのように、フォルダの中にさらにフォルダやファイルがあるような構造を表示するのに最適です。QTreeView::collapseAll() は、この QTreeView クラスのパブリックスロット (public slot) と呼ばれる関数です。この関数を呼び出すと、現在展開されている（開いている）ツリーのすべてのアイテムが閉じられ、階層が隠された状態になります。

Qt QTreeViewの「折りたたみ」を極める：collapsed()シグナルのすべて

Qt プログラミングにおける void QTreeView::collapsed() は、QTreeView ウィジェットが提供するシグナルの一つです。まず、QTreeView について簡単に説明します。QTreeView は、Qt のモデル/ビューアーキテクチャの一部であり、階層的なデータをツリー構造として表示するためのウィジェットです。例えば、ファイルエクスプローラーのようなツリー表示を実装する際に使用されます。ツリーの各項目（ノード）は、子項目を持つことができ、それらを「展開（expanded）」したり「折りたたむ（collapsed）」ことができます。

Qt 開発：QTreeView で columnAt() を活用したインタラクティブなUI実装

QTreeView::columnAt(int x) は、Qt の QTreeView クラスに属する関数の一つです。この関数は、指定された水平方向の座標（ピクセル単位）にある論理的な列のインデックスを返します。もう少し詳しく説明します。戻り値: 指定された x 座標が、いずれかの列の範囲内にある場合、その列の論理的なインデックス（0から始まる整数）が返されます。指定された x 座標が、どの列の範囲にも含まれない場合（例えば、ウィジェットの左端より左や、すべての列の右端より右）、通常は -1 が返されます。