上級者向けQt Widgetsスタイルヒント：QStyleHintReturnクラスを駆使して独自のスタイルエンジンを構築

QStyleHintReturnクラスは、Qt Widgetsにおけるスタイルヒントの返答に使用されるクラスです。スタイルヒントは、ウィジェットの外観や動作を制御するためにスタイルエンジンによって提供される情報です。QStyleHintReturnクラスは、基本的なデータ型だけでなく、マスク、パレット、ピクセルマップなどのより複雑なデータを返答するために使用されます。

主な用途

ピクセルマップを返答する場合：例えば、ウィジェットの装飾画像を定義するために使用できます。
パレットを返答する場合：例えば、ウィジェットの特定の状態におけるテキストの色を定義するために使用できます。
マスクを返答する場合：例えば、プッシュボタンの押下時のハイライト領域を定義するために使用できます。

使い方

QStyleHintReturnクラスを使用するには、以下の手順に従います。

スタイルヒントを返答するスタイルヒント関数を定義します。この関数は、QStyleHintReturnクラスの派生クラスを返答する必要があります。
スタイルヒント関数をスタイルエンジンのstyleHint()メソッドに接続します。
スタイルヒント関数は、QStyleOption構造体を受け取り、スタイルヒントの値を返答します。

例

以下の例は、プッシュボタンの押下時のハイライト領域を定義するスタイルヒント関数を示しています。

class MyStyle : public QStyle
{
public:
    QStyleHintReturn QStyleHintReturn::styleHint(QStyleOptionHint hint, const QStyleOption *option) const override
    {
        if (hint == QStyle::SH_PushButton_Pressed) {
            QStyleHintReturnMask mask;
            mask.region = option->rect;
            return QStyleHintReturn(mask);
        }
        return QStyle::styleHint(hint, option);
    }
};

この例では、MyStyleクラスはQStyleクラスの派生クラスであり、styleHint()メソッドをオーバーライドしています。styleHint()メソッドは、QStyleOptionHint列挙体のSH_PushButton_Pressed値が渡された場合、QStyleHintReturnMask構造体を使用してプッシュボタンの押下時のハイライト領域を定義します。

QStyleHintReturnクラスの詳細については、Qtドキュメントを参照してください。

QStyleHintReturnクラスを使用するには、Qt Widgetsモジュールをインクルードする必要があります。
QStyleHintReturnクラスは、Qt Widgets 4.5以降で使用できます。

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QStyle>
#include <QStyleOption>
#include <QStyleHintReturn>

class MyStyle : public QStyle
{
public:
    QStyleHintReturn QStyleHintReturn::styleHint(QStyleOptionHint hint, const QStyleOption *option) const override
    {
        if (hint == QStyle::SH_PushButton_Pressed) {
            QStyleHintReturnMask mask;
            mask.region = option->rect;
            return QStyleHintReturn(mask);
        }
        return QStyle::styleHint(hint, option);
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // MyStyleスタイルを適用する
    app.setStyle("MyStyle");

    // プッシュボタンを作成する
    QPushButton button("押す");
    button.show();

    return app.exec();
}

このコードでは、以下の処理が行われます。

MyStyleクラスを定義します。このクラスはQStyleクラスの派生クラスであり、styleHint()メソッドをオーバーライドして、プッシュボタンの押下時のハイライト領域を定義します。
main()関数で、Qtアプリケーションを作成します。
MyStyleスタイルをアプリケーションに適用します。
"押す"というラベルを持つプッシュボタンを作成し、表示します。
アプリケーションを実行します。

スタイルオプションの直接変更

最も単純な方法は、スタイルオプション構造体を直接変更して、必要な情報を設定することです。これは、単純なスタイルヒントを返答する場合に有効です。

void MyStyle::styleHint(QStyleOptionHint hint, const QStyleOption *option) const
{
    if (hint == QStyle::SH_PushButton_Pressed) {
        option->palette.setColor(QPalette::Button, QColor(255, 0, 0)); // ボタンを赤くする
    }
}

この例では、SH_PushButton_Pressed ヒントが渡された場合、スタイルオプションのパレットが変更され、プッシュボタンが赤く設定されます。

長所

オーバーヘッドが少ない
シンプルでわかりやすい

短所

スタイルエンジンの内部動作に依存する
複雑なスタイルヒントを返答する場合には困難

QPainter を使用してカスタム描画を行う

スタイルヒントが複雑な場合は、QPainter クラスを使用してカスタム描画を行うことができます。これにより、より多くの制御と柔軟性を提供できます。

void MyStyle::drawControl(QStyleControl *control, const QStyleOption *option, QPainter *painter) const
{
    if (control->objectName() == "myButton") {
        painter->setBrush(QColor(255, 0, 0)); // ボタンを赤くする
        painter->drawRect(option->rect);
    } else {
        QStyle::drawControl(control, option, painter);
    }
}

この例では、drawControl() メソッドをオーバーライドして、myButton という名前のボタンが赤く描画されるようにします。

長所

完全な制御が可能
複雑なスタイルヒントを返答する場合に適している

短所

パフォーマンスが低下する可能性がある
コードが増える

サブクラス化

スタイルヒントを頻繁に返答する場合は、QStyle クラスをサブクラス化して、独自のスタイルエンジンを作成することができます。これにより、スタイルヒントの処理方法を完全に制御できます。

class MyStyle : public QStyle
{
public:
    virtual void drawControl(QStyleControl *control, const QStyleOption *option, QPainter *painter) const override
    {
        // カスタム描画を行う
    }

    virtual QStyleHintReturn styleHint(QStyleOptionHint hint, const QStyleOption *option) const override
    {
        // カスタムスタイルヒントを返答する
    }
};

この例では、MyStyle クラスを定義して、drawControl() と styleHint() メソッドをオーバーライドします。これらのメソッドは、カスタム描画とスタイルヒントの処理に使用できます。

長所

再利用可能
完全な制御が可能

短所

コードが増える
複雑で習得するのが難しい

最適な代替方法の選択

使用する代替方法は、要件によって異なります。単純なスタイルヒントを返答する場合は、スタイルオプションを直接変更するのが最善の方法です。複雑なスタイルヒントを返答する場合は、QPainter を使用してカスタム描画を行うか、QStyle クラスをサブクラス化することを検討する必要があります。

上記以外にも、以下のような代替方法があります。

第三者製のライブラリを使用する
スタイルシートを使用する

Qt GUIプログラマーなら知っておきたい: QStyleHints::mouseQuickSelectionThresholdで実現する洗練されたテキスト選択操作

QStyleHints::mouseQuickSelectionThreshold は、Qt GUI におけるテキスト編集コントロールにおいて、マウスによる素早い選択動作の閾値を設定するプロパティです。このプロパティの値は、マウスカーソルを移動する際に、テキストを自動的に選択するかどうかを決定します。

QWindow::isFullScreen() 関数

QStyleHints::showIsFullScreen は、Qt GUIにおけるウィンドウの全画面表示状態を示すフラグです。このフラグは、ウィンドウがユーザーインタフェース全体を占有しているかどうかを判断するために使用されます。詳細QStyleHints::showIsFullScreen は、QStyleHints 構造体のメンバ変数として定義されています。この構造体は、ウィジェットのスタイルヒントを格納するために使用されます。showIsFullScreen フラグは、ウィジェットが全画面表示モードかどうかを示す bool 型の値です。