Qt GUI で上付き文字を設定する： QTextDocument::setSuperScriptBaseline() の詳細解説

QTextDocument::setSuperScriptBaseline() メソッドは、Qt GUI ライブラリにおいて、テキストドキュメント内の特定の文字列に対して上付き文字のベースラインを設定するために使用されます。上付き文字とは、通常の文字よりも少し上に配置される文字のことです。数式や化学式などでよく用いられます。

メソッドの役割

このメソッドは、QTextDocument オブジェクト内の特定の範囲に適用されます。範囲は、QTextCursor オブジェクトを使用して指定します。setSuperScriptBaseline() メソッドは、その範囲内の文字列に対して、ベースラインとなるオフセット値を設定します。このオフセット値は、通常の文字列のベースラインからの相対的な位置を表します。

構文

void QTextDocument::setSuperScriptBaseline(const QTextCursor &cursor, qreal baseline)

引数

• baseline: 上付き文字のベースラインとなるオフセット値
• cursor: 対象となるテキスト範囲を指定する QTextCursor オブジェクト

戻り値

なし

例

QTextDocument document;
QTextCursor cursor(&document);

// 特定の範囲を選択
cursor.setPosition(startPosition);
cursor.movePosition(QTextCursor::EndOfWord, 1);

// 上付き文字のベースラインを設定
document.setSuperScriptBaseline(cursor, 0.2);

この例では、startPosition から始まる単語内の文字列に対して、上付き文字のベースラインを通常の文字列のベースラインから 0.2 ポイント上に設定します。

• 上付き文字のベースラインに加えて、フォントサイズやフォントファミリーなどの他の文字書式設定も適用できます。
• QTextDocument::setSuperScriptBaseline() メソッドは、テキストエディタなどのウィジェットで使用される QTextEdit クラスでも使用できます。

---

#include <QTextDocument>
#include <QTextCursor>

int main() {
  // テキストドキュメントを作成
  QTextDocument document;
  QTextCursor cursor(&document);

  // テキストを挿入
  cursor.insertText("This is a sample text. ");
  cursor.insertText("X^2", QTextFormat::toCharFormat(Qt::SubscriptCharacterFormat));
  cursor.insertText(" is a mathematical formula.");

  // 特定の範囲を選択
  cursor.setPosition(cursor.position() - 3); // "X^2" を選択
  cursor.movePosition(QTextCursor::EndOfWord, 1);

  // 上付き文字のベースラインを設定
  document.setSuperScriptBaseline(cursor, 0.2);

  // テキストをレンダリングして表示
  QTextEdit textEdit;
  textEdit.setDocument(&document);
  textEdit.show();

  return 0;
}

例2：ボタンに上付き文字ラベルを設定する

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QTextDocument>
#include <QTextCursor>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // ボタンを作成
  QPushButton button("Click me");

  // テキストドキュメントを作成
  QTextDocument document;
  QTextCursor cursor(&document);

  // テキストを挿入
  cursor.insertText("Click me");
  cursor.insertText(" (", QTextFormat::toCharFormat(Qt::SubscriptCharacterFormat));
  cursor.insertText("2", QTextFormat::toCharFormat(Qt::SubscriptCharacterFormat));
  cursor.insertText(")");

  // ボタンのラベルにテキストドキュメントを設定
  button.setText(document.text());

  // 上付き文字のベースラインを設定
  document.setSuperScriptBaseline(cursor, 0.2);

  // ボタンを表示
  button.show();

  return app.exec();
}

説明

例1 では、QTextDocument オブジェクト内に "This is a sample text. X^2 is a mathematical formula." というテキストを挿入します。その後、"X^2" という文字列を選択し、setSuperScriptBaseline() メソッドを使用して上付き文字のベースラインを 0.2 ポイント上に設定します。最後に、QTextEdit ウィジェットを使用してテキストをレンダリングして表示します。

例2 では、QPushButton ウィジェットに "Click me (2)" というラベルを設定します。setSuperScriptBaseline() メソッドを使用して、"2" という文字列の上付き文字のベースラインを 0.2 ポイント上に設定します。

これらの例は、QTextDocument::setSuperScriptBaseline() メソッドを使用して、Qt GUI アプリケーションで上付き文字を設定する方法を示しています。

• これらの例はあくまで基本的な使用方法を示しています。より複雑なレイアウトや書式設定には、QTextFormat クラスなどの他の機能を使用する必要があります。

---

代替方法

• QTextCharFormat::setBaselinePosition()` メソッドを使用する
  

このメソッドは、QTextCharFormat オブジェクトを使用して、特定の文字列に対するベースライン位置を直接設定します。QTextDocument::setSuperScriptBaseline() メソッドよりも汎用性が高く、上付き文字だけでなく下付き文字にも適用できます。

QTextCharFormat format;
format.setBaselinePosition(0.2); // 0.2 ポイント上に設定

// 特定の範囲にフォーマットを適用
cursor.setCharFormat(format);

• CSS スタイルシートを使用する
  

Qt GUI では、CSS スタイルシートを使用してテキストの書式設定を指定することができます。上付き文字のベースラインも CSS で設定できます。

.superscript {
  vertical-align: super;
}

この CSS スタイルを特定の範囲に適用するには、QTextDocument::setHtml() メソッドを使用します。

QString html = "<span class=\"superscript\">X^2</span> is a mathematical formula.";
document.setHtml(html);

それぞれの方法の利点と欠点

方法	利点	欠点
QTextDocument::setSuperScriptBaseline()	シンプルで使いやすい	汎用性が低い
QTextCharFormat::setBaselinePosition()	汎用性が高い	コードが複雑になる可能性がある
CSS スタイルシート	柔軟性が高い	CSS の知識が必要

状況に応じて、最適な代替方法を選択する必要があります。

• CSS でテキストの書式設定を細かく制御したい場合は、CSS スタイルシートを使用します。
• より汎用性が高い方法を求めている場合は、QTextCharFormat::setBaselinePosition() メソッドを使用します。
• シンプルで使いやすい方法を求めている場合は、QTextDocument::setSuperScriptBaseline() メソッドがおすすめです。

• 上記以外にも、QTextTable や QTextFrame などの他のクラスを使用して、上付き文字を配置する方法があります。