Qtでボタンやコンボボックスをもっと自由に！スタイルシートとQStyle::drawComplexControl()を組み合わせた描画

QStyle::drawComplexControl()は、Qt Widgetsにおける複雑なウィジェットの描画処理を担う関数です。スピンボックス、コンボボックス、スクロールバー、スライダーなどのウィジェットの描画に使用されます。この関数は、スタイルシートが有効な場合でも、プラットフォーム固有のスタイルでウィジェットを描画します。

関数詳細

void drawComplexControl(ComplexControl control,
                        const QStyleOptionComplex *option,
                        QPainter *painter,
                        const QWidget *widget = nullptr) const;

widget: 描画対象のウィジェット（省略可）
painter: 描画処理を行うQPainterオブジェクト
control: 描画するウィジェットの種類を指定するQStyle::ComplexControl型の枚挙値

機能

drawComplexControl()は、以下の機能を提供します。

スタイルシートの影響を受けない描画
プラットフォーム固有のスタイルによる描画
ウィジェットの状態（アクティブ、無効化など）に基づいた描画
ウィジェットのフレーム、背景、コンテンツなどの描画

使い方

drawComplexControl()を使用するには、以下の手順が必要です。

QStyleオブジェクトを取得する
描画対象のウィジェットの種類を指定するQStyle::ComplexControl型の変数を用意する
QPainterオブジェクトを作成する
drawComplexControl()関数を呼び出し、引数として上記で用意した変数とオブジェクトを渡す

例

QStyle *style = widget->style();
QStyleOptionComplex option;
option.initFrom(widget);
QPainter painter(&option);
style->drawComplexControl(QStyle::CC_ComboBox, &option, &painter);

この例では、widgetウィジェットのスタイルを取得し、QStyleOptionComplex構造体にウィジェットの状態を設定して、QPainterオブジェクトを作成します。最後に、drawComplexControl()関数を呼び出して、コンボボックスを描画します。

drawComplexControl()は、複雑なウィジェットの描画処理を抽象化するための関数です。カスタムウィジェットを作成する場合や、ウィジェットの描画をカスタマイズする場合に役立ちます。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);
    QStyle *style = style();

    QStyleOptionComplex option;
    option.initFrom(this);
    option.rect = QRect(0, 0, width(), height());

    style->drawComplexControl(QStyle::CC_SpinBox, &option, &painter);
}

例2：コンボボックスの描画

この例では、コンボボックスのフレーム、背景、ドロップダウンボタン、リストを描画します。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);
    QStyle *style = style();

    QStyleOptionComplex option;
    option.initFrom(this);
    option.rect = QRect(0, 0, width(), height());

    style->drawComplexControl(QStyle::CC_ComboBox, &option, &painter);
}

例3：スクロールバーの描画

この例では、スクロールバーのフレーム、背景、スライダー、矢印ボタンを描画します。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);
    QStyle *style = style();

    QStyleOptionComplex option;
    option.initFrom(this);
    option.rect = QRect(0, 0, width(), height());

    style->drawComplexControl(QStyle::CC_ScrollBar, &option, &painter);
}

例4：スライダーの描画

この例では、スライダーのフレーム、背景、ノブを描画します。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);
    QStyle *style = style();

    QStyleOptionComplex option;
    option.initFrom(this);
    option.rect = QRect(0, 0, width(), height());

    style->drawComplexControl(QStyle::CC_Slider, &option, &painter);
}

サブウィジェットを利用する

多くの複雑なウィジェットは、スピンボックスやコンボボックスのように、内部に複数の子ウィジェットを持つ構造になっています。このような場合、個々のサブウィジェットに対してdrawControl()などの描画関数を直接呼び出すことで、よりきめ細かな描画制御が可能になります。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);

    // フレームを描画
    style()->drawPrimitive(QStyle::Primitive::Frame, option, &painter);

    // 矢印ボタンを描画
    for (QAbstractButton *button : arrowButtons()) {
        style()->drawControl(QStyle::CE_PushButton, option, &painter, button);
    }

    // 編集領域を描画
    style()->drawControl(QStyle::CE_LineEdit, option, &painter, editField());
}

利点

コードがわかりやすくなる
スタイルシートの影響を受けやすい
個々の要素を独立して制御できる

欠点

コード量が増える
複雑なレイアウトのウィジェットには適用しにくい

カスタムペイント関数を用いる

QStyle::drawComplexControl()の代わりに、完全にカスタムのペイント関数を用意することもできます。この方法では、描画処理を完全に独自に実装することができ、より高度なカスタマイズが可能になります。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);

    // フレームを描画
    painter.setPen(Qt::black);
    painter.drawRect(0, 0, width(), height());

    // 矢印ボタンを描画
    for (QAbstractButton *button : arrowButtons()) {
        drawArrowButton(painter, button);
    }

    // 編集領域を描画
    painter.setPen(Qt::gray);
    painter.drawText(editField()->rect(), Qt::AlignCenter, editField()->text());
}

void MyWidget::drawArrowButton(QPainter &painter, QAbstractButton *button)
{
    // ... ボタンを描画する処理
}

利点

アニメーションなどの高度な表現が可能
完全な描画自由度

欠点

コードの保守性が悪くなる
開発コストが高い

QPainter APIを直接利用する

どうしてもQStyle::drawComplexControl()やカスタムペイント関数が不適切な場合は、QPainter APIを直接利用して描画処理を行うこともできます。ただし、この方法は煩雑で、スタイルシートの影響を受けないため、慎重に検討する必要があります。

void MyWidget::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
    QPainter painter(this);

    // フレームを描画
    painter.setPen(Qt::black);
    painter.drawRect(0, 0, width(), height());

    // 矢印ボタンを描画
    for (QAbstractButton *button : arrowButtons()) {
        painter.setBrush(Qt::gray);
        painter.drawPolygon(button->geometry());
    }

    // 編集領域を描画
    painter.setPen(Qt::gray);
    painter.drawText(editField()->rect(), Qt::AlignCenter, editField()->text());
}

利点

最も低レベルな描画制御が可能

テストやデバッグが困難
スタイルシートの影響を受けない
非常に煩雑でコードが読みづらい